俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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この話は、この小説初めて三人称で進めています。


今回、三人称で進めて見ます。

麗路は如何してこうなったと頭を抱えたい。轟々と風が吹き荒れ、まだ理性はあるのか周りに被害は無い物の、それでも鳴り止まない連続した金属音と、大地を踏みしめ削り上げる音。

 

裏手の撮影スペースの中で、一層広いアクション用の広場に、空へと伸びる赤と黒の竜巻が三つ。

 

「三人共っ!!いい加減に…しろっ!!」

『どわぁぁぁぁ…』

 

吹き荒れる風で撮影器具やセットが吹き飛びそうになっているのを見て、ついに麗路が切れた。

 

朝トゥアールから渡された、改良を加えたギルディギアの属性力吸収機能を三人のツインテール馬鹿に向かって発動。

 

突如今まで最大値で稼働させていたものに、属性力という燃料が送られなくなった為に、テイルギアは停止。エレメリアンの二人は気絶したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは試してください。」

 

目の下に隈を作ったトゥアールがやけにハイテンションで促す。麗路のギルディギアを夜を徹して改良していたらしい。

 

麗路の無限の男の娘属性の発するエネルギー値がシャレにならない程高まり、アルティメギルを呼び寄せてしまう。

 

麗路の身を守る為に作った筈のギルディギアであったが、過剰機能により、枷となってしまう事が分かったのだ。

 

他の属性力で、麗路の無限の男の娘属性を中和して初めて使える様になりはするのだが、それでもその場に他の属性力があるとは限らないし、不意打ち気味に攻撃をくらい、属性力を吸収する前に気絶させられれば元も子もない。

 

だからこそ、麗路の男の娘属性を一定値まで吸収、空気中に放出する機能を付けたり、他の属性力を貯えておけるようにしたり、エレメリアンにとっては危険だった属性力の過剰吸収機能に麗路の意思を反映できるようにしたとの事。

 

「えっと、それじゃ床屋さん宜しく。」

「よっしゃ!!ほらよ、姫さん。」

 

床屋さんとはロングホーンドギルディの人間名。まぁカミキリの怪人だから、麗路がそこから思いついた安直なネーミングだが、それでも本人は気に入っていたりする。

 

何故彼かと聞かれれば、この実験はあくまでエレメリアンから吸収しての変身が大丈夫かの実験であり、ツインテール属性の彼なら、前日に実験しているツインテール属性での変身になると判断したから。

 

何故昨日と同じ場所でやらないかと聞かれれば、この場所には結界の所為で麗路から発せられた属性力が充満しており、属性力の回復も速いだろうとの魂胆がある。

 

麗路とロングホーンドギルディが顔の前まで上げた両手の掌をパチンと打ち合わせた。

 

といっても麗路とロングホーンドギルディの身長さから、ロングホーンドギルディは腰を屈めており、麗路は精一杯背伸びをしていたりするが。

 

打ち合わせた掌から属性力を吸収したギルディブレスにツインテールのシンボルが浮かび上がる。

 

「どう?それ程吸収したわけじゃないけど…」

「大丈夫だな。少し気怠い感じはするけど、予想通り凄い勢いで回復してるし。」

 

属性玉から直接属性力を吸収する訳なので、エレメリアンであるロングホーンドギルディにとっては命に係わる。だからか少し心配そうに声を掛ける麗路であったが、ロングホーンドギルディは大丈夫と安心させるように返した。

 

確かに属性力が減って、一時的にせよ弱った事は確かだが、それもこの空間に充満する麗路の属性力をとてつもない勢いで吸収しており、もう少しすれば完全回復も出来そうだ。

 

ドラグギルディの治療が上手く行ったのも、この空間だったからだろうとも言える。

 

元々は麗路を守る為に張った物だったが、意外な副作用もあった物だと思った。

 

「それじゃ、改めてGO!!」

「ギルディオン!!」

 

二人のやり取りを微笑ましく、涎を垂らしながら見ていたトゥアールが流石に何時までもこのままにはしておけないと相変わらずハイテンションで掛け声を上げる。

 

