ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 転生者の歩き方   作:amon

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 書き溜めた分はここまでになります。

 以降は書き上げ次第、投稿いたしますので暫くお待ち下さい。


第13話『超爆発』

『私は豪魔軍師ガルヴァス、近い将来ハドラーに代わり魔軍司令の地位に就く者だ』

 

「「なにっ!?」」

 

 ダイとポップが驚きの声を上げる。一方俺は『てめえの名前や地位なんかどうでもいい……さっさとレオナの魂の事を言いやがれクソ野郎』と内心で毒突きつつ無言でガルヴァスとやらの映像を睨み続けた。

 

『パプニカの王女レオナの魂は私が預かっている。返してほしければ、パプニカ山脈の麓ベルナの森に来い。素晴らしい決戦の舞台を用意して待っている』

 

 ほう、何を要求をしてくるのかと構えていたが、戦いが望みとはな。まあ、どうせド卑怯な罠を張って待ち構えているんだろうが……。

 

『但し、決戦場は猛毒の瘴気に包まれている……』

 

 やっぱりな……魂を抜き取るような呪法を平然と使う奴らが、まともな決闘なんぞ仕掛けてくる訳がないのだ。

 

『使い魔が持参した瘴気除けの“神魔水”を飲んで来るがよい』

 

 その言葉に全員の視線が使い魔に向く。

 

『キー!』

 

 すると使い魔は、足で掴んでいた小瓶を羽が繋がった細い腕で掴み、嫌味にも誰もいない床に向かって投げつけた。

 

「おっと!」

 

 地面に落ちる寸前で俺がキャッチする。

 

『キキキキキィ~!』

 

「ッ、こんの……ッ!」

 

 まるでこちらを嘲笑う様な使い魔の鳴き声に、思わず殺意が湧く……。この下等生物が、メッセージが終わったら撃ち落としてやる!

 

『その神魔水は1人分の効き目しかない。フフフフ……誰が来るか、楽しみに待っているぞ!』

 

 そこでメッセージが終わり、壁に映った人影が消えた。

 

「むんッ!」

 

 俺は空かさず空いた左手で『ギラ』を撃つ。

 

『ギャアッ!?』

 

 使い魔は飛び立つ間もなく熱線に焼かれ、燃えながら地面に落ち、そのまま燃え尽きた。ざまぁみろ、いい気味だ。

 

 さて、神魔水か……何となくオチは見えているが、調べてみるか。

 

「『インパス』」

 

『深魔水――瘴気の毒の効力を倍増させる薬』

 

 やっぱりな……どうせそんな事だろうと思ったんだ。ガルヴァス、馬鹿な奴だ……瘴気の効き目を倍増させるなんて回りくどい事をせず、一口で即死する様な猛毒にしておけば確実に誰か1人を仕留められたものを……獲物を罠に掛けて苦しめてから仕留めないと気が済まないとかいうタイプか。

 

 そんな今度の敵の中途半端な姑息さに呆れつつ、床に瓶を放り捨てる。

 

「な、何すんだよ!?そいつがなきゃ瘴気が!」

 

 ポップが焦りの顔で大声を出す。俺はそんな彼を片手を掲げて制した。

 

「落ち着け。あれは瘴気避けなんかじゃない。瘴気の効き目を倍増させる毒薬だ」

 

「「「ええっ!?」」」

 

 子供達が驚きの声を上げる。何とも素直な子達だ、本当にあれが瘴気避けだと信じていたらしい。彼らだけでなく、他の面々も驚きや怒りの表情を浮かべているところを見ると、俺以外の誰もが瘴気避けの神魔水だと信じて疑わなかった様だ。俺がいなかったら危なかったな……。

 

 それにしても、あのガルヴァスとか言った魔族……態度や顔は豪胆っぽい癖に、勝つ為なら卑劣な手段も躊躇なく平然と使う辺り、小物臭さが漂う反面、自分で名乗る通り“軍師”には幾らか向いているのかも知れない。まあ、どうでもいいが。

 

 さて、そんな事よりこれで敵の居場所は分かった。急いでレオナの魂を取り返して来なければ――と、その前に。

 

「マトリフさんとやら、確認しておきたいんですが……」

 

「あん?」

 

「魂さえ取り返して来れば、レオナを目覚めさせる事が出来るんですよね?」

 

