よく言われるのが、混乱して頭がパンクした時、誰にも思いつかない行動に出ると言われる。その時はどれだけ静止しても止まらないとも。
昔はよくこれで変態達を振り回していた俺は、ツッコみについては遠慮なく入れる事で、精神的余裕を保ちストレス解消をしていた。
だけどここ数日、数年の変態達の行動によってストレスが溜まっていたのか、あっさりと箍が外れ、暴走してしまっていた。
「スパイダーギルディっ!!」
帰宅の挨拶もしないまま、靴を脱ぎ捨てて階段を駆け上がる。何故かそこに居ると判った自分の部屋の扉を開け放つ。
「活発に動き汗に濡れる太もも…」
「俺の部屋で何やってんだーっ!!しかも撮影用の暗幕まで持ち出してっ!?」
だけどその直後に聞こえた言葉とゴクリと生唾を飲み込む音に、ついついツッコんでしまい、更に部屋が暗い事に気付き、それが夜と言う時間の撮影に使われる暗幕である事に気付いた瞬間、テイルレッドの腕を掴んでいる事を忘れてしまっていた。
「て、テイルレッドたんだぁっ!?」
「テイルレッドたんって言うなぁっ!!」
「ちょっ、麗路も、いい加減下してよっ!!」
だが冷静になった瞬間、変態達の誰かが叫んだ言葉に硬直してしまう。だがその変態達の中の一人が叫んだ言葉に反論したテイルレッドの言葉で正気に戻った。
愛香ちゃんも俺が正気に戻ったのを察したのだろう、降ろせと言ってくる。その事に一言謝り、そして降ろした後、ギャアギャアやっている変態達を止める為、愛香ちゃんと一緒に殴り掛かった。
なんか話を聞くとスパイダーギルディ達と同じくテイルレッドも属性力があるか、その防御力以上の攻撃でなければダメージ等ならない。なのに打ん殴られた場所を押さえて蹲っているテイルレッドを見ると、愛香ちゃんの攻撃ってどのぐらいだろうと考えて戦々恐々としてしまう。
「…何故、ツインテールの戦士がここに居られるのでしょう?」
「…うん、なんかあれ総二だって。」
「はい?」
だがそんな騒がしさもスパイダーギルディの警戒を含んだ疑問の声に静まり返る。言っていいのか、それとも言わない方がいいのか。少し考えたが、総二に止められた訳では無い事を思い出して、正確には麗路が暴走した所為で言うタイミングが無かっただけなのだが、正直に言う。
「なんで言うんだっ!?」
「えっ?言っちゃいけなかった!?」
「いや、まぁ、…いけないのか?」
「私に聞かれても…」
総二に非難され、言っちゃいけなかったのかと焦ったが、どうやら総二もノリで言ったらしく、言っちゃいけない事なのかと愛香ちゃんに聞いていた。いや、それ愛香ちゃんも困るだろう。
「総二殿で良いのだな。」
「おう。」
「取り敢えず、その姿から元の姿に戻れるか?」
「あ、ああ。そうだな。」
「そんな勿体無いっ!!折角女の子の体になったのだから、目一杯ツインテールを愛でるべきだふぅるっ…」
スパイダーギルディが頭を抱えながら、総二に向かって変身を解く様に言う。総二もあくまで説明の為に変身したのであって、何時までもテイルレッドの姿で居る気が無かったようで、変身を解こうとした。
その事にスネイルギルディから待ったの声がかかる。うん、言うと思ってたから取り敢えず蹴り飛ばして黙らせる。カタツムリの怪人であるスネイルギルディは性転換属性。絶対総二が男の子から女の子に性転換している現状に喜んでいると思ってた。
「姫様、ご家族を集めて貰えますか。現状についてご説明いたします。」
「姫って呼ぶなっ!!…まぁ、良いけどさ。」
つい何時もの感覚でツッコみを入れてしまったが、スパイダーギルディ達のやけに真面目な様子に母さんや裏に居るだろう父さんと姉さんを呼びに行く。
母さんは一階の台所で洗い物をしており、スパイダーギルディ達が真面目な話があるんだってと告げて、父さん達の居場所を聞く。姉さんは部屋らしく、母さんが呼んで来てくれるらしく、お願いしてから案の定裏の撮影スペースの事務所で作業していた父さんを呼びに行った。
全員が俺の部屋に集まった所で、元が旅館の大部屋の一つで広いとは言っても、これだけの人数で詰めると狭いと言う事で母さんの鶴の一声で、元宴会場の方へと移り直すこととなったのだった。
次話は説明会。もしかすると、次話になるか次々話になるか分からないが、絵を付けます。拙い絵ですが、どうぞよろしければ見てください。