影の軌跡 〜鉄血の子供たち〜   作:もっさん。

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お久しぶりです。もっさん。です。

不定期更新とはいえ、ここまで間が空いてしまうと、閲覧者様がいなくなってしまったのでは…と思ってしまうこの頃。

書き溜めてこうとは思うのだが、なかなか…。

がんばって完結目指していこうと思ってますので、長い目でお付き合いください。


三十話 必殺圏VS必殺圏

 

トーリが謎の大男、アーリィ・X・サザンドフと戦闘を行っている頃。

同じ部屋、同じ空間でもう一組の戦闘が行われていた。

 

謎の少女Mとフェイ・バーネットの二人による攻防。

 

「その根術。今は滅んでしまったあの村のですね?」

「…よくご存知でありますね」

 

三節根に炎を纏わせ、構えなおすフェイ。

お互いの均衡は今にも崩れそうだった。

長いようで短い時間が流れる。

二人はこの均衡を崩すような出来事をただ待っているのみだった。

刹那、近くで炎の柱が轟音と共に立ち上る。

その瞬間を二人は見逃さなかった。

片方は刀を。

もう片方は根を。

同時に振り抜き、辺りに衝撃が広がった。

 

「その抜き身からの納刀。天ヶ瀬の技でありますね?」

「そちらこそ。よくご存知で」

「自身の動きに合わせて調節可能な必殺圏。やっかいであります」

「そちらこそ、近距離において360°対処可能な仕込み三節根。めんどうです」

 

振り返りざまにもう一撃。

再び互いの得物同士が火花を散らし、強制的に距離を取る形になった。

 

フェイが扱う根は、俗に言う仕込み武器である。

通常時は長い根にてリーチと間合いを制し、近距離に持ち込んだところで三節根へと変形。

変則的な動きにて翻弄し、重い一撃を加えるのがフェイの戦術である。

対してMの得物は長めの居合刀。

ただの刀なのであれば振り回すには長すぎ、自分自身からの攻撃には向かない。

いわば、向かってくる攻撃に対してのカウンターが主な戦術。

しかし、天ヶ瀬一刀流の納刀居合を使うのであれば話は変わってくる。

自身が動き回ることで自分の攻撃範囲を調節。刀の長さを利用した動きと攻撃手段を持った彼女は、まさに間合いを制する。

 

この二人は、互いに間合いを操る。

それゆえに、相性が悪い。

 

(このスタイルではジリ貧。決着がつかないであります。であれば)

(このままでは決着をつけるのはほぼ不可能。なら)

 

『一気に、決めるしかない!!』

 

そのまま距離を詰め合う二人。

 

「天ヶ瀬一刀流、瞬閃!」

「鬼神乱舞!!」

 

炎を纏った根と、瞬速の刃が交わる。

しかし、刀と根が当たった瞬間、小規模な爆発が起きた。

 

「これは…」

「この爆破根の仕掛けでありますよ」

 

爆発によって生まれた煙に姿を見失ったMは、背後に回られたことに気づかない。

 

「後ろ…!?」

「隙ありであります!」

 

根を三節根に変形させ、怒涛の攻撃。

だが、Mも鞘と刀を用いて攻撃を凌ぐ。

だが、根と接触するたびに爆発が起き、どんどん視界が悪くなっていく一方。

 

「っつ!」

 

Mが取った行動は、周囲に斬撃をばら撒き、自身の周囲に立たせなくさせる方法だった。

その斬撃はフェイを捕らえることは無かったものの、距離を取らさせ、周囲の煙を拡散させることに成功する。

 

「…なかなか上手くはいかないでありますね」

 

 

「こちらも、その武器は想像外でしたよ」

「一つ、質問をよろしいでしょうか」

「はい。なんでしょう」

 

「その技、天ヶ瀬の技をどこで知りえたのでありますか」

 

「…それは」

「その流派は、アイゼンブルグ特別大尉が産み出したものだと伺っているのであります」

「…ええ。そうですね」

「なのに、なぜその流派を知っているのでありますか」

 

 

「あなたは、一体何者なのですか」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、一体何者なのですか」

 

その言葉に、私は何も言えなかった。

私は、この技を使い、トーリ・X・アイゼンブルグを倒すことで自分の存在を立証できると思っていた。

どこで知ったか。そんなことは覚えていない。

物心ついたときから私はこの剣を知っていた。

だから、この剣術の産みの親がいることに素直に喜んだし、同時に興味を持った。

 

この人に聴けば、私が誰なのか、なんなのかを教えてくれるのではないのか、と。

だが、その人物は、私が許せないことをした。

私が信用し、信じ続けていたこの力を、技を、捨てたのだから。

許せなかった。

私でも分かる。この技は強い。

使いこなせれば、様々な剣客を打ち負かすことができるであろう。

もっと高みを目指せたはずであろう。

だが彼はしなかった。

それどころか、彼は力を捨て、逃げるように護ることに特化した剣を作り上げた。

この一刀流は、失敗作だと言わんばかりに。

なら、それを扱う私も失敗作なのか。

 

違う!!