「ああ。呪法の性質上、敵は何かしらの器に姫さんの魂を封じ込めているだろうから、それさえ持ってくれば、俺が魂を肉体に戻してやる。そうすりゃあ、姫さんは目を覚ます。間に合えばな」

 

 よし、それだけ分かれば十分だ。速攻で敵をぶっ倒して、レオナの魂を取り戻す――。

 

「お、おい!待てよあんた!まさか、1人で行く気か!?」

 

 部屋を出ようとしたところで、背中にポップの声が掛かり足を止める。

 

「ガルヴァスは暗に『決戦場には1人で来い』と言ってきた。だったら敢えてその誘いに乗って1人で行くことで『自分達の作戦が成功している』と思わせ、油断を誘う。そして仕掛けられた罠ごと敵を粉砕する。それが出来るのは、恐らくこの中で俺だけだろう。だから、俺が1人で行くんだ」

 

「待って下さい!おれも、おれも連れて行ってください!」

 

 予想通り、ダイ少年が食い下がってきた。

 

「ダイ君、君の気持ちは察するが断らせてもらう」

 

「そんな!?おれ、どうしてもレオナは助けたいんですっ!!お願いします!俺も一緒に――」

 

「ダイ君、聞いてくれ」

 

 俺はダイ少年の両肩に手を置き、目線を合せる様に膝をついた。

 

「俺は何も、君が足手纏いだとかそういう事を言ってるんじゃない。もしかしたら、俺がいなくなった途端にまたパプニカが襲われるかも知れない。留守を守る事も大事なんだ。分かってくれ」

 

「で、でも……」

 

 まだ納得し切れないのか、俯きながら呟くダイ少年。だが、これ以上問答している時間はない。このままだと後から追い掛けて来そうな気もするが、やっぱり時間がないから仕方がない。大急ぎでガルヴァス共をぶっ倒して、レオナの魂を救出するしかない。

 

「アポロ、マリン、エイミ、後の事は頼む」

 

「「「はい!」」」

 

 半ば俺の弟子と化している三賢者に後を託し、俺は『トベルーラ』でガルヴァス共が待つ決戦場へ向かった。

 

 

 

 パプニカ山脈はホルキア大陸のほぼ中央に走る山脈、ベルナの森はパプニカ王国から南西に位置する森だ。木々が適度に生い茂る豊かな森だった。

 

 しかし、それが無惨にも毒の瘴気で木々は枯れ果て、剥き出しになった土壌も気持ちの悪い色に変色し、所々に毒沼が湧き出すという……地獄の様な光景へと変貌してしまっていた。

 

「……何て事を……!」

 

 上空からベルナの森の変貌ぶりを見て愕然とする。あの美しかった森の緑が見る影もない……。

 

 これが素晴らしい決戦の舞台だと……?どこまでもふざけた野郎だ、ガルヴァス……!くだらない小細工で俺の故郷を荒らし、親しい人々を傷付けやがって……いい加減、キレそうだ。

 

「後悔させてやる……!」

 

 この怒りを全てガルヴァスに叩き込む事を誓いつつ、俺は瘴気に包まれたベルナの森へ突入した。

 

 空から落ちる様に一気に瘴気に突っ込み、最も瘴気が濃い中心へ向かって降りて行く。すると、すぐに体に変調が現れ始めた。

 

「ゲホッ、ゲホッ!くそ、『トラマナ』が効かないのか……!」

 

 突入前に『トラマナ』を掛けておいたのだが、どうやら効果がなかった様だ。鼻を刺すような強烈な異臭に始まり、息苦しさと微かな吐き気に襲われ、全身を不快感が駆け巡る。だが、まだ微かに気持ち悪い程度、戦闘に支障はない。毒が深刻なレベルまで回る前に、早くガルヴァス共を殲滅しなければ……。

 

 そうして暫く飛んでいくと、空からでは厚い瘴気で見えなかった禍々しい黒い塔が姿を現した。

 

「なるほど、これが決戦場か……」

 

『フフフフ……よく来たな、エイト』

 

 塔の前に降り立った直後、ガルヴァスの幻影が現れた。

 

「ガルヴァス、望み通り1人で来てやったぞ。レオナの魂は何処だ?」

 

『フフフ、レオナ姫の魂は私と共にこの『デモンズタワー』の最上階にいる。取り返したくば登ってくるがいい』

 

