モノクロシンドローム   作:AK74

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エピローグ・お話の始まり

さて、俺はどうすれば良いんだろうね?

 

場所は変わって『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』ことSOS団部室。

去年、ハルヒが考えだしたへんてこりんなつぎはぎ映像を映画と呼ぶことができるのなら、2回目となる映画制作。

 

『第1回SOS団文化祭映画原案発表会』

 

可愛らしい字でそう書かれたホワイトボードを見てため息をつく。

 

つまりは、そういうこと。

 

今現在、各人に渡された台本を読んでいる最中である。

今回の映画制作にあたり

 

「今年はみんなもシナリオを考えてきなさい!」

 

とのSOS団団長の一声により、面倒ながらもメンバー全員が映画原案を考えてくることになったのだ。

 

あぁ、面倒臭い。本当に面倒臭い。

しかし、流石に古泉もこのくらいは予想できていたのだろうか

 

「任せてください、考えていることがあります」

 

と、そう言い放った一週間後の放課後、5冊分の台本を携えてSOS団部室に赴て来たわけで。

「…これ、お前が考えて来たのか?」

「いえ、僕と朝比奈さんと長門さんの合作ですよ」

 

…で、それをどうするんだ?

 

「我々が4人で作り上げたものとして提示します」

「…俺何もしてないけど良いのか?」

「大丈夫ですよ、キョンくんに負担がかからないようにって、古泉くんが。それに楽しかったから良いですよ」

 

そう言って朝比奈さんがお茶を置いてくれる。

…何か申し訳ない気持ちに。

 

「ん?ってことは長門も台本制作に一枚噛んでるのか?」

「………」

 

…聞いてますか長門さん?

 

「…そう」

 

顔を上げてそれだけ言うと、再び足元の本に目を戻す。

…相変わらず最低限のコミュニケーションしかとろうとしないんだな。

 

「でも、長門さんが一番ノリノリでしたよねぇ」

 

…マジですか朝比奈さん。

 

「あそこまで意見を出す長門さんは初めて見ましたよ」

 

というかそんなに楽しそうなら俺も参加したかったなぁ…

 

「まぁあなたにも一仕事あると言えばあるんですが…涼宮さんが来るまで待ちましょう」

 

ハルヒなら職員室に呼ばれたとかなんかで遅く──

 

「お待たせ!みんないるかしら!?」

「のわっ!お前遅くなるとか言ってなかったか!?」

「あぁ、何か大したことない話みたいだし、ぬけて来ちゃった。で、その本何かしら?」

 

早速ハルヒが机の上に置いてある5冊の本に気がつく。

 

「映画の原案です。我々が4人で考えてきたんですよ」

 

俺、何もしてないけどな。

 

「いいじゃない!早速みんなで読みましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまでは何も問題は無かったのだが…

 

さて、ここで問題です。

 

俺が頭を抱えて困ってる理由はなんでしょうか。

 

答え、原案のシナリオ。

 

「…なぁ古泉、これ本当にやるのか?」

 

『モノクロシンドローム』と書かれた台本を畳ながら俺とハルヒの反応を伺っているニヤケ顔に尋ねる。

 

「何か問題でもありましたか?」

「…色々突っ込みたいところがありすぎて何と言ったらいいか…」

 

…というかハルヒのやつ、固まってるぞ?

 

「食い入るように台本見てますね…」

「…ちょっと…」

 

お、喋った。

 

「…この話のあらすじを考えたのは誰かしら?」

「は、はい!私です…」

 

…何やってるんですか朝比奈さん。

ハルヒも顔真っ赤にして…怒ってるんじゃないのか?

 

「ちょーっとこっちに来なさいみくるちゃん…」

「ひえぇ…」

 

あぁ、朝比奈さんが部室の隅に追いやられていく…

(みくるちゃん超グッジョブ!)

(…へ?あ、はい!ありがとございます!)

 

…駄目だ、何喋ってるかさっぱりわからん。

 

「というか長門」

「…何」

「明らかに1人無理なキャスティングがあるんじゃないか?誰とは言わないが」

「…問題無い。連れてくる」

 

そういう問題じゃなくてだな…

「それにバイクなんかどうするんだ?谷口は免許なんざ持ってないし、仮に2人乗りすることになっても警察沙汰になったり最悪怪我もするぞ?」

「…私がさせない」

「はぁ…とにかくだ、台本はもう一度考えなおそうぜ」

「…それは推奨できない」

 

…何故だ、長門。

 

「…涼宮ハルヒはすでにこのシナリオで映画を作る気でいる」

「マジかよ…」

「大マジよ!」

 

うわっ!いきなり叫ぶな!

 

「早速撮影に取りかかりましょ!有希とみくるちゃんはあたしと一緒に衣装調達、キョンと古泉くんは機材調達しておいて!」

 

…嵐のように去って行きやがった。

 

「…はぁ。面倒くせぇ」

「おや、こちらのあなたはこういうことに関して楽しいとは感じないのですか?」

「…仮にそうだとしたらこの部室にはいねぇよ」

 

モノクロシンドローム、ね。

 

色なんざ塗ろうとする前にハルヒが好き勝手描いていく…まぁそんな絵も嫌いじゃないが。

 

「そういう面で涼宮さんが及ぼしてくれる影響は数多くあります。僕にも、朝比奈さんにも」

「…長門もか?」

「その通りかと。少なくとも今涼宮さんが描いている絵に対して物凄く興味がありますね」

「機関の一員としてか?」

「副団長としてです」

 

…あ、そ。

 

「おし、仕方ないから機材集めにいくか」

「あぁ、丁度、機関の知り合いにそういう道具一式を所持している人がいますよ」

 

…だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭当日。

 

俺とハルヒは閉会式の時に特別賞を受賞した。

賞の名前?知らん。自分で補完しといてくれ。

 

ただ言えることとして、谷口及び古泉のニヤケ顔、愛らしい笑顔の朝比奈さんと何時もと変わらぬ長門。

そして、

 

「………」

 

何故か無愛想に顔を真っ赤にしているハルヒの顔が強く印象に残った。

多分明日からそういう目で学校の連中から見られることになるのだろう。

 

あぁ、本当に面倒…まぁ、別にいいや。




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