俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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俺、撮影中です。パート2

その日は日曜日であり、撮影を一気に進められるからと言って無理して撮影速度を速めていた日であった。

 

「ぐぅ、いくらなんでも強すぎる…」

「二人掛りで勝てないなんて…」

 

彼方此方に傷をつけ、砂にまみれた姿で地に伏せるテイルツインとテイルポニー。と言っても本当に傷を負ったわけでは無く、そう言った化粧をしているだけで、もし本当に怪我をしていれば、家の変態達が黙ってはいない。

 

「汗で砂が張り付いている…」

「おおう…」

 

ただ変態達は変態達で絶好調だったりするから手におえないのだが、撮影中でツッコむ事も出来ないから、放置するしかなく、目の前に立つ強敵に目を向けた。

 

「幾ら最強と至高が揃っていようと、経験が浅いお前達では我には勝てんぞ。」

 

剣を振り、格好付けながらセリフを言ったのはスパイダーグルノイア役スパイダーギルディ。いつも以上に侍と言った風情で、中々似合いすぎている。

 

俺もこんな恰好よりもそっちが良かったなと思うが顔に出さないようにして、ただ見上げた。

 

「待てぇい!!」

「何奴、名を名乗れぇい!!」

 

ヘアードレッサーピンチと言う所で、頭上から声が聞こえ、そこを見上げれば一つの影が。スパイダーグルノイアが誰何のセリフを発したと同時に、カメラのピントが横からの物へと変更され、その姿がはっきり見える様になった。

 

「貴様は、テイルストレートっ!!いや、あの常勝の戦士では無いっ!?」

「永実姉さんっ!!」

 

第二話で出てきた妙齢の戦士の衣装を纏ってはいるが、だがその衣装をまとっている人物が違う。

 

俺の役の神野 結唯(じんの ゆい)と朝霧 真奈美ちゃんの役の双羽(ふたは)のいとこと言う設定のキャラクター、姉さんがその役をやっている流川 永実(るかわ ながみ)である。

 

妙齢の戦士と言うのは母さんで、流石に元女優なだけあって、ブランクがあるはずなのに引き込まれるような演技を見せていた。

 

その母さんの役であるもう戦う事が出来なくなった先代テイルストレートから引き継いだと言う設定なのだ。

 

「水に流れる自然髪。ストレートは常勝の証!!テイルストレート!!」

「ぬぅ、ぬかったわっ!!まさかあの戦士が子を生していようとは…」

 

ポーズを決め、名乗りを上げる二代目テイルストレート。何かに恐れおののいたかのように後ろに下がるスパイダーグルノイア。

 

「二人とも、大丈夫?」

「何で、永実姉さんが!?」

「私だって、母さんの子供だもん。それに年下の子達に任せてばっかじゃいられないでしょ。」

 

うん、姉さん母さんから演技の英才教育受けているだけあって上手い。ほら隣の真奈美ちゃんも見惚れている。

 

「風に靡く二つ結い。ツインテールは最強の証!!テイルツイン!!」

「空に映るは一つ結い。ポニーテイルは至高の証!!テイルポニー!!」

 

だけどその間を上手く利用するのが父さんの撮影方法。ハッと気が付いた真奈美ちゃんが演技を再開し、名乗りを上げそれに続いて俺も名乗りを上げる。

 

三人で腕を合わせ、空高く舞い上げた。

 

「「「ヘアードレッサー参上です。」」」

「おのれ、おのれぇ!!」

 

慄きながらも真っ直ぐ突撃してくるスパイダーグルノイア、これから始まる殺陣に、テイルツインとテイルストレートが左右に跳び退り、テイルポニーが大剣を呼び出して受け止める。

 

「二人が三人になった所で未熟者が増えただけっ!!各個撃破してやるわぁ!!」

「それは如何かな?」

「なん…だとっ!?」

 

スパイダーグルノイアが唾を飛ばす勢いで吠え、力の限り受け止められている刃を押し込もうとしてくる。

 

といってもこれも演技で、もし間違って滑り怪我をさせない様にちゃんとスパイダーギルディが手加減してくれていたりする。

 

「ふっ!!」

「甘いわぁっ!!」

「甘いのはそっちよっ!!」

「何だとっ!!」

 

飛び退いて、カメラが俺を正面に映している間にセットのカメラの映らない所を通って、スパイダーグルノイアの後ろに回り込んだテイルツインが二本の剣で切りかかる。

 

だがそれは先ほどと同じ戦法で、先程と同じく背中部分から生えている四対八本の足で止められた。

 

だがその反対側から出てきたテイルストレートによって切り裂かれ、緑色の血液をぶちまける。

 

うん、グロイが、これ作り物だから。本当の足は腰の部分でこの作り物の足を操作していたりする。

 

そこでカットの声が掛かった。この後三人の必殺技で爆散するシーンを取る為に照明やら、火薬やら仕込まなければなら無いからだ。

 

「ふー…」

「手は大丈夫ですか、それ程強く打ちこんではいませんが…」

「大丈夫だって、心配のし過ぎ。」

 

思わず流れ落ちる汗を拭ってしまい、目の前に居たスパイダーギルディに掌が赤くなっているのを見られた。

 

あの殺陣で最初の打ち込みだけは迫力を出す為に本気でやっているのだから。当たってさえいなければ寸止めも出来る為、全力では無いとはいえ、普段日頃から本気で鍛えている本物の武人の打ち込みを止めたのだ。

 

いまだにジンジンとしているが、此処で泣き毎をいう訳にもいかないだろう。変態達がまたぞろ騒ぎ出すから。

 

「ぬっ、このツインテール属性はっ!!」

 

そんな時、突如スパイダーギルディが明後日の方向を向いて、そんな事を呟いた。

 

「また総二が戦っているの?」

「いえ、その通りなのでしょうが、ツインテール属性がもう一つ…」

 

ツインテール属性と聞いて頭に浮かぶのはあのツインテール馬鹿。ほぼ毎日戦っている様なもので、だからこそスパイダーギルディが感じた属性力もそれだと思ったのだが、どうやら違うようだ。

 

「さぁ、次のシーンの準備が整ったぞ。」

「取り敢えずは総二に任せよう。愛香ちゃんも居る事だし…」

 

父さんがそう声を上げるのを聞いて、心配なのだが、蛮族と貶されているがそれは確りと結果を残しているからで、愛香ちゃんも居るし、事ツインテールに関しての事なら総二が負けるとは思えない。

 

スパイダーギルディにそう声を掛けて舞台の上へと戻った。

 

「頼む、ドラグギルディを助けてやってくれっ!!」

 

このシーンを撮り終え、次話のシーンのセリフを覚えている時に、倒れ伏したドラグギルディを連れてツインテイルズが転移してくるまで、この時の事は忘れていたのだった。




次話はテイルレッドサイドです。

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