咲-saki- 裏世界の住人   作:アレイスター

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今回は前回行っていた通り麻雀のシーンを一話まるまる入れました。


こころして読んでください


今までの中で、一番面白くない可能性が高いです。


第四話 圧倒

「ロン。5200で、お前の飛びだ。これで、10連勝だな?」

全局半荘で打ったのにもかかわらず決着には1時間と掛からなかった。

そして、どの局として最後まで打たれた局はなかった。

菫がシャープシューターと呼ばれるのであれば、時雨はいったいどう呼べばいいのだろうか。

それほどまでに彼の狙いは正確で残酷だった。

やられた人間は心がさぞかし折れたことであろう。

外から見ていた淡達でさえ何が起こっているのか理解が追い付いていない。

理解不能な打ち方にやたらと正確な狙い撃ち。

「てるー、どうだった?」

照には、そのあまりに高い観察力から照魔鏡と呼ばれる相手の本質を見抜く目がある。

10局も打っているのだ、いつも東一局で見極めてきた照が何もつかんでないわけがない。

淡達にはそんな無駄に根拠のない安心感があった。

「…………ない」

だが、淡達の当ては完全に外れとなった。

「ダメ、まったく、わからないわ」

照にとってもこんなことは初めてだった。

本来ならばある程度固定されているはずの牌の切り方や狙い方、相手を気にする視線、リーチが来た時に出る態度、そのどれもが対局ごとに変化する。

時雨の演技がうまいのか、それともすべてが時雨なのか

どちらにしても結局時雨を把握することができなかったのは確かだった。

「照でもわからないのか……!」

菫は照の力を信頼している。

ゆえに、それに対しての驚きは尋常じゃなかった。

だが菫とは全く違った反応を示したものが一人。

「ええー!?てるーでも無理なの!?」

目をらんらんと輝かせて喜ぶ淡。

「でもやっぱり、それくらいじゃないと面白くないよね、てるー?」

淡が挑戦的なのはいつものことだが今回は

「そうね、とっても楽しみだわ」

冷静な照にもそれが移ったように照は燃えていた。

そして、得体のしれない化け物は目の前に立っていた。

「それじゃ、約束通り、打とうぜ、レギュラー様たち」

悪魔、いや、魔王の笑みを浮かべながら

 

 

 

                ☆

 

 

 

当然というのか、時雨の代わりに外れたのは誠子だった。

全員が山から牌をとり終わって対局が始まる。

「今回は打ってる相手が相手だし、我慢する気もないから最初から全力でいくね☆」

そして淡は牌を横向けにして河におく。

淡お得意のダブリーだ。

そして、彼女にはもう一つ絶対安全圏があるので、打っている全員が五向聴以上の手牌になっている……はずだ。

照はじっくりと時雨の動向を見ていた。

もちろん、凝視しているのではない。さりげなく、様子をうかがう程度に。

先ほどのうち方は確かに強力だったが、まだ自分に及ぶほどではないと照は踏んでいた。

菫も本気を出せばあれくらいはやって見せるだろう。

だが、いまだに何も見えないのは気になる。

だから、この東場を使ってじっくりと見極めよう。

照はまだまだ余裕を保った状態でいた。

だが次の瞬間照は自分が何を見ているのかわからなくなった。

(わ、たし?)

ほんの一瞬自分を見ているような錯覚に陥った。

見ているのは時雨なはずなのに……

動揺している照をよそに場面は進んでいく。

「カン」

淡のカン。これもほぼおなじみと言っていい。

その言葉で頭を現実に戻された照は再び時雨に集中する。

だが、それ以来どう、と言った様子もなく、だが何かつかめるわけでもなく淡の和了の声が上がった。

「ツモ ダブリー 裏が乗って3000 6000」

相変わらずとんでもない裏の乗り方だ。

このツモによって菫が親の東一局は終了した。

(今さっきのはいったい……?)

照の頭の中に疑念が残ったまま東一局は終了した。

 

 

                ☆

 

東2局は淡の親だ。

この調子だと淡の一人勝ちになりかねない。

さきほどの打ちっぷりから言っても時雨が何もしかけてこないとは思えないが

とりあえず今は何もしてこないようだ。

そう気持ちを切り替えて照は意識を時雨から自らの牌へと移動した。

(落ち着いて、いつも通りに。私は、強い……!)

自分に喝を入れて手牌を広げる。

相変わらずの絶対安全圏によって手牌は5向聴。

そして、またも淡のダブリー。

だが、淡はカンをするまではあがることがない。

「ポン」

その声は右隣にいる時雨から発せられた。

「ポン」

またも時雨だ。

5向聴以上から始まっているはずの時雨から二度も。

照の手牌はまだ3向聴。

時雨のポンが照には何かの前触れに思えてならなかった。

だがそのポン以来時雨は何も行動は起こさなかった。

それを狙って照は次々と手をそろえていく。

始めは、安手から、ゆっくりと

「ロン 1000点」

あがり続けて彼が出る間も無く終わらせる。

得体のしれない時雨に照は焦りを感じていた。

 

 

                ☆

 

 

東3局の親は照。

時雨はそんなこと毛ほどにもしらないが淡と菫は照の圧倒的な和了(ホーラ)率を知っている。

照の久々に見る闘志をみて菫はヘタすればこの局で終局になるかもしれないな、と思っていた。

こうなってしまえば絶対安全圏など意味をなさない。

絶対安全圏は確かに手ごわいが、淡自身、それほど和了るのがはやいわけではない。

そして、照は例え5向聴で始まったとしても牌に愛されているかのように必要牌が集まっていき

「ツモ 1000オール」

今回も自分たちをまったく寄せ付けない。

先ほどの彼のうち方には目を見張ったがやはり照ほどではなかったか、と菫は少しほっとした。

だが、菫には一つの違和感があった。

それは、あまりに静かすぎる時雨の存在だった。

 

