ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第112話 料亭

俺は今、街の一角にある料亭『大楽』の個室でレヴィアたんにつがれて酒を飲んでいる。

今日は妖怪達と協力態勢を得るために来たらしい。まぁ、八坂が拉致られたことで、それどころじゃないが。

ちなみにレヴィアたんの格好は着物で非常に似合っている。

 

イリナが帰ってからテレビを見ていると五分後ぐらいに連絡がきた。最初は断ろうと思ったが、今日俺達が九重達に襲われた(むしろ襲ったような気がするが気にしない)話が聞きたいと言うのでやって来た。

 

「他のメンバーは来てないのか?」

 

「そっちはアザゼルちゃんに頼んでいるから、そろそろ来ると思うよ」

 

レヴィアたんが料理を食べながら言う。まだ二人しか集まっていないのに先に食べていて良いのだろうか?

まぁ、俺も食べているけど。夕食を取ったばかりだから酒のつまみに少しだけだが。

 

「どう?お美味しい?」

 

「ああ、美味しい。夕飯を食べてなかったら、もっと色々と食べたんだけどな。それが残念だ」

 

「じゃあ、また一緒に来ない?今回みたいにお酒をついであげるよ」

 

レヴィアたんが笑顔でそう言った。

それも良いかもな。いつも酒を飲む時はグリゴリの男連中と一緒か、一人かだからな。家のメンバーは未成年ばかりだから誘えない。

たまには可愛い女性と酒を飲むのも華があって良い。

前にロスヴァイセと少し飲んだことがあるけど、酒癖が悪くて面倒臭かったので数には入れない。

 

「失礼しま……って七瀬!何で酒を飲んでんだよ!?」

 

戸を開けて匙が入ってきたと思うと、俺を見るなりツッコんできた。

後ろには他の生徒会メンバーもいる。

 

「せっかく料亭に来たんだ。酒ぐらい飲むだろ。美味いぞ」

 

「いや、お前未成年だろ!?」

 

細かいことを気にする奴だな。未成年の飲酒ぐらい普通にあるだろ。

 

「ああ、そう言えば霧識ちゃんって、まだ未成年だったんだね。今、何歳なの?」

 

今、思い出したように言うレヴィアたん。俺は修学旅行で京都に来ているのに未成年だってことを忘れていたのかよ。

俺はそんなに大人っぽいのだろうか?

…… 間違いなく小猫がいたらツッコまれていたな。

 

「十六歳だ」

 

「へぇー。じゃあ、誕生日はまだなんだね。いつなの?豪華に祝ってあげるよ」

 

豪華に祝ってもらう必要はないな。そういうのは得意じゃないし。

 

「十二月二十五日。クリスマスの日だな」

 

「七瀬がキリストと同じ日に生まれたのかよ。皮肉な話だな」

 

席に座った匙が性格の悪そうな表情で言う。どういう意味だよ。

次にさりげなく匙の隣に座った花戒が話かけてきた。

 

「それってクリスマスと誕生日を一緒にされて大変そうだね」

 

「そんなことはない。俺には今まで誕生日を祝ってくれるような家族がいなかったからな」

 

去年、グリゴリで俺の誕生日兼クリスマス(堕天使がクリスマスを祝っていいのか、とツッコんだが特に問題ないらしい)をやったのが初めてだ。

……いや、幼稚園のころにイリナとその両親にも祝ってもらった記憶があるな。

 

「え~と、ごめん」

 

俺の発言に気を使ったのか花戒が申し訳なさそうに謝る。

 

「別に気にしなくて良い。今は可愛い彼女や妹がいるからな」

 

よく考えたらアザゼルに拉致られてグリゴリに入って、まだ一年ちょっとしか経ってないのか。

今の生活に馴染み過ぎていたから忘れていた。まぁ、好き勝手に遊んでいるという点では昔から変わらないが。

匙が俺のことを歯軋りしながら恨ましそうに見ているが、どうでもいい。所詮モテない男の嫉妬だ。

……いや、モテないこともなかったか。早く会長は諦めて花戒か仁村と付き合えば良いのに。

アーシアの夜這いが成功したら、次はこっちを弄ろう……じゃなくて応援しようかな。

杯に酒がなくなると、レヴィアたんがすぐに酒をついでくれた。

 

「流れが自然すぎて気付くのが一瞬遅れたけど、レヴィアタン様に酒をつがせてんのかよ!?魔王様に何てことをしてんだよ!?」

 

「うるさいぞ、匙。酒が不味くなる」

 

匙も他の奴等を見習えよ。花戒達は静かに出された料理を食べているぞ。

 

「よぉ、遅れてすまないな」

 

適当な謝罪をしながらアザゼルが個室に入ってきて席に座る。後ろにはグレモリー眷属にルフェイとイリナもいる。

 

「何か外までツッコミが聞こえたけど、どうしたんだ、匙」

 

「兵藤か。七瀬がレヴィアタン様に酒をつがせていたんだ」

 

こんな感じでイッセーと匙の会話が始まって、何故か途中から話が俺に対する文句に変わった。

お前ら、俺に不満がありすぎるだろ。いや、気持ちは分かるけど。

 

「霧識さん、先に来ていたんですね」

 

ルフェイが自然な流れで俺の隣に座ってくる。さすがに今回は膝の上に乗せたりしない。

 

「ああ、久し振りに酒が飲めるって聞いたからな。それよりゼノヴィアの用事って何だったんだ?」

 

