ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

121 / 168
第120話 休憩

昼間にぶっ倒れた後、俺はすぐにホテルに戻り部屋でルフェイと一緒に休養することにした。もちろん体力的な都合でイチャイチャはなし。

花蓮に関してはレヴィアたんの方に任せている。花蓮の方は大したことがなく、すぐに回復するらしい。

アーシアの神器じゃあ傷は治すことは出来ても体力を回復させることは出来ない。それに俺が持ってきていたフェニックスの涙は一つだけ。

おかげで今日の午後の予定が台無しだ。せっかくのルフェイとの京都デートだったのに。しかも九重もいたのに。

ハァー、本当に残念だ。

 

夕食は部屋でルームサービスを頼んでルフェイに食べさせてもらった。クラスの連中とバイキングを食べるのは体力的に辛いからな。

そして今はベッドの上に寝転がってルフェイにマッサージをしてもらっている。

 

「気持ちいいですか?」

 

「ああ、最高に気持ちいい…」

 

ルフェイの看病のおかげで予想よりも回復が早い。

走ったりと激しい運動は難しいが歩く程度なら問題ない。

 

「それは良かったです。でも、何でいきなり倒れたんですか?戦闘の怪我が原因には見えませんでしたし。心配したんですよ」

 

「ああ、それか。予想ぐらいは出来ているけど、検証していないから確証はないな」

 

というか検証する気なんてない。そんなことをしていたら俺が毎回ぶっ倒れるからな。そんなのはゴメンだ。

 

「多分、俺の禁手に欠点があったんだ」

 

「欠点ですか?それって使用できる時間が短いってヤツですよね?」

 

「そうだ。制限時間の三十分を越えると強制的に解除されて俺がぶっ倒れる」

 

まぁ、三十分使用しなくてもかなり疲れるけどな。二十五分も使えば戦闘するのは難しくなる。

ちなみに制限時間を越えなかった場合、禁手を使っている間は大丈夫だけど解除すると一気に疲れがくる。

 

「でも霧識さんが禁手を使用していた時間は三十分もないですよ。確か十分以上は残っていたはずです」

 

「確かにそうだ。でも、他にも欠点はある。それは無茶な使用をして脳に負担をかけると制限時間が短くなるってことだ。多分、今回は俺が左腕を切断されて動揺して脳波が乱れたせいで一気に制限時間がなくなったんだ。で、俺が解除すると同時に限界が来て倒れた」

 

恐らくコカビエルの登場前に能力が発動しなかったのもコレが原因だ。

正常な認識能力がない相手には効果が発動しない。それは相手だけじゃなくて俺も同じだったってわけだ。

俺が動揺して精神が乱れたから能力が発動できなかった。

 

「それってかなり使いづらくないですか?動揺したら制限時間がなくなるなんて」

 

「そうだな。俺だからこの程度で済んだけど、普通の奴なら腕を切断された段階で能力が強制的に解除されて気絶していたかもな」

 

と言うか、動揺のレベルによっては制限時間を越える負担が脳にかかる可能性もある。その場合、最悪死ぬことも有り得るかもな。

まぁ、ルフェイに言うつもりはないが。こんな根拠もない憶測でルフェイを心配させたくない。

 

にしても本当に使いづらい。防御能力がないくせに攻撃されたら終わりとか。て言うか、正確には攻撃能力もないけど。全部、ただの誤認だし。こんな能力、ハッタリぐらいにしか使えねぇよ。

 

「……霧識さん、今後は本当にピンチな時以外は禁手を使わないでくださいね。また倒れられたら嫌です」

 

ルフェイがマッサージをやめると、背中に抱き付いてきて懇願するような口調で言ってきた。

頭を撫でてやりたいけど、この態勢じゃ無理だな。

とりあえず俺はルフェイを安心させるために優しい声音で答える。

 

「元々、俺は禁手をたまにしか使ってないから気にしなくても大丈夫だ。それに俺はどうしようもない臆病者だからな。よっぽどのことがない限り危険なことはしない」

 

「…………」

 

ん?ルフェイからの反応がないな。どうしたんだ?

