ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

136 / 168
幼少期ということで主人公の性格や口調が今とは違います。
それでも根本的なところは変わっていませんが。


短編
幼き日の思い出


「ねぇ、どこかに遊びに行こうよ」

 

ある冬の日、暖房の効いた暖かい部屋で犬のヌイグルミをモフモフしているとイリナちゃんが急にそんなことを言ってきた。

外を見てみると雪が降っていた。寒そうだなぁ……。こんな日は暖かい部屋でのんびりしているに限る。

 

「嫌。行きたいならイリナちゃん一人で行って」

 

「一人で遊んでも楽しくないもん。霧識くんも一緒に行こ。雪合戦とか雪だるまを作ったりするの。きっと楽しいよ」

 

イリナちゃんが立ち上がって外を指差しながら言う。

雪合戦に雪だるま、何か服が汚れそうだな。

今、着ている服は汚したくないし、別の汚れてもいい服に着替えるのも面倒臭い。

 

どうにかして外に行かないでいい方法を考えないと。今日のイリナちゃんの目からは妙に固い意思みたいものを感じる。

そんな時、テレビに映っている特番の漫才番組にある芸人さんが登場するのが目に入ってきた。

 

「あ、この芸人さん、面白いよ。僕のお気に入りなんだ」

 

「そんな芸人さんなんかどうでもいいから雪合戦しようよ!」

 

駄目だったか。

この芸人さんが面白いのは本当なのに。前に別の番組でもう少しで消えるとか言っていたからちゃんと見ておかないと。

 

「だったら前に好きだって言っていた子と一緒に遊べば。僕はヌイグルミをモフモフしながら家でテレビ見ているから」

 

「イ……彼は今日は家族と過ごすって言っていたから邪魔するのも悪いし……」

 

イ?

それがイリナちゃんの愛しの彼の頭文字だろうか?

何でか知らないけど僕にはその彼を紹介してくれないんだよな。別に会いたいわけじゃないから、どうでもいいけど。

 

「それなら家で遊ぼうよ」

 

「いや!またママゴトなんでしょ!?」

 

ママゴト面白いと思うんだけどな。特に泥々と愛憎劇とか。

イリナちゃんはいつも文句を言うけど何が不満なのだろうか?

 

「今日はお菓子作り。チーズケーキとかどう?」

 

「うぅ……、確かにチーズケーキは美味しいけど作るのって難しくない?」

 

「そんなことないよ。前に作ったことあるし。材料もあるし、僕が教えるから一緒に作ろう」

 

店で買うのも美味しいけど、 前におばさん(イリナちゃんのお母さん)に教えてもらって作った時はより美味しく感じられた。今度はマフィンにでも挑戦してみようかな。

 

「……前から思っていたけど霧識くんって女の子よりも女の子みたいだよね。服も女の子みたいだし」

 

イリナちゃんが呆れたような表情で言ってきた。

そうかな?まぁ、確かに幼稚園の友達も男の子より女の子の方が多いけど。

というより、男の子の友達はいないけど。

 

「それを言うならイリナちゃんは男の子よりも男の子みたいだよね。いつもヒーローごっことかして」

 

「良いじゃない!ヒーローごっこ楽しいよ!」

 

「お菓子作りも楽しいよ。イリナちゃんってせっかく可愛いんだから、もっと女の子らしいこともしたら?」

 

僕がそう言うとイリナちゃんの顔が急に真っ赤になった。何か驚いているみたいにも見えるけど。どうしたのかな?

でも今のこの表情は女の子みたいで可愛い。

 

「いやいや、そんなことないよ!私なんてよく男の子に間違えられるし!」

 

それを言うなら僕はよく女の子と間違えられるけどね。外では普通に男の子の格好をしているのに何でだろうか。

 

「それはイリナちゃんが男の子みたいな格好をしているからだよ。ちゃんと可愛い服を着れば他の女の子よりも可愛くなるよ。何なら今から僕が持っている服を着てみる?」

 

前からイリナちゃんに可愛い服を着てほしかったんだよね。

本当、可愛いのに男の子みたいな格好ばかりして勿体ない。

 

「……私に今、霧識くんが着ているみたいな服を着れ、ってこと?」

 

「そうだね。僕がイリナちゃんに似合う服を用意してあげるよ」

 

「無理だよ。私にそんなフリフリの可愛らしい服なんて似合わないよ」

 

