投稿できるとか言っててこの始末ですよ。計画性の無さは最早どうしようもないレベルですね。
ぼーやと別れた私たちはまっすぐ湖へと向かい、徐々に顕現しつつある二面四手の大鬼へと狙いを定める。
リョウメンスクナ。かつて飛騨に在ったという巨躯の鬼。
内包する神秘の度合いで言えば六百年物の吸血鬼である私より断然上だろうが、だからと言って魔法が効かないわけではない。
先行した桜咲刹那に追いつき、どうすべきか方針を決める。
「私はお嬢様を助けに行きます。エヴァンジェリンさんはリョウメンスクナの方を」
「いいだろう。どの道それしかなさそうだしな」
未来視の魔眼持ちと戦った傷も完全には癒えていない。コイツも完全な人ではないようだが、治癒能力が飛び抜けて高い訳でもなさそうだし、妥当なところだ。
リョウメンスクナを止められるのはこの場において私かあの弓兵のみ。詠春の言う「厄介な術者」も近くにいることを考えると、少しばかり憂鬱になってしまう。
ぼーやと戦っている連中もそれなり以上の実力者のようだし──まぁ、あの弓兵がいる以上負けることはないだろうが──厄介なことに変わりない。
手早く済ませるに限る。
「桜咲。近衛の場所を確認し次第まっすぐ向かえ。サポートはしてやる」
「わかりました!」
刀を握り締め、やる気十分に返答する桜咲。
主を守るために全霊をかけるか。悪くはないが、実力が伴っていないのは仕方あるまい。
森を抜け、湖の手前で足を止める。桟橋の奥にてリョウメンスクナの前に浮かぶ三人を、私たちは睨みつけた。
布一枚かけられただけの近衛。にやついた口元を隠そうともしない和服の女。そして冷静にこちらを見ている着物姿の初老の男。
女は確か、天ヶ崎といったか。男の方は知らんが、何もしていないところを見ると実質的にリョウメンスクナの顕現をしているのは女の方のようだな。
「おうおう、ここまで来るっちゅうことはそれなり以上の奴けェの」
「うん? なんや、追いつかれたんかいな。まぁええわ。リョウメンスクナの顕現もそろそろ終わるころやし、アンタらで力試しっちゅうんも悪くはないやろ」
「自分の仕事に集中せんか、千草ァ。おめェが失敗すりゃあ全部終わりじゃろォがよ」
「……わかっとります。けど──」
「口答えしとる暇があるんなら、スクナの手綱引くんに集中せェよ」
ゆらりと羽織をはためかせながら桟橋に降り立つ男。
ピリピリとした殺気を感じるが、それほど実力があるようにも思えないな。政治屋か?
詳しく説明を受けている暇はなかったとはいえ、少なくとも詠春が厄介と表する程度には術の扱いに長けているはずだが。
「そう構えんなや、嬢ちゃん。儂ァ一介の政治屋じゃけェの、戦闘なんぞからっきしよ」
「という割には、そっちの女は随分とお前のことを恐れている様だが」
「昔っから世話ァ焼いてやったから儂に頭が上がらんだけよ。術者としての力量ならとうに超えられとるわ」
ぼーやの方も気になるところだが、焦って罠に飛び込んでも面倒だ。私一人ならともかく、桜咲もいるなら余計に力技で終わらせることも難しい。
第一、優先目標はスクナではなく近衛の奪還。注意深く辺りを見回してもこの二人以外に気配はない。
私とて西洋魔法ならともかく、東洋──それもこんな島国の呪術などそれほど詳しい知識があるわけではない。世界的に見ても日本の魔術・魔法というのは珍しいところも多いしな。
「さて──それが事実かどうかも判断しかねるな」
「このまま釘付けに出来るっちゅうんならそれも好都合。儂もこの年になって呪術合戦なんぞしとォないわ」
懐から取り出したキセルに火を入れ、ぷかぷかと呑気に吸いだす始末。
周りの森から派手な音が聞こえてくるが、時間が無いと焦らせるのも策のうちかもな。あの手の食えないジジイ共は揃って嘘とハッタリと煽りでこちらを誘導する。
だが、時間が無いのは事実。下手にリョウメンスクナを暴れさせられても面倒かつ厄介だし、私が先に行って罠ごと踏み潰すか。
「私が前に出る。お前は少し距離を置いてから近衛へと向かえ」
「しかし」
「罠だとしても、逡巡している暇はないんだ。ぼーやだってそう長く押しとどめていられるわけじゃない」
弓兵だけならまだしもぼーやがいる。実力的に劣っている以上、弓兵も劣勢にならざるを得まい。……頭脳役がぼーやである以上、ある程度近くにいたほうがいいのかもしれんがな。
ともあれ、つらつらと考えているだけでは時間の浪費だ。ぼーやの魔力だって無尽蔵じゃない。
一歩踏み込み、最速でもって男の意識を刈り取る──!
