ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 転生者の歩き方   作:amon

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 憚りながら次話を投稿させて頂きます。

 そして再度、お願い申し上げます。
 面白くないと思われた場合は、何も言わずブラウザバックをお願いいたします。


第5話『不死騎団』

「かかれーー!!」

 

『ウオオォーー!!!』

 

 パプニカ王国軍が、攻め寄せるアンデッドモンスターの群れを迎え討つ。

 

 パプニカ王に参戦の意思を伝えた翌日、早速モンスター共が攻めて来た。王国軍が出撃し、俺もその戦線に竜神王シリーズフル装備で加わっている。

 

「カアァーーーー!!!」

 

『『『ギャアァァァッッ!??』』』

 

 向かってくる骸骨共を『灼熱』のブレス攻撃で焼き払う。戦うと決めた以上、手加減も遠慮も自重も無しだ。(ブレス)系の特技はMPを消費せずに使えるのが最大のメリットだ。しかし、こうして高い威力で使ってみて初めて知ったが、(ブレス)だからか肺活量が要求される。あまり連発すると酸欠で目が回りそうだ。

 

 ブレスの後は少し息を整える為、剣や格闘による白兵戦に切り替える――。

 

「ハアァ!!」

 

 駒のように回転しながら敵を蹴り砕く『回し蹴り』、全身で捻りも加えて縦横に回転しながらアクロバティックに敵を打ち砕く『ムーンサルト』、雨のような乱れ斬撃『五月雨剣』――その他諸々、敵全体或いは敵グループ攻撃の特技を駆使し、迅速かつ効率的にモンスター共を蹴散らしていく。アンデッドモンスターは元々死んでいるので、倒すのが比較的気楽で助かる。

 

「オラオラオラオラァァーーー!!!」

 

『『『ギエェーー!!??』』』

 

 俺の攻撃が当たると、敵のモンスター共が面白いように砕け散り吹き飛ぶ。撃破数が300を越えた辺りで数えるのに飽きて止めた。敵は数こそ多く、粉々にしないと前進を止めないアンデッド特有のタフさが面倒だが、個々の戦闘力は決して高くない。

 

 パプニカの兵士達には五分五分の相手の様だが、今の俺のステータスからくる戦闘能力の敵にはなり得ない。

 

「皆ぁーー!またブレスいくから!俺の正面から退避しろぉーー!!」

 

「「「!!」」」

 

「退避ーー!!エイト殿の後ろに回れーー!!」

 

 指揮官の号令と兵士達が退避する動作はほぼ同時だった。迅速に俺の正面から味方がいなくなる。

 

「すぅぅ~~~、カアァーーー!!」

 

 再び『灼熱』の業火で、アンデッド共を焼き払う。100体は消えたろう。

 

『グガガ……マサカ、コンナ事ニ……!オノレ、人間ドモメ……!退ケーー!撤退ダーー!!』

 

 恐らくは敵の指揮官だろう6本腕の骸骨剣士――何て言ったっけな?名前――が撤退命令を出すと、僅かに残っていたアンデッド共が這々の体で引き上げて行った。

 

『ウオオォーーー!!!』

 

「やったあ!魔王軍を追い払ったーー!!」

 

「我々の勝利だぁーー!!」

 

 高らかな勝ち鬨、勝利の喜びに沸く兵士達。まあ、幸いにして死者はいない様で結構なので、否定したり水を差すつもりはないが……少々浮かれ過ぎだ。

 

 以前に調べて知った事だが、ああしたアンデッドモンスターの生命?の源は“暗黒闘気”という邪悪な生命エネルギーと魔力であり、魔王はそれでアンデッドモンスターを作り出している。

 

 つまり、魔王がいればアンデッドモンスターは後から後から生まれてくる。もしかすると素にする死体や白骨が必要な可能性もあるが、そうでなければ奴らの兵力は無限に限りなく近い事になる。ここで一時追い払ったとしても、時間を置けば軍団を再編してまた襲ってくる事は想像に難くない。戦いを長引かせない為にも、出来れば一気呵成に叩き潰してしまいたい。

 

 幸いにして、奴らの拠点には心当たりがある。負傷者の手当てが終わった後で、パプニカ王に提案してみよう。

 

 

 

 という訳で――

 

 

 

「私が単身、敵拠点に乗り込み、敵の司令官を倒して参ります」

 

「無茶だ!」

 

 王宮の会議室にて行われた軍議にて、俺の提案はパプニカ王にあっさり一蹴されてしまう。

 

「私の戦闘力は、先の戦いである程度お分かり頂けたと思いますが……」

 

「確かに見た。想像を絶する凄まじい戦いぶりであった。だが!それとこれとは別問題だ!如何にそなたが強大な力を持とうとも、たった1人で敵陣に乗り込むなど無謀!!断じて許可できん!!」