「そんなことないって。イリナちゃん、可愛いから絶対に似合うよ。自分が可愛らしい服を着た姿を想像してみて」

 

僕に言われた通り、自分が可愛らしい服を着た姿を想像するためにイリナちゃんが視線を上に向ける。

そしてウットリした表情になったかと思うと、すぐに顔をブンブンと横に振り始めた。

相変わらずイリナちゃんは表情豊かで面白いな。

 

「やっぱり無理無理!そんな可愛らしい格好は恥ずかしいよ!」

 

むぅ……。駄目か。

何でそこまで頑なに嫌がるのか分からない。満更でもなさそうな顔をしているのに。

 

「それよりも、ほら!早く外に行こうよ!」

 

何で今日のイリナちゃんはこんなに僕を外に連れていこうとするのかも分からない。いつもなら適当に誤魔化したら諦めてくれるのに。

 

でも外に行くのは嫌だしな。どうしよう?

……いや、良いこと思い付いた。

 

「分かった。外で一緒に遊んでもいいよ」

 

「本当!?」

 

イリナちゃんが楽しそうな目標を達成して安堵したような表情で食い付いてきた。何か企んでいるのかな?

だが僕は簡単に思い通りになるような単純な男じゃない。

 

「うん。でも条件がある」

 

「……条件?」

 

「雪合戦で僕が勝ったら可愛い服を着てね」

 

「え?いや、それは……」

 

「それが嫌なら僕はここでのんびりとテレビを見ている」

 

ちっ。この芸人さんは嫌いなんだよな。

この間にジュースでも用意するか。ちょうど喉が渇いてきたし。

僕はヌイグルミを持ちながら立ち上がって冷蔵庫からジュースのペットボトルとコップを用意していると途中で「う~ん……」と腕を組んで本格的に悩んでいるイリナちゃんが見えた。

 

何だろう。悩んでいるイリナちゃんを見ていると更に悩ませたくなってくる。

もしかしてこれが恋!

男の子は好きな女の子にイタズラしたくなるって聞いたことあるし。

……いや、多分違う。まだ幼いから分からないけど、これはもっと別の感情のような気がする。

 

「よし、決めた!」

 

僕が元の場所に戻ってジュースを飲み始めた瞬間にイリナちゃんが大声を上げた。

ビックリした。もう少しでジュースをこぼすところだった。

 

「やっと可愛い服を着てくれる気になったの?このテレビが終わったら準備するから待ってて」

 

「そうじゃなくて雪合戦の方よ!霧識くんが勝ったら可愛い服を着てあげる!」

 

何だ、そっちか。残念。

でも僕が勝つのは決まっているから結果は一緒だけどね。

 

「OK。でも、その前にジュース飲む?イリナちゃんの分のコップも用意しておいたけど」

 

「ありがとう」

 

イリナちゃんは僕が差し出したコップを受け取ると隣に座ってジュースを飲み始めた。

 

「ところで、私が勝った場合はどうなるの?」

 

「勝てると思ってるの?」

 

イリナちゃんはかけっこ以外の運動係の勝負で僕に勝ったことがない。

単純な運動能力ならイリナちゃんの方が上だけど、それ以外は僕の方が勝っている。

 

「今日こそ勝てるかもしれないじゃない!」

 

「まぁ、そうかもね。じゃあ、イリナちゃんが勝ったら僕が選んだ一番可愛い服を着させてあげるよ」

 

「それ、どっちにしても結果は一緒だよね!?」

 

気付いてしまったか。イリナちゃんは頭が少し残念だから気付かないと思っていたのに。

 

「もし僕が負けた場合は脱ぐ」

 

「それに何の意味があるの!?」

 

特に意味はないけど何となく思い付いた。僕は何でこんなことを言ったのだろうか?

後で一緒にお風呂に入るのだから、これこそどっちにしても結果は同じなのに。

 

「だったら僕が出来る範囲でイリナちゃんの言うことを何でも聞くっていうのは?」

 

「何でも!?じゃあ、また一緒に外で遊んでね!後、お菓子も作って!」

 

「一つだけだよ」

 

「むぅ……、ケチ」

 

イリナちゃんが頬を膨らませながら不満そうに言う。

別にケチじゃない。このままだったら、どれだけの命令をされるか分からないからね。

 

「じゃあ、それは勝ってから考えるとして早く雪合戦しよ!」

 

「分かった、でも、その前に着替えさせてね」

 

僕はイリナちゃんに急かされて立ち上がると自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

雪合戦が予想通りの結果に終わって、負けて泣いているイリナちゃんと一緒に家に帰ってくるとサンタクロースの格好をした謎の女性がいた。

……え~と、誰?見たことのない人だけど。

もしかしてテレビのニュースでやっていたサンタ強盗?

