ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第109話 稲荷山

京都駅から一駅進んで稲荷駅に到着し、そこから伏見稲荷の参道に入った。

 

「か、可愛い……」

 

歩いている途中でお土産屋の前に置かれている狐のストラップが目に入った。

前に来た時は見かけなかったな。見逃していたのだろうか?

ストラップぐらいなら邪魔にならないし、今買うか。

俺がストラップを取ろうとした瞬間にゼノヴィア、アーシア、イリナの教会トリオがやって来た。

 

「何を見ているんだ?」

 

「わー、このストラップ可愛いですね」

 

「本当ね。でも、ここでお土産を買ってお小遣い足りるかしら」

 

ゼノヴィアは理解しているのかは微妙なところだが、アーシアとイリナはこの可愛さを理解しているみたいだ。

男だとこの可愛さを理解できない奴が多い。実際、イッセー達は興味なさそうにしている。

 

「それなら安心しろ。金がなくなったら俺に言え。とりあえず十万ほど持ってきているから、お前達の分を買うぐらいの余裕はある」

 

「相変わらず霧識は羽振りがいいな」

 

相変わらず?ああ、そう言えば前にゼノヴィアとイリナにファミレスを奢った上に金をあげたことがあったな。

イリナはあの時の金を返そうとしてくれたな。あの金は貸したものでなくあげたものなので断ったが。

ゼノヴィアは忘れたかのように話題にも出さない。と言うより、本当に忘れているだろう。金を返せ、とは言わないがイリナを見習って誠意ぐらいは見せろ。

 

「じゃあ、こっちのせんべいも買ってもらっていいか?」

 

「お前の小遣いがなくなったらな」

 

何でゼノヴィアはこんなに図々しいのだろうか?

 

「なぁ、霧識。出来れば俺の分も買ってくれないか?今月、ピンチで小遣いがほとんどないんだ」

 

松田がゼノヴィアとは違い低姿勢でお願いしてきた。

そう言えば今日のためにエロDVDを購入したとか言っていたな。小遣いがないのは、そのせいだろう。完全に自業自得だ。

まぁ、そんなのとは関係なく松田の分も買うなんて有り得ないが。

 

「お前はそこら辺の女子中学生でも撮影して変態として警察に連行されて学校を退学になれ」

 

「何で女の子達には優しいのに、俺達には厳しいんだよ!?」

 

当たり前のことを聞くな。可愛い女の子(ゼノヴィアは入っていない)に優しくするのは常識だが、お前みたいな変態に優しくする理由はない。

正常に生かしてやっているだけでも感謝しろ。お前の普段の行いだと、地獄でも生温いぐらいだぞ。

 

にしても中学生が多いな。俺達と同じで修学旅行なのだろう。

ん?女子の制服に見覚えがあるような。……どこで見たんだっけ?

思い出そうと頑張っていると、後ろから声をかけられた。

 

「七瀬さんも修学旅行ですか?」

 

後ろを振り返ると、そこにいたのは英雄派で運び屋をしているアンだった。

なるほど。周りの女子中学生の制服に見覚えがあったのは、こいつが着ていた制服と同じだったからか。

少し離れたところにはアンと同じ班だと思われる男女五人がいた。女子は顔を赤くしてキャーキャー言っており、男子は憎々しげに俺を睨んでいる。

何を考えているのか分かりやすいな。

 

「も、ってことはアンもか?」

 

「そうです。奇遇ですね」

 

嫌な奇遇もあったものだな。こいつと関わって録なことになったためしがない。

ロリコンの元浜がアンを見て犯罪者の息遣いをしていて気持ち悪いので一発殴って気絶させる。

 

「松田、こうなりたくなかったら元浜の世話をしろ」

 

「俺に拒否権はないのかよ!?」

 

そんなものはない。変態の相手は変態に任せるに限る。

 

「ねぇ、七瀬。こんなに可愛い女子中学生とどこで知り合ったのよ?」

 

桐生がイヤらしい笑みを浮かべて聞いてきた。

 

「ただの親戚だ」

 

俺は適当にそれっぽい嘘をつく。

て言うか、俺に親戚はいるのだろうか?俺は祖父母にすら会ったことがない。

家系図とかどうなっているのだろう?間違いなく現代日本じゃ有り得ない家系図になっているはずだ。

後で花蓮に聞けば分かるかな。

 

「へぇ……七瀬の親戚ねぇ。言われてみれば何となく雰囲気が似ているような」

 

それは自分の欲望に忠実で、目的のためには努力を惜しまないところだろうか?

