ハリー・ポッターと虹の女神   作:セバスチャン

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※作中に残酷な描写があります。ご注意ください。


Page3.ルシウスの姦計(後編)

 イリスはナルシッサに連れられて、一階のサロンでドラコとお茶会をする事になった。ナルシッサが指をパチンと鳴らすと、いつものように屋敷しもべ妖精が現れた。「お茶の用意をするように」と彼女が命令すると、妖精は「承知致しました」と答えて姿を消し、一分もしないうちに、精緻な造りのティーセットと三段重ねのティースタンドに軽食や菓子を載せたお盆を持って、再び姿を現した。

 

 ナルシッサはお茶会の間中、ドラコの世間話に相槌を打つ振りをしながら、イリスを探るような目でじっと見つめていたので、イリスは紅茶を飲んだ気がしなかった。お茶会が終わると、ナルシッサの指示で、二人は夕食までの時間をそれぞれの自室に戻って過ごす事になった。

 

「ねえ」イリスは意を決して、自室の扉を開けようとするドラコに話しかけた。自分の推測を真実に変えるため、どうしても彼に確認したい事があった。

 

「話がしたいんだけど。二人だけで」

「えっ?・・・あ、ああ、かまわない。僕の部屋へ行こう」

 

 ドラコはその言葉に、何かを勘違いしたようだった。彼の青白い顔に赤みが差し、あからさまに目を逸らしながら頷くと、彼の自室にイリスを迎え入れた。二人はお互い違う思いを胸に秘め、ぎくしゃくしながら――去年のクリスマス、毎日のように魔法使いのチェスをした――窓際の二人掛けのテーブルに着いた。

 

「・・・それで、何だい?話って」

 

 上品にまとめ上げた髪を撫でつけながら、ドラコは取り澄ました様子で尋ねる。一方のイリスは「今から言う話を決して口外しないでほしい」と前置きしてから、不安でぎゅっと噛みしめていた唇を舐め、真剣な表情でストレートに聞いた。

 

「あのね、さっきのコインの事なんだけど。あれは一体何だったの?」

 

 二人の間に、奇妙な沈黙が流れた。やがてドラコはガッカリしたように肩を落とし、大きな落胆のため息を零した。どうやら彼の期待している話ではなかったらしい。

 

「・・・その話か。父上は貴重な闇の魔術の道具を沢山持っているからね。あれはその一つさ。君、そういうのに興味があるのかい?よければ、我が家の秘密の部屋を見せてあげるけど・・・」

「いや、ちょっと待って。じゃあ、あのコインは呪いの道具っていうこと?」

 

 テーブルに肘を着きながら投げやりに答えるドラコの言葉をイリスは思わず遮った。一部、聞き捨てならない単語があったためだ。『闇の魔術の道具』――やはり、ロンが言っていた通り、ルシウスは悪い魔法使いなのか?ずいと身を乗り出しながらイリスが唇を尖らせて追及すると、ドラコは慌てて取り成すように言った。

 

「呪いって言う程じゃない。ただ『女の片割れ』を持たせた相手が、『男の片割れ』を持っている相手に無性に会いたくなるっていうだけさ。二つをくっ付けてしまえばその気持ちは消えて、後遺症は何にも残らない。そう、ちょっと強力なお守りってだけだ」

「お守りだろうと何だろうと、人の気持ちを操るものを送るなんて、おかしいよ。私はロンの家で泊まる約束をしてたのに、そのコインのせいでキャンセルしちゃったんだよ?」

 

 ドラコはイリスから『ロン』の言葉を聞くと、露骨に顔をしかめて、冷たい色をした瞳に怒りを宿して言い放った。

 

「僕はおかしいとは思わないね。パパも僕も、君がウィーズリーの家になんか行くのを内心は許せなかった。それに、あんなお化け屋敷より僕の家で過ごした方が、君だってきっと楽しいはずだ」

「楽しいかどうかは私が決めることだよ!」

 

 イリスは恐怖を通り越して、怒りが込み上げてくるのを抑える事が出来なかった。ルシウスがそんな卑怯な手を使うなんて。約束を破ったイリスを、ロンたちがどう思うかなんて、ルシウスにはどうでもいい事だったのだ。馬鹿にされるにも程がある。イリスは思い切って、鎌をかける事にした。

 

「私がハリーたちに送った手紙や私宛の手紙を届かなくしたのもルシウスさんなんでしょ?」

 

 気まずい沈黙が二人を包み込んだ。チェックメイトだ。イリスはその静寂を肯定だと確信し、追撃した。

 

「ドラコも『ロンを出し抜いた』って、あの時そう言ったよね。・・・誤魔化したってダメ。知ってるんだよ。さっき私見たもの。おばさん宛の手紙は、サクラがルシウスさんの書斎に届けてた。どうしてそんなことをするの?」

 