 

 まあ、これは想定の範囲内だ。幾ら俺が強い事が分かっても、たった1人で敵の拠点に特攻するのは無謀に見えるのが正常だ。現に俺の今の提案に賛成意見を持つ人間は、この会議室にはいない模様……レオナ、バダック老人、三賢者の面々、兵士長数名が全員一様に渋い顔で俺を見ている。やれやれ、説得が面倒だな。

 

「しかし、このまま受け身に徹していてはジリ貧です。こちらの兵力には限りがありますが、敵は魔王が健在である限り無限に等しい。兵士達の肉体的・精神的な疲労が溜まれば士気が下がり、やがてこちらの防衛線を食い破られるでしょう。まだこちらの被害が少ない内に、敵軍の前線基地ぐらいは潰しておかなければ、パプニカに未来はありません!」

 

「……確かに、そなたの言う事にも一理ある。だが、だからと言ってそなた1人に危険極まる役目を押し付ける事は出来ぬ!もし敵の拠点を叩くにしろ、ある程度の兵を用意せねば……!」

 

「お言葉を返すようですが、今のパプニカに私の戦闘に付いてこられる人間はいないでしょう。余分な兵は足手纏いにしかなりません」

 

「むぅ……しかし、やはり1人では……」

 

 パプニカ王は反論の勢いを弱める。ここまで言ったのだ……強引にでも、承諾させるか。

 

「無礼を承知で申し上げます。私は誰が何と言おうと、1人で参ります。誰1人、同行者は連れて行きません。それで私を不敬罪なり命令無視なりで罰すると仰せならば、どうぞお好きなようになさるがよろしい」

 

「……それほどの覚悟か」

 

「またしてもお言葉を返すようですが、私なりの勝算があっての提案です。覚悟などと、大それたモノではございません」

 

「…………」

 

 俺の強気な発言に、パプニカ王も黙り込む。会議室に緊迫した空気が漂っている様な気がする。

 

 正直を言えば、俺としてはどちらに転ぼうと構わない。賛成されようが反対されようが、敵の拠点を叩きに行くことは決定事項――後者なら、名残惜しいが罰せられるのも嫌なのでパプニカ王国を出るまでの事。そうなったら、カール王国かリンガイア王国にでも行くか。

 

「…………エイトよ」

 

「はい」

 

「そなたの決意の固さはよく分かった。ならば、1つだけ約束してくれ。必ず生きて帰ると……」

 

「陛下……」

 

「勝敗は問わぬ。決して死ぬな。この約束を守ると誓うならば、私は黙ってそなたを見送ろう」

 

「分かりました。必ず生きて帰還することを、誓います」

 

「うむ……頼んだぞ、エイト!」

 

「はっ!」

 

 よし、何とか陛下を説得できたな。後は、あのモンスター共の拠点を全力で叩くだけだ。

 

「では、私は準備が整い次第、敵拠点へ向かいます」

 

「うむ。ところで、敵の拠点の場所は分かっておるのか?」

 

「はい、敵が撤退して行った方角でほぼ確信しました」

 

「ほう。して、その場所とは?」

 

「『地底魔城』で間違いないかと」

 

 かつての魔王ハドラーの居城……死火山の火口を利用して建造された魔の迷宮城……魔王亡き後、不気味がって誰も近づかなくなり、完全に野晒しにされていた陰気極まる場所。アンデッドの巣窟には打って付けの場所だ。

 

 パプニカ王も納得したらしく、頷く。

 

「なるほど、確かに彼処以外には考えられんな」

 

 む?もしや、俺を1人で行かせた後で軍を送ろうとか考えている感じか?釘を刺しておくべきだろうか?

 

 いや……考え過ぎか。仮に俺の予想が当たっていたとしても、サーっと行ってパーっと敵のボスを倒してしまえば犠牲者を出る前に終わるだろう。

 

 急ぐか……!

 

「では、私はこれで失礼します」

 

「うむ、武運を祈るぞ」

 

 パプニカ王に一礼してから、会議室を出た。

 

 そこからは速攻――時間短縮の為、手近な窓から『トベルーラ』で空へ上がり、全速力で地底魔城へ飛んだ。

 

 町から地底魔城までは陸路を徒歩で向かうとほぼ丸一日掛かる距離だが、地形を無視して空から一直線に進めば、まして俺の能力で使う『トベルーラ』ならほんの数分で着いてしまう。ジェット機も真っ青、どこぞの金髪になる戦闘民族ばりの高速飛行に、我ながら唖然としてしまった。

 

