ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 転生者の歩き方 作:amon
つきましては、筆者よりお願いがございます。
こちらは筆者が趣味で書いている二次創作であります。加えて、筆者は素人です。その為、知らずの内に文章としておかしい部分や誤った書き方をする事もあるかと思います。
それでもご感想や励ましのメッセージを頂けるのはありがたい事ですが、余り否定的なコメントは心が折れますので、ご遠慮いただきたいのです。
ですので、面白くないと思われた場合は、何も言わずブラウザバックという事で、どうかお願いいたします。
※2015/12/17 主人公ステータスを下方修正しました。
『誠に申し訳ありません!』
「い、いきなりなんですかっ?ていうか、どちら様で?」
気が付いてみれば辺り一面真っ白な不思議空間……さっきまで俺は、大学からの帰り道を歩いていたはずなのに……。
しかも、目の前で真っ白なローブを着込んだ真っ白な髪の若い男が、いきなりこれ以上ないってくらいの土下座を、俺に向かってしてきている。
全くもって訳の分からん状況だ……混乱し過ぎて逆に冷静になる。
一先ず、目の前で土下座を継続中のこの男なら、恐らく事情を知っているはずだから、聞いてみよう。
「あの……取りあえず、立ってもらっていいですか?それと、出来ればこの状況の説明もお願いしたいんですが……」
『は、はい!全て詳しく説明させていただきますっ!』
土下座男は顔を上げたものの、立ち上がろうとはしない。しかも、今もに泣き出しそうな顔だ……一体、何があったというんだ?というか、何をやらかしたんだ?
『じ、実は……わ、私の過失で、貴方を、そのぉ……し、死なせてしまったのです!!』
「……はい?」
今何て……?今、何て言った?
『で、ですから……その、私の過失で、貴方を死なせてしまい……そのお詫びをさせて頂こうと……』
「は……えっ!?」
お、俺が、死んだ……!?
『ほ、本来であれば、貴方は何事もなく歳を重ね、老人となって天寿を全うなさるはずだったのですが……わ、私がうっかり運命操作を誤り、貴方の人生を、強制終了させてしまいまして……』
「なっ……!?」
『気付いた時には、もう手遅れで……そこで貴方の魂を輪廻の輪に還る前にこの臨時空間にお招きしたと、こういう次第でして……』
「ちょ、ちょっと待った!待って下さいっ!」
運命操作?俺の人生を強制終了!?
「どういう事ですか!?貴方本当に誰、というか何者なんですか!?」
『はっ!?も、申し遅れました!私はあなた方人間で言うところの“神”の一柱でして、重ねて申し訳ないのですが、下界の方に真名を明かす事は出来ない規則でして……取りあえず、仮に“シン”とでもお呼びください』
「ッ……っ……!」
お、落ち着かないと……!ここで混乱してもしょうがない、とにかくこのシンさんとやらからもっと詳しい事を聞き出そう。
「し、シンさん?でしたっけ……確認なんですが、俺って……本当に死んじゃったんですか?」
『っ、は、はい……』
「じゃあ、今の俺は……魂とか霊の状態でここにいる、と?」
『その通りです……』
「お、俺の身体は……どうなったんですか?」
『元に場所に残っています……ですが、生命活動は完全に停止してしました……』
「…………」
余りの事に理解が追い付かない……だが、今のこの超常現象的な現状から考えると、シンさんが言っている事を嘘だとか、これは全部夢だとか、そんな事は思えない。信じられない様な事ではあるが……俺自身、地面に足が着いている感覚がないし、よくよく見ると身体も薄っすら透けている。
これはもう……諦めてこの現実を受け入れるしかなさそうだ……俺がシンさんのミスで人生を強制終了させられたという、非情の現実を……。
「はぁぁぁぁ…………で?俺はこれからどうなるんですか……?」
『あ、あのぉ……お、怒っておられないのですか?』
「そりゃあ勿論怒ってますよ。ミスで殺されたなんて冗談じゃないです。でも、そこでヒステリックに怒鳴り散らしたって何の解決にもなりませんから」
『……本当に、申し訳ありません』
「益体もない謝罪はもういいです。それより、俺がこれからどうなるのかをさっさと教えてください」
『は、はい!貴方さえよろしければ、別世界に転生して頂き、新しい人生を送っていただければと……!』
「なんですと?」
『で、ですから……今回の件は完全に私のミスですので、精一杯の賠償をさせて頂こうと思いまして……元の世界に蘇生させる事が出来なくて、これまた申し訳ないのですが……』
「……ちなみに、元の世界に生き返らせられないっていうのは何でです?」
『貴方の魂と、元の世界との繋がりが絶たれてしまっている為です。その……これも、私の運命操作のミスの影響で……』
またこの人……いや、神か……とにかくシンさんのミスの所為か。今更なんで、もう何も言わないが、こんなのに人間の運命云々なんて大事な仕事させておいていいのかねぇ?
