ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第129話 VS曹操

「じゃあ、いくよ、曹操」

 

ジャンヌが手を振ると同時に聖剣で形作られたドラゴンが曹操に向かって襲いかかる。

曹操はそれをジャンプして避ける。

 

「クソッ。こうなったら禁――」

 

「させるかよ」

 

曹操が禁手になる前に俺が猛スピードで斬りかかる。まだ俺の身体能力は上がったままみたいだ。これならムラマサに精神を吸わせる必要はないな。

 

「速い!」

 

曹操は俺の予想外のスピードに驚きながらも体を捻って避けようとする。

だが完全には避けきれず左腕から血が流れる。

 

『ちょっと何、あの人間!主ほどではないにしてもかなり美味しいんだけど!この味は歴代の中でも四……いや、三番目の美味しさ!』

 

ムラマサが初めて俺と会った時以来のテンションの高さだ。

そんなに曹操の血は美味しいのか。まぁ、曹操は俺が認める数少ない存在のうちの一人だからな。当たり前か。

後、一番目は俺だとして二番目は誰なのだろうか?何となく気になる。

 

『OK。まだまだ斬るつもりだから安心しろ』

 

俺がそう言うとムラマサのテンションが更に上がる。

頭の中でガンガン騒ぐなよ。集中できないじゃないか。

 

「イッセー!曹操の相手は俺とジャンヌでする!だからお前はゲオルクの相手をしていろ!」

 

さすがにここでは性的な相手をしろ、とは言わない。そんなもの俺が見たくないからな。

俺や可愛い女の子に関係なかった場合は間違いなくそう言っていたが。

 

「分かった!」

 

俺の指示を聞いたイッセーがグレートレッドを呼ぶための魔方陣の制御で動けないゲオルクにドラゴンショットを放つ。

これで終わりだ。この状況じゃゲオルクはイッセーの攻撃を避けられないし、避けようとしたら魔方陣の制御が出来なくなるからな。

 

「まだ終わってないぞ!」

 

急に禁手状態の影男が現れてイッセーのドラゴンショットを転移させて攻撃する。

げっ。何であいつがここにいるんだよ!?

イッセーは直接攻撃専門だから相性が悪いぞ。

 

「治療が終わって駆け付けて来たみたいだな。ナイスタイミングだ」

 

俺が不思議に思っていると曹操が疑問に答えてくれた。

そういうことか。こっちからしたらバッドタイミングだよ。

影の鎧を纏っている限り俺がレプリカ神器を使えばすぐに倒せるだろうけどやめておこう。

曹操のことだから対処法も考えているだろうし、何より俺の相手は曹操だからな。

影男の相手はイッセーに任せて、俺はこっちに集中しよう。

 

「曹操、俺が――」

 

影男が何か言おうとしていたが、その前に曹操に斬りかかる。

曹操は俺の攻撃を聖槍で受け止めると刀を観察するようにしながら質問してきた。

 

「この刀が君の切り札か?」

 

「さぁ、どうだろうな?」

 

確実にバレているだろうけど俺は適当に誤魔化す。

言外に能力までは教えるつもりはないと伝えるためだ。

俺みたいな弱者が戦う時はこういう言葉の一つ一つが重要な意味を持つ。格上を倒すためにはまず精神的優位に立たないと駄目だからな。

 

『……何かあの人が私を性的な目で見ていて怖いんだけど』

 

『刀に欲情する変態なんかいるわけないだろ』

 

曹操は単純に未知の存在であるムラマサを警戒して観察しているだけだ。

どこをどう見たら刀に欲情できるんだよ。

……いや、もしかしているのか、刀に欲情する変態。今までに数々の変態に会ってきたからな。

その可能性も否定できない。

 

「いやぁ、キーくんとタッグを組めるとは思っていなかったから嬉しいよ」

 

ジャンヌが攻撃してきたので俺は一旦、下がる。

あんなのに巻き込まれたら俺も大ダメージだからな。

 

その後も曹操に禁手する隙を与えないためにジャンヌと連携攻撃を繰り返す。

初めて組むとは思えない俺とジャンヌのコンビネーションに曹操は中々反撃することが出来ず防戦一方になっている。

 