 おかげで1度通り過ぎ、ゆっくり飛んで戻るという間抜けをやらかしてしまう……恥ずかしい。誰にも見られていないのがせめてもの救いだ。

 

 ともあれ、地底魔城の上空には着いた。

 

「う~ん、どう攻めるか……」

 

 いきなり攻め込む前に、空中に胡坐をかきながら魔城の攻略プランをあれこれ考える。出来れば、今日中に決着を付けたい。標的はアンデッド共の親玉、あと魔城もこの機に処分した方が良いだろう。またモンスターに利用されると面倒だ。

 

 ならば、簡単に強力な攻撃呪文でドカンと吹き飛ばしてしまうか?『ビックバン』、或いは『イオナズン』でも全力で使えば死火山ごと魔城を跡形もなく爆破できる気がする……が、周辺環境への影響が少し怖いな。放射能こそ撒き散らさないが爆発の余波で、例えば大地震を発生させてホルキア大陸の各地町村に被害が出てしまっては本末転倒……呪文による爆撃は、止めた方が良さそうだ。

 

「だが……死火山、か……」

 

 死火山とは確か“活動しなくなった死んだ火山”ではなく“今までに活動した事がない火山”の事だったはずだ。つまり火山は火山な訳で、強い刺激を与えれば噴火させる事も不可能ではない……か?

 

「……やってみる価値はある、か」

 

 死火山の溶岩溜まりの位置を探る様な特技や呪文はないが、攻撃用の特技『マグマ』がある。あれを応用すれば溶岩溜まりの位置を探り、地震などの二次災害を最小限に抑えて溶岩だけを地上に誘導する事が可能かも知れない。

 

 善は急げ――今後に役立つかも知れないし、とにかく試してみよう。

 

「どこか、適当に降りられそうな所は…………お?」

 

 何だ、彼処は?すり鉢状と言うか、真円に近い整った形状に大きく開けた場所がある。あれは……もしや、コロシアムか?よくよく見れば、観客席の様なスペースも見て取れる。

 

 魔王の城にコロシアム……どう考えても、良い趣味の使い方がされていたとは思えないな。だが今は使われていないらしく、モンスターもいない。彼処なら降りるのにちょうど良さそうだ。

 

「よし」

 

 俺はそのコロシアムに向かって降下した。念の為、『レムオル』で透明になり姿を消しておく。

 

 コロシアムのほぼ中心に降り立ち、取り敢えず地面に手をついて何となく意識を集中してみる。地の底の奥深く、幽体離脱でもして地面をすり抜け、深く深く潜っていくイメージ……。

 

 すると、本当にイメージ通りになったのか、地面の中の様子が何となく分かるような気がした。かなり深いが、静かに煮え滾るマグマの熱というかエネルギーのようなものが感じられる。この感じが確かなら、今のこの身体は半端じゃない。

 

「っ……?なんだ……?」

 

 集中を解き、意識を自身に戻そうとした時、俺は誰かに呼び留められた様な感覚に見舞われた。曖昧な感覚なのに確かに呼ばれた、という何とも矛盾した認識にやや混乱するが、どうにもその呼び声の様なものが気に掛かる……。

 

「……行ってみるか」

 

 急いではいるが、気になるものはしょうがない。先ずは呼び声の出処へ向かおう。確か、そう深くはないが地下からだったはずだ。

 

 となれば、呼び声の出処は地底魔城の中という事になる。潜入するしかないな。

 

「さて、どこから入るか……」

 

 見回す限り、侵入出来そうな所は3ヶ所――コロシアムの選手入場口の様なところと観客用の出入口、そして端の方に空いている人1人が四つん這いでギリギリ通れるくらいの穴……恐らくは通気孔だろう。

 

「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り……通気孔か」

 

 昔懐かしい方法で適当に選んだ結果、通気孔が示された。まあ、どのルートで侵入したところで元々問題はなかったし、通気孔なら余計な戦闘が避けられて楽と言えば楽だから悪くない。

 

 問題があるとすれば、やはり狭い事か。俺は大して大柄ではないが、通気孔を通って行くには窮屈かも知れない。途中で引っ掛かり、退くも進むも出来なくなったらと考えると、少し怖い……何かいい方法はないものか。

 

「……あ、そうだ!『モシャス』」

 

 通路が狭くて通り難いなら、通り易い何かに変身すればいいのだ。変身したのはネズミ――イメージはドラクエⅧのトーポだ。この姿なら狭い通気孔も楽々通れる。この姿でも一部制限は付くものの、能力はほぼ変わらない。(ブレス)系の特技はチーズを食べなくても使えるし、正しく今の俺は世界最強のネズミだ、何の意味もないが……。

 

 さて、さっさと行くか――俺は四足歩行で通気口から地底魔城に侵入した。

 

 

 

 

 


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