ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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第105話 儀式

俺は今、岩肌に隠れて上からイッセー、リアス・グレモリーとサタンレンジャーのやり取りを見ている。

ちなみに俺の今の格好はマントと怪しい笑みを浮かべた不気味な仮面をしている。これは俺が新しく提案したキャラの衣装だ。

どうやらリアス・グレモリーはサタンレンジャーの正体に気付いていないようだ。自分の兄がこんな恥ずかしい格好をしている事実から逃げるために無意識に理解しないようにしているのだろう。そうじゃなかったら、ただの馬鹿だ。

一通り説明も終わったみたいだし、そろそろ俺の出番だな。

 

「ん?」

 

向こうに悪霊が飛んでいるのが見えた。一応、退治しておくか。

そう思った瞬間、サタンレンジャーが悪霊に一斉攻撃した。

 

「うおぉぉぉぉっ!……イタッ!」

 

サタンレンジャーの攻撃の余波で吹っ飛ばされて岩にぶつかった。

あいつら、悪霊一体に一斉攻撃してんじゃねぇよ。完全にオーバーキルで悪霊に同情してしまうぞ。

何か空が割れていたり、オーロラらしきものが見えている。

て言うか、後少しずれていたらマジで死んでいた。今までも何回も死にそうになったけど、今のが一番危なかったかもしれない。

まぁ、文句は後で言おう。今は出番が先だ。

俺は飛ばされた位置から元の位置に戻る。そしてポケットの中に手をいれて、そこにあったスイッチを押す。

すると俺の後ろに設置されてあった火薬が爆発して、皆の注目を集める。

 

「ハハハッ!これがサタンレンジャーの力か!面白いぞ!」

 

俺は皆を上から見下ろしながら高笑いする。

ここからは役に入るので、いつもと口調が違う。

 

「君は何者なんだ!?」

 

サタンレッドことサーゼクスがノリノリな様子で聞いてくる。

 

「私の名前は怪盗クラウン。意味もなく世界を引っ掻きまして混沌に導く者だ!」

 

ちなみにこのキャラは前にカテレアが俺のことを道化師と呼んでいたことから思い付いたものだ。ある意味、俺にピッタリな呼び方だ。

 

「待て!それのどこが怪盗だ!?ただの迷惑な奴じゃないか!?」

 

イッセーがどうでもいいことをツッコんできた。

 

「うるさい、おっぱいドラゴン。怪盗は俺の趣味だよ。だって怪盗って格好いいだろ」

 

俺は素に戻って適当に返事する。

 

「……怪盗クラウン。まさか、さっきの悪霊も貴方の仕業なの!?」

 

サーゼクスよりもノリノリなサタンピンクことレヴィアたんがアドリブをいれてきた。

どう考えてもアレはただの偶然だよ。だが、俺はそのアドリブに悪ノリする。

 

「その通りだ!よく分かったな!さっきのは私が君達の実力を計るために配置したのだよ!」

 

「つまり、私達はまんまと罠にハマったということなのね」

 

こういうやり取りも結構、楽しいな。特撮の撮影の時もそうだが、役になりきるというのは普段と違う新鮮さがある。

 

「……魔王級が五人に謎の乱入者。ややこしい事態になってきたわね」

 

リアス・グレモリーが何やら深読みしているようだ。こんなのはただの遊びなんだから気にしなくていいのに。

その後、アドリブをいれつつもオープニングの終了がやって来た。

 

「――では私の部下が試練に乱入させてもらう。せいぜい私を楽しませてみろ!」

 

そう言うと俺は神器で認識できないようにして姿を消した。

普段は高笑いなんてするキャラじゃないから少し疲れた。自分とは全く違うキャラになれる役者って凄いな。

俺の特撮でのキャラはほとんど素だから難しくない。

 

「……何なんだ、この展開は」

 

イッセーが疲れたようにそう呟くのが聞こえた。

さて、早く着替えて移動しないと。

 

 

 

 

 

 

最初の試練の部屋で俺はレヴィアたんと一緒に二人を待っていた。

俺の服装はタキシードだ。顔は神器で羊に見せるが、レヴィアたんには普通の俺の顔が見えるようにする。

そしてイッセー達がやって来た。まずはレヴィアたんが試練の内容を説明する。

 

