ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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バレンタイン1

「…………」

 

ある日、俺が目を覚ますと部屋の真ん中にレイナーレの銅像があった。

……いや、チョコか?チョコを肌の上から直接全身に塗りたくっている。

何やってんだ、この変態は?

 

俺が何らかの事情があって一人で寝ている(ムラマサが擬人化するようになってからは、ムラマサを抱き枕にしている)と毎回何か変なことが起きるな。

もしかして俺は呪われているのだろうか?俺は寝起きがいい方じゃないから、朝から面倒事はごめんだ。

たまにはゆっくり起きたい。

 

時計を見てみる。まだ朝食までは時間があるな。確か今日の担当はレイヴェルだったか。楽しみだ。

次に隣で気持ちよさそうに寝ているムラマサを見る。うん、今日も可愛いな。

さて、まだ早いし二度寝するか。

そう思ってもう一度、布団に顔をうずめようとした瞬間、扉が開けられてルフェイが入ってきた。

 

「霧識さん、起きてます……うわっ!何ですか、これ!?」

 

ルフェイがレイナーレを見て驚いた声を出す。

そりゃ、驚くよな。俺も寝起きでボーとしてなかったら変な声を上げていただろう。

 

「レイナーレだ」

 

俺が体を起き上がらせて説明すると、ルフェイは不思議そうにレイナーレの全身を見る。

 

「ああ、レイナーレさんですか。何でこんな格好してるんですか?」

 

「俺へのバレンタインチョコだろ。今日は二月十四日だからな」

 

ちなみに俺がムラマサと二人で寝ていたのは、昨夜一緒に寝る予定だったルフェイとレイヴェルがチョコ作りで疲れたらしく早く寝たからだ。

俺は二人を部屋まで送った後はムラマサと少しゲームをしてから早めに寝た。

小猫とイリナに関しては徹夜していたようだ。俺が昨日、目が覚めてトイレに行った時に二人が作っているのを見た。

そこまでしなくても……何なら市販のチョコでも喜ぶんだけどな。でも、そこまでしてくれるのはやっぱり嬉しい。

 

「それで自分をチョコにしたんですか……。相変わらず凄い行動力ですね」

 

ルフェイが呆れたような感心したような声を出す。

俺に言わせれば重度の変態だ。俺にどんなプレイを要求する気だよ。

俺はHに関しては基本的にマニアックなヤツよりもシンプルな方が好きなんだがな。

 

「ところでルフェイはこんな朝早くから何の用事だ?」

 

「そうでした!……え~と、レイナーレさんのチョコは食べたんですか?」

 

ルフェイが緊張した様子で聞いてきた。

質問の意味はよく分からないが見たら分かるだろ。俺はベッドから出てすらいないんだぞ。

 

「いや、まだだが」

 

「……そうですか」

 

俺の言葉にルフェイは安心したように頷く。

そしてルフェイが恥ずかしそうにしながら俺の目の前で来ると、両手でラッピングされたハート型のチョコを差し出してきた。

 

「霧識さん、受け取ってください!」

 

「チョコか」

 

俺は受け取ると、すぐにラッピングをとって食べる。

ルフェイが俺のために作ってくれたチョコだ。正直食べるのが勿体ないという気持ちもあったが、それでも我慢できなかった。

甘過ぎず味のバランスもとれていて素晴らしい仕上がりだ。贔屓目ではなくプロの人達と比べても遜色ない。

 

「……どうですか?」

 

「ルフェイから貰えるというだけで充分過ぎるほどに幸せなのに、その上味まで最高だ。ありがとう」

 

俺が頭を撫でながら返事すると、ルフェイは照れているのか少し頬を赤らめた。

朝から可愛すぎる。

 

「でも、わざわざこんな時間に持ってくる必要はなかっただろ」

 

「……私のチョコを一番最初に食べてほしかったんですが。やっぱり迷惑でしたか?」

 

俺の台詞の意味を勘違いしたのか困った表情をするルフェイ。

どうやったらそんな発想になるんだ!?俺がルフェイのことを迷惑に思うないだけだろ!