「まァ、そうくるじゃろォとはおもっとったわ」
少々手荒ではあるが、顎を揺らして意識を落とすために喉元を狙い──その直前で、私の手が男をすり抜けた。
「な、に──?」
「オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ」
「不動金縛りの術です! それにこれは──」
「自分から手ェばらすんは三流なんじゃがのォ。まァええ、奇門遁甲じゃ。こっちにゃ届かん」
どういうことだ、と桜咲に視線を送る。その間に体にかけられた不動金縛りとやらを力づくで抜けなければならない。
クソ──最初から囮か。結界とはそれ自体を悟らせないことが一流の結界だというが、これもその類。
ビキビキと音を立てて砕けていく術を尻目に、桜咲はどうにかしようと符を出しているが、効果は薄い。
関西の術に疎いのが仇になったか。
時間が無い。時間が無い。時間が無い。
だが焦ってはならない。本来なら結界ごと吹き飛ばしてやるところだが、中に近衛がいるから却下。
結界を砕きたいが原理がわからん。奇門遁甲くらいは流石に有名だが、具体的にどうすれば破れるのかを知らなければならない。
「リョウメンスクナもじき目覚める。そうすりゃ相手しちゃるけェ待っとけや」
歪む口元に思わず舌打ちをし、そして気付いた。
桜咲が刀を振り上げ、桟橋に突き刺す──たったそれだけの行動で、湖を覆っていた結界が砕け散る。
これには男も驚愕したのか、銜えていたキセルを思わずといって様子で取り落としていた。
「……そうか……
桜咲が何を見たのかは知らん。だが、あいつもあいつで何かが吹っ切れたようだ。先程までの奴とは顔つきが違う。……あるいは、こいつも何かしらの魔眼を持っているのかもしれないな。
だが、それを追及するのは後だ。
結界を強制的に破られたフィードバックもあってか、男の動きは鈍い。私は次の行動を許すことなく腹に一撃強烈なパンチを打ちこみ、意識を強制的に沈ませた。
ジジイにはちときつい一撃だったかもしれんが、邪魔をした以上は容赦する必要もない。殺すなと言われていたから律儀に殺さなかっただけなのだから。……むやみに殺す理由もないしな。
「行け、桜咲! リョウメンスクナは私が抑えてやる!」
「はい!」
飛び出した桜咲の背には純白の翼があった。──なるほど、烏族の忌子か。
近衛への態度も、桜咲の性格を考えれば自ずと理解できる。随分と不器用な奴だ。
好きな奴、守りたい奴がいるのなら、立場なぞ気にせずにずっとそばにいればよかったものを。
少なくとも私はそうして、結果的にこうなっているのだが……思いだしたら腹が立ってきたな。八つ当たりではあるが、あとでぼーやに血液でも貰うとしよう。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック」
完全に顕現しているとはいえ、リョウメンスクナの巨躯では至近距離に対応できない。
桜咲はそのフットワークを生かして天ヶ崎の懐へと入り込み、式神を切り裂いて近衛を奪還していた。
私はその間、ひたすらリョウメンスクナの意識をこちらに向けておくだけの仕事だ。
ある程度離れたところを見計らって上空に魔法の射手を打ちあげ、ぼーやへの合図とする。
「離れるぞ、桜咲」
「ですが、リョウメンスクナは……」
「ぼーやの策のうちだ。最悪私が薙ぎ倒す」
前衛がいなくとも、私の前であの弓兵が壁役になれば魔法を使う時間も稼げるだろう。
が、まぁその考えは杞憂だな。
