ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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擬人化2

「なるほど。事情は分かりましたわ」

 

俺はすぐにレイヴェルを呼び止めて事情を説明することに成功した。

もう何回も経験しているので慣れたものだ。こういうのに慣れるのは人間としてどうかと思うが。

だが、俺にはそんなことよりも気になることがある。

 

「……レイヴェル、いつまで俺の刀をモフモフしてんだよ?」

 

レイヴェルは部屋に戻ってきてムラマサが挨拶すると同時にいきなり抱き付いたのだ。

現在はムラマサを膝の上に乗せて幸せそうな表情でモフモフしている。俺の説明をちゃんと聞いていたかも微妙なところだ。

とりあえず写真は撮っておこう。可愛すぎる。

にしても、俺の影響を受けすぎだろ。確かにレイヴェルは最初から可愛いものが好きだったが、ここまでじゃなかったぞ。

 

「そ、それはさすがに………」

 

俺の質問を聞いたレイヴェルが急に頬を赤らめた。

レイヴェルが恥ずかしがるようなことを言ったか?

 

「ムラマサさんもいるのに今から霧識さんの刀をモフモフするのは恥ずかしいです」

 

「そんなことは一言も言っていない」

 

俺の股間部分を凝視するレイヴェルに冷静にツッコむ。今の状況でどうやったらそんな勘違いが出来るんだよ。

元々、レイヴェルは下ネタを言うような性格をしていない。これは誰の影響だ?俺はこんなことを教えた記憶はないぞ。

 

「ああ、私は気にしないから始めていいよ。いつも見ているし」

 

おい、ムラマサ。更に状況をややこしくするようなことを言うな。

今回に関しては本格的に照れているじゃないか。

よくやった、ムラマサ!最近のレイヴェルは照れがなかったからか。

やっぱり羞恥に悶える女の子は可愛い!

 

「……それはどういう意味ですの?」

 

「さっき説明したでしょ?私はずっと主の体の中にいたの。つまり主の行いは全部見ているってこと。まぁ、起きている時だけだけどね」

 

ムラマサは特に気にした様子もなくレイヴェルの質問に答える。

よく考えたらムラマサって俺の秘密を全部知っている唯一の存在なんだよな。

それが擬人化ってヤバくないか?今までは俺以外と話すことが出来なかったから気にしていなかったけど、これからはそれが出来る。それにムラマサが話していい相手かどうかをちゃんと判断するとは思えないし。

後でちゃんとしつこく教えておかないと。ムラマサが何気なく言った一言で俺が社会的に死んでしまうかもしれない。

 

「……え~と、あんなことやこんなことまで見ているってことですの?」

 

「あんなことやこんなこと以外にもそんなことまでシッカリ見ているよ」

 

いや、その言い方だとどこまで見ているのか全く分からないのだが。

だがレイヴェルにそれで充分だったらしく頬を押さえて恥ずかしそうにしている。

そして解放されたムラマサは立ち上がって俺のところまで来ると、そのまま俺の膝の上に座った。

 

「うん、やっぱりこっちの方がシックリくるね」

 

俺とムラマサは一心同体だからな。俺も妙にシックリくる。

もしかしたらルフェイよりもシックリくるかもしれない。

気付いたらムラマサの頭を撫でていて、ムラマサも気持ちよさそうにしている。刀だけど抱いていいかな?

そういう行為が出来るのは確認済みだし。

 

「ところで主。一つ聞いていい?」

 

「遠慮なんかしなくていいぞ。何でも聞いてくれ」

 

「この姿の時は主のことをお兄ちゃんって呼んだ方がいいのかな?」

 

「……どういう意味だ?」

 

ムラマサの言っている意味が分からない。俺はムラマサからどういう風に見られているんだ?

そろそろ一回、周りの連中が俺のことをどう思っているか調べた方がいいような気がする。何かヤバいことになってそうで怖いけど。

でも早く調査して誤解を解かないと手遅れになりかねない。……すでに手遅れの可能性もあるけど。

 

「ほら、主って妹が好きでしょ?実の妹とか関係なく」

 

確かに妹は好きだけど。でも、花蓮以外にお兄ちゃんって呼ばれるのはな……。いや、ムラマサみたいな可愛い女の子?にお兄ちゃんって呼ばれるのは悪い気はしないし。

……そうだ!だったら、呼び方を変えればいいじゃないか!さすが俺!ナイスアイデアだ!

どういう呼び方がいいかな。

兄上?お兄様?兄兄?

う~ん、悪くはないけどムラマサのキャラを考えると微妙だな。やっぱりここはシンプルにお兄ちゃんにしよう。

 

「それは駄目!」

 

急に花蓮が扉が壊れるんじゃないか、と心配になるほどの勢いで部屋に入ってきた。

表情が本気過ぎて少し怖い。

 

「いきなりどうした?デュリオくんと何か忘れたけど食べに行ってたんじゃなかったのか?」

 

デュリオくんも色々頑張っているようだ。まぁ、全く成功する気配はないけど。

というか、デュリオくんはちゃんと仕事しているのだろうか?いつも食べているイメージしかないが。

 

「それはどうでもいいの!ちょうど一軒目が終わったところだったから!」

 

一軒目ってことは何軒も回る予定だったのかよ。

よくそんなに食べられるな。昼は俺が作ったラーメンをかなり食べていたのに。

 

「それよりも問題はお兄ちゃんが私以外に妹を作ろうとしていることだよ!」

 

「いやいや、俺の妹は世界にただ一人、花蓮だけだ。こいつは俺の刀だ」

 

