俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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決着ドラグギルディ、ツインテールの剣技が物語る。

その日は朝からエレメリアン反応が出たと知らされて、愛香に連絡を入れるも、なんかすぐには出てこれないと言われた。取り敢えず俺だけでもと思って地下の秘密基地から転送して貰ったはずなんだが…

 

「こんな人気の無い所にエレメリアンが出たのか?」

『油断しないでくださいね総二様。今までの傾向から見て、こういった時は強敵が現れる前兆ですから…』

「まぁ、周りに被害が及ばない分、こっちとしても遠慮なく戦えるんだが…」

 

フォクスギルディの時の例をだし、油断しない様注意してくるトゥアールの声に耳を傾け、現れた筈のエレメリアンを探す。

 

だけど目の前に広がる透き通った泉に、山頂に雪を残した雄大な山々。青々とした草花が広がる草原に、疎らに生える林。家が一軒も無く、人工物が無い為余計に映える大自然の景色に、どうしても駆け出したくなる。

 

自分で言うのもなんだが、テイルレッドの、俺のツインテールは見事の一言だ。絶対に駆け出して風に靡くツインテールは似合うと思うのだが。

 

「そうか、エレメリアンもそれを見越して…、無いな。我ながらアホな事を考えたぜ。」

 

思わずツインテールを最強の属性とするエレメリアンがそう考えたのかと思ったが、今までのエレメリアンはそれよりもいかに奪うかと言う点で侵略してきている事を思い出し、それは無いと考えた。

 

瞬間、地面に影が差す。

 

振り返り、空を見上げると太陽を遮る様に黒い巨体が、何かを振り上げた体勢で振ってきた。

 

「不意打ちを防ぐとは、中々やるなテイルレッド。」

「お前はっ!!」

「我はドラグギルディ、全世界全宇宙を統べしアルティメギルが幹部よ。」

 

其処に居たのはあの宣戦布告してきた黒い鎧の奴だった。トゥアールがドラグギルディ!?と何やら驚いているようだが、そんな事は関係ない。

 

「くっ、速い…」

「究極のツインテールを持つ戦士よ。不意打ちですまんが潔く散ってくれぇい!!」

「誰が…」

 

名乗りを上げたと思えば、一瞬のうちに詰め寄られ、そして振りかぶった大剣を叩きつけて来た。

 

「くっ、速いだけじゃない、なんて重さだっ!!」

「それだけの、それだけの修練は積んできたっ!!」

 

油断なんか出来ない。ここは速度を殺してもパワーで圧倒しなくちゃ押し切られる。俺はそう考え、攻撃特化のライザーチェインへとツインテールを結び直した。

 

「でやぁっ!!」

「ぬぅ!?まさかツインテールの形を変える事で、更なる進化を促すとは。知っていた事とはいえ、これほどとはな。なればこそ、我が最強の姿の相手を出来ると言うものよっ!!」

「な、なんだと…」

 

力尽くで吹き飛ばしてやれば、驚愕したように俺を見ている。だが、頷いたように一度頭を下げ、そして胸を張る様に力を込めた瞬間。頭部に黄金に輝くツインテールが出現した。

 

「命を削り、自らツインテールとなる事で、我が枷を外したのよ。さぁ闘争を再開しようとするか、テイルレッドよ。」

「何故だっ!!ツインテールとなった事を恥じた俺と違って、そこまで見事なツインテールを纏うお前が、何故こんな事をするっ!!」

 

敵が強力になった事よりも、そのツインテールが悲しんでいるように俺には思えた。トゥアールが言うように、もし属性力を拡散させ、その属性力を刈り取ると言う手法ならば、まだ納得出来る。

 

好きな物を広めたいと思う気持ちは俺には判るし、それを吸収しなければ生きてはいけないと言うのならば、確かに刈り取る事も納得出来ないにしても、まだマシだ。

 

今の様に根こそぎ全てを、その属性力を生み出すはずの命まで全て取り尽くしてしまう様なやり方はらしくないと思ってしまった。

 

「…いつの日か、いつの日か、至高のツインテールを持つ少女に背中を流して貰うとも、ふわりと触れるツインテールの感触を余すことなく堪能するため、誰にも触れさせることなく生きて来たのだ。それを奪われた悲しみをお前には判るまいっ!!」

「何だよ、何なんだよっ!!その背中の、傷はっ!!」

 

俺の言葉に、羽織っていたマントを脱ぎ捨てて、前と違いまったく傷が無い背中を見せて来た。だがドラグギルディの言葉によくよく見れば、小さな傷がある。

 

ドラグギルディの言葉から、それがドラグギルディの意思とは関係なくつけられた傷だと察することが出来た。俺の言葉に、問答無用とばかりに手にした大剣を振るい、斬撃を飛ばしてくる。

 

その斬撃は、とてもではないが目で追えない筈なのに、それでも俺は防ぐことが出来た。なにせこの斬撃はある形をしていたからだ。

 

「まさか、この剣技は、ツインテールの剣っ!!」

「おいおい…」

「ぬぅ、まさかこんなに早く見破られたのは初めての事よ。」

「それはそうだ。俺は一日たりともツインテールの事を忘れた事はないからなっ!!」

 

いつの間にかテイルブルーも来ており、俺の言葉に脱力していた。だがそれよりも目の前の此奴から目を離してはいけないと本能が叫んでいた。

 

「だが、我が剣技が破れたわけでは無い。でやぁっ!!」

「くっ…」

 

そう叫んだドラグギルディはツインテールの剣を無数に飛ばしてくる。愛香は避けたみたいだが、今の俺は速度を犠牲にしている形態で、受けきれなければ切られてしまう。

 

ツインテールの剣だけあって受けきる事は簡単であったが、だが、その剣が喋った様な気がしたんだ。

 