「……まあ、一応分かりました」
実際、まだ腹が立っているがいつまでもムカムカしていても俺が疲れるだけだし、前向きに考えよう。
「で、俺は別の世界に転生させてもらえるって事ですが、一体どんな世界に転生させてくれるんですか?」
『は、はい!あなた方で言うところのRPG『ドラゴンクエスト』の世界に転生して頂こうと思っておりますっ』
「えっ?『ドラゴンクエスト』の?」
まさかここでゲームの名前が出てくるとは思わなかった……。
「あの、疑問なんですが……ゲームの世界って、そんなものが実際に存在するものなんですか?」
『ゲームの世界、というのは少し違いまして……えー、世界とは貴方がいた地球の他にも、次元を隔てて無限に存在する、というか今現在も増え続けているのです。そして、それら世界を生み出すのは、『想像力』という知性ある生命の思念の力なのです』
「え?それって、つまり……例えば誰かが物語を作ったとしたら、その物語の世界が実際にどこかの次元に生まれるって事ですか……?」
『はい、そう思っていただければ間違いないかと』
こいつは驚いた。まさか、人間……に限った話じゃないかも知れないが、『想像力』が世界を創るだなんて、壮大過ぎる話だ。ドラクエの世界があるという事は、他のゲームや漫画の世界も実在するって事か……そして、俺はそこへ行くチャンスを得た訳だ、命と引き換えに。
うーん……幸運と不運……プラスマイナス0ってところか?いや、待てよ?
「ドラクエ世界って……どのシリーズにしても、100%モンスターいますよね?危ないじゃないですか!」
『も、勿論、安全はきちんと保障させていただきます!』
「どうやって?」
『貴方の新しい肉体を構成する際に、戦闘能力と装備を一緒にご用意します。何かご希望があれば、能力や装備等、お好みに合わせて調整させて頂きます』
「へえ~」
これって……チート転生の流れか?少しだけ心が動くな……だが、俺は別に英雄とか勇者になりたい訳じゃない。そんな強力な戦闘力があっても……いや、使い方を工夫すれば日常生活にも活かせるか?腕力が強ければ重い物も楽に持ち上げられるし、魔法で火が起こせればライターが無くても簡単だ。特に『ルーラ』なんて使えたらどれだけ便利か、きっと出来る仕事の幅も増えるに違いない。
いいな、それ。
「……あの、能力とか結構無理言っても聞いてくれます?」
『も、勿論です!あ、でも、永遠とか無限は無理なので、それ以外の事であれば何なりと』
「じゃあ、例えば……俺が育てたドラクエⅧの主人公のステータスと装備と持ち物とゴールドを基本に、他のドラクエシリーズの呪文・特技を全部追加、それと無限……は、ダメなんだっけか……地球丸々1個分の容量があって収納した物の品質を1000年間保持し続けて自在に出し入れ出来るふくろが欲しい、って言ったら出来ます?」
『はい、大丈夫です。貴方が育てたというドラゴンクエストⅧの主人公に関する記憶さえ提供して頂ければ、全然問題ありません』
「え?ホントに?」
俺、結構無茶苦茶言ったつもりなんだが……。
『基本的に無限や永遠でさえなければ、世界の枠組みの中に収まりますので、問題にならないんです。まあ、その世界に住まう者達から見ると、規格外になるとは思いますが……』
「そんな大雑把で大丈夫なんですか?」
その論理でいくと、例えば100億年生きられる様にするとか、1発で惑星を破壊するような力や能力を貰う、なんて無茶な事も不可能じゃない気がするが……。
『え~と、先に言わせて頂きたいんですが……今回の様な事は、そうそう起こりうる事ではありません。いえ、むしろ前代未聞の事態でして……それに余りに邪悪な願望を持ち、送った先の世界に多大な悪影響を及ぼす素養を持つ者には、そもそもこうした場は設けませんので』
「へえ~」
一応、その辺りは考慮しているのか……ていうか、俺が人生強制終了になったのって、前代未聞なんだ。
そこをツッコむとまた落ち込んで面倒臭そうだからスルーしておくとして……。
「まあ、とにかく問題がないならいいです。今、言ったのでお願いします」
『分かりました。あ、新しい身体の外見の調整はどうしますか?』
「外見?」
ああ、そうか。新しい身体を構成するとか言っていたっけ。