 

私は失敗作なんかじゃない。

この剣は私自身だ。私を映す鏡だ。

それを否定なんてさせない。

 

私は、失敗作なんかじゃない。

 

 

「私が何者なのか。そんなことはどうでもいいんです」

 

その瞬間、私の中でささやく声が聞こえた気がした。

斬れ。もっと斬れ。もっともっと斬れ。

斬れば分かる。斬ることで理解が出来る。

斬ることが、私なのだ…!

 

「…雰囲気が変わった、であります」

「フェイ・バーネット第一秘書官。帝国軍対暴徒鎮圧部隊隊長トーリ・X・アイゼンブルグの秘書官であり、部隊のナンバー2の実力者」

「…」

「私は、私であるために」

 

 

「貴女を斬ります」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

やっかいであります。

先ほどとは違うこの殺気。

何かを吹っ切った、もしくは…

 

「いきます」

 

その言葉を最後に、目の前の少女は視界から消え去った。

 

「!?」

 

周囲に響く、風を切り裂くような音。

恐らく、高速で私の周囲を移動しているのでありますね…。

尋常じゃないスピード…。これが彼女の本気…!

 

「まずは一閃」

「ぐっ!」

 

言葉通りの一閃が私の身体を襲う。

右頬を掠っただけだが、相変わらず彼女の姿は見えない。

 

「二閃」

「がっ…!」

 

二閃目。

今度は右肩を掠る。

筋は斬られてはおらず、動かせるが、姿が捉えられない以上下手に動けない…!

仕方ない…

 

「三閃…。!」

「ここ!」

 

三閃目…は防ぐ。

移動することを止めたのか、目の前に現れた彼女。

 

「一体、どうやって…」

「…絶対直感。私の一族に伝わる、秘伝にして遺伝の力。これを使うと後で疲労が凄いことになりますが…」

 

「ぐっ……!?」

「人間の限界を、超えられる!」

 

根を分解、現れた鎖を利用して相手の刀に巻き付ける。

これで、当分は刀を振れないであります…。

 

「…るな」

「…」

 

 

 

「舐めるな!!!」

「なっ…」

 

 

巻き付いた刀を持ち替えて引き込まれた!?

そんなことをしたら…!

 

刹那、辺りに爆風が広がった。

刀の刃と根が合わさり、爆破根の爆発が作動。

お互いが近距離での爆発を食らい、吹き飛ぶ。

 

「っつつ…」

「…」

 

お互いは、また距離を取ってしまった。

これでは、また仕切りなおし…でありますか。

視線を、アイゼンブルグ大尉の方へ向けてみる。

 

そこには、人智を軽く超えた戦いが繰り広げられていた。

神刀と神刀のぶつかり合い。

だが…、優勢だと見られた大尉が、敵に斬られた…!?

 

「大尉!?」

「余所見をしている暇はありませんよ!」

 

体制を立て直したMが、また近づいてくる。

 

「邪魔であります!」

 

根へと変形、からの爆破根の出力最大…!

 

「炎拿絶根!」

「これは…!?」

 

思いっきり地面に向かって根を叩き付け、周囲に爆発を起こす。

 

大尉の傷はそう深くない…。聞こえてくる会話からして、敵は去った後だろう。

大尉は恐らくクレア大尉の援護に行くはず…なら!

 

「すみませんが、ここでお暇します!!」

 

この爆煙で、この場を離れる!

宰相閣下とエレオノーラ大佐は充分な距離に逃げられたはず、なら私がもう戦う理由はない。

 

「に、逃げるんですか!?」

「いいえ、撤退です。貴女と戦う理由は今はもう無いですから」

「…!貴女も、そんなことを」

「…ですが、次、またアイゼンブルグ大尉を狙い、私ともまた鉢合わせしたのであったのなら」

 

 

「次は、ない。であります」

「っ!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「次は、ない。であります」

「っ!」

 

 

その台詞を耳にしたとたん、激しい殺気が襲ってきた。

思わず、刃を抜いて斬撃を飛ばしてしまう…が。

 

その先には爆煙しかなく、斬撃で斬ったのは煙だけだった。

 

「…この帝国には、何人ああいう人がいるのでしょうか…」

 

あの殺気。いや、殺気というもの自体、この戦いで感じられたのはあれが最初で最後だった。

そう、彼女は最後まで私を殺す気ではなかったのだ。

…私は、首を取るつもり、だったのに。

 

「まだ。まだだ。まだ足りない……!」

 

力が、技術が、経験が!!

 

煙も晴れ、辺り一面が瓦礫の山となった室内で、私は刀を仕舞い、身を翻す。

戻ろう…もっと力をつけなければ。

 

 

 

私の頭には。

 

 

「斬れ。斬れ。斬れ」

 

 

この言葉以外、もう何も無かった

 

 

 




3300文字…もう多いのか少ないのか。

少しずつですが物語を進めていきますので、よろしくお願いします。

ご意見ご感想、お待ちしております。

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