「テイルレッドよ、我が思いを受け止めてくれっ!!」

「気持ち悪い事を言うなっ!!だが、お前の剣技には『そこまでです、ドラグギルディ!!』誰だよぉおお!!」

 

ドラグギルディがまるで気付いてくれと言わんばかりの表情で攻めてくる。その表情が、やはりツインテールの剣に思いを載せている事を察して、何故なのか聞こうとした瞬間、誰かに邪魔された。思わず叫んだ俺は悪くは無い。

 

「何者だっ!!名を名乗れいっ!!」

「世界を渡る復習者、仮面ツインテイル。」

 

いや、変なヘルメットを被っているけどトゥアールじゃないか。邪魔すんなよぉ…

 

「そうか、貴様は。ツインテールではないから中々思い出せなんだが、その下品な乳は、かつての世界のツインテールの戦士っ!!」

 

うん、愛香ぁ、トゥアールの胸が下品と言う言葉に頷いてないで、トゥアールを何とかしてくれないか?あ、そう。胸に関してはドラグギルディに賛同するって…

 

テイルブルーと目で会話出来てしまったのは今回が初めてであったが、せめてもう少し真面な事を察し合いたかった。

 

トゥアールが、自身のツインテールを俺に託してくれた事も嬉しいし、何とかしてやりたいとも思ったが、それ以上に今は悲しそうな顔をするドラグギルディだ。

 

「ふっ、笑止。かつてのお前の仇はもうすでに存在せんわっ!!」

「な、何ですってっ!?」

「アルティメギルは変わってしまった。もう過去の様に属性力を分け合う事も無いのだからなっ!!」

 

だがトゥアールの告白すら笑い飛ばし、まるで自暴自棄になってしまったかのような物言いのドラグギルディに改めて何とかしなければと思う。

 

テイルブルーの邪魔をされない為にか、時々出て来るアルティロイド、量産型戦闘員を千体近く割り振ってきた。

 

「戦闘員は任せていいか、テイルブルー。俺は此奴の相手をするっ!!」

「いいの?私の方が圧倒的に楽な戦いだけど…」

「ああ、心配ないって。俺がツインテールの事で負けると思うかっ!!」

 

テイルブルーは一つ頷いて、戦闘員の中心地に飛び込んでいった。いや、本当に楽な戦いのようだ。大の大人よりも体格のいい戦闘員が木の葉の様に飛んでいるからな。

 

「これでもう邪魔は入るまい。いざ尋常に勝負っ!!」

 

再び、ツンテールの剣を乱れ打ってくるドラグギルディに、今度は集中してその意思を感じる事にする。斬撃はまるで先の焼き回しの様な軌跡を描いている事から、防ぐのは容易であったからだ。

 

(大事な物を物質に、更に背中に、盗聴器が仕掛けられているか。)

 

やはり無理やり突き動かされているか。許せねえぜ、ドラグギルディを操っている奴。

 

「俺だって、お前みたいな熱い奴と、ツインテールについて語り合いたかった。」

「我もだ。お前が人で無かったのならば、心の友となれたものをっ!!」

 

俺が伝わったと間接的に叫ぶと、ならば介錯を頼むと返してくる。余程無理やりやらされている事が屈辱なようで、何とか助けないとと考えていた。

 

だがドンドン剣戟は激しさを増し、空に延びるかのようなツインテールの竜巻を生み出していた。

 

(俺も出来るかもしれねぇっ!!)

 

そう思い、ドラグギルディに意思を伝える様に剣を振るう。

 

(次の一撃で俺を吹き飛ばせ。その後俺のブレイザーブレイドを弾き飛ばせ。)

 

その意思は伝わったらしく、少し動揺したかのような乱れがあったが、俺を吹き飛ばす為に大振りに大剣を振るい、俺は山の裾まで吹き飛ばされた。

 

「さらばだ、最強の宿敵よ。」

「(今だっ!!)フォーラーチェインっ!!でやぁ…」

 

打ち合わせ道理に吹き飛ばされ、そして俺の手からブレイザーブレイドを吹き飛ばし、大振りに振り上げた大剣で止めを刺そうとしてくるその瞬間、俺は速度特化形態であるフォーラーチェインに形態を換え、もう一振りのブレイザーブレイドを取り出し、そして出来ると確信していたツインテールの剣技で、ドラグギルディの前から切り上げる様に頭上を越えて、背中の小さな切り傷を更に切った。

 

「ぐぉ、そうか、我を自由にしてくれたか。済まぬなツインテールの戦士よ…」

「色々言いたいけど、お前のツインテールが悲しんでいる所は見たくないからな。」

 

ドサッと倒れ伏したドラグギルディに慌てて駆け寄る。傷口から光が漏れ、それが属性力であると何となく感じた。

 

「やりましたね、総二様。」

「まだだっ!!頼む、トゥアール!!今からいう所に俺達を、ドラグギルディも含めて転送してくれっ!!」

「え、しかし…」

「頼むっ!!」

 

エネルギー切れで変身が解けてぶっ倒れていた愛香に肩を貸して、トゥアールがそう声を掛けてきた。だからドラグギルディがトゥアールの敵だと知っていても、助ける為にトゥアールに頭を下げた。

 

「…はぁ、仕方ありませんね。後で全部説明して貰いますよ?」

 

一つ溜息を吐いてトゥアールは俺達を麗路の家へと、正確には裏の撮影所の方へと転送してくれた。ああ、いい女だよお前は。最後にはウインクまでつけて転送してくれるんだから。

 

「頼む、ドラグギルディを助けてやってくれっ!!」

 

目の前にスパイダーギルディが居るのを確認して、トゥアールが息をのむ音が聞こえたが、今はそれよりもとドラグギルディの処置が先だと懇願したのだった。


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