俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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共演、テイルレッドとテイルツイン!?後篇

家の人のスタッフもまた避難を始めている中、家に居候しているエレメリアン達はその手伝いをしている。溢れ出たタイガギルディと呼べるようなエレメリアンは、ツインテイルズを意識しているものの、避難誘導でちょうど反対側に居た俺達にも向かって来ていた。

 

「こいつら、そんなに強くないぞっ!!」

 

テイルレッドの声が響き渡る。ライザーチェインへと姿を変えて、数十体を一撃で粉砕していく。スパイダーギルディも数回手に持った長刀で数回振るうだけで、その分身体を消し飛ばしていく。

 

ドラグギルディもまた、ツインテールの剣技を駆使して、数を減らすも、その数は減っていないかのように思えた。

 

俺達、俺と真奈美ちゃんは下手に動く事はしない。他の人たちが避難した後である以上、俺達が一番の足手纏いになりそうであったから。だからこそ、スネイルギルディに清水君、スパイダーギルディに守られているこの場所から無理に動く事を止めたのだ。

 

「こいつら、あーもう!!キリがない!!」

「数に任せて押しつぶすつもりなのだろう。」

 

テイルブルーが頭を掻きむしりイライラを募らせて叫んだ。家のエレメリアンの中の内でも最も弱いと言われる清水君ですら、一対一ならば勝てているのだが、これだけのエレメリアンが居る中でライガーギルディの分身体の数が減っているとは言えなかった。

 

その様子に焦りを抑え込んで、ドラグギルディは現状について口に出す。それは誰しも分かっていた事。だが改めて言葉としたことで、厄介さが身に染みて判る。

 

『ぐぅははは、分身体等幾らでも生み出せるのよぉ!!貴様らが疲れ切ってからゆぅっくり属性力を奪ってやるからなぁ!!』

「えーい、出てこい!!不意打ちを卑怯だと言っていた奴のする事じゃないわよっ!!」

『う、うるさいっ!!正義のヒーローなのに、三回も不意打ちした奴が言っていい言葉じゃないわぁっ!!』

 

足元から籠ったライガーギルディの声が響いてきた。テイルブルーが苛立ち紛れに数体の分身体を消し飛ばしつつ叫ぶと、真奈美ちゃんにやられた一回もカウントして叫び返してくる。

 

どうやら本体は地面から出て来るつもりは無いようで、俺達側の疲労だけが溜まって行く。

 

「本体を直接叩くしかないぞっ!!」

「本体って言ったって、地面の中じゃないっ!!」

 

それが出来たら苦労しないと言わんばかりにテイルブルーが、それを提案したテイルレッドに噛みつく。足元を作ってある場所なら、テイルブルーを含めた怪力自慢達が破壊すればいいが、それでも本来の地面の部分に潜行されてしまえば、どうにもならない。

 

「誰か学校水着属性居ないのっ!?」

「何の偶然か、我らに学校水着属性のエレメリアンは居ないっ!!」

「威張んなっ!!」

 

テイルブルーがライガーギルディと同じ属性を持つエレメリアンが居ないのか聞いてくるが、学校水着属性のエレメリアンは居ないとスパイダーギルディが胸を張って答えた。それにツッコみを入れるテイルブルー。

 

そんなやり取りに、周りから焦りという感情が薄れていくように見えた。スパイダーギルディが狙ってやった様である。

 

「…いや、一人居るっ!!」

「えっ!?」

 

だがその言葉を否定するテイルレッドの言葉で、一斉に全員が俺を見た。

 

「そうですよっ!!学校水着属性の属性力を地面に浸透させて、地面を水の中の様に泳いでいる訳ですから、麗路様のギルディギアで地面から属性力を奪ってしまえばっ!!」

「嫌だからねっ!!」

「ひ、姫様ぁ…」

 

舞台上で守られながらポチポチやっていたトゥアールが、テイルレッドの案を押してくるが、俺はすぐに強く拒否した。隣でスパイダーギルディが肩を落としているの何か知らない。

 

「だって、ツインテール属性で変身した時にツインテールになるんだろ。ならスクールスイム属性で変身したんなら…」

「スク水を着るんじゃないですか?」

『おおおぉぉぉぉ!!』

「だから嫌なのっ!!」

 

俺が心配しているのはそこ。スク水姿なんか晒したくないのである。何故かひょっこり顔を出したライガーギルディも含めて家の変態達まで、トゥアールの言葉に興奮した声を上げている。

 

俺の拒否の言葉に《えええぇぇぇぇ…》と声を揃えて落胆する変態達。

 

「その姿と殆ど変らないじゃないっ!!」

「下はまだハーフパンツだからいいのっ!!…俺、こんな顔でも男だよ?ピッチリしてる分…」

「馬鹿っ!!何の心配してるのよっ!!」

「しちゃ悪いかっ!!ここには真奈美ちゃんも居るんだぞっ!!」

「あ、あの、私は気にしませんからっ!!」

 