「ねぇ、私の妹にならない?」

 

花蓮はムラマサの姿を認識すると同時に俺の言葉を無視して一瞬で目の前まで来ると、ムラマサに告白した。

頼むから話ぐらいは聞いてくれ。話がころころ変わるせいでついていけない。

ていうか、何で俺は妹を作ったら駄目なのに、花蓮は良いんだよ。可愛い女の子を見る度に告白しているし。

まぁ、未だに成功したのはイルとネルだけだけど。

 

「無理だね」

 

「何で!?」

 

まるでこの世の全てに絶望したかのような表情をする花蓮。

いつもより反応が激しいな。それだけ花蓮もムラマサが気に入ったということか。

 

「私は主の所有物だからね。主以外の人のものになるつもりはないよ」

 

そうなのか?お前、俺の所有物と言うわりには一方的に搾取しているような気がするが。

 

「何か私の唯一のアイデンティティが奪われた気が!」

 

レイナーレがさっきの花蓮と同じく凄い勢いで扉を開けて部屋に入ってきた。

俺の周りの女の直感は超能力レベルなのか?俺の部屋は完全防音だから音が漏れるはずがないし。

それ以前に花蓮の場合は外にいたから完全防音とか関係なく聞こえるわけがないけど。

 

「じゃあ、私の妹になればお兄ちゃんの妹になっても良いよ。でも真の妹は私だけだからね」

 

花蓮はレイナーレを無視して交渉を続けている。

相変わら自分のペースで動く奴だな。少しは周りを気にしろ。

 

起きてから休み暇もない怒涛の展開に疲れた。ムラマサのせいで寝たのに疲れは取れてないし。

まぁ、ムラマサが楽しそうだからいいか。

 

 

 

 

 

何とか二人を性的な方法を使って落ち着かせてレイヴェルにしたのと同じ説明をした後はムラマサの要求でテレビゲームをしている。

とりあえずムラマサの俺の呼び方は変わらず「主」で、ムラマサは花蓮の妹にならないということで話は決着した。

ちなみにレイナーレはお菓子とジュースを取りに行っていていない。

 

「どうだ、楽しいか?」

 

「うん、楽しいよ!」

 

俺の膝の上に座っているムラマサが満足げに頷く。

知識では知っていても実際にするのは初めてで新鮮だからかずっと笑っている。

こういうのを見ていると微笑ましくて色々と体験させてやりたくなってくる。もちろん性的なこともだ。

明日は仕事の予定だったけどサボるか。適当にユーグリット辺りにでも代理をさせておこう。

あいつ、ロスヴァイセに構ってばかりでほとんど仕事していないから良い機会だ。

 

「ご主人様、お菓子とジュースを持ってきましたよ。後、オーフィス様も」

 

「我も遊びに来た」

 

部屋に戻ってきたレイナーレの後ろにはオーフィスがいた。

暇だったから勝手についてきたんだな。

黒歌の野郎、何やってんだよ。いつも暇そうにしているんだからオーフィスの相手ぐらいはちゃんとしろ。

 

「じゃあ、オーフィスも一緒にゲームするか?」

 

「する」

 

返事したオーフィスは俺の目の前でやって来る。そしてムラマサに気付くと何故か睨み始めた。

 

「そこは我の場所。どいて」

 

「それは無理。今は主と一心同体の私が使っているから」

 

ムラマサも喧嘩腰で睨み返す。

何これ?修羅場?

修羅場はよくあるけどこの二人は完全に予想外だった。

 

「まぁまぁ、落ち着いてください。ここはゲームで勝った人がご主人様の膝の上に座るということにしましょう」

 

「それ、私が不利じゃない!?」

 

レイナーレの仲裁案にムラマサが即座にツッコむ。

確かにそうだな。ムラマサは今日、初めてしてまだ初心者だ。

それに引き換えレイナーレとオーフィスの腕はプロレベル。ムラマサに勝ち目があるとは思えない。

レイナーレの奴、然り気無く自分に有利な提案をしやがった。今しているゲームはオーフィスよりもレイナーレの方が得意だからな。

 

「じゃあ、エッチでお兄ちゃんを――」

 

「却下だ。ゲームにしろ」

 

花蓮の意見を言い終わる前に否定する。オーフィスの前でそんなことをするわけないだろ。

それにそのルールで有利なのはレイヴェルだぞ。上手いのはレイナーレだが、この中で俺が一番好きなのはレイヴェルだからな。

 

「だったら、これとかどうですか?」

 

そう言ってレイヴェルが提案したのは、レイヴェルが一番得意なゲームだ。

こいつら、分かりやすいぐらい自分のことしか考えてない。

でも、そういうところが大好きだ。謙虚は日本人の美徳だと言うが、俺に言わせれば欠点だ。

やっぱり自分の欲望には忠実じゃないとな。その上で相手のことも気遣えればベストだ。

 

「誰が主のことを一番知っているかで勝負するのはどう?」

 

「頼むからそれはやめてくれ!」

 

確かにそれならムラマサが勝つだろうけど、何を言われるか分かったものじゃない。そんな暴露大会……しかも俺限定は認めないぞ。

 

その後、勝負のルールの話し合いをしている間に夕食の時間になったので、この話は終わった。せめて勝負ぐらいはちゃんとしろよ!

ただその間、ずっと俺の膝の上に座っていたムラマサは満足そうだったけど。




補足しておくとムラマサは主人公の体の中に戻ることは出来ます。ただもう一度、擬人化する時のエネルギーとして主人公の体力を使うのであまり戻ることはありません。

次回はバレンタインの話です。

では感想待ってます。

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