ルフェイの表情が見えないから何を考えているのかが分からない。

 

「ひゃっ!」

 

いきなり首筋をペロッと舐められて、思わず変な声を出してしまった。かなりくすぐったい。

 

「……え~と、いきなり何を?」

 

「スミマセン。汗の匂いを嗅いでいると興奮してしまって、つい」

 

いや、別に舐めるくらいなら良いけど。いつも舐められているし。て言うか、俺も舐めている。

でも、今の状態でやられると困るな。途中でルフェイがやる気になってもヤる体力が残っていない。今、ヤると間違いなく途中でまた倒れる。ルフェイ、かなり激しいし。

 

「今は私の性欲よりも霧識さんの体調を回復させる方が優先ですよね!飲み物でも買って来ましょうか?」

 

「いや、必要ない。今は喉が渇いていないからな。それよりも膝枕しながら頭を撫でてくれると助かる」

 

準備と考えることは終わった。もう後は何も考えずルフェイに甘えて癒されたい気分だ。

 

「そんな簡単なことで良いんですか?もっと凄いことでも霧識さんのためならしますよ?」

 

「そういう気分なんだ」

 

て言うか、もっと凄いことって何をする気だよ。

 

「分かりました。では、来てください」

 

ルフェイは俺の上から退いて正座すると、自分の膝を叩きながらそう言った。

俺はすぐに頭を移動させてルフェイの膝の上に乗せる。

ああ、気持ちいい。癒される。思わず頭を動かしてルフェイの膝をくすぐってしまう。

 

「ちょ、いきなり何するんでか?くすぐったいですよ」

 

「さっき舐められたからな。その仕返しだよ。ほれほれ~」

 

更に強く頭を動かしてみる。

 

「そんなに頭を動かされたら撫でられませんよ」

 

う~ん、それもそうだな。

俺が大人しくすると、ルフェイは俺の頭を優しく撫でる。肉体的疲労はともかく精神的疲労が一気に回復する。

 

「霧識さんがウットリとした表情をするのは珍しいですね。そんなに気持ちいいですか?」

 

「当たり前のことを聞くなよ。ルフェイに撫でられているんだ。気持ちいいに決まっている」

 

「それは良かったです。それにしても今日の霧識さんは甘えん坊ですね。……もしかして負けてショックを受けているんですか?」

 

ルフェイの声が急に低くなって心配するように聞いてきた。

俺が負けてショックを受けるような性格じゃないと知っていても、腕を切断された上にぶっ倒れたらさすがに心配するか。

 

「いや、別に。今日は疲れていてルフェイを甘えさせてやることが出来ないからな。代わりに俺が甘えてるんだよ。たまにはこういうのも良いだろ?」

 

「今日ほどじゃないにしても、よく甘えていますよ?」

 

「まぁ……そうだな。好きな人に甘えるのは気持ちいいんだよ」

 

比率にしたら7:3ぐらいで甘えている。もちろん俺が3だ。

こうして考えてみると思ったよりも甘えているな。

 

「そうですね。でも、せっかく甘えられるなら年上よりも年下の霧識さんに甘えられたいです。甘えられるのも良いですけど、やっぱり年上の霧識さんには甘えたいですから」

 

「そりゃ無理だろ。若返りの魔法があるわけじゃないし」

 

「ありますよ」

 

え、本当にあるの?俺は聞いたことがないけど。

 

「それ、良いですね。帰ったら早速試してみましょう」

 

ルフェイの目がキラキラしている。どうやら変なスイッチが入ったみたいだ。

何故だろう。妙に不安になるのは。

 

「ああ、そう言えばもう一つ聞きたいことがあるんですよ」

 

ルフェイが俺のショタ化についての思考をやめると急にそんなことを言ってきた。

 

「ん?何だ?」

 

「さっき一回だけ部屋を出ていきましたよね?どこに行っていたんですか?」

 

「それか。当然、準備だ。イッセーとアーシアを合体させるための」

 

今日は修学旅行最後の夜、これを逃したら次のチャンスはいつ来ることか。それにこの後はまた英雄派との戦闘がある。

絶対に今のタイミングを逃すことは出来ない。

 

「……疲れていてもそれはするんですね」

 

ルフェイが呆れたように溜め息を吐く。

 

「で、今回は何をしたんですか?」

 

「ああ、それはだな――」

 

