織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

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やっと第二話ヒロイン登場です。


2‐3

 雫と源内、どこに居たのか解らない芽衣と俺の四人で堺の街を練り歩く。

 美奈都はなにやら探し物があると別行動だ。

 兼相を護衛として付けておいたので心配は無いだろう。

道中三人から

 

「お前様!あれはなんじゃ!」

 

「旦那様、これはいったい?」

 

「ご主人さま、それってなあに?」

 

 と言う様な質問攻めにあっていた。

 ひとしきり歩き回り街外れに出た時、声が聞こえて来た。

 

「なんじゃんよ!離せって言ってるじゃんか!」

 

 声のする方へ視線を向ける。

 そこにはチンピラ四人に絡まれた少女が一人。

 なにやらチンピラが少女を誘っているらしい。

 少女は健康的に日焼けした肌と少し短めのポニーテールが似合う、現代にいたら女子剣道部の主将をしていそうな美少女だ。

 チンピラの方はザ・チンピラだ。

 そんな事を考えている事が解ったのか雫が

 

「お前様よ、なんでこうチンピラのバリエーションは無いのかの?」

 

「そうだな。どんな物語でもチンピラはチンピラだものな。」

 

「たくさんのチンピラバリエーションを考え出したら、ベストセラー作家になれるかの?」

 

「バカな事に頭を使った作家として歴史に名を残すかも知れんが、本は売れんだろ。」

 

「まあ、そうじゃろうな。」

 

 そんな会話をしながら俺達は再び歩き出した。

 ハッキリ言って、かかわり合いになりたくない。

 去って行く俺達を見て少女が声を上げた。

 

「ちょっと!ねえ!ちょっと!助けてくれないのじゃんかよう!」

 

 さらに無視して歩いていると

 

「ねえ!聞こえているじゃんよう!そこの黒いの、白いの、小さい黒いの、黄色いの〜〜!」

 

 その声に雫がピクリと反応する。

 そしてもう一度

 

「聞こえてるじゃんよう!黄色いの!」

 

 

 

「誰が黄色いのじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

 

 

 雫がキレた。

 一瞬の内に距離を詰めチンピラのこめかみに右膝を叩きつける。

“ゴンッ”と言う鈍い音がしてチンピラ一号が地面に接吻をしていた。

 何事も無かった様な態度でチンピラ一号の上に乗り、我らが腹黒やんちゃ姫雫ちゃんは

 

「小娘よ。お主、今何と言った。わらわをよりにもよって黄色いのじゃと、もう一度口にしたら、わらわの閃光魔術(シャイニング・ウィザード)を御見舞いするぞ!わかったか!この色黒が!」

 

「なんだよ!無視するお前らが悪いんじゃんか!人助けって言葉、知らないのかじゃんよう!」

 

「色黒!お主は一言でも助けてと言うたか?」

 

「言ったじゃん!」

 

「“助けてくれないの”は、言った内には入らん!」

 

「それでも助けに入るのが人の情ってもんじゃんか!あと、これは日焼けじゃん黄色いの!」

 

「誰が黄色いのじゃ!我が旦那様の辞書に情なんぞと言う言葉は無いわ!」

 

「辞書ってなんじゃんよ!」

 

 俺を巻き込むな。

 それに……………あるよ、情くらい。

 しばしの間、雫と日焼け少女の口喧嘩にあっけにとられていたチンピラが口を開く。

 

「おまえらぁ!何シカトこいて……」

 

「だまれっ!」

 

「ゲフッ!」

 

 雫の本日二度目になる閃光魔術がチンピラ二号に放たれる。

 一号同様、二号も地面に接吻する。

 それを見て三号四号がいきり立ち、腰の刀に手をかける。

 俺は芽衣に視線を向けた。

 芽衣は頷き行動を開始する。

 チンピラ三号が『なめてんじゃ』と言った所で言葉に詰まる。

 

「だめだよチンピラさん。あぶないでしょー。」

 

 芽衣は言いつつ三号四号の刀をつばの部分から叩き折っていた。

 刃は鞘の中。

 何が起こったのか解らなかったのだろう、チンピラは刀の柄だけを握った間抜けな格好で立ち尽くす。

 その姿を見て雫は

 

「弱いのう。さすがはチンピラ、あっぱれじゃ!」

 

 意味不明な褒め言葉をかけていた。

 隣で成り行きを眺めていた源内が『旦那様、そろそろ止めた方が………』と話しかけて来る。

 

「俺が止めるのか?」

 

「他に誰か?」

 