俺は単純な疑問として言っただけだ。

それともわざとか!?わざとやって俺を困らせて楽しんでいるのか!?

それはそれでアリだな。

でも、もしそうだったら俺に嘘だとバレない演技をしているってことになる。……いや、俺が動揺して気付いてないってだけの可能性もあるけど。

 

「はぁー」

 

俺は溜め息をつくと、ルフェイが作ってくれたチョコをもう一口食べる。

そして少し噛んでから頭を撫でていた手でルフェイを引き寄せて、そのままキスする。

 

「んっ!?」

 

ルフェイがいきなりのことで驚いているが、そんなことは気にせず舌を入れる。

俺の口の中にある少し溶けたチョコをルフェイの舌に絡ませてから唇を外すと、ルフェイは顔を真っ赤にしながらチョコを食べた。

 

「どうだ?美味しいだろ?そんな美味しいチョコを大好きな人から貰って喜ばない男はいない」

 

「……いや、確かに美味しいですけど多分、私と霧識さんでは感じた味が違うと思うんですけど」

 

ルフェイが俯くながら早口で呟いた。

味が違うってどういうことだ?食べたチョコは同じだが。

キスの味ということか?

 

「いつまで私を放置してイチャイチャしているんですか!?さすがに色々と限界なんですけど!」

 

急に焦った声が聞こえたので見てみるとレイナーレが口だけ動かしてモゴモゴ喋っていた。

絵面が怖いな。子供には見せられない。

 

「うるさいな。邪魔するなよ。今から最高の口説き文句を言うところだったのに」

 

「そういうのは二人っきりの時にしてください!というか、好感度が振り切っている人をこれ以上口説く意味ってあるんですか!?」

 

「ある。現実はギャルゲーじゃないんだ。好感度がMAXになっても終わりじゃない。常に新しい刺激を求めないと」

 

「だったら私が昨日、新しく買った道具があるんですが」

 

「気が向いたらな」

 

俺の金を勝手に使うから給料を渡すようにしたけど録なことに使わないな。

まぁ、レイナーレが他に金を使うところなんて想像できないけど。生活に必要なものは全部、俺が買ってやってるし。

ていうか、レイナーレの様子がおかしいな。

 

「もしかして珍しく怒っているのか?」

 

「別に怒ってはいませんけど焦ってはいます。早く食べていただかないと溶けますから。というより、もう溶けてきていて気持ち悪いです」

 

チョコを自分に塗るからだよ。そんなことしたら体温で溶けるのは当たり前だろ。

気持ち悪いのも自業自得だ。

 

「そうか。じゃあ、着替えるからもうちょっと待ってろ」

 

「ここで焦らしプレイですか!?そんなことしたら興奮してチョコが溶けるのが早くなるんですが!」

 

そんなことは知らないし興味もない。それに興奮できるなら文句はないだろ。

俺はレイナーレを無視すると立ち上がって着替え始める。まだ少し早いけど、もう目が覚めてしまったし起きるか。

 

「私は用事も終わりましたし、レイヴェルさんの手伝いをしてきますね」

 

「ああ、分かった」

 

俺が返事するとルフェイは部屋から退出した。

着替えながらムラマサの方を見る。気持ちよさそうにしているし、もう少し寝かせておくか。

 

「そろそろ私を食べてください!」

 

俺が着替え終わったところでレイナーレがそう言ってきた。

それじゃあ意味が変わるんだが。……いや、それも間違っていないんだろうけど。

 

「……仕方ないな。別に今はすることもないし」

 

俺はレイナーレのところまで行くと、レイナーレの脇をペロッと舐めた。

レイナーレが「ひゃっ!」と変な声を出す。ずっと裸で俺の目の前にいたから敏感になっているか?