まだ女装する分には、心底嫌だがこの状況だから我慢しよう。だけどほぼ確実にアレが浮き出てくる。それは我慢できない。

 

「なら複合転化装置を起動させて、スネイルギルディさんに協力して貰えばいいじゃないですかっ!!」

『それだあああああぁぁぁぁぁぁ……っ!!』

 

ギルディギアの追加した機能の一つに、複合転化というのがある。ようはツインテール属性とブルマ属性を合わせて変身すると言ったように、複数の属性を混ぜて変身する事が出来る物。

 

というかライガーギルディも声を揃えるなよと言いたい。

 

「姫様っ!!お早くっ!!」

「ああ、もう。ほらっ!!」

 

直ぐに隣に居たスネイルギルディとハイタッチ。ギルディギアに性転換属性のシンボルが浮かび上がる。すぐに地面に触れ、属性力吸収装置を最大で発動。

 

ライガーギルディのばら撒いた学校水着属性の属性力を取り込む。先と同じくスクールスイム属性のシンボルがトランスセクシャル属性の反対側に浮かび上がった。

 

「ギルディオン!!」

 

掛け声と共に、俺の体が光に包まれる。

 

足は魚の鰭のような物が付いたロボットの足。胴体は案の定スクール水着で、股間の喪失感が凄い。胸の部分肩の部分もアーマーは無く、肘を守るガードが付き手は指の間に膜の様なものが付いている。

 

鼻先まで覆うゴーグルの様なもの。それ以外の部分を被うフェイスガードに、耳の横当たりから鰭の様な飾りが付いたヘッドパーツ。

 

背中には丸みを帯びた外羽が二枚。その付け根にスクリューがある。

 

「スク水少女来たーっ!!」

「喜ばせる為に変身したわけじゃないんだかねーっ!!」

 

ガッツポーズを取って涙を流しながら喜ぶライガーギルディにツッコみを入れつつ、俺はチャポンという音を発て、地面を潜る。

 

「ハハッハー、水中で無防備な泳いでいるスク水少女の未発達な胸を眺める為、こと息を止める事と、泳ぐ事に関して極めた俺に、泳ぎの勝負を挑んでくるとは、いい度胸であると言っておこうっ!!」

 

同じく地面に潜行してきたライガーギルディ。だがその属性力は弱まっており、ジタバタと溺れているかのような仕草である。

 

このゴーグルの機能なのか、まるで地面の中なのに無色透明な水の中に居るような視界。その上魚になったかのような全能感を感じながら、俺はライガーギルディの更に下に潜り、真上へと蹴り上げた。

 

「よし、今だっ!!」

 

地面から、真上へと吹き飛ばされたライガーギルディにテイルレッドの攻撃が炸裂する。

 

「なっ!!」

「ああ、もう。何をやってるのよっ!!」

 

だがその瞬間、ライザーチェインの制限時間がやって来てしまった。パワーダウンし、ノーマルの姿へと戻ってしまう。

 

当然の様にライガーギルディには傷を付ける事が出来ず、イラつくテイルブルーの声を置き去りに、そのままライガーギルディは再び地面へと潜ってきた。

 

「ぶばばば、まだまだ我に勝機ありっ!!」

 

なんとも言えない、水中で声を出したかのような声で誇るライガーギルディ。そのままこちらに向かってくる。

 

(ぐっ!?)

「未熟、未熟、スク未熟ぅ!!スク水を真に愛しておらん貴様等が、一時的にスク水を着た所で話にもならんわぁっ!!」

 

途中変なのを挿みながら、猛撃を掛けてくるライガーギルディ。元々の防御力が高いとは言っても、どうやらスクールスイム属性は防御力を犠牲にしているようで、その攻撃に呻いてしまう。

 

(うわっ!!)

「貴様だけは許さんぞ、テイルブルーっ!!」

(危ないっ!!)

 

一瞬怯んだ瞬間に蹴り飛ばされ、距離を離されてしまう。そこでライガーギルディは追撃を掛けてくるのではなく、地上で分身体を相手にしていたテイルブルーへと標的を換え、向かっていく。

 

どうやら地中から仕返しに不意を打とうとしているようだ。

 

(させるかっ!!)