「禁手にはさせてくれないのか?相手の実力を引き出した上で弱点を見抜いて潰すのが君の戦闘スタイルだろ?」

 

「相手の思い通りにさせないのも俺の戦闘スタイルだよ」

 

大体、俺がその方法で戦うのは相手が格下の時だけだ。そうした方が楽しめるからな。

格上相手にそんなことをする余裕があるわけないだろ。

 

曹操は俺が完全に禁手にさせるつもりがないと分かると防御に徹し始めた。

この野郎、魔方陣が完成するまで時間を稼ぐつもりか。

 

あ、曹操を潰すための面白い作戦を思い付いた。

 

「ジャンヌ!禁手を解除して、俺と曹操の周りに出来るだけ大量の聖剣を突き立てろ!」

 

「え、うん。分かった」

 

ジャンヌは俺の言っている意味が分からないのか不思議そうに首を傾げながらも指示に従ってくれた。

俺は近くにある聖剣の一本を取って構える。

 

『ちょっと何で私がいるのに他の剣を使うのよ?もしかして私だけじゃ満足できなくなったの?』

 

『何で俺が浮気しているみたいな感じで言うんだよ』

 

ムラマサは刀なのに何でこんなに感情豊かなのだろうか。

こいつの製作者がどんな人間だったのか気になる。もしくは俺以前の所有者に問題があったのか?

 

「これでどうするつもりなんだ?ジャンヌの禁手がなくなるなら俺にとっては好都合なんだが」

 

「こうするんだよ!」

 

俺が曹操に向かって聖剣を投げると、それを曹操は聖槍で軽く弾いた。

俺は更に近くの聖剣を投擲をし続けながら曹操に接近してムラマサで斬りかかる。

 

「……何がしたいんだ?」

 

曹操が聖剣を弾きながら距離を取って怪訝な顔をする。

俺が何がしたいのか読めなくて困っている様子だが、すぐに俺の目的を理解するだろう。その時こそ曹操が負ける時だ。

 

「別に。目的なんてないさ。単純にこういう戦い方も面白そうだと思っただけだ」

 

元々、人の武器を奪って戦うのが得意な俺にとってこの戦い方はやりやすいな。

 

「まぁ、嘘だけど。俺は俺の戦い方をするだけだ」

 

曹操が聖剣が邪魔で一瞬、動きが止まった瞬間にS&W M19 コンバット・ マグナムを取り出して発砲する。

これは次元が使っていることで有名な拳銃だ。

 

「その程度で俺を倒せるかよ!」

 

体を無理矢理動かして態勢を崩しながらも曹操が弾丸を避けた。

おー、完璧なタイミングだったのに今のを避けるか。さすが曹操。やるな。

 

「派手な技はフェイクで確実な一撃を狙っていたことぐらい読めていたさ」

 

「ふーん、そりゃ残念。……嘘ってのも嘘だ」

 

「ぐわっ」

 

曹操がどこからともなく飛んできた弾丸を右腕に食らい小さな悲鳴を上げる。

 

「やっぱりこういう相手の意表を突く戦い方は楽しいな」

 

いつもは堂々と真正面から騙すが、今回は相手の裏をかくやり方だ。

 

「はい、ここで問題です。今の弾丸はどこから飛んできたでしょうか?シンキングタイムは十秒です。1、2……」

 

「何がシンキングタイムだ!その前にぐっ……」

 

曹操が攻撃しようとしたが、その瞬間に認識できない弾丸を左足に食らって動きを止める。

認識できないようにしたのは曹操に答えを教えないようにするためだ。

 

「……8、9、10。タイムアップ。では答え発表の時間です」

 

俺は拳銃をそこら辺に突き刺さっている聖剣に向ける。より正確に言うなら聖剣の影に。

そして発砲する。

 

「っ!?」

 

曹操が今度は真横から襲ってくる弾丸を避けた。

俺が影に拳銃を向けた時点で答えを把握して咄嗟に対応したのだろう。驚異的な頭の回転の速さだ。

 

「……まさか『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』か」

 

「正解だ、曹操。あそこで赤龍帝と戦っている影野郎のレプリカ神器だ。まぁ、制限時間が過ぎているからポイントは入らないけど」

 