手首よりも腕よりの部分に嵌った四角柱の、昨日よりも無粋な感じが無くなり、模様の様なものがいくつか彫り込まれているそれを掲げて、そして定着した掛け声を上げた。

 

体が光に包まれ、上半身は臍上丈の半袖インナーシャツに、下半身は膝まであるスパッツへと変わる。足はより鋭利さを増したSFに出て来るロボットの足に似ているが、形は人間に近い。

 

腰に丸みを帯びたが、尖った長い三つのリア、フロントアーマーが付き、胸の部分に戦闘機の先端を思わせるアーマーが装着された。

 

肩アーマーはシンプルだが、肘からしたはレーシングカーを思わせる手甲が付き、手先が尖った手袋の様なものへと変わる。

 

頭に細いヘッドパーツだが、耳元まで覆う様な形へと変わっており、テイルレッドの様なウイング状の髪飾りの横からツインテールがふんわりと揺れていた。

 

背中から昨日とは違い、丸みを帯びた外側の二枚羽と、真っ直ぐな二枚の内羽で構成されているウイングがあり、その下の根元にウイングスラスターが増設されていた。

 

「おお!!」

 

麗路は昨日とは違う姿に驚きの声を上げる。ふわりと少し浮き上がってみるが、昨日よりも明らかに伝達速度が上がっていた。考えてからそれが実行に反映されるまでの時間が短くなっている。

 

「ここで飛ぶのはおすすめ出来ませんよ?」

「分かってるよ…」

 

トゥアールの注意に昨日の様に駄々を捏ねる訳にもいかず、渋々地面へと足をつける。

 

「へー、それが麗路のテイルギア?カッコイイじゃない。」

「あ、愛香ちゃん。」

 

その時ちょうどやってきた愛香に声を掛けられた。おはようと挨拶を交わし、カッコイイと言われた事に気分を良くする麗路。ツインテールだと言う事もあり、可愛いとしか言われて無いからだ。

 

「でもこれってあんまり戦闘には不向きなんでしょ?」

「それはそうですよ。あくまで基本を理解させるために流されたものですから。だからこそ私はテイルギアを開発したんです。」

 

そしてこのギルディギアの開発に当たって、スペックを聞かされていた愛香はトゥアールに不満を漏らしていた。もしかすると戦いが少しでも楽になるかもしれないと考えたのなら、文句も出てこようものだが、それでもトゥアールからすれば筋違いの文句でもある。

 

元々のギルディギアの開発経緯は、あくまで麗路の自衛用。変身する必要も無く、逃げる事と攻撃を防ぐ事を念頭に置いており、最初はエレメリアンだけで開発する筈だったのだから。

 

トゥアールと言うテイルギアを開発出来るだけの能力を持った異世界の天才科学者の参入というのは、エレメリアン側としてもトゥアール側としても思いもよらなかった事であるのだ。

 

トゥアールがエレメリアンから意図的に流された、初期のテイルギアを今だ大事に取っていたから、これを元に開発したに過ぎず、テイルギアと比べれば基本スペックが低い上、もし戦えるようにしようとすれば、新たにテイルギアを開発した方が速いと言うのもある。

 

「ふーん…、まぁいいわ。それより総二は何処に居るのよ?」

「なんか馬鹿やってる。ほらあそこ。」

 

ギルディギアの底上げで二メートル近い身長になった麗路を見上げながら、愛香が昨日麗路の家に泊まった筈の総二の居場所を聞く。

 

愛香曰く、唯の高すぎる厚底ブーツと評されたギルディギアをそのままに、ポチポチと何かノート型パソコンで調べているトゥアールの代わりに答える麗路。

 

指を指した方向では、神社での撮影に使われるセットがあり、そこに作られている社の前で総二が拝んでいる。

 

「何を拝んでるのよ?…って、でぇ!?」

 

あくまでセットであり、似せて作ってあるだけのもので、御神体は存在せず、御利益も無いそれに一心不乱に拝んでいる総二を訝しみ、社の中を覗き込む愛香。

 

