ソロアート・オフライン   作:I love ?

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そろそろミーティアートの方もやんなきゃなあ……。でもこっち書くのが楽しいんですよね。
そういえば、やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっているをやったんですが、ゆきのんルート甘々だったぜ……。弁当とかプールとかおんぶとか……俺ガイルでは珍しい、八幡がゆきのんの胸に触るというラッキースケベもありました……。
……おい八幡そこ代われお願い三百円あげるから。


いつまでも比企谷八幡は女の子に逆らえない。

アスナが言ったことを一言で纏めよう。

ヒースクリフ「ルールを守って楽しくデュエル!」

……うん、違うな。絶対違うな。

 

「わ、ワンモア・プリーズ、アスナ?」

 

「ハチ君何で英語なの? というか、ハチ君とフレンド解除しちゃったから呼べなかったのにここに来るなんて、すごい偶然だね」

 

恥ずかしげにはにかむアスナは確かに可愛いし、まぁ役得なのだが事はもっと重大なのだ。思わず訊き返してしまったが、言葉で聞いた限りの事態は理解できる。

 

「……まぁ、つまり纏めると、1.昨日のことをヒースクリフに全部報告した。もちろんお前がギルドを暫く休むことも。2.昨日はそれで帰って、許可をもらえると思ったらヒースクリフが条件を出してきた。3.その条件とはパーティーを組む俺たち二人との決闘……と、こういうことだな」

 

「うん」

 

迷わず首肯するのを見るに、どうやら作り話や解釈の勘違いなどではなく事実であるらしい。

 

「……なぁ、一つ言っていいか? ――俺、ヒースクリフと絶対デュエルしたくないんだけど」

 

「同意」

 

「うぅ……」

 

珍しくキリトではなくアスナが涙目になったが、これは譲れない。戦闘狂(キリト)ですら戦うのを嫌がるほどの圧倒的強者にして最強、血盟騎士団団長である《聖騎士》ヒースクリフの名は伊達ではない。

曰く、アインクラッド最強。曰く、ボスの一撃を軽々と受け止める。曰く、あの閃光をも従える猛将。曰く、そのHPバーが黄色に染まったことはない。曰く、曰く、曰く……と、もはや遊戯の神に異世界転生させられちゃうほどの実力の持ち主なのだ。

そんな奴とどうして戦いたいと思うだろうか。恥をさらすだけの行為である。まさかヒースクリフに下克上して血盟騎士団団長になろうなんて野心を持った奴がいるわけでもなし。

それに……。

俺の考えを断ち切るかのようにクイクイと袖が引かれる。やんわりと手を動かし、コートの袖から手を離させる。

 

「ハチ君……ダメ……?」

 

「ダ……ダメ……」

 

あ、危ねぇ……。小町で年下耐性つけてなかったら八幡城があっさり落城してたわ。

 

「……なこともない」

 

「ホント!?」

 

……ん? あっれれぇ〜? おっかしーな。なんで了承したことになってんの? ……無意識に俺がOK出しちゃったからだよ、バーロー。

 

「エイト……」

 

キリトの視線が妙に痛い。陥落早すぎじゃないと言いたいんだなと目線だけでわかる。

 

「ま、まぁ、あれだ。さすがにアスナをギルドから一時脱退させるだけでヒースクリフが命を取りに来るとは思えん。なら、最強とのデュエルも悪くないんじゃないか?」

 

俺は嫌だけどと心中で付け足しておく。すると元々がバーサーカーなキリトも、驚くほどあっさりと許可を出す。

するとさっきまでは確かに涙目だったはずのアスナが満足げに笑っている。うわ、女って怖い……。 

……働きたくねぇなぁ。

 

 

 

× × ×

 

 

 

アインクラッド五十五層、鉄の都グランザム。

アインクラッド最強派閥である血盟騎士団が本拠を構える街であり、もはや統治していると言っても過言じゃないと思うくらいだ。

 

