ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第117話 イライラ

先手必勝。奴等に駆け引きは通用しない。だって話を聞かないのだから。

俺は現段階で出来る最大火力の魔法の攻撃をする。倒すまでは無理でも、これで少しぐらいは傷を負ってほしい。

 

「人の話は聞けって教えなかったか、霧識」

 

父親が母親の前に立つ。すると俺の魔法の軌道が自らずれていく。

ちっ。確か『忍法運命崩し』だったか?相変わらず無茶苦茶な技だな。

 

「だから教えてもらってねぇ!て言うか、その前に育ててもらってすらない!」

 

……何か前にもこのツッコミをしたような気がする。

 

「そう言えばそうだったな。よく考えたら、今の今まで顔を忘れていたし」

 

またか!どんだけ俺に興味がないんだよ!?

お前は妹以外の顔が覚えれない病気なのか!?

 

「安心していいよ、霧識ちゃん。ママはちゃんと覚えていたから」

 

俺の母親が地面に降りながらそう言った。

意外だな。父親の反応からして母親も忘れていると思っていたが。いや、さっき俺の名前を呼んでいたっけ?

 

「昨日、花蓮ちゃんに霧識ちゃんの女装写真を見せてもらってね。いやぁ、可愛かったよ。前にお兄ちゃんに女装させた時は似合わなかったんだけどね」

 

そんな理由で俺の顔を覚えていたのかよ。物凄く不本意な理由だ。

って、そんなことはどうでもいい。問題は花蓮だ。

 

「……おい、何であいつらに俺の女装写真を見せているんだ?」

 

自然と声が低くなる。

返答次第によってはお仕置きだな。

 

「お兄ちゃんの女装写真が似合っていたからママにも見せようと思っただけだよ。お兄ちゃん、本当に可愛いからママも大絶賛してたよ」

 

全く嬉しくない。後、お仕置き確定だ。

いつもの喜ぶようなお仕置きじゃなくて、本当のお仕置きを見せてやる。

 

「……なるほど、女装ですか。前に七瀬さんは男の娘なら抱けると言っていましたね。そう言えば都合よく英雄派に七瀬さんのことが気に入っていて女装が似合いそうな人がいたような……」

 

アンがぶつぶつと何か不気味なことを企んでいる。

誰だよ、そいつ。俺は知らないぞ。

て言うか、男の娘と女装野郎は違う。どんな奴かは知らないが抱くつもりはない。

 

「お義母さん、お義父さん、お久し振りです」

 

ルフェイが丁寧に俺の両親に挨拶していた。

……この状況でしなくていいだろ。相変わらずマイペースだな。

 

「おい、ルフェイ。そんな奴等に挨拶しなくていいぞ」

 

「え?でも、やっぱりご両親への挨拶はした方が良いですよね?」

 

「そりゃ一般の家庭はな」

 

大体、そんなことを言い出したら俺はルフェイの両親に挨拶していないどころかお義兄さんにすら内緒にしている状況だぞ。

まぁ、そのうち言わないと駄目だろうが。そろそろ隠すのも難しくなってきたし。

 

「何を言っているの、霧識ちゃん。私達は普通の家族でしょ?」

 

「どこがだ!?俺はお前らと一回も一緒に住んだことがないんだぞ!?これを普通と言うなら病院に行くことをオススメする!どう考えても頭がおかしい!」

 

ハァハァ……。さっきの影男の禁手の能力検証よりも疲れる。主に精神的な意味で。

ここはツッコミを増やさないと。

俺は地面に倒れて気絶しているフリードの胸元を掴みながらビンタする。

 

「起きろ、フリード!ツッコミ要員が足りてないんだ!」

 

クソ。中々起きないな。

俺が苦労していると、アンがまたもやツッコミ待ちの訳の分からない……というより分かりたくないアドバイスをしてきた。

 

「駄目ですよ、七瀬さん。それでは刺激が足りません。フリードさんのケツの穴に七瀬さんのアレをぶち込むぐらいしないと起きません」

 

「外でそんなことするわけないだろ!」

 

「じゃあ、建物の中だったするんですね。分かりました。だったら、そこの民家に入りましょう。安心してください。この空間には私達以外、誰もいませんから」

 

「そういう意味じゃねぇよ!」

 

ああ、もう面倒臭い!こんなにイライラするのは初めてだ!

