転生生活で大事なこと…なんだそれは?   作:綺羅 夢居

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3話目 魔法のお披露目

3話目 魔法のお披露目

 

「どうしたのよすずか、機嫌が良いじゃない」

 

 午前の授業を終えて、友人二人と一緒にお弁当を食べていると、アリサちゃんが話しかけてくる。

 

 アリサ・バニングスちゃん。金髪の良く似合う活発な女の子。両親は実業家のお嬢様で学校のテストではいつでも百点を取っている。

 

「そうだね。なんか今日は授業中もずっとニコニコしてたの」

 

 そう話しかけてくるのは高町なのはちゃん。栗色の紙を二つに結んでいる女の子だ。なのはちゃんのお兄ちゃん、恭也さんはお姉ちゃんの恋人でよくお姉ちゃんからのろけ話を聞かされる。

 

「そ、そうかな?」

 

 二人の言葉に頬に手を当てる。昨日、拓斗君に会って魔法があるって聞いたときから、ずっと楽しみでそれが表情に出てたみたい。

 

 昨日も明日魔法が見れるんだって思って、あんまり良く眠れなかった。

 

「そうよ。いつもまじめに授業を受けてるのになんか上の空だったわよ」

 

 アリサちゃんの言葉に今日の授業のことを思い出してみる。……授業の内容をほとんど覚えてなかった。

 

「すずかちゃん、なんかあったの?」

 

「うん、ちょっとね」

 

 なのはちゃんの言葉に返すと、私は昨日から一緒に暮らすことになった男の子のことを思い返す。

 

 烏丸拓斗君。昨日から私の家で一緒に暮らすことになった男の子。庭に居たら急に目の前が光って、そこから現れたのが彼だ。あの後、魔法使いってことを知ってびっくりしたけど。

 

「なに? なにがあったのよ?」

 

 アリサちゃんは気になるようで聞いてくる。なのはちゃんも気になっているのか、聞きたそうにうずうずしていた。

 

「昨日からね、新しい家族が増えたんだ」

 

「また猫を拾ったの?」

 

 なのはちゃんがそう聞いてくる。確かに私の家には猫がたくさんいる。その内、何匹かは捨てられた猫だったりする。でも、拾ったって言う意味じゃ間違いじゃないかも。

 

 拓斗君が猫耳としっぽをつけて鳴いている姿を想像する。……意外と似合ってるかも

 

「なに笑ってんのよ?」

 

 思わずクスクスと笑ってしまった私をアリサちゃんが変な目で見てくる。

 

「ゴメン、少し面白くなって」

 

「ハァ〜、珍しいわね。こんなすずかは」

 

 私を見てアリサちゃんが驚いた表情をしている。でも、自分でもそう思う。こんなに放課後が待ち遠しかったことなんて今までなかったから。

 

「ほら、早くご飯食べちゃおう。早くしないとチャイム鳴っちゃうよ」

 

 二人をごまかすために、ちょっとだけ急かしてみる。お姉ちゃんから魔法のことは言っちゃダメって言われてるから二人には内緒にしないと。

 

 そして私は早く放課後にならないかな〜と思いながら、午後の授業を受けた。

 

 

 

 

 俺は忍に頼んで庭を貸してもらい、魔法の練習を行っている。

 

「アクセルシューター、シュート」

 

 クロックシューターを構えて、トリガーを引く。すると、俺の周りに魔力弾が3発浮かぶ。

 

 クロックシューターは俺とリンクしているため、待機モードでない今であれば、インストールされている魔法を自由に使用することが出来る。とはいっても、使いこなせるわけではないが。

 

 もう一度トリガーを引くと、魔力弾が自分の思ったとおりに動く。マルチタスクが使えるわけではないので、一発一発を高速で誘導しているためか、動きは滑らかというより、カクカクしている。

 

 最終的に魔力弾を的の代わりにして、クロックシューターを構えて狙いを定め撃ち抜く。ガンシューティングゲームをしているみたいで楽しかった。

 

 昨日インストールした魔法を一つ一つ試していく。飛行、高速移動、防御、結界など試してみるが、全部上手く使えることが逆に気持ち悪い。使うのに困れば、努力したり頑張ったりしようと思うのだが、こう上手く使えるとやる気に欠ける。いや、楽しいのは楽しいんだけどね。

 

 魔法を確認すると隣においてあるノートパソコンを見る。昨日、色々操作してわかったことだが、このノートパソコンはかなり万能なようだ。

 自分の状態がわかったり、必要な知識があれば、検索して閲覧することが出来る。といってもこの世界に関わことだけだ。時空管理局の内部データやCIAなどの記録が閲覧できたときは何の冗談だと思った。ちなみに俺の魔力量は原作のなのはと同じAAAランクらしい。

 コレが喜ばしいことなのかはわからないが、あるというのであれば有効的に使っていくこととしよう。

 