俺が説明を開始しようとした瞬間に扉がドンッと勢いよく開けられた。

そして次にバタッと何かが倒れる音がした。

気持ちいいところだったのに誰だよ。

 

「……た、助けてくれ。酔っ払いのアラサー、怖い」

 

「…………」

 

部屋の入口に視線を向けると、そこには必死に助けを求めるパンツ一枚の匙の姿があった。その後ろには他の生徒会メンバーもいる。

 

「ど、どうしたんだ、匙」

 

「さっき元士郎が酔っ払ったロスヴァイセ先生に襲われてね。色々と大変だったんだよ」

 

明らかに疲労困憊といった様子の匙の代わりに由良が説明してくれた。

て言うか、何で俺の部屋に逃げて来たんだ?

 

「……え~と、もしかして作戦ってコレですか?」

 

「……微妙に違うな。さすがの俺もここまで惨いことはしない」

 

俺の作戦ではロスヴァイセを酔っ払わせてアザゼルに押し付ける予定だったんだが。

何がどう狂って、こうなったのだろう?さすがに匙には同情してしまう。

……あれ?じゃあ、匙が言った酔っ払いのアラサーってロスヴァイセのことだよな。まだロスヴァイセはアラサーじゃないぞ。

 

「さすがスウィートルーム、豪華だね」

 

巡は興味深そうに部屋を見渡している。

少しぐらい匙のことを心配してやれよ。

 

「で、具体的に何があったんだ?」

 

「それなら映像に収めてあるよ」

 

気付いたら草下が近くに立っていてデジカメを差し出してきた。草下は真面目そうに見えて意外と性的なことに興味津々だ。

生徒会の中では一番俺と性格が近い。

俺はルフェイの膝から体を上げるとデジカメを受け取って映像を見る。ルフェイは隣でわざわざ体を押し付けるようにしながら俺の肩の上から映像を見る。

 

「うわぁ、これは酷いな……」

 

匙が下着姿のロスヴァイセに無理矢理服を脱がされている。

ロスヴァイセ、さすがに生徒に手は出すのは駄目だろ。

 

「……これ、誰も助けなかったのか?」

 

「……花戒は何故か顔を真っ赤にしながら俺の股間を凝視していて、草下はずっと撮影していた。他の二人も助けてくれなかった。ガク」

 

それだけ言うと匙は気を失った。疲れていたのだろう。

ただ映像を見る限り童貞を奪われる前にギリギリ逃げている。そして匙を追いかけようとした直後にロスヴァイセが気絶した。

飲ませ過ぎたかな?

 

「う~ん、途中まで面白かっただけに最後が残念だな」

 

「本当よね。何か生徒と教師の禁断の愛を描いてAV撮影している気分だったのにガッカリよ」

 

草下が顔に手を当てて上品な仕草で言うが内容は最低だ。

まぁ、人のことは言えないが。

 

「ところで匙に早く服を着せろよ。半裸の男なんて見るに堪えない」

 

「じゃあ、私が服を持っているので着替えさてくる」

 

そう言うと花戒は匙を脱衣所まで引っ張っていく。

何で匙の服を持っているんだ?と言うか、変なことしないよな?

いや、別にヤってもいいけど。

 

「アハハハ!」

 

急に陽気な笑い声が聞こえたので見てみると巡が顔を真っ赤にして冷蔵庫を開けてジュースを飲んでいた。

勝手に冷蔵庫を開けるなよ。

って、問題はそこじゃない!

 

「おい、巡!それ、未成年が飲んだら駄目な大人のジュースだぞ!」

 

アザゼルが見舞いに来た時に持ってきたものだ。

生徒の見舞いに大人のジュースはどうかと思うが俺だから問題はないだろう。

 

「えー、そうなの?でも七瀬くん達も未成年じゃない?何でこんなものがあるの?」

 

どうやら酔ってはいるが会話は通じるから悪酔いはしていないみたいだ。

ただ勢いで二本目も飲み始めようとしているから、どうなるか分からない。早く止めないと。

 

ハァー。今は疲れているからのんびりしたいのに、急に面倒臭くなったな。

これも全部ロスヴァイセのせいだ。




今回は特に書くことはありません。

では感想待ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。