『テイルブルーとは何者なのか!!』そうテロップが流れ、どう見てもそれが愛香ちゃんだと言う事が分かり、飲んでいたお茶がおちゃーになってしまった。
言いたい事は分かるだろう。うん、ゴメン、スパイダーギルディ。
「……うらやましす。」
「ふふん。」
それを見ていた変態達がスパイダーギルディの方を見て羨ましがっているのなんか知らない。スパイダーギルディが胸を張り、自慢げにしていたの何か気にしない。
「うぅわっ、これって愛香ちゃんよね。」
「流石に蛮族は酷いと思うけど…」
姉さんもそれが誰だが判ったのだろう、と言うか髪色や瞳の色が変わっているだけで、そのままの容姿なのだから判らない方がおかしいのだが。
後で聞けば、イマジンチャフというか認識阻害している機能があるが、それは属性力で機能している為、普段日頃から俺の発する強力な属性力になれている家族の皆は気付くはずだと言われた。
この家の周りも、俺の発する属性力を隠す為に結界が張られているようで、この中に居る限りエレメリアンが居るとは思われないとの事。
例の総二にテイルブレスを渡した科学者でも気付く事は無いだろうと言われた。
だけど、やけにこの編集悪意が満ち満ちてないかな?なんかテイルブルーが大暴れするシーンを中心に、無数のテイルレッドを蹴り潰していくシーンが殆ど。
何があったかは判らないが、愛香ちゃんはこんな子じゃ、…そのままやってそうだけど、何かあったんだよ、うん。
「はぁ、気が重い。」
「あはは、麗路も人気者になったからね。」
「言わないでよ。お蔭で登校時間早めに出なくちゃならなくなったんだからね。」
そろそろ家を出なければ間に合わなくなる時間である。テレビでは無事放映され始めた『ヘアードレッサー!!ファイブテイル』のシール付魚肉ソーセージのCMが流れていた。
あの総二達が見学に来た日から数日後に、クランクアップ前だと言うのにスポンサーに急かされて放映され始めた『ヘアードレッサー!!ファイブテイル』はテイルレッド人気もあいまって、日曜日の朝に早起きする子供を量産させていた。
それは殆ど素顔を晒している俺にとって苦痛の時間を増やしてくれたのだ。
「あー、テイルポニーだぁっ!!」
「えー、どこどこっ!!」
一人の子供が俺を見て叫んだ言葉が、連鎖的に広まっていく。そして俺を見つけると、笑顔で駆け寄ってくるもので、しかも下手な対応をすれば、それが後々撮影にも響いてくるため、遅刻するよと優しく対応しなければならない。
俺は男だっ!!と叫びたいのを我慢して。
ちなみに『ヘアードレッサー!!ファイブテイル』は女の子五人、いや四人に男の娘一人と言う構成である筈なのだが、その激しい戦闘シーンと、昔から人気が高かった怪人が出ると言う事で、男の子達にも人気がある。
唯一の男キャラと言う事で、ポニーテイルにしている子が増え出し、一つの問題を生み出しているが、まぁ、その辺は御愛嬌。
小学校があるエリアを抜けて、やっとこさ普通に登校出来るようになってから、溜息を一つ。走る必要もないが、それでもギリギリの登校になってしまう時間である事を確かめて、少しだけ歩を進めるペースを上げた。
「おお、来た来た。我らが麗路ちゃん!!」
「あ、そう。朝食を吐き出したいわけね。」
「まぁ、待て。話せばわか、るふっ!?」
教室に入った瞬間、総二と同じくらい付き合いの長い友人がふざけて来た。取り敢えず宥める言葉を無視して、ボディーブローを突き入れた。
「あはは…、相変わらず容赦ねぇな。」
「たく、俺は男だ。んで、何があったんだよ?」
「あ、ああ。部室で説明するよ。」
「判った。じゃあ、昼休みにでも。」
悶絶している馬鹿を放置して自分の席に座ると、隣の総二が話しかけてくる。いつにもまして元気がなさそうだ。取り敢えずそっち方面か?と問いかければ、案の定ツインテイルズの問題の様で。
何がどうして認められたのか判らないツインテール部の部室で話す事を取り付けた。昼休みなのは、放課後であれば部活動で、例の科学者が居るかもしれないからだ。
一度、総二経由で紹介されたが、この容姿に涎を垂らしながら飛びつかれるが、「この場合、ショタコンと言うのが正しいのでしょうか、ロリコンと言うのが正しいのでしょうか」と悩みだすと言う珍事件を起こしたからな。
「うむ。皆揃っているな。欠席や遅刻が無いようで何よりだ。では書類を配るぞ。男子生徒は目を通し、記入できる者は記入して持ってこい。女子生徒は兄や弟、知り合いの一人身の男性に渡してくれ。」
予鈴が鳴り、クラス担任が教室に入ってくる。相変わらずメイド服を着たままホームルームが始まり、このところ日課となった茶封筒を配ってきた。
中身は結婚届。しかも妻の部分にはすでに記入済みというものだ。
というか焦り過ぎでとんでもない事を言ってるぞ。もしこれをデブキモオタな変態に渡せばどうなるか考えた事があるのだろうか?
この地区にはそう言った人間が居ない、変態過ぎてノリが良く、太るよりも鍛えるという人間が多くて、あれだオープンオタと呼ばれる人達が蔓延している所為だ。
だからこそ考えられないのかもしれないが。
「いや、いざとなったら神堂家の権力でなんとかするのか…」
「何か言ったか?」
「いや、何も…」
小さく呟いた俺に、耳聡く総二が何か言ったか聞いてくるが、何でも無いと前を向いた。誰でもいいから俺の平穏を返してくれ。
元から平穏なんか無かったと言うんじゃないぞっ!!