でも……その辺は別にいいかなぁ。俺は元々イケメンでこそないがブサメンでもなかったし、背だって四捨五入すれば180cmで低くなかった。変に長身イケメンにしても多分、違和感で気持ち悪くなりそうだし……あっ、でも良い事思い付いた。
「あの、外見は前の、つまり死ぬ直前の身体のままでいいんですが、服装をドラクエⅧの主人公の普段着に変えてもらえますか?」
『え?でもそれじゃあ、装備品の鎧や兜はどうするんですか?』
「鎧、兜、盾の3つの防具は普段は別の空間に収納しておいて、俺の呼び掛けに応じて現れて、俺の身体に装着されるという風にしてほしいんです」
これなら某変身ヒーローの様に、突発的戦闘に遭っても瞬時にフル装備で戦闘態勢に入れる。
『なるほど、分かりました。では、その様に調整します。では、肉体の構成に取り掛かりますので、ドラゴンクエストⅧの主人公に関する記憶を読み取らせて頂いてよろしいですか?』
「ええ、どうぞ」
『では、少し失礼します』
そう断ってから、シンさんは俺の額に手を当てる。
『ふむ……予想はしてましたが、やはりレベル99まで育てられたのですね』
「ええ」
これは俺の小さなこだわりで、ドラクエシリーズをプレイする時はキャラクターの必ずレベルを最大まで上げてからラスボスに挑む事にしている。根気良くモンスターを狩りまくり、キャラクターのレベルを99にして、その圧倒的な戦闘力でもってラスボスをあっさりと倒してエンディングに行くのが俺的には楽しかったのだ。
とにかく、あの主人公と同じステータスなら戦闘力は十分だろう。
『ふむふむ……はい、読み取り完了しました。では、この記憶情報を基に貴方の新しい肉体を構成しますので、少々お待ちください』
「分かりました」
俺が頷きを返すと、シンさんは両手を組み合わせ、祈る様に目を閉じた。あれで、俺の新しい身体を作っているのか……?
いや、いきなり身体消滅させられて人生強制終了させられたり、お詫びにと別世界にチート転生する事になったりと、人生19年目にして超常現象のオンパレードだ。今更、常識で考えても無駄だろう。
『……っ、お待たせしました!全てご要望通りに仕上がったかと思います!』
そう言って顔を上げたシンさん。時間はほんの数分程度だったと思うから、大して待ってはいない。
『では、これより貴方の魂と新しい肉体を融合させ、転生先の世界へお送りします』
「あっ!ちょっと待ってもらって良いですか?」
『何か、他にもご要望が?』
「ええ……俺の、両親の事なんですが……」
いざ転生する段になって、父さんと母さんの事が気に掛かった。俺は新しい世界に転生するが、日本に残る父さんと母さんは……多分、俺が死んだ事を悲しんでくれるだろう。2人とも、俺を愛してくれていた……そんな両親を、俺も愛していた。
せめて最後に、生きていた時に碌に伝えられなかった親愛と感謝を伝えたい。
「2人に……夢とか、そういうのを通して、俺の最後のメッセージを伝えてほしいんです。『今までありがとう。父さんと母さんの息子に生まれてこられて、俺は幸せだった』って……」
『……分かりました。お任せ下さい!必ずっ、必ずお伝えします!』
「……よろしくお願いします」
これで一応、気掛かりはなくなった。もう2度と会う事が出来ない以上、俺には両親がこの先も平穏無事でいてくれる事を祈るしかない。
「頼みたかったのはそれだけです。転生、お願いします」
『分かりました。では、最後にもう1度だけ……この度は、私のミスでこの様な事になってしまい、本当に申し訳ありませんでした……』
「もういいですって。今後は、同じミスをしない様に気を付けて下さい」
『勿論です、もう2度と……!』
眉間に力の入った顔で頷くシンさん。恐らくは決意を固めた表情なんだろう。なら、これ以上俺から言う事は何もない。
『それでは、目を閉じて下さい』
シンさんの言葉に従い、俺は目を閉じる。
『気を楽にしてください。少しの間、眠る様に意識を失いますが、新たな世界に転生したと同時に目を覚ます様にしておきますので、次に目覚めた時、貴方の新しい人生の始まりとなります』
少しずつ、声が遠くなっていく気がする……。
『私が干渉できるのはここまでとなります……。