まぁ、レイナーレの全身が敏感なのは当たり前だが。俺がそういう風に開発したんだからな。

それよりもやっぱりレイナーレの作るチョコは美味しいな。汗のせいで少ししょっぱかったけど。

 

「朝食が出来るまでだぞ。後、ムラマサが寝ているから出来るだけ変な声は出すなよ」

 

「分かりました」

 

レイナーレが恍惚とした表情で返事すると、俺は次に首を舐めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくサボっているのに今日は来たのか」

 

俺が三日ぶりぐらいに登校して校舎内に入ったところで、変なハゲと眼鏡が話かけてきた。

……こいつら誰だっけ?一応、見覚えはあるんだが思い出せない。

この思い出しそうで分からない感じって、あんまり好きじゃないんだよな。

何とか思い出そうとしていると眼鏡の方が怪訝な目で俺を見てきた。

 

「……お前、まさか俺達のことを忘れてないよな?」

 

「ちょっと待て。思い出すから。……え~と、確か……そうだ!思い出した!松田だよな?」

 

「やっぱり忘れてたのかよ!?それに松田は俺じゃなくてこいつだ!」

 

眼鏡が叫びながらハゲを指差す。

ああ、そっちが松田か。

 

「思い出した思い出した。鈴木だろ?」

 

「鈴木、って何だよ!?適当にありそうな名前を言っただけじゃねぇか!?」

 

じゃあ、誰なんだ?というか、本当に俺の知り合いなのか?

 

「ルフェイは覚えているか?」

 

俺は隣を歩いているルフェイに質問する。

ちなみにいつもは小猫、レイヴェル、イリナ達と一緒に登校するのだが、今日はルフェイと花蓮の二人と登校している。

バレンタインの影響で三人は別々に登校している。

 

「こんな人、クラスにいましたっけ?」

 

「うぉぉぉぉ!俺の存在感ってそんなにないのかよぉぉぉぉ!」

 

ルフェイが可愛らしく首を傾げるとショックを受けたのか激しく慟哭する眼鏡。

いや、存在感はあると思うぞ。物凄く気持ち悪い。

周りの生徒達も凄い勢いで引いているし。

 

そんな感じで眼鏡の名前を思い出せないまま下駄箱に前につく。

下駄箱を開けると大量というわけではないが、そこそこの量のチョコが入っていた。

全部で十個ぐらいか。

中には手紙がついているのもあれば、手紙だけのもある。俺を呼び出して直接渡すつもりなのだろう。

俺の隣ではハゲと眼鏡が冷静を装いつつ下駄箱を開けて分かりやすいぐらいショックを受けている姿があった。

お前らがチョコを貰えるわけないだろ。この学園の女子人気は俺と木場で二分しているんだから。

ただ俺は彼女がいるから大半のチョコは木場の元だろうが。そして、その本人は誰かに渡すつもりなのかチョコを作っていたが。

そのチョコは俺じゃなくてイッセーに渡ることを祈るのみだ。

 

「何でお前は彼女がいるのに、その上他の女子からもチョコを貰えるんだよ!?理不尽だろ!俺達にも寄越せ!」

 

「知るか。モテない男の嫉妬は醜いぞ。……ん?」

 

ハゲのいちゃもんを適当に聞き流しながらチョコを確認していると変なものを見付けた。

この手紙に書かれている名前、男じゃねぇか。何で男が俺にチョコを渡しているんだよ。気持ち悪い。

 

「おい、ハゲ。これならやるぞ。ついでに紹介もしてやる」

 

「何、本当か!?」

 

「ああ。多分、お前となら上手くいくと思うぞ。こいつ、前に俺以外ならお前がいいと言っていたし」

 

嘘をつきながら手紙を抜いてチョコだけを渡す。

手紙まで渡したら嘘だとバレるからな。ついでに言うと、俺はその男のことを全く知らない。

そんなこととは知らず、ハゲがさっきまでと違い俺に感謝している。それを眼鏡が羨ましそうに見ている。

興味ないし、早く教室に行くか。

 




次回に続きます。

では感想待ってます。

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