すでに俺がレプリカ神器を持っているという報告を受けていたからすぐに答えが分かったのだろう。

にしても、この影の神器は本当に便利だな。応用も利くし。

レイナーレがアーシアにした方法で俺も神器を奪おうかな。今なら禁手能力もついてきてお得だ。

 

「さて、どうする、曹操。さっきは避けれたけど、次も上手くいくかな。何たって、ここには無数の聖剣がある。どの影から弾丸が出てくるかを予想するのは――」

 

「伸びろ!」

 

俺が喋っている途中で曹操が聖槍を伸ばして攻撃してきた。

うん、良い判断だ。どんなに強力な攻撃方法を持っていても攻撃できなかったら無駄だからな。

 

「でも、俺を相手にしている時に冷静さを失ったら駄目でしょ」

 

俺は聖槍を避けると同時に突撃して曹操の懐に入る。

 

「そんな攻撃をこんな至近距離でしたらカウンターの餌食だ」

 

「くっ」

 

曹操がすぐに聖槍を元の長さに戻して防御しようとするが遅い。

俺はそのまま曹操の左腕を斬り落とす。

 

「これで俺の勝ちだな」

 

やっと曹操に借りを返せたおかげで気分がいい。今日は美味しい酒が飲めそうだ。

曹操が斬られた腕を押さえて苦しそうな表情をしながら俺を睨んでくる。

その苦しみは俺も分かるぞ。俺も斬り落とされたからな。

 

「それにしてもやっぱり曹操も若いな。あの程度で冷静さを失うなんて」

 

「……お前の方が年下だけどな」

 

「細かいことを気にするなよ。精神年齢は俺の方が上だ」

 

あれ?何か曹操とジャンヌから疑いの視線を向けられているんだが。

何だ、その目は。八坂の誘惑に負けた曹操よりも確実に俺の方が精神年齢が上だろ。

 

……と、そんなことよりイッセーの方はどうなっているかな。

見てみると大火力の炎を口から出して影男に攻撃していた。

ああ、なるほど。熱さか。俺の魔法の火力じゃ無理な方法だな。

そして影男は禁手が解除されて全身に火傷を負って倒れた。

 

「これでこのゲーム、俺の勝ちだな」

 

「……いや、俺達の勝ちだ」

 

いきなり曹操がそう呟いた。

何だ、負け惜しみか?そう思った瞬間、バジッ!バチッ!と空間を振るわす音が聞こえた。

音が出た場所を見てみると空間に穴が生まれつつあった。

マジか。もうグレートレッドが来るのかよ。予想よりも速いな。まぁ、この展開の準備もしていたけど。

……ん?ああ、これはそうか。そういうことか。

 

「残念だったな、曹操」

 

俺が皮肉げに言うと曹操も気付いたみたいだ。

そう、空間の裂け目から登場するのはグレートレッドじゃない。

出てきたのは十数メートルほどの体が細長い東洋タイプのドラゴンだ。そして、その背中には小さな人影の姿がある。

 

玉龍(ウーロン)に初代孫悟空か!」

 

曹操が驚いた声を出す。

う~ん、それにしてもミスったな。プランを考えたのが孫悟空が来るのを知る前だから仕方ないけど、これじゃ五大龍王と初代孫悟空の力が見れない。

 

孫悟空が地上に降りてきて周りを見渡して曹操がやられているのに気付くと微妙な顔をして玉龍(ウーロン)は大声で不満を漏らす。

 

『おい、クソジジイ!もうほとんど終わっているみたいだぞ!どうするんだよ!?』

 

「ワシに言われてものぉ……」

 

初代が困ったように頬をかく。

いや、確かに英雄派のメンバーは全滅しているけど、まだ八坂が残っているぞ。

て言うか、初代って小さいんだな。幼稚園児ぐらいの身長しかない。顔は老けているけど。

 

その後、曹操達は八坂を解放すると隙を見付けて逃亡。何故かジャンヌは曹操達とは行かずにこっちに残ったが。

俺としては面倒事の予感しかしないから戻ってほしかったんだが。

そして体力の限界だったのと、ルフェイとイリナの様子が気になるので残りは初代孫悟空に任せて俺も戻ることにした。




イッセーのトリアイナの出番がなかったです。
一応、物凄く最低な言い訳とかも考えていたんですけど。

では感想待ってます。

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