事実――。

 

「アスナさーん! これ食べていってください!」

 

「アスナさん! いい装備が手に入ったんですよ! 見に来てください!」

 

「アスナさん! こっち向いて! はいチーズ!」

 

――アスナがもはやアイドル扱いである。

アスナが八人の仲間を集めてアイドルグループを結成する実話をアニメ化したら儲かるんじゃないの? アイアンドルという新しいアイドルになろう。

まぁ、しかしそれを抜きにしても、笑顔で人を捌く姿は握手会のアイドルみたいだ。握手会行ったことねぇけど。

俺とキリトは完全に手持ちぶさたである。

 

「すごい人気だね……」

 

「……まぁ、攻略組ってだけならまだしも、最強ギルドの血盟騎士団の副団長だからな……しかもここは血盟騎士団のお膝元って言ってもいいくらいだし」

 

「あはは、ならヒースクリフは将軍なの?」

 

「あながち間違いでもないな……和か洋かの違いじゃないか? 何せ聖騎士だからな」

 

「確かに……」

 

などと少しぎこちなくも下らない会話をしている間に話はついたのか、アスナがパタパタと戻ってくる。

 

「さ、行きましょ」

 

「うぇーい……」

 

ウェイ勢が言ってることとまったく同じなのに違うような言葉に聞こえるって、人間って不思議!

ドラクエみたいにぞろぞろぞろぞろ怪盗ゾロリ! ばりに連れたっていると、段々とこの街でも図抜けてデカイ鉄製の城が近づいてくる。

 

「…………」

 

今からこの建物に入るのだと思うと自分は囚人じゃないのかと錯覚してしまう。やだなぁ、行きたくねぇなぁ……。

とはいえ、当然のように入っていくアスナの後ろ姿を見ると逃げてはいけないような気がする。

鬱々とした気持ちを抑えるように、俺は一歩を力強く踏み出した。

 

 

 

× × ×

 

 

 

「お別れの挨拶に来ました、団長」

 

……言い方ってもんがあるんじゃないの? それだともうギルドを脱退しますって言ってるようにも聞こえるからな?

 

「そう結論を急く必要もないだろう。……少し話させてくれてもいいだろう」

 

玉座にいわゆる司令座りをするヒースクリフには、数々の逸話にそぐわぬオーラとでも言うものを出していた。

 

「久しいな、エイト君。君とは二ヶ月、キリト君は七十三層ボス攻略以来だったかね?」

 

「……俺がボス攻略に出なくなった以来ですから、まぁそうっすね」

 

「私もです」

 

こいつと話すことはいつまで経っても慣れない。……そもそも人と話すことが苦手でしたね!

 

「してエイト君。君はこの二ヶ月、一体何をしていたのかね?」

 

言われて眉根がピクリと動いたのを自覚する。ヒースクリフは態と触れてほしくないことをピンポイントで話題に出しているような気がするから苦手だ。

おかげで険のある言い方になってしまう。

 

「……それは答えなきゃならんことなのか?」

 

「いや、本題に入る前の雑談と言うやつだ。何か気に障ったのなら謝罪しよう」

 

まったく謝罪しているように見えない、張り付けたような無表情はどこかうすら寒い。これからが本題なのか、より一層厳粛な雰囲気を出すと開口した。

 

「……エイト君が最後にボス攻略に参加したのは六十七層だったかな? あれも辛く苦しい戦いだった。最強ギルドなどと言われていても戦力は常にギリギリだよ。だと言うのに、君たちは私たちの大事な主力を引き抜こうとしてるわけだ」

 

まるで罪人を裁く裁判官のようにこちらを責めるような口調でゆっくりと言葉を紡ぐ。別に俺たちが引き抜こうとしているわけではないのだが、血盟騎士団の活動に参加しないで他のやつらとパーティーを組むなら同じことなのだろう。