他にはレイナーレと花蓮も同じだな。

 

「いいえ、違いますよ」

 

おい、アン!せっかく俺が誤魔化したのに何を言う気だ!?

お前はテロリストなんだぞ。本当のことを説明できるわけないだろ。

 

「え、そうなの?じゃあ、本当はどういう関係なの?」

 

「それは人前では言えないようないかがわしい関係です」

 

「いかがわしいのはお前の妄想だ」

 

俺は食い気味にツッコむ。

お前、言い方がそれっぽいから知らない奴が聞いたら信じるだろうが。

 

「こんな中学――」

 

「手なんか出してねぇよ」

 

イッセーの言いたいことは分かっているので、言い始めると同時にツッコミながら目潰しをした。

イッセーが目を押さえながら地面をのたうち回る。アーシアがすぐにイッセーの治療を開始する。一応、神器の光は周りに認識できないようにしておくか。

にしても、この光景も飽きたな。……そうだ。次から目じゃなくて股間を攻撃しよう。

アーシアの治療まで計算に入れるとそっちの方が絵面的に面白い。

 

「で、結局どういう関係なの?」

 

「しつこいな、桐生。だから親戚だ」

 

とりあえず、これで通すしかない。

 

「んー」

 

アンが治療されているイッセー、松田、気絶している元浜を次々に見ていく。

そして不愉快そうに舌打ちした。

 

「ちっ……。イケメンはいないし、つまらない奴ばかりだな」

 

この言葉で復活しかけていた元浜がまた気絶した。イッセーと松田も同じようにショックを受けている。

お前らが女子に拒否されるのはいつものことだろ。

 

「今日は聖魔剣の人はいないんですか?」

 

一般人のいるところで聖魔剣とか言うなよ。中二病だと勘違いされるぞ。

 

「木場は別のクラスだからな」

 

「それは残念ですね。せっかくの京都ですから新撰組の格好をした二人の絡みを撮影したかったんですが」

 

本当に残念そうに言うアン。

沖田師匠の弟子が新撰組の格好か。それは面白いな。

ただ木場との絡みは嫌だが。

 

「霧識さんの新撰組姿……」

 

ルフェイが俺の新撰組姿を想像しているのかウットリとした表情をしている。

ルフェイが喜ぶなら新撰組の格好をするのも良いかもな。いつもルフェイにコスプレさせるけど、俺がすることは少ないし。

 

「家に俺が作った新撰組の羽織があるから着てやろうか」

 

「良いんですか!?」

 

ルフェイが嬉しそうな顔をする。この程度のことなら、いつでもしてやる。

 

「でも、七瀬さん。作った、って自作ですか?」

 

「中学二年の時に新撰組にハマっていた時期があってな。その時にどうしても新撰組の羽織を着たくて裁縫の練習をしたことがあるんだ。裁縫を学んでいるうちに楽しくなってどんどん上達して市販のものと遜色ない出来映えにまでなった」

 

他にも色々と衣装を作ったな。確かルフェイ達のコスプレ用の衣装を置いている部屋の奥にあったはずだ。

 

「それって撮影していいですか!?」

 

アンが興奮したように言う。

アンの中で新撰組ブームでも起こっているのかとツッコミたくなるほどの食い付きぶりだ。

 

「良いけど俺単体だぞ。絡みはなしだ」

 

「別に良いですよ。後で合成して加工しますので」

 

スキルの高い奴って厄介だな。対処するのが難しい。

 

「アンちゃん、まだ~?」

 

アンと同じ班の女子がしおりを持ちながらアンに聞いてきた。

 

「じゃあ、七瀬さん。私はそろそろ行きます。また後で会いましょう」

 

また?どういう意味だ?何か企んでいるのか?