「拓斗様、飲み物をお持ちしました」

 

 ノエルが飲み物を持ってきてくれる。今、この家に居るのはノエルとファリンの二人だけだ。忍とすずかは学校である。二人は魔法が見れないことを悔しがりながら、朝出て行ったことを思い出す。

 

「ありがとう、それと様付けなんてしなくて良いよ。俺はもう客人ってわけじゃないんだし」

 

「なら拓斗さんと」

 

「それで、魔法を見た感想は? まあ、昨日も見てるって言えば見てるんだろうけど」

 

 ノエルに魔法を見た感想を聞いてみる。先ほどの練習のときにサーチャーを使ったため、ノエルが俺が休憩に入るまで待っていたことを知っている。

 

「そうですね、思ったより派手ではないんですね」

 

「そうだね。火を出したり、氷付けにしたりしているわけじゃないからね。出来ないこともないみたいだけど」

 

 ノートパソコンに魔法のリストを表示する。Iphoneのようなあれは基本的にIphoneと同じ機能であった。違うのはこのノートパソコンの機能を一部使うことが出来ることだ。

 

「お姉さま〜、拓斗君〜」

 

 ノエルと話しているとファリンが駆け足で近づいてくる。

 

「あっ」

 

「オイッ!!」

 

 流石ドジッ娘メイドというべきか、躓いてこけそうになるファリンをソニックムーブを使って近づいて受け止める。

 

「大丈夫か?」

 

「ありがとうございます〜」

 

 強化魔法を使っているためか子供の力でも何とか支えられる。しかし、助けるために密着しているためかファリンの身体の感触が肌から伝わってくる。

 確か彼女たちはメイドロボだったよな。その割には肌に伝わる柔らかさも表情もまるで人間にしか思えない。

 

 体勢を立て直したファリンから離れる。なんか少しもったいない気がしたが、やっぱりこういうのはちゃんとしなければならないだろう。

 

「ファリンどうかしたの?」

 

「えへへ、ちょっと魔法が気になっちゃいまして」

 

 ファリンが照れたように言ってくる。やはり、すずかと同じように魔法のことが気になっているようだ。

 

「すずかや忍さんよりも先に見てもいいの?」

 

「ふぇ、あっ、そうですよね。流石にお嬢様たちより早く見るのは使用人としてダメですよね」

 

 俺の言葉にファリンはショボーンと落ち込んでしまう。その姿が物凄くかわいらしい。

 

「冗談だよ、二人も早く見たいって言うかもしれないけど、練習しているのは知ってるだろうし」

 

 俺はそう言って、インストールされてある魔法を使う。幻覚魔法だ。あたり一面が色とりどりの花に包まれる。

 

「凄い」

 

「綺麗です」

 

 ノエルとファリンの口から言葉が漏れる。

 

「喜んでもらえて何より」

 

 それだけ言って魔法を解く。あまり長時間展開できるほどの魔力は残っていない。

 

「それじゃあ、忍さんやすずかが帰ってくるまで休憩することにするよ」

 

 ノエルの用意してくれた紅茶を飲む。流石お金持ち、そこらへんで売っているティーバックの紅茶などとは風味が違う。

 

 俺は家主の二人が帰ってくるまで、のんびりとお茶を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、はじめるよ」

 

「うん」

 

「ええ」

 

 二人が帰ってきたので魔法の披露をする。まずはバリアジャケットの展開からだ。

 

「凄い凄い、カッコいい!!」

 

 すずかが興奮したように近づいてくる。こういった変身でも喜んでくれるのは嬉しい。まあ、少し恥ずかしいけど。

 

 そして結界を張ってと。

 

「あれっ?」

 

「ああ、結界を張った。魔法を見られるのはちょっとね」

 

 忍が違和感を感じたのか声をあげたので説明する。その後はアクセルシューターだったり、飛行魔法だったり、ソニックムーブなどで高速移動したり、ノエルたちに見せたように幻覚魔法を使ったりした。

 

 魔法が使われるたびにすずかは喜び、ファリンも楽しそうに見ている。忍は興味深そうに観察し、ノエルも同じように魔法を見ていた。

 

「ふう、コレでおしまい」

 

 俺は魔力弾を花火のように破裂させる。すると俺たちに魔力の光が降り注いだ。特に意味がある魔法ではないが、こうやって見せる分には面白い魔法だろう。

 

「凄かったよ拓斗君!!」

 

「ええ、あんなことまで出来るなんてね」

 

 すずかと忍が結界を解き、バリアジャケットを解除した俺に興奮冷めやらぬ顔で話しかけてくる。

 

「楽しんでいただけましたか?」

 

 ちょっと演技じみた感じで二人に聞いてみる。

 

「うんっ」

 

「ええ、とっても」

 

 そういった二人は笑顔であった。


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