「なんだとっ!!」

 

だが逃げを打つ為にギルディギアの速度はかなりの物。だからこそ、攻撃の瞬間になったがライガーギルディを追い抜き、テイルブルーを庇うように飛び出すことが出来た。ガギンと音が鳴り、背中に衝撃を感じるも、ライガーギルディの驚きの声がどうなったのかを物語っている。

 

「大丈夫?」

「………ねぇ?」

「…えっ、えっと?」

「ねぇ、アンタ男よね?なんでさ…」

「…テイルブルー?なんか怖いよ?」

「なんでさ…、私よりも立派なもんぶら下げてるかなぁっ!?」

「いぎ、待って痛っ、痛いから離して、離してぇ!?」

 

庇うように飛び出したのが駄目だった。振り向いた愛香ちゃんの目の前。ギルディギアに変身すると、厚底による嵩増しで、特にこのスクールスイム属性での変身では、ちょうど俺の胸が愛香ちゃんの目の前に来る。

 

目が据わったテイルブルーの怪力で、モゲロ、千切れろとばかりに両手で俺の胸を掴み、力を込めてくる。

 

「ひっく、ぐすっ、もうヤダァ…」

「あっ…」

 

ギルディギアの防御力ですら抜き、そのあまりの痛みに涙が出て来る。女装に始まり、本当に女にされ、スクール水着を着せられ、守った筈の人から痛みつけられる。

 

この時の俺の心情は理不尽な事を強要されている事で一杯一杯になっていた。俺が泣きだしてから、しまったと言う顔をする愛香ちゃん。バツが悪そうに顔を背ける。

 

だがすぐにその顔が引きつった。

 

俺が泣いた事で、家の過保護な変態達が静かに憤っていたからだ。

 

その事が分かったのだろう。無言で過ぎる時の中、愛香ちゃんは今だ地面の上に転がるライガーギルディを指差す。

 

「…元々はアンタが悪いんじゃないっ!!」

「俺ぇっ!?」

 

責任転換したのだ。自分を指差し驚くライガーギルディ。

 

だけど家の変態達もまた、テイルブルーに、一応俺の幼馴染でもある愛香ちゃんを傷付ける訳にもいかなかったのだろう、その責任転換に乗ってしまった。

 

『ギルティ、ギルティ、ギルティ、………』

『ギルティ、ギルティ、ギルティ、………』

『ギルティ、ギルティ、ギルティ、………』

『ギルティ、ギルティ、ギルティ、………』

「どわぁっ!?」

 

ライガーギルディに殺到する変態達。目は先の愛香ちゃんの様に据わっている。それどころか怪しく輝いていた。

 

「わ、わ、出てこいアルティロイドっ!!俺を守れぇぇ…!!」

『モケェ!?』

 

何度も攻撃を受けながらも、受けてはいけない攻撃だけは捌いている。だがそれも時間の問題で、アルティロイドを呼んで壁にしようとした。

 

『こんボォォゲェッ!!』

『モ、モケェっ!?』

 

だけどそれはこっちのアルティロイドも同じようで、それどころか怒りで真っ赤になっている。声もなんだか怖い感じに籠っており、ライガーギルディ側のアルティロイドを圧倒し始めた。

 

「うわぁ…」

「…愛香さん、流石に酷いと思いますよ?」

「…反省はしてるわ、反省だけはね。」

 

そのリンチと呼んだ方が良い様な光景にテイルレッドが引く。トゥアールもまた引きながら愛香ちゃんを責める言動。愛香ちゃんはと言うと、この光景を引き起こしたのが自分だと自覚はある物の、それでも強敵が倒せるのならいいやと言う顔をしていた。

 

「行くぞ、テイルレッドっ!!然りと決めろっ!!」

「あ、うん。分かったっ!!」

 

理性があったドラグギルディが、今のままではタダのリンチでライガーギルディを倒してしまうと判断したようで、流石にそれは不味いと感じたらしく、テイルレッドに声を掛けて、ライガーギルディを宙に放り出す。

 

「使い過ぎでパワー無いけど、これならっ!!オーラピラーっ!!」

 

炎の渦でライガーギルディを捕獲。手に持ったブレイザーブレイドを構えて突き進む。

 

「アタックの瞬間のみ、全ツインテールを引き出すっ!!シャイニングチェインっ!!」

 

そして攻撃の瞬間だけ、ツインテールを輝かせ、光に包まれた一撃を放った。地面を滑る様に振り向き止まる。

 

「もっと、もっとツインテールのスク水少女が見たかったぁ!!」

「…それ、無理じゃない?水泳キャップに入れると思うんだけど…」

「あっ!?」

 

両手を広げ、体前面に刻まれた傷が光りだし、馬鹿な事を言って倒れる寸前の言葉に俺がツッコみを入れると、今その事実に気付いたのか、呆然としながら爆発せずにサラサラと砂が風に飛ばされるように消えていく。

 

コロリと転がった属性玉だけが其処にあった。

 

「姫様、大丈夫ですか?…ぶっ!?」

「ちょっ、スパイダーギルディ、大丈夫!?」

 

心配して駆け寄ってくるスパイダーギルディに気付かず、この時俺は《痛かったぁ…》と涙目ながらに傷の確認をしていた。食い込んだ指の後で赤くなっている。

 

そんな時に突如、鼻から血を噴きだし倒れるスパイダーギルディ。一時場は騒然となるも、抱き起したスパイダーギルディの一言に、心配して損した気分になる。

 

酷いと思わない?敵の攻撃が掠っていたのではと心配したのに、『ピンク色のポッチが見えました…』ってさ。


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