ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 転生者の歩き方   作:amon

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 2か月近く更新せず、申し訳ありませんでした。

 バランとの戦闘が始まってから、感想にて幾つかの主人公のステータスに関するご指摘を頂き、今回、主人公のステータスを下方修正する事を決定しました。具体的には――

 HP999 ⇒ 800+α
 MP999 ⇒ 480+α
 力999 ⇒ 400+α
 素早さ999 ⇒ 200+α
 身の守り999 ⇒ 215+α
 賢さ999 ⇒ 366+α

 上記の様になります。『+α』は主人公がゲームにてステータスを上げる木の実や種を使用した分の揺らぎとお考え下さい。

 主人公のステータス変更に伴い、幾つかの話も調整いたしました。ステータスに関する部分のみの微調整ですので、ストーリーの流れは全く変わっていませんし、後に影響が出る様な加筆などは行っておりません。

 以上の点を踏まえた上で、今後はお読み頂ければと思います。

 素人の拙い作品ではございますが、今後ともお付き合いいただければ幸いです。


第26話『逆襲』

「どうやら……貴様の終わりの時が見えた様だな」

 

「く……!」

 

 拙いな……!若干不利なこの状況で剣が折れるなんて……!一体どうしてだ?どうして今になって竜神王の剣が折れた?さっきの光弾は確かに結構な威力だったろうが、仮にもドラクエⅧ最強の剣である竜神王の剣がが折れる程、とんでもない威力ではなかったはずだが……ええいっくそ!分からんッ!

 

 いや、狼狽えるな。今は戦闘中――剣が折れた理由なんて考えている場合じゃない。取り乱すな、冷静になれ、落ち着くんだ……!

 

「すぅぅ~…………ふぅぅ~…………」

 

 よし、深呼吸で息が整った。幾らか動揺も抑えられた。今の体の『賢さ』のおかげかな。とにかく、竜神王の剣が折れた理由はこの状況を乗り切るまで保留だ。折れた剣は持っていても邪魔になるから、一先ず手元に残る柄の方を鞘に戻し、鞘ごとカバンに仕舞う。

 

 さて、ここからどうするか……。

 

 竜神王の剣が折れたとなると、別の武器に持ち替えなければ……あるのはメタルウイングと隼の剣・改と英雄の槍……正直、どれに持ち替えても戦力ダウンだ。メタルウイングは対集団用の投擲武器、メタル系のスライム族をも斬り裂く鋭さと硬度だが、バランには当てられる気がしない。隼の剣・改はその軽さで2連斬りを可能にするが、逆に言えば軽過ぎるし細身過ぎる……竜神王の剣ですら折れた事を考えると、この戦いに使うのは不安だ。英雄の槍は今まで殆ど使ってこなかった所為で使い慣れてない。スキルのおかげである程度は扱えるだろうが、雑魚ならともかくバランほどの強敵に使い慣れない武器を使うのは得策ではない……。

 

 くそ、決められない……こんな時に迷ってる場合か、俺!

 

 考えろ、どの武器を使い、どう戦えばこの不利な状況を引っくり返しバランを倒せるかを――!

 

「貴様はよく戦った。竜闘気を全開にした私とここまで戦えた者は、貴様で2人目だ」

 

 無手になり動かない俺を見て勝利でも確信したか、バランがまた余裕を出して話し掛けてくる。仕掛けて来ないのなら好都合、喋ってる間を考える時間に当てさせてもらう。

 

 バランは完全に俺の動きを見切っている。どれだけ俺が攻撃を繰り出しても、避けられるか受け流されるか……これは剣の技量、そして実戦経験の差によるものだろう。力も素早さも魔力も俺の方が上だが、俺には実戦経験が殆ど無い。まともな戦闘はこの半月足らずの間だけ、それもほぼ全てステータス頼みのゴリ押し力技で片付けてしまった。

 

「どうやって身に付けたかは知らんが、その戦闘力……この竜騎将バランが認めてやる。本当に人間だとすれば、まず間違いなく貴様が最強だ」

 

 最強ね……今の状況では皮肉にしか聞こえない。どれだけ攻撃力と素早さがあろうと、結果として攻撃が当たらなければ何の意味も無い。

 

 当たりさえすれば……当たりさえ……待てよ?こっちの攻撃が当たらないなら、逆に…………コレだッ!!