目に入って来たのはツインテールになって、胸を張って動かない様にしているドラグギルディであった。

 

「な、何をやってるのよっ!!」

「いやな、どうしてもドラグギルディの、あの見事なツインテールを拝んでみたくてな?」

「うむ。こうして御神体代わりとなっている。ここならば属性力の心配もせずとも良いのでなっ!!」

 

総二の襟首をつかみ、深々とお辞儀していた総二と無理やり顔を合わせ、そして問い詰めればそんな答えが返ってきた。

 

何かしら御利益があるわけじゃないが、ことツインテールの事となると暴走するツインテール馬鹿に頭を抱えそうになる愛香であったが、自分も巨乳を拝めば胸が育つと言われればそうするかもと考え仕方ないのかなと思ってしまったが、男の総二がツインテールにしている姿を想像して、絶対阻止しなければと言う使命感にかられた。

 

「おーい、二人ともぉ…」

「おー、どうした?」

「そろそろ良いだろ?これでも見ようぜ?」

 

取り敢えず総二を正気に戻す為に一発殴ろうかと考えた所で、完全回復を成し遂げたロングホーンドギルディが声を掛けてくる。その手には彼が厳選したツインテールの写真集が。グラビアアイドルの写真集では無く、ツインテールにしているグラビアアイドルの写真集では無く、ツインテールの写真集であるという点が大事。

 

いやいやツインテールにしているのではなく、喜んでツインテールにしているのでツインテールも喜んでいるというのがツインテール馬鹿三人の弁。

 

そこそこ胸の大きい水着美少女が映っているも、三人の視線がツインテールに向かっているのが判るので、愛香にしてもジェラシーを感じる事も無い。

 

昼食もとって、さぁ改めて鑑賞に戻ろうとした所で問題が起きるまではであったが、愛香に白い目で見られながら和気藹々と楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「究極のツインテールを持つ者が、その程度の事も分からんかっ!?」

「ツインテールに貴賤なんかないって言ってんだよっ!!」

 

ドラグギルディの投げかけられた言葉に、テイルレッドは答えながら振りかぶったブレイザーブレイドを叩きつける。

 

「原始のツインテールも認められない奴っ!!」

「だからどうしたっ!!ツインテールとは唯一無二にして、たった一つよっ!!」

「それが間違いだと、何故気付かないっ!!」

 

だが乱れ刃の大剣で受け止め、力付くでテイルレッドを吹き飛ばしたドラグギルディの背後からロングホーンドギルディがその拳を打ち付けに来る。

 

「くぅ…」

「それは間違いだっ!!ツインテールは、ツインテールは二つで一つなんだっ!!」

「なんだとっ、ツインテールが輝きだしただとっ!!」

「これが究極を超えた光のツインテール!!シャイニングチェインっ!!」

 

だが所詮は構成員でしかないロングホーンドギルディでは、幹部であるドラグギルディには届かない。一撃で吹き飛ばされるも、その隙に戻って来ていたテイルレッドに押され始める。

 

そしてテイルレッドの、総二の思いに答えるようにツインテールもまた輝きだした。その事に驚き戦慄くドラグギルディ。ライザーチェインもフォーラーチェインも、どちらも本来のツインテールではない形へと結び直し、態と安定感を損なわす形で権現させている。

 

その為可能時間があり、それを過ぎると一気にパワーダウンしてしまう為、乱用できないと言う欠点もあったが、このシャイニングチェインは更にシビアであるようだ。

 

「まさか、態とツインテールの形を崩す事で、更なるツインテールの極みへと至るとはっ!?」

「だけど、この形態はこの場所限定みたいだけどなっ!!」

 

総二の麗路には及ばないまでも膨大な最強のツインテール属性を持ってしても、この属性力が自然回復してしまう程の属性力で溢れたこの空間でさえ、それほど持たないシャイニングチェインは、この場所以外で使えば、すぐに属性力を枯渇させてしまう。

 

