織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

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序章終了です。


0‐4

「嘘から出たなんとかじゃ!怪異譚の収集、面白そうじゃろお前様。」

 

「それもそうかもな。どうせ行くあてなんて無いんだし。」

 

 なんか気持ちが少し楽になった気がする。

 でも怪異譚なんてどうやって探せばいいんだ。

 

「おい雫。」

 

「なんじゃお前様。」

 

「お前なんか怪異譚知っているか?」

 

「そうじゃのう。」

 

 そう言って少し考えて

 

「美濃の国の片田舎に超絶美形の九尾の姫がおるらしいぞ。」

 

 俺は雫の話を無かった事にした。

 横でギャーギャー騒いでいるが無視。

 

「半兵衛殿、何か知りませぬか?」

 

「くすん……そうですねぇ、たしか飛騨の国のとある里に三つの怪異譚があるそうですよ。」

 

「三つ?」

 

「はい、三つです……くすん。」

 

「一ヶ所に三つの怪異譚か。」

 

 だいたい怪異なんて一ヶ所に集まる事なんてまず無い。

 一つの国に五つ集まれば多い方だ。

 まあ例外はあるが、それが一つの里に三つ、多すぎる。

 俺は自分の中で好奇心がふつふつと湧くのを感じた。

 雫も同じ様な事を考えたのか

 

「お前様、面白そうじゃのう。」

 

 新しいいたずらを思いついたかのような顔でそう訊ねてきた。

 それに対して俺は

 

「ああ、すこぶる面白そうだ。」

 

 ニヤリと悪党のような笑顔をつくった。

 

「半兵衛殿、その里はどこにあるのかご存じで?」

 

「いえ、そこまでは……くすん、ごめんなさい。」

 

 すまなそうな顔をしてあやまる半兵衛ちゃんを見て

 

「どうするお前様よ。」

 

 雫が話しかけて来た。

 

「そうだな、当座の路銀も必要だし……。」

 

「うむ、そうじゃな。」

 

 遠回りになるかもしれないがと前置きした上で

 

「井ノ口の街に出て清洲へ回りそこから木曽川沿いに……だな。」

 

 楽しみじゃとワクワクしている雫を横目に

 

「半兵衛殿。」と、突然声をかけた。

 

 少しびっくりしたようだが半兵衛ちゃんはい?と返事を返してくれた。

 

「井ノ口の商家でわりと大きく店主が珍しい物好きな店は無いですか?」

 

 頭を左右に揺らしながら少し考えて

 

「それだったら木曽屋さんですね……くすん。」

 

 そんな仕草を見てかわいいなと少し思ったら無言で耳をかじられた。

 もちろん犯人はヤツだ。

 

「詳しい場所は解りますか?」

 

「私は解りませんが安藤の叔父様だったら……すみません。」

 

 後で半兵衛ちゃんから聞いておいてくれるとの事だった。

 

 最後に俺は聞かずにいた事を雫に聞いた。

 

「雫さんや。」

 

「なんじゃお前様。」

 

「お前ついて来るのか?」

 

「とうぜんじゃ!」

 

「やっぱりな。」

 

「なにか問題でもあるのかや?」

 

「いや、もういいや。最後までついてこい。」

 

「おうよ!」

 

 すぐに発とうと思ったが意外な事に安藤のオッサンが一晩泊まっていけと言ってくれた。

 少し考えながら半兵衛ちゃんを見ると「何もないですけどどうぞ……くすん。」と言ってくれる。

 短時間ではあったが俺と雫のバカな掛け合いで緊張が溶けたのかも知れない。

 では一晩だけと好意に甘えさせてもらうことにした。

 

 

翌朝

 

 

「お世話になりました。」

 

「ごくろうであった。ほめてちゅちゃちゅ。」

 

 雫が上から目線で失礼な事を言いかけたので口を引っ張って止めておいた。

 二人は?な顔をしていたが「いいえ…くすん」「気にされるな」と言ってくれた。

 その時

 

「まあ、どうにかなるとは思うが達者でな。」

 

 前鬼まで出て来て見送ってくれた。

 

「じゃぁ行くか。」

 

 少し気だるそうな俺。

 

「いざ出発サイコロの旅へ!」

 

 意気込む雫。

 半兵衛ちゃん達にもう一度頭を下げて俺達二人は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 はずなのだか。

 約10分後つかれたのじゃーと幼女が駄々をこねだし、現在俺の背中で一人おんぶ状態だった。

 その状態にゲンナリしていると真面目な顔で雫が質問してきた。

 

「なあお前様よ。」

 

「なんだ。」

 

「どうしてあの小栗鼠達に本当の名を言わんかったのじゃ?」

 

 その質問に少しドキッとしながら真面目に答えた。

 

「俺はこの時代に本来は居てはいけない人間だ。これから先、何があるか分からないからなるべく名前が残らないようにしたいんだ。」

 

 ふーん難儀じゃのぉと背中で雫が呆れたような返事をした。

 それになと俺は勝手に言葉を続ける。

 

「雫、お前は俺の名前知っているだろ。知識を共有しているんだから。」

 

「まあのう。」

 

「なら、それで十分だ。」

 

 ちょっと悪戯っぽく笑って背中の幼女に話しかけた。

 それを聞いてとても嬉しそうに尻尾をブンブン振りながら

 

「うむ、そうじゃな。それで良いな!」

 

 と元気に言い放った。 未来から来た俺と九尾の姫雫、数々の怪異達の旅の最初の一歩が今始まった。




半兵衛ちゃん達と別れて旅だった二人、次は井ノ口〜清洲です。


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