                 ☆

 

 

東3局三本場

照の勢いは止まることを知らず、誰も寄せ付けないように和了り続けた。

点数差はもはや2万以上。

毎回の無策のダブリーで淡の点数はすでに一万を切っている。

だが照の心には安心が毛ほどもなかった。

あるのは、早く上がらないと、という焦りのみ。

その気持ちは照が和了るごとに強くなっていた。

なぜなら

時雨はこの状況においても飄々と笑っているからだ。

突き放せば突き放すだけ、照は追い込まれていっていた。

どれだけ突き放しても表情を変えない時雨に恐怖していた。

早めにかたをつけないと。

あと一息で、勝てるんだ。

そして、またしても淡のダブリー。

自分の手牌は一巡まわってきて4向聴

そして、また一巡まわってきて3向聴

――2向聴

その時、照は自分の心の奥底を誰かに見られているような感覚に陥った。

その感覚はほかのプレイヤーが照の照魔鏡を受けているときのそれに他ならなかった。

「カン」

それを宣言したのは淡ではない。

時雨だ。

だが、照には淡がカンをしているように見えた。

(まただ、また……)

「見えるっていうのも、怖いもんだよな」

不意に時雨が口を開いた。

他の二人は何を言っているのかわからない、と言った様子だったが照だけはわかっていた。

「俺みたいな道化には格好の獲物だぜ?」

その言葉で今までのがすべてワザとだったことに照は気づいた。

始めに見た時に照が自分自身を見たように錯覚したのも

先ほどのカンが淡のものに見えたのも

すべて……

(この子、本当にヤバい)

だが、淡のように時雨が和了る気配はなくまた一巡回ってきて手牌は1向聴

(あと一巡でいいから耐えて……!)

ここで和了れなかったら勝てないことを照は本能で悟った。

だが、残念ながら照の願いは天に届かなかった。

「ツモ 裏が乗って 4000 8000」

淡が和了る。

このとき、完全に空気が変わっていた。

和了った淡に流れが行っているのではない。

それは、菫も気づいていた。

淡だけがのんきにうれしそうに点棒を握っている。

淡はこの空気を支配する支配者によって和了らされたに過ぎない。

完全なる支配空間。

この空間が出来上がって

時雨が負けたことはかつて一度もなかった。

 

 

               ☆

 

 

東4局、親は時雨

時雨にとってこの対局は終わったも同然だった。

だが、正直な感想としては強かった方だと時雨は思っていた。

特に宮永照は別格。

どうやら自分のことをやたらと気にしてくれていたようなので少し遊んでみたりもしたが

もしも、もっと場数を踏んでいたならば勝負はどうなったかわからないだろう。

淡は本当に純粋に麻雀を楽しんでいた。

強いものを求める割にはなかなか無策なところが多い、天然と言われる部類の人間なんだろう。

だが、その天然素材はなかなかのものだ。

常にダブリーを駆けられる超人的な運。

さらに不思議なことに周りの牌のそろいが悪くなるらしい。

始めの方は時雨ももろに受けていた。

もう一人は……まぁあんまり特徴的ではないな。

だが、冷静だ。

決めつけも多いようだが基本見る目は冷静そのもの。

照には一枚劣るが、別の方向にその冷静さがいかされればもしくは化ける可能性もないとは言えない。

そして久しぶりの普通の麻雀。

すこし緊張感に張りつめていたが、やはり賭けが絡むときほどではなく

時雨自身も純粋に楽しんだ。

主に宮永照で。

「次は、もうちょっと強くなっとけよ」

まだ対局が終わってないのにもかかわらずそんな言葉を時雨は吐いた。

いや、時雨の手牌を見ていたならば終わったと思っても無理はないのだが……

「随分と自信満々だね、しぐれん。だけど、正直しぐれんにはがっかりだよ。もうちょっと強いかと思ってたのにさ」

淡だけは唯一なにも時雨についてこの対局中に勘付いていなかった。

これは、淡が鈍感、なだけではない。

「お前は裕香にちょっと圧力かけてくれたからな。少し大きなしっぺ返しを食らってもらうぞ」

(あの圧力がわかることが知れたのは収穫だったが、せっかく少しだけ前向きに考えていてくれた裕香が淡のせいでまた麻雀はいや、なんて言い出したらどうしてくれるんだ!)

そう、時雨はそのことを少し怒っていたのだ。

思いもよらないところでの一撃、つまり不意打ちは何よりも効果覿面だ。

ゆえに隠した。

「何言ってるかわからないけど、まあいいや。リーチ」

相変わらず、ありえない強運と無策がかさなったダブルリーチ

「ロン」

そして時雨は自らの牌をオープン。

「字一色、大四喜。四暗刻単騎 240000点だ。」

「あれ?絶対安全圏が効いて……ない?」

その手牌には誰もが驚きを隠せなかった。

そして、目論見通り一番驚いていたのは淡だった。

 




どうだったでしょうか?
初めての挑戦、ということかなり不安です。
文章もいつにもまして乱雑になっているなーと自分で読んでいても思います。
これでも、私なりに努力はした方なんです!
でも、咲の小説を書いているのに咲の本分である麻雀のシーンがこれじゃぁ、なぁ……とこの先に不安を感じる思いです。

できればまた、アイデアやアドバイスなどをいただけると幸いです。

普通の感想もまたいただけると元気が出ますので、書いてやろう!という方は是非よろしくお願いいたします。


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