「攻撃力も速度も、全てを高めたこのシャイニングチェインが、ドラグギルディの心に巣食った闇を打ち払うっ!!」

「ぬぅおおおぉぉ、負けてなるものかぁっ!!」

「見事だ、見事過ぎるぞっ!!観束 総二ぃぃぃぃ!!」

 

オーラピラーに巻かれ、動きを止められたドラグギルディ。だが自身もまたツインテールになって無理やり破ろうとする。

 

「三人共っ!!いい加減に…しろっ!!」

『どわぁぁぁぁ…』

 

三人の必殺技で巻き起こった吹き荒れる風で撮影器具やセットが吹き飛びそうになっているのを見て、ついに麗路が切れた。

 

朝トゥアールから渡された、改良を加えたギルディギアの属性力吸収機能を三人のツインテール馬鹿に向かって発動。

 

突如今まで最大値で稼働させていたものに、属性力という燃料が送られなくなった為に、テイルギアは停止。エレメリアンの二人は気絶したのだった。

 

なんでこんな事になったかと言うと、ロングホーンドギルディの見ていたツインテール写真集が原因であった。

 

見事だと涙を流して感動するロングホーンドギルディの横から総二が覗き込み、同じく感動しているのを見て、ドラグギルディもまた覗き込み、喧嘩へと発展。

 

ドラグギルディは二人が見たツインテールはツインテールじゃないと言い放ったのだ。

 

ツインテールと呼ぶには三大原則があるのだと言う。

 

一つ 髪の束が二本で、左右対称に垂れている事。

二つ 髪の束の長さは肩よりも下である事。

三つ 髪の結び目が耳よりも上である事。

 

これは一般的かどうか判らないが、一般的には『原理的ツインテール』と言うもの。

 

それに対し、二人が見ていた写真集のツインテールはピッグテールと呼ばれる肩まで髪の束が無い物だった。

 

だがロングホーンドギルディがこの言葉に噛みつく。

 

ツインテールの語源は二つの(ツイン)ポニーテールと言われている。

 

ポニーテールはポニー(馬)の尻を後ろから見た時に、そのテール(尻尾)が揺れるさまを、人の頭に例えた物だ。

 

ツインテールもまた、二頭のポニーの尻がくっついた形を例えたもので、それが後に二匹の動物の尻尾に例えられた髪形で、だからこそ豚の尻尾と言う意味の二つに束ねられたピッグテールもまたツインテールだと言う。

 

日本に言葉が伝来した時に間違って伝わる事はよくある事を知っている総二もまた、ロングホーンドギルディに味方した事がドラグギルディに火を点けた。

 

《例:ミシンの語源はマシーン(機械)、豚の文字は元々猪等様々な物がある。》

 

こうして前者のドラグギルディが支持する『原理的ツインテール』とロングホーンドギルディが支持する『原始的ツインテール』の戦いが勃発。どちらもツインテールだと主張する総二が二人を止める為にテイルレッドに変身するも、同じ穴の狢である総二が止められる筈も無く、いつの間にかミイラ取りがミイラとなっていた。

 

「まったく、俺らからすればどうでもいい事だよっ!!」

「だけど、俺らからすればどうでもいい事じゃないんだっ!!」

「知るかっ!!だからと言って人の家で騒いでいい事にはならないだろうっ!!」

 

何とか怒る麗路に反論するも、正論で反撃され俯く総二。泊まらせて貰った人様の家で思いっきり暴れたと言う自覚はあり、居候二人も居心地悪い。

 

麗路の手に握られた、三人の属性力を吸収した時に、あまりのツインテール属性の量に圧縮され、属性玉と呼べるほどにまでなっているそれを見て、大人しく説教を受ける。

 

流石に総二が帰らなければならない時間までこの説教は続いたとだけ言っておこう。




ツインテールの分類については、昔何かの本で読んだ内容とネットで知った事を参照してます。賛否両論あると思いますが、人それぞれと言う事で。

フォーラーチェインが原理的ツインテールじゃない様に見えてこのような話にしました。

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