「さぁ、お二人さん。最初の試練なのよ。内容はダンスです」

 

イッセーが予想外の試練内容を聞いたのかポカーンとマヌケな顔をしている。

まぁ、儀式の意味を理解していないみたいだから当たり前の反応か。

次に不審げな顔で俺を見てきた。

 

「……で、そっちの羊が怪盗クラウンとやらが言っていた部下か?て言うか、何で羊?」

 

「さよう。私がクラウン様の執事であるカプリコーンです」

 

ぶっちゃけ、このキャラはただ羊と執事を掛けただけのギャグだ。

もちろん、特撮でやるようになったら今回みたいに俺一人では出来ないので役者の人……と言うか悪魔がすることになる。

まぁ、その前に企画が通ればいいが。

 

「そして私もダンスに参加させてもらいます」

 

「参加?」

 

「そうです。この試練では私達とダンスバトルして勝ったら次に進めます」

 

そういや、今思い出したけど俺ってマトモにダンスしたことないんだよな。小学生ぐらいの時にテレビで見たのを真似したくらいか。

……少し不安になってきたな。

 

「ところで今、『達』って言ったけど貴方は誰と踊るの?パートナーはいないみたいだけど」

 

「何を言うのですか、リアス・グレモリー。ここに私のパートナーがいるじゃないですか」

 

俺はレヴィアたんを指差しながら言う。

 

「ちょっと霧識ちゃん!?聞いてないんだけど!別の人を呼ぶんじゃなかったの!?」

 

あ、おい。俺の本名を呼ぶなよ。

 

「カプリコーンの正体は霧識くんだったのね!何らかの形で参加してくるとは思っていたけど、まさか変装してくるなんて。……さてはさっきの怪盗クラウンとやらも貴方ね。そして、その羊の顔は神器で私達の認識を操って誤魔化しているのね」

 

ほら、リアス・グレモリーに俺の正体がバレた。

て言うか、サタンレンジャーの正体には全く気付かなかったのに、妙に鋭いな。怪盗クラウンの正体までバレるなんて予想外だった。

 

「あー、面倒臭いから始めるぞ」

 

俺は音響装置のボタンを押してクラシックで優雅な音楽を流す。

そしてレヴィアたんの手を取って踊り出す。

 

「いきなり何するの、霧識ちゃん!?」

 

「文句なら後で聞くから、今は踊るぞ。て言うか、本名で呼ぶなよ」

 

まぁ、俺もキャラが崩壊しているけど。

レヴィアたんは頬を赤くしながらも上手に踊っている。さすが魔王。社交界などでダンスは慣れているか。

イッセーはリアス・グレモリーに誘導されながら不器用ながらも何とか踊っている。夏休みにグレモリー家で教えてもらったおかげか。

にしても、照れているレヴィアたんは可愛いな。何となくイタズラしたくなったので、耳元にフゥーと息を吹き掛ける。

 

「ひゃ!」

 

「イテッ」

 

右足に痛みを感じたので見てみるとレヴィアたんの足が乗っていた。

俺が息を吹き掛けたせいでリズムを崩したのか。

 

「……足、踏んじゃってゴメンね」

 

レヴィアたんが少し涙目になりながら上目遣いで謝ってきた。理性が飛びそうになるほど可愛かった。て言うか、二人っきりだったら間違いなく理性が飛んでいた。

 

「いっ……」

 

今度はレヴィアたんが痛そうな声を出した。今度は俺がレヴィアたんの足を踏んでしまった。

 

「悪い」

 

俺は謝ってダンスを続ける。

だが、上手くリズムを戻せず結果、俺はイッセー達に負けてしまった。まさかこの俺がイッセーに負けるとは。完全に予想外だ。

 

「じゃあ、二人とも合格よ。第二の試練にレッツゴー!」

 

レヴィアたんが二人に合格を言い渡すと眼前の石の扉が開いて、二人は奥に進んで行った。

俺は別ルートから先回りしないと。

 

「……え、え~と、あのね」

 

俺が移動しようとした瞬間にレヴィアたんが緊張した感じで話かけてきた。

 