警察に通報するために電話のある場所に移動しようとした瞬間に女性は僕に気付いて親しげに話かけてきた。

 

「駄目だよ、霧識ちゃん。女の子を泣かせるのはベッドの上だけにしないと」

 

この人が何を言っているのか全く理解できない。

というより、何で僕の名前を知っているのだろうか?

 

「あれ、もう帰ってきてたの。予定よりも早かったね」

 

後ろから声が聞こえたので見てみると謎の女性と同じようにサンタクロースの格好をして大きな箱を持っているおじさん(イリナちゃんのお父さん)がいた。

 

「ごめん、パパ。早く帰ってきちゃった」

 

「大丈夫、イリナちゃんは頑張ったんだから悪くないよ」

 

泣いているイリナちゃんをおじさんが頭を撫でながら慰めている。

どういうこと?急展開すぎて意味が分からない。

 

「どうやらサプライズは失敗みたいね」

 

次にケーキを持ったエプロン姿のおばさんが現れた。

 

「サプライズ?」

 

「今日は12月25日。霧識くんの誕生日でしょ?だから皆でサプライズでクリスマスとまとめて霧識くんを祝おうと思ってたの。で、イリナは霧識くんを外に連れ出して時間を稼ぐ役だったの」

 

ああ、それで今日のイリナちゃんはいつもよりもしつこかったのか。

というか、今日が僕の誕生日だったのか。知らなかった。

 

「じゃあ、こっちの人は?」

 

謎の女性を指差しながらおばさんに質問する。

 

「ああ、この人はね、霧識くんのママよ」

 

「……ママ?」

 

今まで会ったことがなかったけど僕にもママがいたんだ。

一度、会ってみたかったから嬉しい……はずなんだけど。何故か全く嬉しくない。

僕の勘がこの人のことを危険だと言っている。

それにおじさんやおばさんを自分の両親みたいに思っていたから別に寂しくなかったし。

 

「今まで仕事が忙しくて会えなかったんだけどね。たまたま近くに寄ったし、今日は霧識ちゃんの誕生日だっていうから会いに来たの。ちなみにパパはパシ……買い出しに行っていて今はいないけど後で会えるよ」

 

何故だろう。更に嫌な予感がする。

僕は今すぐ逃げないといけないような気になった。

 

「それよりもイリナちゃんも霧識くんもお風呂に入ってきたら?それまでにパーティーの準備は終わらせておくから」

 

おじさんに言われて僕とイリナちゃんはお風呂に行くことになった。イリナちゃんはすでに落ち着いて泣き止んでいるようだ。

 

「そうだ、イリナちゃん。着替えの服がないよね?僕が用意してあげるよ」

 

「……可愛い服じゃないよね?」

 

「当然、可愛い服だよ。さっき約束したでしょ。負けたら可愛い服を着るって。安心して。可愛いイリナちゃんに似合う可愛い服を用意してあげるから」

 

「恥ずかしいからそんなに可愛い可愛い言わないでよ……」

 

イリナちゃんが照れたように頬を赤らめながら俯く。

か、可愛い……。抱き付きたい。というより、抱き付いた。

 

「ちょ、何で急に抱き付くの!?」

 

「イリナちゃんがあまりに可愛かったから、つい」

 

最初は抵抗していたが、僕がこう言うと急に大人しくなった。どうしたのだろう?

でも、別に嫌そうでもないのでこのまま部屋に着替えを取りに行ってからお風呂場に向かうことにした。

 

「あの子、凄いわね。ナチュラルに女の子を口説いているわよ。将来、ハーレムを作るんじゃない?」

 

「た、確かに……。末恐ろしい才能ですね」

 

後ろで僕を見ながらママとおじさんが戦慄した表情で何か言っていたが無視した。

 

その後、誕生日兼クリスマス会で僕は生まれて人に殺意を覚えることになる。子供の誕生日プレゼントが日本刀とクナイっておかしいだろ。

僕を侍か忍者にでもするつもりか!?




次回は主人公がショタ……いや、ロリ化?
よく分かりませんがとりあえず幼児化します。

では感想待ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。