「めんどくさいぞ。」

 

「ですから旦那様が。」

 

「あのノリノリ絶好調の雫を止めるのか。」

 

「はい。ついでに調子に乗っている芽衣と日焼け少女も。」

 

「二次被害が出そうだな。」

 

「そうですねぇ。誰か生贄でもいれば。」

 

 そんな物騒で腹黒な会話を続ける俺と源内の後方から声がかかる。

 

「五十鈴さーん、ななちゃーん。」

 

「大将ー、源内殿ー。」

 

 声の主は俺達と別行動をとっていた美奈都と兼相だ。

 いたよ。

 最適な生贄が。

 

「どうしたんですか?もめ事ですか?」

 

「うーん。ちょっと違うかな。」

 

「なんで?どう見てももめ事だよ、ななちゃん。」

 

「美奈都、違うんだよ。」

 

「なんでなんで?五十鈴さんまで。」

 

「あれはな、雫がはっちゃけているだけだ。」

 

「周りの人を巻き込んで?」

 

「いつもの事だろ?」

 

「うん……そうだけど。」

 

「と言う訳だ。兼相、止めてこい。」

 

 最適の生贄に指令を出す。

 

「お!俺がですか?大将!」

 

 兼相は動揺しながら聞き返して来る。

 

「お前以外、誰がやれる?」

 

「そうですね。兼相さんしか頼れません。」

 

 源内に頼られ兼相はやる気になった様だ。

 

「そこまで頼られたら、この薄田兼相!嫌とは言えません。お役目果たさせて頂きます。」

 

 兼相は雫達の下へ足を向けた。

 その後ろ姿を見ながら源内が

 

「大丈夫ですかね?」

 

「まあ、無理だろうな。だけどうっぷん晴らしにはなるだろう。」

 

「そうですね。」

 

「そうだね。」

 

 美奈都は兼相を止めもせず俺の意見に賛同する。

 なんやかんや言ってコイツも意外に腹黒だった。

 

「お嬢!いったい何の騒ぎですか!」

 

「うん?サル相かや。お主は黙っておれ。わらわと色黒の勝負に口を出すでない!」

 

「雫ちゃん。雫ちゃんは色黒ちゃんとしょうぶしてたの?」

 

 芽衣が今更ながらに質問をする。

 

「そうじゃ!芽衣、奴はわらわ達を侮辱したのじゃぞ。」

 

「そうなの?」

 

「よいか芽衣。奴はお主の事を小さいと言っておったのじゃ!」

 

「ちいさい……ちいさい………ちいさい!ぺったんこ!成敗!」

 

「わぁ!なんなんだよお前ら!あと日焼けだって言ってるじゃんか!」

 

 とうとう芽衣までもが日焼け少女を敵と認めた様だ。

 兼相はと言うと後ろで『お嬢止めましょうよ、ね。芽衣殿も、ね。』などと恐る恐る声をかけていた。

 そんな姿を見た源内と美奈都が

 

「「兼相さん!頑張って!」」

 

 声援を送る。

 が、本心は『このへタレ!』と言った所だろう。

 声援を受けた兼相は勇気を振り絞り野獣に向かって行く。

 

「お嬢!いい加減に」

 

 と言った所で

 

「「だまれ!」」

 

 雫と芽衣、左右から閃光魔術と無月をうけ地面に倒れた。

 哀れなり薄田兼相。

 兼相の乱入など無かった様にウチの二人と日焼け少女の口喧嘩は続く。

 もうお腹いっぱいの俺は、少女達の下へ歩み寄り

 

「雫、芽衣、いい加減にしろ。」

 

 一言注意を促す。

 その後チンピラ三号四号に向け

 

「お前ら、二人をその辺で介抱していろ。後で話がある。」

 

 言われた三号四号は力なく『はい』と答え一号二号を連れて行く。

 

「お嬢ちゃん、すまなかったな。ウチの二人が迷惑をかけた。」

 

 俺は日焼け少女に謝罪する。

 

「そ、そりゃいいけどさ、アンタ何者なんじゃんよ?」

 

「俺か?俺はこいつらの保護者の様な者だ。」

 

 日焼け少女との会話中、横で雫がごちゃごちゃ何か言って来たが頭を押さえて黙らせた。




いかがでしたか?

第二話ヒロイン登場ですが名前がまだですね。
次話では名前も出て、物語も進んで行きます。
作中で雫がキレた理由ですが、彼女は金色であって黄色では無いからです。
そして、もう一つ。
彼女は○nちゃんが大好きだからです。


感想お待ちしております。

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