咲-saki- 裏世界の住人   作:アレイスター

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ここからは前回にも言っていたように少しオリジナルな設定が入ってきます。
学校の麻雀風景とか、などなど。


第一話  気配

白糸台高校の女子麻雀部は全国でもトップクラスの強さを誇る。

中でも、全国2連覇中の宮永照は別格の強さを誇り、最早プロでいてもおかしくないレベルだ。

麻雀になれば、その顔や性格からは考えられないようなおぞましい力を発揮する。

だが、彼女も普段はただの高校生。

普通に学校に登校し、普通にみんなと一緒にみんなと授業を受ける。

そして、それは登校中の一瞬の出来事だった。

先日発売されたお気に入りの作家が書いた小説を片手に2年以上通い続けている見慣れすぎた道を歩いている途中。

髪の毛をポニーテールに纏めた女の子の手を引き、白糸台高校の制服に身を包んだ少年が登校中の照の横を通り過ぎていった。

その一瞬、微かにだが照はその少年に反応した。

時々起こる現象だった。

長い間麻雀をし続けてきたうえで身についた勘とでもいえるかもしれない。

4月に入ってきた新入部員ですでにレギュラー入りを確実視されている淡の時も起こったが淡の時は隣を通り過ぎられた瞬間に冷や汗が頬に流れるほどにすごかった。

が、今回横を通っていった少年はそれほどではない。

にしても、2年で現在レギュラーの誠子あたりとはいい勝負をするかもしれない。

本来、弱い人間では反応すらしないのだからある程度の実力者だろう。

麻雀の人気があがり、麻雀部の実力者である照はその顔も広く始業式の挨拶などを担当させられることが多い。

今年の始業式も挨拶を担当したのだが、あのような男子は見たことがなかった。

それに、妙に制服も新しそうだ。

とすると、転校生だろうか?

すこし珍しいが無い話ではない。前の自分に学校が合わなかった、などの理由で転校してくる人間は少なからずいる。

麻雀に男女は関係ないので、白糸台は男女混合で打っているが、男子はどうも弱い。トップはいつでも同じメンバーのローテーションだ。しかも全員女子。

淡が入って少し新鮮さは感じたが、混合でやっていて、男女混合で楽しそうにやっているグループを見ると、時々男子がメンバーにほしくなった。

だが、並大抵の男子では自分たちの強さに立ち向かえない。

せっかくなら、麻雀部に入ってくれたらいいのになぁ。

少年は楽しそうに走っていく。

少年が見えなくなるのとともに、照は再び本へと意識を向けた。

……少年もまた照に反応していたことなど照は知る由もなかった。

 

 

              ☆

 

 

時雨は先ほどすれ違った女生徒―宮永 照の凄さに驚きを隠せなかった。

(これが全国のトップクラスか。普通の高校生とは迫力が違うな)