圧倒的な魔力の高まり。矢に込められた恐ろしいほどの魔力は形となって放たれ──分裂し、竜の形を取ってリョウメンスクナを打ち滅ぼす。
爆音、轟音、それらが辺り一帯に激しく響く。その一撃はまさに神話と言っても過言ではあるまい。
幻想を打ち砕く竜の牙。あの弓兵の持つ、『対幻想種用』の宝具とやらがこれか。
放たれた竜のうち何頭かは別のところへ向かったようだが、それの行方も気になる。一度ぼーやたちと合流すべきだな。
「……やれやれ。まさかこんな任務でこんなことになるとは思っても見ませんでした」
白い髪に学生服を来た女。テルティウム、と呼ばれていた奴か……と思ったが、その後ろにボロボロの姿で浮かんでいる中にも同じ顔の奴がいる。
髪型が微妙に違うな。違いといえばそれと……胸くらいか。ボロボロの奴よりも新しく現れた奴の方が見てわかるくらいにはデカい。
まぁ、それはいい。
「何者だ、貴様ら」
「今は造物主の使徒、とだけ」
……造物主、と来たか。
ナギを追いかけまわしていたころ、一度だけその単語をこぼしたことがあったようななかったような……。
……あとで詠春にでも聞けばいいだけだな。
「それで、貴様らの目的は何だ?」
「リョウメンスクナを使っての英雄の子供たちの戦力評価です。が、それ以上の戦果があったようですね」
「……随分と素直じゃないか。知られてもいいということか? それとも、ここで口封じでもしてみるか?」
「それには及びません。というより、この状況であなたに喧嘩を売っても勝つことは難しいでしょう、『闇の福音』」
足手纏い三人を抱えて戦う気は無いということか。
ならば余計に素直に話したことが気になるものだ。そんな義理はないだろうに。
「ある程度の情報は流せとの命令が下っていますので。その後の行動によって、彼が本当に『蒼崎』なのかどうかを見極めるつもりです」
「……ぐ、おい、何もすべてを話せと命令されたわけではないぞ、セクストゥム……!」
「負け犬が吠えたところで遠吠えにしかなりませんよ、クゥァルトゥム」
『蒼崎』という単語然り、またぞろ妙なことに巻き込まれているようだな。ぼーやも因果なものだ。
「それでは、『闇の福音』。縁があればまたお会いすることもあるでしょう」
わめく後ろの男を引きずるようにして影の中に沈み、造物主の使徒と名乗った四人は消えた。
追いかけるのも一つの手だが、他に残党がいないとも限らん。ぼーやと弓兵もそれなりに疲弊しているであろう今、大した疲れもない私が最大戦力。下手に動いてことを長引かせるのも悪手、か。
ぼーやとて魔力を相当消費しているはずだ。怪我もしているだろう。……私は治癒魔法は使えんが、この抗争を手早く終わらせることは出来る。
そうして、長い夜は終わりを告げた。
本当はもっと書こうと思ってたんですけど、久々に書くとこう、筆のノリが悪いというか上手くいかないというか(いい訳
基本的に時間のある2、3月と8、9月しか投稿してないんで上手くなるはずもないんですけど。
Fgoの話。
嫁ネロがきます。
嫁ネロが来ます。
大事なことなのでもう一度。嫁ネロが来ます(迫真
私は生涯で二度課金した。
一度目は艦これの母港のため。二度目はFgoの星5確定ガチャのため(二枚目ジャンヌ)(なお星5はジャンヌしか持ってない模様)
そして私は、ネロを手に入れるために三度目の課金をする覚悟を決めた。
何を置いても手に入れたいと思ったものが、そこにある──!
I'll be back.