『ーーーエグゼキュートウェイブ!!』
オーラピラーで拘束されたエレメリアンをテイルブルーのランスが貫き、爆炎の中へと消えた。そんなツインテイルズの戦闘映像を俺は、総二の家の地下に拡張建設された秘密基地で見ていた。
いやさ、流石にそれは無いと思うよ愛香ちゃん。
巨乳属性のエレメリアンだからって、問答無用で必殺技は無いと思うんだ。
「はいはい、大丈夫ですからね?お姉さんがついてますからねぇ。」
「アンタは麗路に何をやってんのよっ!?」
「それは決まってるじゃないですか。愛香さんの戦闘が、ちょっとしたトラウマになってるんですから…」
「うっ、それは悪かったって思うわよ。」
あのライガーギルディ戦の後、検査を受けたら重要な器官に幾つか致命傷クラスの傷が見つかり、一時騒然となっていた。
バッグワームギルディの科学力と張り合い、色々技術レベルも上がっているトゥアールの発明品。それも治癒を目的としたものでもフル稼働させなければいけなくなり、事胸に関して目が据わったテイルブルーの戦闘風景にトラウマを植え付けられたのだ。
きちんと治った後も、心の傷の方は癒せず、こうして定期的に通う事となっている。
転送機で帰ってきた愛香ちゃんが、今のトゥアールの状態にツッコみを入れるも、治癒目的以上の事をしていない。俺の様子にする余裕も無い程で、珍しく愛香ちゃんが言い負かされていた。
後ろから抱きしめる様に、俺の頬と自分の頬を密着させており、手は腰の位置にある。
不安に押しつぶされそうになっているからと、出来るだけ密着している面積を大きくする事、心臓音や体温での安心感を与える事で、トラウマの軽減になるのだそうだ。
ただそれだけでは治療とは言えず、テイルブルーの戦闘も見せられているという訳である。
「…あのさ」
そんな中トゥアールに静々と誰と聞きたくなる様な、そんな様子で愛香ちゃんが口を開く。
「ふむふむ。ええ出来ますよ。この巨乳属性の属性玉と、前に総二様達の属性力が凝固したツインテール属性の属性玉を組み合わせた新型のテイルギアなら。」
「ほんとっ!?」
いや、あのさ。俺まだ震えが止まって無くて、トゥアールに抱きしめられたままだから聞こえたんだけど、巨乳になるテイルギアって……それ偽物だよね。
「ねぇ、麗路…何か言ったかしら?」
「愛香さんっ!!そんなに麗路様のトラウマを刺激したいのなら、……作りませんよっ!!」
「ごめんなさいっ!!」
「土下座ぁっ!?」
考えを読まれたのか、凄んでくる愛香ちゃんに止まって来ていた震えが再発。その事にトゥアールが愛香ちゃんを叱り、巨乳になるテイルギアを作らないと脅す。
その脅しに屈し、すぐさま土下座を敢行した。変わり身の早さよりも、土下座までの動きが目で見えなかったその早業に驚愕の声を上げてしまう。
まったくと言いつつ、その驚愕で震えが止まった俺を解放し、変身を解く前の総二。テイルレッドに変態的な悪戯をしかけ、いつも通りに愛香ちゃんにふっとばされている。
どうやら空気が悪くなった為に、ふざけて無理やり空気を変えたようだった。
それから数日後、もう殆ど終わった治療行為も兼て例の秘密基地へと来ている俺の目の前で、愛香ちゃんがブンブン腕を振り回し、テイルオン!テイルオン!と変身するためのワードを連呼している。
「ちょっとトゥアール!!これ壊れてんじゃないの!?」
「そんなはずはありませんよ。何せ作ったばかりなのですから。」
新しいテイルギアは巨乳属性を兼ね備えたハイブリットギアなのだそうだ。零式に近いゴテゴテした武装満載の初期状態から、撃ち尽くした武装を自然パージし、テイルブルーに近い軽装の身軽になって行くタイプなのだそうだが、一向に変身する気配が無い。
「もしかして、愛香さんの貧乳属性が巨乳属性を受け付けないからとか?」
「ぶっ飛ばすわよっ!!」
「いや、たぶん違うんじゃないかな?」
トゥアールがとんでもない事を言い出した。涙目になりながらも凄んでくる愛香ちゃん。この時ぐらいにはトラウマもそれほどでは無く、震えては来ない。
その事にトゥアールが『治療という名目で、堂々とロリ体型の男の娘に触れる事が出来なくなった』と嘆いていたりするのだが、この時の事は割愛させて貰う。
そのトゥアールの推測を否定する総二。
総二曰く、ブルーのテイルブレスに愛着がわいて、他のテイルブレスを拒否している心が愛香ちゃんにあるからじゃないかと言っていた。