 

「イテテ。……ああ、何だ一体こうおっっっっっ!」

 

手に持っていたフリードを思わずアンに向かって投げると絶叫する声が聞こえた。何だ、今、目が覚めたのか。

 

「酷いですね。フリードさんは投げるものじゃなくて突くものなのに」

 

アンが近くの自販機の上に転移してフリードを避けると責めるような口調で言ってきた。

それも間違っているぞ。フリードはパシリだ。

 

「ぐおっ!」

 

フリードが壁に勢いよくぶつかって、また気絶した。まぁ、どうでもいいか。

 

「て言うか、アン。そろそろ影男を治療しないと出血で死ぬぞ」

 

「え~、面倒臭いです。七瀬さんで治療できませんか?」

 

「応急措置程度なら出来るけどな。でも、そんなことするよりもアンが英雄派の拠点まで運んで本格的に治療した方が早いし確実だ」

 

影男にはまだ死なれては困る。禁手の詳しいデータを取って、後でユーグリットにレプリカ神器を作ってもらわないといけないからな。

今度はどれだけぼったくられるかな。一応、グリゴリでギャンブルして金を巻き上げとくか。

 

「はぁ……、仕方ないですね。ここまでの妄想のネタを潰すのは惜しいですし」

 

それだけ言うとアンは影男とともに姿を消した。

その言い方だと影男が妄想のネタじゃなかったら見殺しにしていたみたいに聞こえるぞ。まぁ、アンの性格からして見殺しにしていただろうが。

俺も影男が禁手に至っていなかったら殺していた可能性が高いし。

 

「ねぇ、ルフェイちゃん。霧識ちゃんなんて放っておいて私と良いことしない?」

 

アンの相手をしている間に母親がルフェイに古典的なナンパをしていた。

 

「俺の彼女に何してやがんだ、クソババァ!」

 

俺は怒鳴りながら光の剣を二刀構えて全速力で母親に突撃する。

 

「俺の可愛い妹にババァはないだろ。……殺すぞ」

 

父親が殺気を放ちながら俺の斬撃を二刀の剣で防ぐ。並の相手なら当てられただけで戦闘の意思をなくしてしまうほどの物凄い殺気だ。

ルフェイが顔を赤らめながら体をモジモジさせている。可愛いが愛でるのは後にしよう。

俺は一旦、下がって態勢を立て直す。

て言うか、二刀の剣はどこから出した?さっきまでは持ってなかったはずだが。

よく見たら父親が持っている剣は二刀ともアロンダイトだ。前に一回見ただけだから自信はないが恐らくそうだろう。

どういうことだ?

 

「そんな驚いた顔をするなよ、クソ息子。ただの投影魔術だ」

 

「……投影って、どこの正義の味方だよ」

 

そういや、俺の父親って忍者であると同時に魔法使いでもあるんだったな。

遠距離封じに近距離で戦う方法もあるのか。他にもどんな手を隠しているか分からない。

まだ確認していないけど神器も持っているはずだ。本当に厄介な奴だな。

 

「正義の味方か……。まぁ、確かに俺は正義の味方と言えなくもない」

 

父親は殺気を静めると哲学を語るかのような口調で言った。

 

「……は?どこが?」

 

思わず素でツッコんでしまった。何を言ってんだ、こいつは。

 

「この世の正義とは何か?……それは妹だ。つまり妹の味方である俺は正義の味方と言える」

 

「…………」

 

マジで何を言ってんだ?全く言っている意味が理解できない。

何だ、その理屈は。それを理解できるのは世界でお前一人だけだ。

 

「その顔は何だ?もしかしてお前は俺の息子なのに今の話が理解できないのか?」

 

父親が本当に理解できないと言った表情で言う。

もしかしたら、こいつは俺の父親じゃないのかもしれない。て言うか、そっちの方が嬉しい。

 

「出来るわけないだろ。確かに妹が可愛いのは認める。妹のためなら世界を敵に回してもいい」

 

今度は花蓮が顔を赤らめながら体をモジモジさせる。可愛いけど、後でお仕置きはする。

 

「でも、だからと言ってイコールで正義の味方になるわけないだろ」

 

「ふむ。霧識はまだ俺の域まで来ていないようだな。だったら妹=世界と言えば理解できるか?」

 