「何だ?早く移動しないとイッセー達がファルビーのところに到着するんだが」

 

「時間はかけないから大丈夫。この後って時間はある?」

 

この後?今日は儀式のためにスケジュールを調整したから時間はあるな。

まぁ、夜のスケジュールは埋まっているけど。

 

「あるけど」

 

「……じゃあさ、私の家に来てダンスの練習しない?さっき上手くいかなかったのが悔しいし」

 

レヴィアたんが人差し指と人差し指を合わせて少し不安そうに聞いてきた。そんな可愛い表情をされて断れる男はいない。

もしいたら殺す。そんな奴は男じゃない。

 

「そうだな。俺もイッセーに負けたのは悔しいから練習するのは悪くない。それにレヴィアたんと踊れるのは楽しいし」

 

「……で、その後もお願いができるかな?」

 

その後、というのはそういうことだろう。一昨日、ヤったばかりなんだけどな。

まぁ、断る理由はないな。

俺はOKすると軽くキスして、次の場所に移動した。

 

 

 

 

 

 

俺が到着すると、すでにイッセー達が来ていた。

どうやら今は試練の内容の説明が終わったところみたいだな。

第二の試練はテーブルマナー。ファルビーの眷属兼メイドの二人が審査して、減点方式でゼロ点になったらゲームオーバーというルールだ。

ちなみに今度の格好は全身が蛇の鱗になっていて、その上にTシャツにジーンズというラフな服装をしている。簡単に言うと蛇人間だな。鱗は変身魔法だ。

俺は上から一回転して着地する。

 

「俺はコブラ。怪盗クラウンのシェフをしている。今回は俺が作った料理とメイドさんが作った料理を食べ比べてもらう。そして食後にどっちが美味しかったか選択してもらう」

 

俺が追加ルールの説明をしている間にメイドさんが二人に料理を出していく。

 

「ちなみにどっちが作った料理かは分からないようにしている」

 

「いや、待て!さっきは俺達と戦ったのに、今度は何でそっち側と戦っているんだよ!?後、何で怪盗の仲間にシェフがいるんだよ!?」

 

イッセーがどうでもいいことをツッコんできた。

説明するのも面倒臭い。ちなみにシェフなのは今回の儀式に合わせただけだ。

 

「……食事中に騒ぐのは好ましくありません。減点しますよ」

 

メイドさんに冷たい声で言われて、イッセーは緊張しながら食事を開始する。

て言うか、もう採点は開始していたのか。

さすがグレモリー家の次期当主。リアス・グレモリーは全く問題なく食事を進めていく。

イッセーはいくつかの減点はあったが、特に大きな問題はないまま進む。

結果、二人とも合格だった。だが、本番は次だ。

 

「で、どっちが美味しかった?」

 

「こっちね」

 

「緊張して味はよく分からなかったけど、どっちかと言うと、こっちかな」

 

俺の質問に二人はメイドさんが作った方の料理を指差した。

俺の負けか。やっぱり趣味でやっている程度でプロに勝つのは難しいか。

俺は二人が次の場所に移動してからメイドさんに話かけた。

 

「俺を弟子にしてもらっていいですか?」

 

「……弟子ですか?」

 

「はい。負けたままは悔しいので上手くなりたいんです」

 

最近、レイナーレに料理で負けそうだからな。上手くなりたいというのは本当だ。

主としてレイナーレには負けたくない。

 

「私達が暇な時なら教えてもいいですよ。ただ、私達の主は怠け者なせいで仕事が忙しいので中々教えてあげられないかもしれないですが」

 

メイド達の冷たい視線を無視して、すでにファルビーは気持ち良さそうに寝ていた。

……ファルビーの眷属は大変そうだな。

 

「それでもいいですか?」

 

「はい。大丈夫です」

 

これでアスモデウス眷属にもコネを作ることが出来る。これを利用してファルビー本人とも仲良く出来るように頑張るか。

 

 

 

 

 

次は第三……というより最後の試練。今回は何とか間に合った。

今度の格好は死に装束に狐面だ。

二人がやって来たところでサタンブルーことアジュカがルールの説明をする。

 