 

「は……認められても、この状況じゃ皮肉にしか聞こえねえよ……」

 

 俺は身構えを解き、竜神の鎧・兜・盾を収納空間へ返して普段の服装に戻り、勝利を諦めた――風を装う。下手な芝居かも知れないが、これでバランの攻撃を誘う。

 

「剣と共に心も折れたか。貴様ほどの者でも、最後となれば呆気ないものだな」

 

「……っ、お前に少しでも俺を哀れむ気持ちがあるなら、最後に教えてくれ。お前とダイ少年は、一体どういう関係なんだ?」

 

 バランが俺の芝居に引っ掛かったかどうかはまだ分からないが、引き出せるなら情報は欲しい。特に、これはずっと気になっていた事……出来れば、知りたい。

 

「……息子だ」

 

「何だと……?」

 

「あの子は私の……息子だと言ったのだ」

 

「っ!?」

 

 息子……ダイ少年が、バランの息子……!?

 

「あの子の本当の名は……“ディーノ”!!」

 

 ディーノ……それがダイ少年の本当の名前……。

 

「し、しかし!以前、ダイ少年はラインリバー大陸の南にあるデルムリン島に流れ着いた孤児だと本人から聞いた。そこでブラスという名前の鬼面道士に育てられたと……。同じ竜の騎士だからと言って、何故自分の息子だと断定できる!?」

 

「その竜の騎士である事が何よりの証拠。この地上に私以外で竜の紋章を持つ可能性があるのは、ただ1人……11年前に生き別れた我が子ディーノだけだ!」

 

 それは……さっき、メルルが言った『竜の騎士はこの世にただ1人しか現れないはず』というヤツか。確かにバランも『自分こそ、この時代ただ1人の“真の竜の騎士”だ』と言っていた……あれは伝説として語り継がれる間に付いた尾ひれの様なものだと思っていたが、どうもそういう事ではない様だ。何しろ問題の竜の騎士当人であるバラン……神の啓示か何かで、俺達より竜の騎士の事をよく知っているのだろう。

 

 バランとダイ少年が、実の親子である確率はかなり高い様だ……。それにしても、竜の騎士とは一体どういう存在なんだろう?

 

「度々聞くが、竜の騎士が同じ時代に1人しか現れないとはどういう事だ?そもそも竜の騎士とは何だ?テランの占い師達が言うには、どうも人間とは違うらしいが……」

 

「それを貴様に話す意味は無い。調子に乗るな」

 

 くそ、そう都合よく教えてはくれないか……。

 

「なら……これだけはどうしても聞きたい。何故、ダイ少年に『人間を滅せ』なんて言った?」

 

「何かと思えば、そんな事か。決まっている、それが竜の騎士の使命だからだ」

 

「そんな建前の話じゃない。俺が言いたいのは、何故自分の子供に戦う事を、“人を殺す事”を強いるような真似をしたのかって事だ!人間がダイ少年を恐れ迫害するに決まっているから、そうなった時にダイ少年が苦しむから、だから人間から遠ざけようとするっていうならまだ理解できる!だが、お前は自分と一緒になって人間を滅ぼせと……殺し尽せと言った!あんな年端もいかない少年に!生き別れた自分の息子だと言ったあの子に!!それが親のする事か!?」

 

「ッ……!」

 

 言っている内に思わず昂り、終いには怒鳴ってしまった。バランの表情に動揺が走る。それとは別に、俺の中にふと新たな疑問が生じた。

 

「大体、ダイ少年の母親はどうなんだっ?母親もお前と同じ考えなのか!?」

 