どうせ録なことじゃないだろう。俺は手を振ってアンを見送った。

そして俺とルフェイの分のストラップを買うと移動を開始する。イッセーは復活していて、元浜は無理矢理起こした。

一番鳥居を抜けると、大きな門が出てきた。両脇には狛犬のような狐の像が立っている。

確か魔除けの像だったな。イッセー達はフリーパスを持っているので特に問題なく進む。

 

「やっぱ何か見られてる?」

 

イッセーがそう呟いた。

周りを警戒してみると、確かに妖怪がイッセー達を監視しているな。

まぁ、当然のことだ。事前に話は行っていても、部外者の監視はするだろう。

そんなことは気にせず、門を抜けて本殿に辿り着いた。更に進むと稲荷山に登れる階段が見えてきた。

イッセー達は周りの景色の写真を撮りながら進むが、俺は撮っていない。前に来た時に撮っているからな。

俺が撮っているのはルフェイだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

千本鳥居を見ながら山登りしていると、休憩所を発見した。

どうでもいい話だが元浜がすでに息切れ状態だ。

 

「ルフェイ、疲れてないか?疲れていたら少し休むが」

 

「これぐらいなら大丈夫です。ヴァーリ様の旅に比べたら何でもないですから」

 

まぁ、ヴァーリの旅は結構苛酷だからな。場所によっては俺もかなり疲れる。

にしても、ここから見える景色はやっぱり絶景だな。

 

「そうだ。アーシア、俺とルフェイのツーショトを撮ってくれないか?後でアーシアとイッセーのツーショトも撮ってやる」

 

「はい、分かりました」

 

アーシアの返事を聞くと俺はカメラを渡した。

そして俺達の写真を撮ってもらって、俺もアーシア達の写真を撮った。

イリナが物欲しそうに見ているけど、今回はルフェイとの約束があるから心苦しいけど構ってやることは出来ない。イリナの相手は修学旅行が終わってからしよう。

 

「俺、ちょっと先にてっぺんまで行ってみるわ」

 

写真を撮り終わるとイッセーはそう断りを入れて、階段を勢いよく駆け上がっていった。

何、夏休みの山籠りで山に目覚めたか?

俺は山は好きだけど、山登り自体にはそこまで興味がない。休日のデートで何回か低い山を登った程度だ。

 

「ん?何か上の方から妙な気配を感じる」

 

少し休憩して山登りを再開した直後にゼノヴィアがそう言った。

 

「もしかしてイッセーが妖怪にでも襲われているのか?」

 

「それもあるかもしれん」

 

ふーん、それは面白そうだな。

 

「ルフェイ、俺は先に行ってくるからのんびり登ってきてくれ」

 

「分かりました」

 

俺はルフェイの頭を軽く撫でると、イリナとゼノヴィアと共に階段を勢いよく駆け上がる。

頂上に辿り着くと古ぼけた社があった。

そしてイッセーが天狗や狐と相対していた。俺はそのうちの一人を見て驚いた。

 

「あ、あれは!」

 

「どうした!?……って、いつものアレか」

 

ゼノヴィアが俺の表情を見ると呆れたように言った。

まぁ、そうだな。いつものアレだ。

妖怪達を仕切っている奴が物凄く可愛い。金髪に巫女装束、年齢は小学校低学年くらいか。

そして何より狐の耳。お尻にはもふもふしてそうな尻尾がある。

素晴らしい!ここまで可愛い幼女はオーフィス以来だ。

俺は気付いたら幼女に近付いて写真を大量に撮っていた。

 

「な、何じゃ!?眩しい!」

 

狐の幼女が可愛らしい悲鳴を上げた。周りの妖怪達は驚いて戦闘行為を中断する。

イッセーは「うわぁ、またか」と呆れた表情をしている。

写真を撮り終わると次は軽く抱き付いて耳を撫でたり尻尾をもふもふしたりする。尻尾が柔らかくて気持ち良い。

 

「お前、いきなり何をするあんっ!……変なところを触るな」

 

いきなりのことで驚いているみたいだし、そろそろやめておくか。こんなに可愛い幼女に嫌われるのは嫌だからな。

まぁ、俺の撫でテクは完璧なので大丈夫だろう。実際に狐の幼女も嫌がるような声を出しながらも気持ち良さそうにしていたし。

 

「……霧識さん」

 

俺がもふもふをやめようとした瞬間に後ろからルフェイの低い声が聞こえた。

思ったより早かったな。ヤバい。後ろを向けない。

さすがに嫌われることはないだろうが、かなり怒られそうだ。




本編には関係ない話ですが、主人公の祖父母についての設定は考えています。
どうせ書く機会はないので、ここで少しだけ書きます。
主人公は親の性癖を受け継いでいますが、本質的なところは祖母似です。
祖母は逆ハーレムを築いた人です。一応、人格を除けば普通の人間です。

では最後に一言。感想ください。

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