俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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俺、サインを書きます。

昼休みに、女生徒にキャーキャー言われながら、言いたくないけど、総二と一緒に部室で飯を食うって言ったら腐女子どもが騒ぎ出しただけだから。部室へと向かって話を聞く。

 

「それで愛香ちゃんまで変身したわけか。」

「ああ、実際助かったよ。トゥアールに聞いていた話と違って、命がけで攻めてくるんだもんな。」

 

総二の話を要約すると、山間という人の居なさそうな場所にエレメリアン反応が出た。そこに向かっていくと、案の定血涙を流しているキツネの怪人、フォクスギルディが居た。

 

そいつは髪紐属性と人形属性を有しており、自動追尾してくるリボンで絡め止められた後、妄想で生み出された実体を持つテイルレッド数十体に攻撃された。

 

だがその妄想の実体化はかなりの属性力を使うらしく、フォクスギルディは見る見る間に弱って行くが、それよりも文字通り手も足も、いや足は辛うじて動かせたらしく逃げ回っていた。出ない状況に追い込まれ、もはやここまでかと思われた時に、愛香ちゃんが助けに来た。

 

「それからは凄かったぜ。フォクスギルディ曰く、そう易々と千切れるリボンじゃないと言うし、俺も試したけど攻撃特化形態でも千切れなかったリボンを引き千切るわ、フォクスギルディが生み出したテイルレッドを叩き伏せるわで。」

「ああ、あの映像の真相ってそういう事。」

 

後はフォクスギルディが八面六臂の活躍を見せるテイルブルーを止める為、文字通り命を削って生み出したテイルレッド擬きと共に攻撃へと転じたが、そもそもテイルブルーを止める為には属性力が足らず、ほぼ自滅に近い形で解決。

 

その後来たテレビ局のカメラに向かってテイルブルーがピースをしつつ自己紹介をして、手に入ったばっかの髪紐属性の属性玉で空を飛んで帰ってきたとの事。

 

「ああ、なるほど。容赦なくテイルレッドを足蹴にした挙句、テイルレッドにインタビュー出来なかった鬱憤の結果か。」

「…なんで俺なんだよ。もっとアルティメギルの方を注視しろよ。」

「まぁ、人気だもんな。テイルレッドたん。」

「たんって言うなぁ!!なんか麗の気持ちが判った気がする。」

 

テイルレッドは今や世界規模で人気。ネットの掲示板では小さく健気で頑張り屋と言う謎の予想まで展開されているぐらいだ。

 

それを仲間だと思う存在が、同じ形をした人形に何の躊躇も無く蹴り壊したシーンを見せられれば、誰もが心配をすると言うものだ。

 

だがそれはテイルレッドに対して、そう言った変態的な視線も呼び込んでしまい、男の総二にとっては、普通の女性以上に気持ち悪いのだろう。

 

よく女性はああいった視線を向けられて平気だなとぽつりと漏らしていた。

 

だけど、だからと言って、女の子みたいって言われる俺の気持ちが分かるわけないだろ。テイルレッドに変身している時は本当に女の子なんだし。

 

よく思ったのが、こんな顔で生まれてくるのなら、本当に女の子ならって考えた事もあると言うのに。

 

でもオカマ思考に行かなかったのはなんでなんだろうな?

 

「まぁ、愛香の奴も会長に応援されて、少しは気が晴れただろ?」

「ああ、生徒会長って特撮大好きだもんな。」

 

そんな思考しているとは気付かず、総二が世間話の続きを口にする。

 

蛮族だなんだと言われるテイルブルーだが、それでも他人に応援されるのは嬉しいらしく、会長に応援していると聞かされた時は嬉しそうだったと語った。

 

そんな会長は大の特撮オタク。なんでも自分が子供っぽく、心も体もひ弱な自分に勇気をくれる存在だからだそうだ。

 

「あっ、そうだ。会長から頼まれてたんだ。はいこれ…」

「あー、まぁ、いいよ。ここんとこ書きまくってるから…」

 

何でも総二が俺と親友だと知った会長に、サインを貰ってきてほしいと頼まれたそうだ。サイン色紙を渡される。

 

ファイブテイル人気で結構な枚数を書いて慣れてしまった為に快諾して、サインペンを借り、セリフの一つと役職名を入れる。

 

「というか、もしかすると朝待ち伏せされていたのかもな。」

「そんな事無いでしょ、偶々じゃないか?はい…」

「いや、結構タイミング良かったぜ?サンキュー」

 

三話に出てきたセリフの一部『弱くたって、情けなくたって、がんばりは嘘を吐かない』とテイルポニーのサイン。そして慧理那さんへの文字。

 

総二の言葉に、もし待ち伏せしてたのなら俺が登校してくる時に合わせるだろ?と言って否定し、書けたサイン色紙を渡す。

 

だがそのタイミングが際どかったと言う総二だったが、まぁ顔が苦笑している事からただのオフザケだろうと取った。

 

「まぁ、取り敢えずは教室戻ろうか…」

「そうだな。」

「あー、変な噂になって無ければいいが…」

「無理だろ?うちの学校変態が多いから。」

 

昼食も取り終わり、世間話もツインテイルズの活動内容の方も一段落したと判断して、もう昼休みもそれほど残ってない事を確認し、教室へと戻る事を提案。

 

別に用事もない総二も頷いて腰を上げた。

 

結構な時間が経っている事もあり、自分の容姿を理解している俺は、絶対腐女子どもの話題に上がっている事を考えて、溜息を一つ吐いた。

 

総二にしてもその事を考えたのか、やけに悟った顔でお前が言うなと言う事を口にする。

 

「まぁ、ギルディ関係で困った事があったら家においでよ。スパイダーギルディ達が何とかするだろ?」

「ああ、是非頼んでおいてくれ。」

 

この時は軽い心算で言ったのだが、ヘタな約束はするもんじゃないと思った。この次の日曜日に総二が問題を抱えて転移をしてくるまでは。

 

教室に戻れば、案の定、腐女子どもの話題に上がっており、何故か愛香ちゃんに睨まれるハメとなったのだった。




あらすじの気が乗ったら、外しました。

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