曹操達とのゲームが終わった後、アザゼルに簡単に報告だけしてホテルの部屋に戻ってきた。
ちなみに呼んでもいないのに美候が勝手についてきて外の連中の相手をしていたらしく、現在は初代に説教されている。
何やってんだが、あの猿は。
ジャンヌは色々とアザゼルに英雄派についての話を聞かれている。まぁ、俺みたいに適当にはぐらかしているだろうが。
そして俺は今、絶賛ルフェイに土下座中である。
もう体力の限界。今すぐベッドにダイブして寝たい。だが、俺はそれも許されず説教されている。
「何でジャンヌさんとあんなに激しいキスしているんですか!?しかも見せ付けるようにしながら!」
「いや、ですからアレはジャンヌが勝手にしたことでして……。私も咄嗟のことで驚いていたんです」
たまに怒られることはあるが今回はいつものより激しく……ハッキリ言って怖いので思わず敬語になってしまっている。
何かこのシーンだけ抜き取ると言い訳をしている女々しい男に見えるな。この姿だけは誰にも見られるわけにはいかない。
どれだけ弄られるか分かったものじゃないからな。
「それにその後にイリナさんにも抱き付きましたよね?」
「すみませんでした!」
床にグリグリと頭を押し付けて潔く謝る。これに関しては言い訳の余地もない。
心が弱っていたとはいえ自分の意思でしたのだから。
「……それに私を置いて行ってしまいますし。おかげで霧識さんの格好いいところが見られなかったじゃないですか」
急に低い声にボソッとルフェイが呟いた。床に頭を押し付けているせいで見えないが可愛らしく頬を膨らませているような気がする。
ただの妄想だが多分間違っていないはずだ。ルフェイの行動パターンは把握しているからな。
「本当にすみませんでした!残りの修学旅行中は絶対服従です!何でもしますから許してください!」
「……絶対服従ですか?」
妙な寒気がしたので恐る恐る顔を上げてみるとルフェイが物凄く楽しそうな顔をしていた。
あれ、もしかして選択肢をミスったか?嫌な予感しかしないんだが。
「……え~と、絶対服従って言っても限度というものが――」
「絶対服従するんですね?」
「はい、その通りです!」
どうやら交渉の余地はないようだ。
これから何をされることやら。怖くはあるが、逆にそれが楽しみだという自分もいる。
もうこんな状況になってしまったんだ。前向きに楽しむしかない。
「じゃあ、まずは服を全部脱いでください」
「……それは良いですけど、出来ればその前に少し眠らせてくれると有り難いです。もう体力が限界ですので」
「ああ、それなら大丈夫です。神器で自分の疲れや眠気を認識できないようにすればいいんです」
「……え?」
俺は思わずルフェイの言葉を疑った。
そんなことしたら疲れが把握できないから能力を解除した時にどうなるか分からないぞ。それに能力を使うにも体力を使うし。
「絶対服従なんですよね?」
俺が困った顔をしているとルフェイが物凄く良い笑顔を向けてきた。
いつもなら可愛さのあまり気付いたら頭を撫でているのだが、その笑顔でさえも怖い。
まぁ、それでも何でも許してしまえるほどに可愛い過ぎるが。
「それに安心してください。大好きな霧識さんに倒れられても困るのでちゃんと優しくしますから」
そう言って微笑みながらルフェイが服を脱ぎ始めた。
疲れている時ほど性欲が増すって話を聞いたことがあるけど本当だったんだな。こんな時なのにいつもより興奮している。
「よぉ、思ったよりも元気そうだな」
修学旅行最終日、朝食のバイキングでサラダを取っていたら明らかに疲労しているイッセーに話かけられた。
英雄派との戦いの疲れが残っているのだろう。後ろにいる他のメンバーも同じような感じだ(イリナだけはむしろツヤツヤしているが)。
ちなみに今まではルームサービスだったのに、今日だけバイキングなのはルフェイが『一回ぐらいはバイキングも食べておきたい』と言ったからだ。
俺としても困る理由はなかった。……というより断れなかった。
「……そうだと良いな」
「?」
俺が目線を逸らして微妙な表情で言うと、イッセーが首を傾げた。
昨夜は一睡もしていないからな。能力を解除したら死んだように眠るんじゃないか。
何となくルフェイの方に視線を向けると可愛く微笑んできた。何回見ても物凄く可愛い。今ので少しは回復したはずだ。
にしても何でルフェイはこんなに元気なのだろうか?俺と同じで一睡もしていないはずなのに。
「と、ところで、その……」
イリナが俺と同じようにサラダを取りながら恥ずかしそうにこっちを見る。
うん、イリナの言いたいことは分かっている。さっきから周りの視線が痛いからな。特に女子の中にはウットリとした表情で俺を見ている奴もいるぐらいだ。ゼノヴィアは全く気にしていない様子だが。
