俺は今、ヴァーリチーム全員とレイナーレ達のいる教会から少し離れた森の中にいる。ちなみにオーフィスは家でゲームをしている。さすがにオーフィスが参加すると大事になる。
今から作戦を実行しようと思った時に電話が掛かってきた。どうやらイッセーからのようだ。
『おい、霧識。何か知らないか?』
「は?何を?」
まぁ、大体、予想はつくが。
『ああ、悪い。実はアーシアがレイナーレの奴に捕まったんだ』
「で、それが何で俺に繋がるんだ?」
『お前、前にアーシアを教会に連れて行っただろ?その時にアーシアがお前とレイナーレが仲良く喋っていた、って言っていたし』
「ああ、その件か。あれはレイナーレに殺されないように適当にふざけて逃げただけだよ。それに下手なことをしたらアーシアを殺す、と脅かされていたから誰にも言えなかったんだ。レイナーレ以外にも数人の堕天使と大量の神父がいて、さすがに戦闘力のない俺では、その場で助けることも出来なかった」
まぁ、戯言だけどな。
『そうだったのか。実は今から木場と小猫ちゃんの三人でアーシアを助けに行くから霧識も手伝ってくれないか?』
「今は友達の家で遊んでいるんだ。俺も今すぐ向かうが、ここからだと時間がかかる」
『友達って女の子じゃねぇだろうな!』
「そんなこと気にしてる場合じゃないだろ」
そして俺は携帯を切った。て言うか、こんな状況でそんなことが言えるなんて逆に凄いな。
「……良くそれだけ息を吐くように嘘をつけますね」
お義兄さんが呆れたように言ってきた。
「別にそんなことないけどな。友達を騙すのに罪悪感もあるし」
「それは嘘にゃ」
「嘘ですね」
「嘘だな」
皆、揃って酷いな。
「まぁ、いい。作戦を実行する。黒歌、邪魔者の場所は分かるか?」
「ちょっと待つにゃ」
黒歌が仙術を使って周りの気を探る。
「見付けたにゃ。上手く気配を隠しているようだけど私にかかれば余裕にゃ」
やっぱり来てたか、ゲス野郎。
「自画自賛してないで場所を教えろ」
「向こうの方角にいるにゃ。後、約束はちゃんと守ってもらうにゃ」
「ああ、ちゃんと守る」
約束の内容は黒歌を小猫に直接、会わせることだ。まぁ、直接と言っても俺の神器の能力で認識できないようにして離れたところから見るだけだが。
「じゃあ、次は予定の場所に結界を張っといてくれ。後、美候も念のために付いていってくれ」
「了解にゃ」
「分かったぜぃ」
そう言うと黒歌と美候は移動した。
「ルフェイとお義兄さんは俺が認識できなくするから教会を見張っといて。俺が着く前に物事が終わりそうだったらバレないように邪魔をしてくれ」
「分かりました」
「了解しました」
そして二人も移動した。
「じゃあ、ヴァーリ、行くか」
「……それはいいが、お前がリーダーみたいだな」
「気にするな。俺は参謀だ。参謀が指示を出すのは普通だろ。そしてリーダーの役目は味方を導くことだ」
「上手く言いくるめられた気がするが」
最後に俺とヴァーリは黒歌が教えてくれた場所に移動する。もちろん認識できないようにした上で。
そして目的の場所にいた優男に話かける。予想通り、眷属は連れてきていないな。
「よぉ、ディオドラ・アスタロト。久し振りだな」
「……貴方は七瀬霧識。それにヴァーリ・ルシファー。何でこんなところに」
「ヴァーリだけでなく俺まで覚えていたか。それは感激だな」
まぁ、実際に意外だからな。俺は眷属とばかり話していてディオドラとはほとんど話していなかったからな。
「……目的は何です?」
「メイドの確保」
「は?」
「後はヴァーリのストレス発散かな」
ヴァーリの奴、前に俺に負けたことを気にしてるからな。
「私も用事があって来ているので早く話を終わらせてくれると助かるのですが」
「まぁ、俺も早くしないといけないから今回は普通にいくぞ」
ふざけるのは後で出来るからな。それに早くしないと疲れる。俺の神器は距離が離れるほど制御が難しくなるからな。
「お前のアーシアを眷属……いやに奴隷する計画を潰しにきた。いや、正確にはする必要はないが念のためにな」
俺の計画的にはディオドラでも問題ないんだけど。ただ、ゲス野郎の思い通りになるのは面白くないからな。
「どういう意味だ?」
「今からリアス・グレモリーが来る。お前はアーシアが死んだ後に眷属する予定らしいが、その前に物語は終わる」
「な!?確かにここはリアス・グレモリーの領地だが、奴が何でこの件に関わっているんだ!?」
「ああ、めんどうくさいから後のことはヴァーリに聞いてくれ」
そして俺は『
「な!なんだ、これは!?」
「ディオドラ・アスタロトが色と音を認識できないようした」
ルフェイとお義兄さんの分も能力を発動しているから、かなりしんどい。
「距離が離れると能力が解除されるようになってるから、早く向こうに運んでくれ」
「分かった」
「ああ、分かってると思うが殺すなよ」
「こんな奴でも禍の団の協力者だからな」
「いや、そういう意味じゃなくて後でそいつで遊ぶから」
その為の準備も完了している。
「……相変わらず性格が悪いな」
「こいつほどじゃないだろ?」
「そうでもないさ」
そう言うとヴァーリは禁手になってディオドラを持って黒歌が結界を張っている場所に飛んでいく。て言うか、失礼だな。絶対、ディオドラよりはマシだろ。
そして俺も教会に向かって走る。
教会に着くとルフェイとお義兄さんが驚いた顔をしていた。
「どうかしたか?」
「アレを見てください」
「アレ?」
ルフェイが指差した場所を見てみるとイッセーがレイナーレを殴り飛ばしていた。イッセーじゃ、レイナーレに勝てないと思っていたのに予想外だな。