 幾ら竜の名前を冠していても、流石に自分で卵でも産んでそこから生まれた訳ではないはず……バランが父親だとすれば、母親がいるはずだ。

 

「ッ!」

 

 途端、バランの雰囲気が変わった。再び一瞬の動揺、次いで目を伏せて黙り、その次の瞬間には眉間に深く皺が寄る……。

 

「……母親、か……」

 

 あの表情は……悲しみ?それとも、怒り?はっきりとは分からない……だが、何だか見ていて痛々しく思える。

 

「バラン……?」

 

「……っ、貴様ら人間には関係のない事だ!」

 

 軽く頭を振った後、バランは俺を睨み付けてきた……。

 

 何となくだが、分かる。この反応……ダイ少年の母親は、恐らく……そして、その事がバランがダイ少年に『人間を滅ぼせ』と言った事と関係がある様な気がする。複雑で、深刻な事情がありそうな……。

 

 本当にやり難い……どうにもバランへ敵意が揺らいでしまう。

 

 だが、やらなければ……ここでバランを倒さなければならない。そうしなければ俺の命も危ないし、何よりダイ少年達が危ない。今のダイ少年達では、バランには勝てない。ダイ少年は息子だからバランも手加減するかも知れないが、ポップやレオナに遠慮するとは思えない。バランには、何をするか分からない危うさが感じられる……生き別れた親子という点には同情もするが、だからと言って奴の行いを肯定する訳にはいかない。

 

「最早、貴様に語る事は無い!この一太刀をもって、エイト!貴様の首、貰い受けるぞ!!」

 

 そう告げると、バランは剣を両手で持ち、頭上に掲げた。所謂、大上段の構え……大技の前兆……じわじわと恐怖が滲み出てくる。気を抜くと身構えそうになる自分の体を抑える。戦意喪失の芝居はまだ継続、やるからには徹底する……そうした方が効果的だという事にしておく。

 

「冥途の土産に見るがいい!ディーノとは比べ物にならぬ、完成された竜の騎士の力を――!!」

 

 高まるバランの闘気と魔力、そして殺気……!まるでそれらに呼応する様に、空に暗雲が立ち込め、雷の音が近づく。

 

「『ギガデイン』!!」

 

 バランが呪文を唱えると、天から強力な雷がバランが掲げた剣に落ちた。しかし、ただ落ちたのではない。剣に雷のエネルギーが竜闘気と共に蓄えられ、共鳴する様に増幅していく。

 

「く……!」

 

 流石に……怖いな。あれをまともに喰らったら命は無い、人生初の命の危機だ。体が竦みそうになる……だが、それを許したら死ぬ!

 

 ここが正念場――伸るか反るか、一世一代の大博打だ!

 

「うおおおおおおーーーーッ!!!」

 

 凄まじい迫力と殺気を纏い、バランが正に雷の如く向かってくる!

 

「『ギガブレイク』ーーッッ!!!」

 

「ッッ――!!!」

 

 閃光の様に剣が俺に振り下ろされる――ここだッ!!

 

「ふんッッ!!!」

 

 刃が首に当たる――そのギリギリの瞬間、俺はバランの剣を両掌で挟み取る事に成功した!!

 

「ばッ、馬鹿な……!?」

 

 バランが目を剥き驚愕の表情を浮かべ、体を硬直させる。

 

 正直を言えば、俺も自分で吃驚している。一瞬で闘気と魔力を全開し、両手に集めてバランの剣を真剣白羽取り――初めてやる事ばかり、どれか1つでも失敗すれば……そして一瞬でもタイミングを外せば、俺は死んでいた。我ながらよく成功させたと褒めたい気分だ。

 

 生きるか死ぬか、命を懸けた賭けだった。だが――俺はその賭けに勝った!!

 

「ガッ――!?」

 

 次の瞬間、安堵と同時に湧き上がる高揚を全て闘気に変えて収束した俺のつま先が、バランの顎にクリーンヒット――真上に蹴り上げた。

 

 

 

 


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