「最後の試練は筆記問題だよ。グレモリー家に伝わる歴史と冥界の一般知識など、悪魔に関することを問題用紙にまとめて、テストとして試験するわけさ」

 

「そして今回は俺の変わりにこいつがお前達のテストを受ける。後、俺のことは狐さんとでも呼んでくれ」

 

俺の言葉でサタンレンジャーと似たような格好をした少年が前に出た。

 

「僕はサタンジュニアと言います。よろしくお願いします」

 

サタンジュニアが礼儀正しく挨拶する。ちなみに正体はミリキャスだ。

 

「……色々とツッコミたいが、もう疲れたのでやめておく」

 

イッセーが疲れたような呆れたような表情で言った。

恐らく試練の緊張で疲れているのだろう。

テストなので特に面白いこともなく進み、一位はリアス・グレモリー、二位はミリキャス、三位はイッセーという結果になった。

まぁ、ミリキャスは試練とは関係ないので、合格点を取ったイッセーは合格だが。

これで試練も終了か。だが、これで終わるほど世の中は甘くない。まぁ、俺は何もしないけど。

 

 

 

 

 

最後の部屋はコロシアムみたいになっていて俺は見物席にレヴィアたん、アジュカ、ファルビー、ミリキャスと一緒にいた。

下ではイッセーとサーゼクスの戦いが開始されようとしている。試練が終わったと思ったところに一番辛い試練。イッセーも大変だな。

そんなイッセーを無視して俺は魔王達と雑談していた。

 

「そうだ。トランプがあるんだけど、やらないか?」

 

俺がトランプを出して提案した。

 

「トランプか。たまには良いかもね」

 

「私もやるよ」

 

「僕もやります」

 

アジュカとレヴィアたん、ミリキャスは賛成してくれたが、ファルビーは面倒臭そうに欠伸をしているだけだ。

 

「ファルビーもやらないか?」

 

「……僕はいい。面倒臭いから四人でやりなよ」

 

う~ん、どうやったらファルビーのやる気を出せるのだろうか?イッセーならおっぱいだけで良いから簡単なのに。

 

「おい!こっちは大変なのに、何でそっちは和んでいるんだよ!?」

 

下から何かうるさい声が聞こえる。無視だな。

 

「何をごちゃごちゃ言っているんだい?もう戦いは始まっているよ」

 

「ちょっと待ってください!本当に戦うんですか!?」

 

俺達はイッセーの絶叫を尻目にのんびりとトランプを開始した。

そして俺達が仲良くトランプをしながら適当に雑談をしている間にイッセーとサーゼクスの戦いは決着。結果はもちろんサーゼクスの勝利だ。

だが、イッセーも意外と善戦したらしくサーゼクスが誉めていた。ユーグリットにグレイフィアさんを盗撮するついでに儀式の撮影も頼んでいたから、後で録画を確認するか。

 

「じゃあ、儀式も終わったところで私の家に行こうか」

 

「そうだな」

 

俺とレヴィアたんが立ち上がる。

 

「もう行ってしまうんですか?」

 

「悪いな、ミリキャス。また今度、遊びに行くから今日は我慢してくれ」

 

「はい、分かりました」

 

ミリキャスが純粋な笑顔で答える。

一瞬、ミリキャスもつれていこうかと思ったけどやめておこう。純粋なミリキャスを汚したくない。

 

「ん?アジュカ、どこに行くんだ?」

 

アジュカが立ち上がって下に移動しようとしていた。

 

「僕も赤龍帝くんには興味があってね。ちょっと挨拶してくるんだよ」

 

アジュカがただ挨拶するだけとは思えないが。

まぁ、聞くのはやめておこう。

聞いても隠し要素大好きのアジュカがマトモに答えてくれると思えないし。それにこういうのは後の楽しみに取っておくべきだ。

 

「じゃあ、行こっか」

 

レヴィアたんが俺の右腕に抱き付きながら笑顔で言った。

もしかしたら、ここからの方が大変かもしれない。まぁ、それ以上に楽しみだけど。

 




次回から本編最後の九巻に入ります。

では感想待ってます。
短編のアイデアもまだまだ募集中なので思い付いた時にでも書いてください。

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