「……それですか。実は『一日だけで良いから霧識さんを貸してくれ』って言われてたんです。私はすぐに断ったんですけど、しつこくて疲れました」

 

本当にゼノヴィアがしつこかったのかルフェイが溜め息を吐いた。

これ以上、ルフェイが困るならゼノヴィアの方も対処しないとな。……どうすればいいかは分からないが。とりあえず子作りに関する本でも渡しておこう。

 

「じゃあ、私に――」

 

「駄目です」

 

レヴィアたんが最後まで台詞を言い終わる前に、ルフェイが断った。

せめて最後まで言わせてやれよ。まぁ、何が言いたかったかは分かるけど。

 

「おい、イチャイチャするのは後にして今は事情の説明をしてくれ。俺は修学旅行の学生の面倒見るので忙しいんだよ」

 

アザゼルが酒を飲みながら不機嫌そうに言った。

嘘を言うなよ。仕事をサボって舞妓と遊んでいたのは知っているぞ。

 

「説明って何を説明をするんだ?イッセー達に全部話しただろ?」

 

「その話は聞いた。でもお前、八坂の状態は大人の事情って言って誤魔化したんだろ?それに英雄派のメンバーの能力も聞きたい」

 

英雄派のメンバーの能力は説明したくないな。向こうはこっちの情報を知っているとはいえ、それは英雄派が自分達で調べた情報。俺が一方的にあいつらの情報をバラすのは不公平だ。やっぱりゲームはフェアじゃないと。

 

「英雄派の能力についてはほとんど知らないから教えられない」

 

「英雄派に女がいるんだろ?そいつから聞けないのか?」

 

ゼノヴィアの野郎、余計なことを吹き込みやがって。それは違うと言っただろうが。

 

「ただの取引相手だよ。俺が報酬を渡す代わりに情報をもらっているだけだ」

 

「……報酬?まさか三大勢力の情報を売ってないだろうな?お前ならやりかねない」

 

アザゼルが疑うような視線を向けてくる。

まぁ、たまに売ったりもしてるな。本当にたまにだけど。

 

「報酬は可愛いショタの写真だ。そいつ、ショタコンだからな」

 

この発言で生徒会メンバーが何ともいえない雰囲気になる。グレモリー眷属は俺で慣れているのか気にしていない。

 

「……仮にもそいつ、テロリストだろ。そんな下らないことで情報を売っていいのかよ」

 

匙が呆れた表情で言った。

こいつは今、言ってはいけないことを言った。その間違った認識は改めさせないといけないな。

 

「何を言う、匙。可愛いは正義だ。それを下らないとは。お前の存在の方が遥かに下らない。そんなんだから会長との仲が進展しないんだよ」

 

「うるせぇよ!それが何の関係があるんだよ!?」

 

そうか。匙にはそんな簡単なことも分からないのか。これはもう無理だな。

 

「会長はクールに見えて意外と可愛いヌイグルミとか好きだからな。もし、その趣味を知らなくて『会長にはそういうのは似合わないですね』とか言ったら傷付くぞ」

 

「……あれ、そういや前に会長の鞄についていたストラップを見て同じようなことを言った気が。その時、会長が微妙な顔をしたのはそういうことだったのか」

 

匙がブツブツと考え事を始めた。もう言っていたのか。

それは色々と面白い話だな。

 

「そろそろ本題に戻ってくれないか。この後も仕事があるんだが」

 

アザゼルが面倒臭そうな表情で言ってきた。

まだ舞妓と遊ぶつもりなのかよ。

 

「確かアザゼルが仕事を全くしないで舞妓と遊んでいたとシェムハザさんに報告する話だったか?」

 

「ちげぇよ!俺はちゃんと仕事をした上で合間を見て舞妓さんと遊んでいたんだよ!」

 

舞妓と遊んでいたのは認めるのか。

ロスヴァイセが何か言いたそうな顔でアザゼルを見ている。恐らく本当は仕事をロスヴァイセに押し付けて舞妓と遊んでいたのだろう。後でシェムハザさんにちゃんと報告しておくか。

んー、いつもならふざけるのも良いけど今は面倒臭いな。早く終わらせてのんびり酒を飲みたい気分だ。

 

「ちょっと付いてきてくれ、アザゼル。八坂の現在の状況について説明する」

 

俺は杯を机に置いて立ち上がる。一応、アザゼルぐらいには説明しておくか。

 

「他の奴等がいたら言えないような内容なのか?」

 

「言えないというより言いたくない内容だな」

 

アザゼルは俺の言葉を不審に思いながらも立ち上がって、二人で個室から出る。

そして八坂の現在の状況を説明した。するとアザゼルの表情が何とも言えないものになる。

 

「……それ、マジか?」

 

「マジだ」

 

「それは確かに皆には言いづらいな。特に八坂の娘には絶対に言えない」

 

「だろ?とりあえず話はこれで終わりだ」

 

そう言うと俺とアザゼルは個室に戻る。

アザゼルが席に座ると同時にイッセーが質問した。

 

「アザゼル先生、どんな話をしたんですか?」

 

「……大人の事情で答えられない」

 

アザゼルが目線を逸らしながらそう答えた。

やっぱり、そういう反応になるよな。

 

その後、特に話は進展せずに解散。俺はもうちょっと酒を飲んでからホテルに戻った。




久し振りに生徒会メンバーを出したところで、匙の方の恋愛はどうしようかと迷っています。
全く思い付かない。とりあえず保留にして思い付いたら書こうと思っています。

では感想待ってます。

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