うん、とんでもない推論だが、心から生み出される属性力と言うエネルギーを使っているテイルギアならば有り得なくもないが、それ確証がないでしょ。
「だったら総二が変身してみれば?」
「俺ぇっ!?」
「そうですよ。総二様が変身できないのであれば、総二様の考察の方が正しいと判りますし、もし変身出来てしまったのなら、それは愛香さんの貧乳属性が強すぎるからと判りますし……」
俺の一言に総二が自分を指差しながら、裏切ったなと言う顔を向けてくる。トゥアールも押してくるし、愛香ちゃんなんか無言で総二に黄色い巨乳になるテイルギアを押し付けている。
「…ごちゃごちゃ言わずに、さっさと試しなさい……」
「はいっ!!」
ついには言い訳しまくって変身を拒否していた総二を脅しはじめる。顔を引き攣らせ、敬礼するように返事を返した総二が赤いテイルギアを外し、黄色いテイルギアにはめ直す。
「テイルオン!」
そして変身ワードを唱えた。
「…変身、出来ちまった……」
「なんでよーーーーーーーっ!?」
「あーはははははははーーーー、腹が、腹が攀じ切れるぅっ!!これ、これで決定ですね。愛香さんは巨乳属性の属性力にすら嫌われる貧乳属性の持ち主ってことでっふるぶわぁ…」
総二の体が光に包まれ、そこから出て来たのはゴテゴテとしたパーツを付けた、テイルレッドが成長すればこうなるのではと言った少女。赤みを帯びているツインテールが黄色いパーツに色彩を与え、なんとも秋の山を連想させる。
この世の終わりと言わんばかりに、ムンクの叫びの様になって叫び声を上げる愛香ちゃんに、その愛香ちゃんを指差して腹を押さえ大爆笑するトゥアール。意識しているのか、無意識なのか、トゥアールの顎をアッパーカットで綺麗に打ち上げ、爆笑していたトゥアールが地下天井に突き刺さる。
「むにゅ……?」
「むにゅ…じゃなーいっ!!」
パーツを態とパージし、何時の間に持って来たのか、ああ未春さんかぁ。全身を映す姿見の前で胸を押しつぶしている。
テイルレッドの容姿は確かに幼いもので、胸なんかないからねぇ。突然現れたそれに、そこそこ興味を示しても仕方ない。総二の場合、あくまでツインテールの添え物みたいな位置づけだから、なんというかやってる本人にエロさはないが。
だけど愛香ちゃんからしたら、渇望する物である以上、ましてやそれを男の総二が手に入れてしまったのだ。半泣きになりつつ、ツッコみを入れている。
「なんで、なんで男の総二に変身出来て、私に出来ないのよっ!!」
「そんなのさっきから言ってるじゃないですか。愛香さんは貧乳ぅぐるはっ!?」
いつの間にか復活を果たしたトゥアールが再び愛香ちゃんをからかい、吹き飛ばされている。
「このツインテールは良い物だっ!!」
「遊ぶなっ!!」
そんな二人の喜劇を横に、姿見の前でいつの間にか持ってきていた、この辺は流石に未春さんの子だなぁと思う。何時か娘とか奥さんのツインテールを自分で結う時に、似合うだろうと思い買い込んでいた髪留めやヘアゴムのコレクションで、自身のツインテールを飾り付けしていた総二に愛香ちゃんのツッコみがさく裂する。
赤いテイルギアでは外せなかったツインテールを留めているフォースリヴォンが外れていた。というか外せたのそれ。なんかトゥアールの説明して貰った内容では、それでテイルギアの維持をしているような事を聞いたのだが。
「総ちゃん、総ちゃん、コスプレもして見ない?これなんかツインテールに似合いそうよ。」
「おおっ!!」
「興味を示すなぁーーーーーーっ!!」
白いワンピース。しかも麦わら帽子まで持って来た未春さん。麦わら帽子は被るのではなく、両手で持つようにするというアドバイス付で。
幾らなんでも女装にまで手を染めるのは如何かと思う。いやさ今は本当に女になってるからって言ってもさ。愛香ちゃんが心の叫びを上げた。
この騒動はエレメリアンの反応が出たアラームで中断。ちゃんと総二は赤いテイルブレスをして出撃したのだった。
ソーラのフライング出演。この小説内の総二は既にツインテールを自分で結うことが出来ています。麗路の髪を小さい頃からふざけてツインテールにしていた弊害ですね。
後どうでもいい事ですが、愛香の文字の後に巨乳と変換しようとすると、虚乳になってしまうんですが…(笑)ちなみに貧乳だと、浜乳になる不思議。俺のパソコン、愛香ちゃんの胸が貧乳以下だと言いたいのですかね?