崖や岩場、爆発シーン等を撮る為の採石場跡。この一帯は爆発音等を考慮して、ついでに言うと都心から離れているから土地代も安く、家が個人所有している場所だ。
「姫、くれぐれも気をつけくだされ。」
「分かったってば!!」
そんな場所で俺はスパイダーギルディに耳がタコが出来るほど注意されている。手にはゴテゴテしたブレスレット。総二達の様なものでは無く、どちらかと言うと四角い箱に手を通しているかのような物。
何故こんな事になっているかと言うと、ついに俺の男の娘属性がシャレにならないぐらいになって来たそうだ。
ドラグギルディにまで、これは不味いと言われる程で、今までは家の変態達が吸収して、一般人よりも少し強いぐらいにまで減らしていたのだが、それでも追い付かない程になってしまったとの事。
何故そんな事になったのかと聞けば、一斉に目を逸らす。その時の格好は撮影時の休憩時間であった為、テイルポニーの格好をしており、うん。原因はテイルポニーだそうだ。
「それでも時間の問題だったと思います。」
まるで心を読んだかのような、というか考えていた事、そんなに分かり易かったかな?トゥアールがそう声を掛けてきた。
さっきまでパチパチとノートパソコン?を叩いていたが準備が終わったようで、それを告げに来たのだ。
「麗路様が着けているそのギルディギアは、私の世界でエレメリアンから意図的に流された物を流用し、バッグワームギルディと共に作り上げたものです。」
「通称プロトタイプテイルギア零式。それを更に改良し、属性力奪取変換装置を組み込んだ物だ。」
トゥアールからさんざん聞かされた説明を受け、スパイダーギルディ達がひそかに作り上げていた装置の説明をドラグギルディが告げてくる。
属性力奪取変換装置とは、相手の属性力を奪い、自身の力として使えると言うもの。それはエレメリアンから直接力を奪う事も出来るという大変危険な物だ。
「まったくアルティメギルの科学力は私を超えてますね。まさか属性玉ではなく、直接属性力を奪い使う等と…」
ブツブツと呟くトゥアールであるが、ある程度心に整理を付けたとしても、それでも復讐の為に必死で勉強し作り上げたものをあっさり越えられたら悔しいのだろう。
テイルギアにも属性玉変換機能は付いているが、それは属性玉でないと使えない。属性玉はエレメリアンの魂と言うか、心が凝固したもので。だけど俺の場合はその属性玉を必要としないものだ。
「さっ、早速変身してみてください。」
「分かった。ギルディオン!」
ブツブツ呟いていたトゥアールが現実に戻ってきた途端に、変身を促してくる。この変わり身の早さは凄いなぁとも思うが、痺れも憧れもしない。
掛け声はまだ決めて無いらしく、変身したいと言う思いを感じ取って展開するそうで、だからテイルギアの掛け声を模して、俺の属性力を込めて見た。
俺自身も見えないが、体が光で覆われ、ウェットスーツのような、ただお腹部分は無く、下はぴっちりしたスパッツのような物になっていた。
「うおっ!?おもっ…」
次に手足の部分が光ったと思った瞬間、加わった重さに手をついてしまう。ズンと地面も揺れたようで、なんとか動かそうとするも、とてもじゃないが動かせない。
手足の、肘膝から先が、テトラポッドをイメージさせるような重厚感ある四角柱で覆われていたのだ。手足よりも大きいようで、支えになってくれているから無事だが、もしなければ潰れていたかもしれない。
「ってなんで後ろにまわるのっ!!」
「えっ、いや~…」
四つんばいになってしまった俺の後ろに、変態どもが集結している。どうやら突き出した形になってしまった尻を見る為の様で、だけど動けないからツッコみにも力無い様な、そんな形になってしまった。
「如何言う事さ、これっ!!」
「あれ~、おかしいですね。」
どうもパワードスーツの様な形となるはずだったのだそうだ。総二達の様な鎧の様な形では無く、俺に求められたのは逃げ足と防御力のようで。だからこそ重厚感ある作りになっているのだそうだが、それでも動けなければ意味が無いだろう。
「ああ、やっぱり…」
色々と調べていたトゥアールが何か声を上げる。原因が分かったようだ。
「麗路様の男の娘属性が強すぎるんですよ。」
「はい?」
どうも原因は属性力奪取変換装置の過剰機能が原因だったようだ。変身する為に減った属性力であったが、その余剰分まで奪取してしまい、その余剰分が過剰な物理的な防御力。重さに変わってしまっているからだそうだ。
「ちょ、如何すればいいんだよっ!?」
「要は強すぎる男の娘属性をなんとかすればいいのだから…」
少し楽しみにしていた分、どうしてもガッカリ感があるが、それ以上にこのパワードスーツは身を守る為の物で、だからこそトゥアールに詰め寄った。
「総二様、少し麗路様に属性力を分けてあげてください。」
「はぁ…」
ブツブツと考えていたトゥアールだったが、何かを思いついたかのように顔を上げて、見学に来ていた総二にそう声を掛けたのだった。
気の無い返事で、俺に近づいて、テイルブレスと俺のギルディブレスを触れさせる。俺のブレスの機能で、総二のツインテール属性が流れ込み、ギルディブレスにツインテールの文様が浮かびあがった。
「さぁ、もう一度ですっ!!」
「はぁ、分かった。ギルディオン!」
トゥアールの何故か明後日の方向に指を指し、無駄に元気に宣言しているが、俺は気の無い返事で、もう一度試してみた。
「おおっ!!」
「上手く行きましたね。」
体はさっきと同じだが、腰の部分に先の尖ったリア、フロントアーマーが付き、胸の部分に戦闘機の先端を思い浮かばせる装甲がある。
手足にはゴツサがあるが、スマートでもある何処かレーシングカーを思わせる手甲が付き、手は先の尖った手袋を纏ったかのような感じになっている。
足はさっきと変わらないようだが、重さは感じられず、どこかSF物に出て来る様なロボットの足のようだ。
背中にも何か背負っているかのような感触があり、後ろを見ると蜻蛉の様な真っ直ぐな機械的な羽が四枚突き出している。
「なんでツインテール?」
「たぶん、ツインテール属性で変身したからでしょう。」
不満があるとすれば、ふんわりとしたボリュームがあるツインテールが、細いヘッドパーツの横から出ており、さながら天使の羽の様になっていた。
ふわりと、脳内に浮かぶ使い方を読んで、その場で浮かんでみる。ある程度だが自由に飛べる気がして、自由気ままに飛んでみた。
まだまだ熟知は必要だが、それでもこれだけ自由に空が飛べて、ものすごい全能感に襲われる。
下ですげーと騒ぐ総二や、エレメリアン達を見て、少し笑った。