影の軌跡 〜鉄血の子供たち〜   作:もっさん。

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どうも、もっさん。です。
一話は書き溜めてあるため連続投稿です。

話の展開は原作の話に沿って進みますが、時折違う話も混ざります。

例えば今回のように。




一話 死人造り

 

 

 

 

「な、なんだとぉ!?」

一際大きな声が空間に響き渡る。

その声色は驚きではなく、恐怖から来たものだった。

それもそうだろう。

今、その声の主は死ぬか生きるかの瀬戸際にいるのだから。

《空中戦艦グリザイア》、共和国が誇る空挺機甲師団の一部である艦の艦長が声の主だ。

そして、その空中戦艦は、一人の人間によって制圧されてしまったのだ。

それも若い青年一人に。

足音が聞こえる。

死が、近づいてきている。

そう察した艦長は、そっと手に動力銃を握らせる。

「く…く、くく…こうなったら、部屋に入ってきた途端に蜂の巣にしてくれる……!」

足音は止まず、少しずつ近づいてきている。

そして、扉の前付近で止まった

(あと少し…少し…!)

 

だが

 

その扉は開くことはなかった。

 

何故なら、斬れたのだから。

「なぁ……!」

扉が斬れたという出来事に意識を取られた艦長は、そのあとの反応に少しだけ遅れた。

扉が斬れた刹那、一瞬で目の前に現れた青年。そして、斬られる腕。

持っていた銃は、そのまま下に落下した。

「が、がぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

余りの激痛に声しかでない

慌てて周りを見渡すが、既にこの部屋の仲間は斬られ絶命していた。

「悪いが……これも帝国のためだ」

「ひ、ひぃ!!」

「せめて安らかに」

一閃。

鮮血が飛び散り、自身の服を汚すも気にしない。

その人物の眼は。

 

黒く、輝いていた。

 

 

 

 

『よーぉ、首尾は上々、って感じか』

「まぁ、ね。そっちこそ、共和国側との情報戦は、どうだったのさ」

『ま。どっこいどっこいって感じかね。お前のお陰で、こっちも随分動きやすくなった』

「それならよかった。んじゃ、そろそろ帰るとするよ。レクター兄」

『おーう。帰ってこい、トーリ』

アークスの通信が切れ、ふと空を見上げる。

あんな機械じかけの天井より、こうして空を見た方がいい。

「……さて、どう動くかな?」

影を纏い、その場を去った。

 

 

帝国に戻った俺は、情報局に寄ってレクター兄に報告したあと、自分の家に帰った。

よくよく考えれば、返り血を浴びてて服が汚れている。

……相変わらず、この臭いには慣れないな。

俺が扱う剣は殺人剣だが、個人的に人を殺めるのが好きって訳じゃない。

服を脱ぎ、上半身裸の状態でソファーに腰掛けて煙草を取り出す。

そのままライターで火をつけ、一服。

ふぅ……仕事終わりの一服は最高だな。

よくクレア姉に注意されるが、止める気はない。

逆に、これぐらいが俺の人間らしい行為だと思う。

「さってと……シャワー浴びますかな」

俺はそのままシャワー室に向かった。

 

 

 

「…仕事終わったのなら、一言ぐらいないのでしょうか」

私はエレベーターを使い、ある一室を目指している。

義弟のトーリの部屋だ。

私の手には、彼の好きなチーズケーキがある。

人気店『アールヌーボー』の看板商品であるチーズケーキは、彼がいつも口に出す名前だ。

「相変わらずの凄い行列でした…3つ買えたのが奇跡ですね」

実際その人気は凄く、二時間並んでやっとの思いで購入出来たのだ。

それでも、彼が喜ぶのであれば二時間なぞ安いものだ。

そんなことを考えているうちに、彼の部屋の前に辿り着いた。

インターホンを押す。音が響くが、反応はない。

「…?寝ているのでしょうか」

もう一度、押して見る。余り鳴らすのも失礼なので、これに反応が無ければ連絡してみよう。

すると、ドタドタと言わんばかりに足音がする。どうやら起きているようだ。

扉か半開き、そこにいたのは……

「あぁ、クレア姉、来てくれt」

「な、な、な………」

「……?クレアn」

「な、なんて格好をしているんですかっ!?」

タオルで前を隠してるだけの、上半身裸の、トーリだった。

 

 

 

 

「いやー、ごめんごめん。シャワー浴びてたんだよ」

「い、いえ……こちらこそ急に来て申し訳ないです」

着替えてきたトーリは、私をリビングに案内してくれました。

私が来た理由が分かったのか、帝国軍将校の服を着ている。

「来てくれるなら、連絡してくれればいいのに。そしたら迎えに行ったんだが」

「いえ、その、眼福でしたから…」

「え、なんか言った?」

「え、あ、いえ。何でもありません」

危ない危ない。何を口走ってるんですか私。

紅茶を淹れ終えたらしく、私の分まで運んできたトーリ。

「はい。ミルクティーでよかった?」

「えぇ。ありがとうございます」

「?なんか今日のクレア姉変だな」

「そ、そんなことありません。大丈夫です」

「そう?ならいいんだけど……」

平常心、平常心です。氷の乙女もあろうものが、こんなことで動揺しては……こんなこと……

もわもわもわーん

「い、いただきます!」

慌ててミルクティーを口にする。

く………恥ずかしい……

 

 

クレア姉が俺の家に来た理由は分かってる。

この後の閣下との会議のための迎えだろう。

そのクレア姉は、さっきから顔を険しくしては赤くしての繰り返しで、全くもって氷の乙女の威厳を感じさせない。

どうしたんだか……

「そ、それで、仕事の方はどうだったのですか?」

話を切り出してきたクレア姉。

「あぁ、レクター兄にも話したが問題は無いよ。共和国の戦艦を一機潰してきた。あそこの基地の評判は悪かったからな、艦長ごと消せたのは大きい」

「ええ、軍の力を背景に、周辺の村の資材を漁っていた悪党のようなものでしたからね。共和国関係なく、片付ける必要がありました」

「それに……そろそろ動き始めるだろ」

「閣下を暗殺しようとする輩……ですね」

最近入ってきた情報、それは、オズボーン宰相閣下を暗殺しようとする輩がいる、というものだ。

その件に、俺は心当たりがある。

いや、寧ろその人物を知っている、と言ったほうが正しいのかもしれない。

だが、これを言う訳にはいかない。

アイツを……クロウを止めるのは、俺の役目だ。

「……?トーリ?」

「…ん?」

「そろそろ時間です。向かいましょう」

壁にかけている時計を見ると、もうすぐ会議の時間だ。

「んじゃ、行こうか。クレア大尉」

「ええ。トーリ特別大尉」

仕事モードに切り替え、俺とクレア姉は閣下の待つ官邸へと向かったのだった。

 

 

 

 




はい、一話です。
クレアかわいい。ほんとかわいい。
原作とは違い、アイアンブリードは仲の良い家族のような設定です。
ルーファス卿のデレも書いてみたいですね、はい。


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