イリス ~罪火に朽ちる花と虹~   作:あんだるしあ(活動終了)

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「半分だけでも同じ血で繋がってて」

 ルドガーはジュードと共に、ヴェルに、イラート海停で回収したデータディスクを見せた。

 

「確かに。ご案内しますので、社長に直接お渡しください。――それと、こちらが頼まれていた物になります。ユリウス前室長に抹消されたデータを復元したものです」

 

 ルドガーはヴェルから受け取った書類にざっと目を通した。

 

「本当に腹違いなんだな」

「――申し訳ありません」

「? 何でヴェルが謝るんだ?」

「いえ、その……ああいう場で申し上げることではなかったと」

「別にそのくらい気にしてないさ。むしろ俺、嬉しいと思ってるよ」

「嬉しい、ですか」

「俺とユリウス、見た目似てないだろ。それで昔、ユリウスは血の繋がった兄弟なんかじゃないんじゃ、って疑ってた時期があってさ。でも、安心した。兄さんと、半分だけでも同じ血で繋がってて」

 

 ヴェルは痛ましいものを見る目でルドガーを見た。ルドガーとしては慣れているので、不快には思わなかった。

 

「悪い。妙な空気にさせちまったな。社長に持ってけばいいんだっけ」

「はい。ご案内します。――それとルドガー様。エル様とロランド記者には今回ご遠慮いただいてよろしいでしょうか」

「エルとレイア? 何でだ」

「エル様はお小さい方で、ロランド記者はマスコミ関係者。どちらも社の機密をお聞かせするにはふさわしくありません。どうしても同行をとおっしゃるなら、Dr.マティスと導師イリスのみにしていただけませんか」

「ジュードはともかく、イリスもOKなのか。脱走したって聞いたけど」

「ルドガー様がご一緒ならば問題ないとの社長の判断です」

 

 ルドガーは考える。エルとレイアを置いてビズリーに会いに行くべきか、それとも無理を通してでも連れていくべきか。

 

「悪い、ヴェル。できれば二人とも連れて行きたい。多分だけどエルは関係者だ。ユリウスと同じ、この時計を持ってた。『カナンの地』に行かなきゃいけないって言ってた。『カナンの地』に関する話になると様子がおかしくなってたし。それとレイアだけど、レイアはイリスと契約した。イリスと離さないほうがいいと思うんだけど――」

 

 ジュードにアイコンタクトを送る。ジュードにとっては幼なじみの問題だからか、会って日も浅いのに通じたようだ。

 

「普通の精霊ならともかく、イリスは『蝕』という特性を持ってます。それを抑えていられるのはレイアが直接マナを供給してるからです。離して契約が切れるわけじゃないですけど、距離の分だけ供給は細くなるのが直接契約の常ですから。どこまで離れても有効かが分かるまでは、レイアとイリスを離すべきじゃないと思います」

「……Dr.マティスが仰るのでしたら。しばらくお待ちを。社長に確認します」

 

 ヴェルは少し離れ、GHSで電話を始めた。

 

「フォローさんきゅー、ジュード」

「いいよ。レイアは大事な幼なじみだし、ルドガーだってもう僕の友達だから」

 

 ジュードは笑った。嬉しいが、こそばゆい。面と向かって「友達だ」と言われたことなど、ルドガーの人生で何回あったことやら。そもそも打算抜きでルドガーと「トモダチ」をしていた者を除けば、本当に友達などいたのかと疑いたい学生時代を送って来た。

 

 ヴェルが戻って来た。

 

「社長に確認が取れました。感心されていました。ルドガー様はなかなか人望があると」

「喜んでいいのか? それ」

「ルドガー様にお任せします。――こちらです。付いて来てください」


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