「何で燕尾服なの?」
「やっぱり変か?」
これはルフェイが某執事漫画の影響を受けたせいで着せられた。
と言うか、昨夜は大量のコスプレをさせてられて写真を撮られまくった。いつもの逆だな。
そして今日はルフェイの一日執事ということになっている。
俺は借金執事よりもお嬢様の役に立つぞ。
「いやいや、変じゃないよ!とっても格好いいよ!」
即座に早口で否定するイリナ。
いや、俺は別にそういう意味で言ったんじゃないんだが。俺が格好いいのは分かっていることだし。
俺が言っているのは一人だけ燕尾服を着ているのは浮いているんじゃないか?ってことなんだが。
「あ、キーくんだ。……何で燕尾服?」
「おはよう、お兄ちゃん。その服装も格好いいね」
ジャンヌと花蓮が現れた。
何でこの二人がここにいるんだ?いや、このホテルに泊まっていたことは知っている。
ここにいることが問題でもない。駒王学園の生徒以外の一般人も普通にいるからな。
問題はこのタイミングで現れたことだ。面倒な予感しかしない。
「……何でジャンヌがここにいるんだ?」
イッセーが周りに一般人がいるからかある程度、敵意を抑えてジャンヌを睨む。
ジャンヌが裏切って曹操と戦ったとはいえ、イッセーの中ではイリナとロスヴァイセを倒した敵ということになっているからな。仕方ないか。
イリナを倒したのは俺で、ロスヴァイセは俺の指示でやられたんだがワザワザ説明する必要はないだろ。
「あんなことをしたのによく私の前に顔を出せたわね」
イリナもジャンヌを睨む。
あんなこと、とはキスとテロ、どっちのことを言っているのだろうか?
まぁ、間違いなくキスの方だろうが。その証拠に顔が真っ赤だ。
「まぁまぁ。細かいことは気にしないでよ、天使ちゃん。ところで、こっちの冴えない男は誰?一般生徒A?」
「誰が一般生徒Aだ!俺は兵藤一誠だ!」
「兵藤……一誠?やっぱり誰?」
名前を聞いてもピンと来ないのか不思議そうに首を傾げている。
え?マジで分からないのか?
「ほら、前に教えたでしょ?アレだよ。……え~と、そう!おっぱい大好きのエッチな赤龍帝!」
花蓮が必死に思い出すようにしながら最低な紹介をする。
普段はイッセーのことを虫けらとかウジ虫とか呼んでいるからな。分かりやすいように説明するのが難しかったのだろう。
「ああ!英雄派の時は基本的に赤龍帝としか呼んでいなかったから忘れていたよ!それに戦闘の時も鎧の印象が強かったから分からなかったよ。鎧は格好いいのに本人は冴えない顔しているんだね」
思い出したのか手をポンッと叩くジャンヌ。
まぁ、その気持ちは分かる。おっぱいドラゴンの撮影の時もスタッフがイッセーの顔が分からなくて困ったことが結構あるし。
……ん、これって二人の興味が俺からイッセーに移ってないか?イッセーがジャンヌに文句を言っているがどうでもいい。
ナイス、イッセー!今のうちに逃げよう。
俺は空いている席を指差しながらルフェイに話かける。
「ちょうど、あそこが空いていますよ。誰かに座られる前に早く座りましょう!」
俺はサラダを取るために一旦、机の上に置いていた皿を取って急かすようにルフェイに言う。
ルフェイもすでに準備を終えていたので即座に移動を開始する。
「あ、キーくん!すぐに行くから私達の席も取っておいてね」
どうやら逃げ切れなかったようだ。
役に立たないな、イッセーの野郎。
「ところで、お兄ちゃん。何で燕尾服なの?」
花蓮が席に座ると同時にそう聞いてきた。
何故か混んでいるのにちょうど四人分の席が空いていた。二人分の席しかなかったらルフェイと大人しく食べれてたのに。
こんなことになるぐらいなら大人しくルームサービスにしてれば良かった。
それにしても花蓮は朝からよく食べるな。ステーキとかキツくないか?
「それは霧識さんが今日は私の専属執事だからです」
ルフェイが俺の代わりに返事した。しかも『私の』を妙に強調しながら勝ち誇った感じで。
「お兄ちゃんの執事、羨ましいな。ねぇ、私の執事もしてくれ――」
「駄目です」
花蓮が台詞を言い終わる前にルフェイが食い気味に否定する。
これ、ルフェイの機嫌が悪くなる前に朝食を終わらせて移動した方が良いな。
「……主×執事の禁断の恋か。それもアリだね」
何だろう。ジャンヌから腐っている匂いがする。
お前、文句を言いながらも英雄派に染まっているじゃねぇか。
無言の低評価にイラッときているので評価に必要文字数を設定することにしました。
まぁ、今さらな気もしますが。
かなり前から評価が下がり調子なのでもっと早く設定すれば良かったと後悔しています。
これから低評価をする人は好き嫌いではなく、具体的にどこが駄目だったのかを教えてくれると助かります。
もちろん高評価も感想と同様に貰えるとモチベーションが上がるので待っています。