正直言って俺たちがしているのは褒められるどころか非難されることだ。ヒースクリフが一言無理と言えば、アスナが血盟騎士団を休むことは不可能だろう。

なのに、わざわざデュエルをするなんて意味がない。何か目的があるはずなのだ。

 

「……そんなに大事なら護衛、もっと強くてマトモな奴にした方がいいですよ」

 

というかアスナに護衛とか必要ないだろ。

 

「クラディールのことか。彼には自宅謹慎を命じている。しかし……、性格についてはともかく、君クラスともなると血盟騎士団にもそんな人材はいないのだよ。私とアスナ君を除けばね」

 

いや、逆に集団のやつらにスペックでも劣ってたら俺もう攻略組にいないから。

そんな内心は露知らず、ヒースクリフは続ける。

 

「《二刀流》のキリト君。《消滅剣》と《双剣》……言うなれば《消滅双剣》のエイト君。ここは剣が己を象徴する世界だ。アスナ君が欲しくば、《神聖剣》ヒースクリフに打ち勝ってみたまえ」

 

つまり、剣で白黒着けようというわけだ。

ユニークスキルと一口に言っても、相性と言うものはある。例えばキリトの二刀流は攻撃型。故に防御型のヒースクリフの神聖剣には分が悪いが、攪乱型の俺の消滅剣には相性がいい。俺だったらヒースクリフに相性がいいが、キリトには悪い。ヒースクリフはキリトに強く、俺には弱い……と、なるのだ。

まぁそれだけで勝負が決まるわけではないが、拮抗した実力の持ち主同士の剣合はレベルが一違えば、相性が少し悪ければ、判断を少しでも誤れば、それで勝敗は決まる。

 

「……私たちが勝った場合は、アスナを貰っていいんですよね?」

 

「ああ、約束しよう」

 

そこまでは予想通りだ。アスナが血盟騎士団を休むために戦うのに――あれ? 言葉にすると何かおかしくね?――、何のリターンもないのではやる意味がない。だが、それは向こうも同じことだ。

 

「……で? 俺たちが負けた場合の条件は?」

 

「君たちの血盟騎士団への加入だ」

 

……まぁ、大方予想通りと言える。

しかしそれに反駁する者がいた。アスナだ。

 

「だ、団長! それはあまりに不公平(アンフェア)な条件では……」

 

「アスナ君」

 

ピシャリと鋭い声音で二の句を継がせない。人とのコミュニケーションが不得意な俺とキリトはともかく、アスナすらも言葉を継げなかった。

 

「条件、とは言ったがそもそも君たちの望みを聞く義務は私にはないのだよ。不公平と言うならば、この状況そのものが不公平だとは思わないかね?」

 

まぁ、正論だ。元々がこちらのワガママでしかない以上、条件を聞き入れるしかない。

固まってしまってる二人は放っておいて、デュエルの日にちや段取り、勝敗の決定方法などを詰める。

 

「なぁ、もし例えばキリトがあんたに勝って、俺が負けた場合はどうなるんだ? 引き分けか?」

 

「その場合だったら君たち二人のどちらかともう一度デュエルして決めるか、負けた人が血盟騎士団に入り、アスナ君は勝った人とパーティーを組むか、もしくは現状維持かが妥当だろう」

 

要は白黒ハッキリするか、引き分けか、今と変わらないかということだ。こんなの考えるまでもない。

 

「二番目だな。一番目はその案で行くならそもそも俺たち二人とも戦う必要はない。三番目になるとお互いデメリットしかないしな。消去法で二番目だ」

 

「ああ、私もその案がいいと思う」

 

見透かしたかのような瞳に苛立つが、理性で無理矢理抑える。

 

「では――日取りは明日。時間は午後二時の場所は七十五層《コリニア》でいいかね?」

 

ヒースクリフの提案に、俺は復活した二人とともに頷きを返した。


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