「出来ねぇよ」

 

むしろ難解になってるぞ。何でそれなら分かると思ったのか謎だ。

 

「て言うか、何でお前らがここにいるんだ?」

 

やっと本題に入れた。ここまで長かった。

 

「そりゃ私達が英雄派だからでしょ?」

 

母親が何を当たり前のことを言っているんだ、と言った感じで言ってきた。

いや、知らないぞ。今、初めて知った。

 

「え、お前達、英雄派に入ったの?いつ?」

 

「少し前かな。ジーくんに誘われてね」

 

ああ、そういやリアス・グレモリーとディオドラのレーティングゲームの前に曹操とジャンヌを家に呼んだ時、ジークのことを聞いたら変なことを言っていたな。それに焼肉に言った時もジークの様子がおかしかった。

それはこれが原因だったか。そりゃ、こいつらの相手をしたらジークも疲れるよな。とりあえず心の中でジークに合掌。

焼肉と言えばヘラクレスが怪我で来てなかったけど、それも俺の両親が原因だろうか?

 

「私達も教会を裏切るのは心苦しかったんだけどね。でも、可愛い後輩に頼まれたら仕方ないじゃない?それに最近、和平のせいで悪魔を斬れなくて退屈していたし」

 

どう考えても最初のは建前で後半が本音だな。

にしても思ったよりも普通の理由だな。現在、教会内では和平のせいで仕事がなくなったってことで揉めているし。

それに元より何で教会に属していたか分からないような奴等だ。裏切ってもそれほど不思議じゃないか。

 

「まぁ、テロリストのせいにして裏では斬ってたんだけどね」

 

「……最低だ、こいつら」

 

つい心の声が漏れてしまった。テロリストよりも質が悪い。

 

「まぁ、いいか。それよりもお前らは今回の俺の対戦相手ってことでいいんだろ?戦うのか?」

 

「う~ん、それもいいかもね。私達が頼まれたのは京都の外に待機している連中の相手なんだけど、たまには子供達と遊びたいし」

 

京都の外の連中の相手が仕事なら本当に何でこんなにところにいるんだよ。意味が分からない。

 

「俺もその意見には賛成だ。俺の可愛い妹をクソババァ呼ばわりしたクソガキに躾をしないといけないからな」

 

「あぁ?やってみろよ」

 

本当は関わりたくないんだが、イライラしすぎて斬らないと気が済まない。

今回は影男の時みたいに検証なんてしない。全力で倒す。

 

「あ、そうだ。霧識ちゃん、一つ聞いていい?」

 

戦闘モードに入ったところで母親が邪魔してきた。

何だ、こんな時に。リズムが狂うな。

 

「……何だ?」

 

「ルフェイちゃんと付き合っているらしいけど、いつからなの?確か前に家に行った時は付き合ってなかったよね?」

 

今聞くことか、それが。

まぁ、変に誤魔化しても面倒臭いだけだし普通に答えるか。

 

「……夏休みからだ」

 

「なるほど。ひと夏のアバンチュール的なことがあったのかな?」

 

言い方が古い。

後、夏は関係ないな。単純に邪魔が入らないところで二人っきりになったことが原因だ。

 

「ほぉ、お前は妹がありながら別の女と付き合っているのか。許しがたい。これは俺が父親としてちゃんと常識を教育しないといけないな」

 

「ちゃんと花蓮も愛しているぞ。妹としてだが。そしてお前には常識が全くない。俺の方こそお前に世間一般の常識というものを教育してやる」

 

まぁ、無駄だとは思うが。それでも一応やっておこう。

こんな父親は恥ずかしいからな。

 

「じゃあ、私は花蓮ちゃんの相手ね。少しは私を楽しませてね」

 

「私だって強くなったんだから。今日こそはママに勝ってみせる」

 

何だろう。こっちは俺達に比べてまだ平和なはずなのに嫌な予感しかしない。




両親が暴走し過ぎて戦闘までいけなかった。一応、話を削ったりはしたんですけどね。
次回は大丈夫かな。戦闘シーンもまだアイデアがまとまっていないし色々な意味で心配だ。

ちなみに両親は元々英雄派の所属の予定でした。ただ、それだと出番が遅くなるのと花蓮よりも先に出したいという理由で教会の戦士という形で最初は登場しました。

では感想待ってます。

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