「分かった……すぐに行ってやる。首を洗って待っていろ」

 

『フフフフ、威勢がいいな。その威勢が果たしてどこまで保つかな?フハハハハハハッ!!』

 

 馬鹿笑いをしながら、ガルヴァスの幻影は消えていった。どこまでも小物臭い奴だ、あんな奴に長々と付き合っていられん。とっとと片付けてやる。

 

「最上階だったな……」

 

 デモンズタワーの頂上部分を見上げる。やたらと棘が突き出した趣味の悪い屋根がある。あそこを上から下に突き破れば最上階に着くだろう。

 

「『トベルーラ』」

 

 すぐさま飛翔呪文で上空へ飛び上り、タワーの頂上を越え、ある程度の距離を開ける。おっと、突入の前に――。

 

「『バイキルト』、『スカラ』、『ピオリム』」

 

 各種強化呪文で肉体を強化して準備は完了。さて、突入だ――!!

 

「オラァアアアアアーーー!!!」

 

 気合の咆哮と共に一気に加速し、ドロップキックの要領で屋根に突貫――大した抵抗も無く轟音と共に屋根を突き破り、俺は最上階の部屋に突入を果たす。

 

「なッ!?」

 

 最上階と思しき悪趣味な広間に、ガルヴァスはいた。奴はぎょっと目を剥き、果てしなく驚いた顔でこっちを見てくる。

 

「き、貴様ッ……まさか、そんなやり方で……!?」

 

「……」

 

 焦りの汗に加えて鼻水まで垂らしたガルヴァスが何か言ってくるが、取り合わない。レオナの魂を封じ込めた水晶玉は……あれか。ガルヴァスの横に置かれた植物の様な気持ち悪い台座にはめ込まれている紫色のオーラを放つ黒い水晶玉……アポロ達が言っていた特徴と一致する。

 

「ガルヴァス様!!」

 

「なっ!?エイト!?」

 

 黒水晶を確認したところで、空間から滲み出るように2人の魔族だか魔物だかが現れる。1人は黒いローブに骸骨マスク……レオナの魂を奪い取ったのはこいつだな。もう1人は女、緑の髪に青い肌でレオタードを着ている。

 

「おのれ!まさか直接最上階に乗り込んで来るとは……!」

 

「礼儀を知らない男ね!あたしの鞭でお仕置きしてあげるわっ!」

 

 何とも頭の悪い台詞に聞こえる。大方、下の階には罠がびっしり仕掛けられていたんだろうが、そんな見え見えの手に乗ってやるほど、俺はお人好しではない。気に入らない敵の意思を酌んでやる必要なんか無いのだ。

 

 なので、さっさと行動に移る事にする――先ずは人質(レオナの魂)の安全確保から。

 

「なッ!?き、消えた!?」

 

「「っ!?」」

 

 骸骨マスクが声を上げ、ガルヴァスと女も合わせて辺りをキョロキョロと見回す。消えたんじゃなく、高速移動でお前らの間をすり抜けただけだが……まあいい、奴らの事よりレオナの魂だ。台座を破壊して黒水晶を取り出す。

 

「なッ、何ぃ!?」

 

 破壊音で気付き、振り返ったガルヴァスがまた目を剥いて驚く。それは放っておくとして、一応黒水晶を確認しておこう。

 

「『インパス』」

 

『封魂の暗黒水晶――脱魂の暗黒魔術に使う邪悪な黒水晶。レオナ姫の魂が封印されている』

 

 よし、間違いなくレオナの魂を封じ込めた水晶玉だ。“ふくろ”に収納して確保完了、これで後は一刻も早くパプニカに帰るだけだ。その為にも、さっさとこのガルヴァス共を始末しなければ。

 

「はあぁぁぁ……!!」

 

 MPを俺の体を媒体に増幅し、エネルギーを高めていく。エネルギーが高まるに連れて、全身が太陽の様に光り出す。

 

「な、何だ……!?この尋常ではないエネルギーの高まりは……!?」

 

 ガルヴァスが慄きながら後退る。今更逃げても遅い、もうエネルギーは十二分に高まった。

 

 後は解放するだけ……これで終わりだ。喰らって消し飛ぶがいい。宇宙誕生の名を冠する超爆発――!!

 

「『ビッグバン』ッッ!!!」

 

 次の瞬間、辺りが閃光に包まれた。

 

 

 

 


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