だが、時雨にはどうでもいいことだった。

なぜなら、別にもう麻雀にこだわる必要は無いからだ。

昔は借金返すのに必死だったり、そしたらヤクザに気に入られて逃げられなくなって打たされたりと切っても切り離せなかったが、今ではそうではない。

だから、その実力に感心はしてもそれ以上は無かった。

それよりも今の時雨にとっては目の前に大きくそびえたつ校舎の方が何倍も興味のそそられるものだった。

「おおー!これが学校か。懐かしいな!」

あまりに子供のようにテンションを高くする時雨の姿は、裕香にとってほほえましかった。

「懐かしいって、どれくらい学校行ってなかったの?」

「小3からずっと。だから7年ぶりか。」

その言葉に裕香は目を見開かずにはいられなかった。

軽々しく放たれた言葉。しかし、その重みを裕香はよくわかっている

つまりは7年間もの間親の借金に時間を費やしたことを意味するのだ、と裕香は思っていた。

実際は借金はほんの7日で返してしまうのだが、結局それにまつわることで時間を取られたことに変わりはない。

「アンタ勉強できるの?なんなら、私が教えてあげようか?こう見えて勉強は得意だったのよ?」

「そいつは頼もしいな。頼りにしてるぜ」

「任せなさい」

裕香は自慢げに胸を張ってたからかと宣言する。

「さーて、じゃあ、とりあえず、裕香の制服を調達してくれてる沢木さんのところに行くか。職員室にいるだろ。」

てくてくと早足で歩いて校舎に向かっていく時雨に再度裕香は問いかける

「ほんとにいいの?私がこの学校に通っても」

学校に通えるのは正直ありがたい。

だけど、その学費を支払うのは時雨だ。

奨学金は親がいない自分では借りることができない。

なんとなく、時雨の勢いに巻き込まれてついてきてしまったが、未だにそこのもやが晴れずにいた。

やはり気が引けた。

そんな裕香に時雨は少し怒ったような顔をして一発デコピン

「イタッ」

でこを両手で押さえて目に涙をにじませて時雨の方を見る。

「そういうのは無しだって、昨日言っただろ。裕香が気にするようなことじゃねーよ。」

「でも、やっぱり学校なんて……」

高校はもう、義務教育ではない。

裕香は働こうと思えば働ける年齢なのだ。

いつまでも、時雨に頼っているわけにもいかない。

だが、時雨は再び裕香に不機嫌そうな顔でデコピンをした。

また、イタッという声を上げてうぅ、と悲鳴のような声を上げる。

諦めたように、ため息をついて時雨は話始めた。

「これも一つなんだよ。俺の理想としていた学校生活の。その、友達と学校に一緒に登校する、っていうさ。どうでもいい話しながら、毎日登校できたらって思っててよ。もし、裕香がどうしても嫌なら無理にとは言わないが?」

本当に金のことなんて荒稼ぎしてきた時雨にとっては些事だ。

今の時雨にとって大事なのは、金よりも質量詰まった思い出の時間。

それを、裕香は理解したのかしてないのか、こう答えた。

「そこまで言うなら、仕方ないわね。通ってあげようじゃない。アンタの隣で、毎日。覚悟しなさい、アンタが嫌って言っても毎日連れてくからね!」

時雨は裕香の言葉で連想してしまった。

自分の隣に裕香がいて、学生バックを片手に登校している様を。

そして、とてもうれしい気持ちになった。

「じゃあ、土日も学校に行くのか?」

だが、そんなことはおくびにも出さない。

屁理屈も時雨の照れ隠しの一つなのかもしれない。

「そ、それは、ほら、あれよ、言葉のあやよ」

必死に弁明する裕香。

それを気分よさそうに聞きながら、時にまた屁理屈を入れながらも

二人は校舎へと足を進めていった。

 

 

 

                ☆

 

 

「初めまして。あなたが牧野 裕香さんね。私はこの白糸台高校の国語を教えています、沢木と言います。よろしくね。」

メガネをかけ、パンツスーツのやり手のビジネスマン、というのが沢木の第一印象だ。

が、外見ほど固い性格ではない。むしろ柔らかすぎるくらい柔らかい性格の持ち主だ。

「それで、制服は?」

「やっぱり新品はすぐには準備できなかったわ。ごめんなさいね。だけど代用品は用意したわ。」

そう言って、デスクの隣においてあった紙袋の中から、少し年季は入っているもののきれいに折りたたまれた白糸台高校の制服を取り出した。

「じゃーん!これ、私が現役だから8年位前まで使ってたやつなんだけど、裕香ちゃんには悪いけど今日だけはこれを使っといてもらえる?と言っても拒否権は無いけどね、うふふ♪」

「うふふ、だってよ、うわー、鳥肌が」

「時雨君、ひっどーい。ねぇ、裕香ちゃんもそう思うでしょ?」

「あ、あははは……」

「裕香を巻き込んでやるなよ、困ってんだろうが」

「あら、裕香、ですって。もうそんな仲なの?さっすが、たらしの時雨君ね。手が早いわ。」

「そんなんじゃねーって。……裕香もさっと引くのやめてくれ。元々そう呼んでくれって言ったのお前じゃねーか!?」

「いや、なんとなくノリで」

「ナイスよ、裕香ちゃん」

元気にハイタッチを交わす二人。

「じゃあ、俺は先に教室を見て回ってくる。二人で仲良くやってろよ」

そう言って、時雨は職員室を後にした。

「行っちゃったわね」

「そう、ですね」

「時雨君って結構ああ見えて闇が深いのよ。小さいころにいろいろ起きすぎた、あの子の場合。特に失うことに対しては、ね。だから、できるだけあの子のそばを離れないでいてあげてほしいの。元気に振舞って、余裕があるふうにみせてるけど、結構弱い子なのよ。もちろん、ずっとなんていうつもりはないわ。可能なはんいでだけ。せめて彼が普通に別れたら涙を流すだけで済むくらいのもとの精神を戻すまでは、一緒に」

言葉で聞いたことは裕香にはそれほどしっかり理解できなかった。

だけど、沢木が時雨のことを思っていて、時雨のことをわかっていることだけはわかった。

「もちろん、いつまでだって一緒にいますよ。あいつがいることを許してくれる限りずっと。」

そのあと、裕香は時雨の恥ずかしエピソードをいくつか聞いたり聞かなかったり。




ようやく第一話という形で入ることができました。
ココからは、できることなら麻雀の描写を増やしていきたいところではあるのですが、イマイチルールとか点数計算ができないため、おそらく、吹っ飛ばしたり、何かと無理やりもみ消す場合がございますが、ご了承くださいませ。
パソコンでやってると、役がわからない、点数計算が出来ない、でも、麻雀できちゃうんですよ、便利になったものです。
トイトイとか、テキトーにないたらできてる、とかそんなノリですw
……だからわからないんですよ
誰か、教えて!!!(涙目)
あと、感想などありましたら是非お願いします。

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