そしてイッセーの左手を見てみると赤いドラゴンの籠手をしていた。
「アレはもしかしてヴァーリから聞いた『
「そのようです」
え~と、つまりイッセーがヴァーリのライバルということか?完全にネタの匂いがするんだが。ロリコンVS性欲の権化。歴代二天龍の中で一番酷い対決になりそうな気がする。
「彼はどういう悪魔なんです?見ていた限り私の知ってる悪魔のイメージと違うのですが」
「……魔力が低過ぎて魔方陣で転移できず、自転車で依頼人のところに行ってる前代未聞の最弱悪魔」
「「…………」」
二人が信じられない者を見るような目をしている。いや、俺も信じられなかった。最初に聞いた時は有り得なすぎて大笑いしたぐらいだ。
「……それをヴァーリ様に報告するんですか?バトル好きのヴァーリ様ですから落ち込むかもしれませんよ?」
「……その事は後で考えよう」
人はこれを現実逃避と言う。
俺達が話しているとイッセーのところに小猫と木場がやって来て、次にリアス・グレモリーもやって来た。
「じゃあ、俺も向こうに参加してくるわ。ルフェイ、俺が合図したらよろしく」
「分かりました」
俺は教会の入口に移動する途中でイッセーにぶっ飛ばされたレイナーレを発見した。
「まさかイッセーに負けるとは思わなかったぞ」
「うるさいわね。で、約束通りに助けてくれるんでしょうね?」
「図々しい言い方だな。まぁ、そういうのは嫌いじゃないが」
「そういう回りくどいのは良いわ。結果だけを言いなさい」
自分がボロボロで助けられる立場なのに、ここまで上から目線で喋れるのは凄いな。
「じゃあ、まずは俺のことを忘れてもらおう。禁手『
つまり俺のことを思い出すことすら出来ない。イッセー達に俺がレイナーレと繋がっているとバレるのは困るからな。
「……あれ、霧識先輩。どうしてここに?」
小猫がやって来た。
「イッセーに呼び出されたから来たら、こいつが飛んできたんだよ。もう決着は着いたみたいだな」
「……遅かったですね」
「これでも急いで来たんだけどな」
正確にはずっと近くにいたけど。
「まぁ、いいか。こいつを運びに来たんだろ?」
「はい」
「んじゃ、頼む」
「……ここは先輩が運ぶじゃないですか?私はさっきまで戦闘していて疲れています」
小猫が何かを要求するような目をしている。
「……後でケーキをやろう」
「分かりました」
そう言うと小猫はレイナーレを引きずりなら歩いていく。幼児体型に似合わず豪快だな。
「……今、何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「いえいえ、全く何も考えていません」
そして相変わらず勘が良いな。
とりあえずリアス・グレモリー達のいるところに戻る。
「お届け物をお持ちしました」
「部長、持ってきました」
そう言うと小猫は気絶しているレイナーレを殴って起こした。そして放り投げた。
「霧識くんは何故ここに?」
「イッセーに呼び出されて急いで来たんですよ。もう終わってるみたいですけど」
「そう」
それだけ言うとリアス・グレモリーはレイナーレの方に向いた。
「ところでケーキの話ですけど」
小猫が目をキラキラさせながら俺に話かけてきた。
「……今、その話をするのか?」
「はい。後は部長に任せておけば大丈夫ですから」
これは信頼しているのか興味がないだけなのか、どっちなのだろう?
「へぇー、面白そうな話をしてるね。僕も混ぜってもらってもいいかな?」
木場も話に参加してきた。主を放置していていいのか?
「はい。今度、霧識先輩の家で手作りのお菓子を食べさせてもらうんです」
「待て!そんな話はしていないぞ!何で家に来るんだ!?」
この後輩、予想以上に図々しいぞ。
「僕も行っていいかな?」
「何でそうなるんだ!?」
「……祐人に小猫。主である私が格好つけてるのに見ないつもりなの?」
リアス・グレモリーがキレかかってる。て言うか、格好つけてたのか。
「部長を信じていますから」
「……同じく」
本当にそれでいいのか?ただの言い訳にしか聞こえないが。
「もういいわ。めんどくさいし、早く終わらせて帰りましょう」
そう言うとリアス・グレモリーの手に滅びの魔力が集まっていく。
ってヤバい!こんな急展開は予想していなかった。このままじゃ、レイナーレが本当に死ぬぞ。とりあえずルフェイに早く術を発動するように手で合図する。
「いいんですか、それで?仕事をそんな適当に終わらせて。上級悪魔としての矜持とかはないんですか?」
まずは冷静に対処することが大事だ。とりあえず適当に喋りながら時間を稼ぐ。
「それは大事よ。でも眷属が誰も見ていないのにやる気も出ないわ」
ルフェイが魔法を発動するのを俺の神器で認識できないようにする。そしてレイナーレを俺の家に転移。代わりに地下の神父を一人、ここに転移させる。転移させた神父をレイナーレだと誤認させる。
よし、一通りの作業は終了だな。
「もういいでしょう。レイナーレを殺すわよ」
「……もう好きにしてください」
不信がられないように呆れたフリをしながら言う。そしてレイナーレに見せ掛けた神父の死亡を確認。その後、アーシアがリアス・グレモリーの眷属として転生するのを見て家に帰った。さて、ここからが本番だ。
今回、書いている途中に思い付いた色と音を認識できなくした、はかなり強力ですね。他にも色々と使い方を考えていますし、自分が最初に予想していたよりもかなり強力な能力かもしれません。まぁ、ちゃんと弱点もありますけど。
では感想待ってます。