 ドラコはイリスの怒りに燃える目を困ったように眉根を下げながらチラッと見やり、やがてもう隠し切れないと悟ったのか、呆れたようにため息をひとつ零した。

 

「・・・名推理だな、イリス。お察しの通り、君の手紙は全てパパが管理してる。君らと別れた帰り、パパが僕に言ったんだ。『この一年様子を見ていたが、彼女はまだ自分に相応しい友人とそうでない友人が解っていないようだ。君をこのまま間違った道に進ませてはならない』ってね。だからパパは君に関する手紙を、君のふくろうに一旦集めさせて、本当に相応しい者からの手紙だけ届けるようにしたし、あの赤毛の家じゃなくてこっちへ来させるようにコインを送った。・・・まあ手紙は選別した結果、ホグワーツと僕のコイン入りの手紙位しか残らなかったみたいだけど」

 

 イリスは空いた口が塞がらなかった。茫然とドラコを見つめながら、彼女はわなわなと震える声を絞り出す。

 

「ルシウスさんは、ロンの家で過ごす事が間違っているっていうの?ハリーやロンやハーミーが私に相応しくない友達だっていうの?」

 

 理解する事が出来なかった。クリスマス休暇の時、ルシウスは優しい目をしてイリスの友人たちの話を聞いてくれていたのに。心の中では、彼は一体どんな事を考えていたのだろう。人の表情と感情は、必ずしも同一ではないのだ。信じていた人に裏切られたショックから視界がぼやけ、涙が幾筋も零れ落ちていく。イリスが目の前ではらはらと涙を流すのを見て、ドラコは席を立ち慌てて彼女の肩に手を置いた。

 

「泣くなよイリス、君に泣かれるとどうしていいか分からなくなる」

 

 もうドラコは、イリスを『泣き虫』と呼んでからかう事は考えられなくなってしまったようだった。

 

 

 イリスは、ダイアゴン横丁へ学用品を買いに行く水曜日まで、眠れぬ日々を過ごした。唯一の慰めは、ホグワーツへ戻る九月一日までそう遠くはないという事だけだった。ルシウスとナルシッサは、あの日以来イリスに対して普段通り優しく接してくれた。しかし、イリスが屋敷の外を歩き回るのだけは頑なに許してくれなかったので、サクラとも会えなくなってしまったし、イリスは空いた時間をドラコと過ごすしかなかった。

 

 水曜日の午前中、イリスはマルフォイ家と共に『煙突飛行粉』を使用してダイアゴン横丁へ出かけた。グリンゴッツ銀行で必要な分だけの貨幣を下ろした後、四人は二手に別れる事となった。ルシウスとドラコは夜の闇横丁へ、ナルシッサとイリスはダイアゴン横丁に残り、四人は数時間後にフローリシュ・アンド・ブロッツ書店で落ち合う約束をした。イリスはナルシッサと共に、二人分の必要な学用品を買い足した後、日の光を反射してキラキラ輝く石畳を散歩して回った。道中でナルシッサに買ってもらったチョコレート・アイスクリームを舐めながら、イリスは四方八方を見回してハリーたちを探すが、見つからない。自由散策をしたいとダメ元で言ったはみたものの、ナルシッサは迷子になるからダメだと叱って、イリスの手を繋いで離さなかった。

 

 数時間後、二人はフローリシュ・アンド・フロッツ書店へ向かった。そばまで来てみると、驚いた事に書店の外まで黒山の人だかりが出来ていて、みんな押し合いへし合いしながら店内へ入ろうとしていた。驚いた事に、その殆どがマダムな年齢の魔女ばかりだ。殺気立った彼女たちが織り成す凄まじい地獄絵図に、ナルシッサは思わずイリスから手を離し、不快そうに口を押えて後ずさる。イリスは目を丸くしながら、上階の窓にかかった大きな横弾幕を見上げた。

 

『サイン会 ギルデロイ・ロックハート

 自伝「私はマジックだ」

 本日午後12:00-4:30』

 

「ギルデロイ・ロックハートだ!」

 

 ホグワーツからの手紙に書いてあった、教科書の作者だ。イリスは歓声を上げた。みんな面白そうなタイトルばかりだったので、早く読みたいと思っていたのだ。きっと目の前で押しくらまんじゅうをしている魔女たちは、彼のファンに違いない。イリスがどうやって中へ入ろうか考えていると、人だかりの中から不意にニョキニョキニョキッと手が三本程伸びてきて、固まるイリスの手を引っ掴み、店内へと引きずり込んだ。

 

「イリス!」

 

 手の主は、イリスの親友であるハリー、ロン、ハーマイオニーだった。三人はむせ返るような人いきれの中、イリスとの再会を喜んで、輝くような笑顔を浮かべてそれぞれハグしてくれた。イリスは友人たちと会えてとても嬉しいけれど、どうして三人が怒っていないのか分からなかったので、目を白黒させながらおずおずと三人を見上げた。

 

「みんな久しぶり。会えてとっても嬉しいんだけど、どうしてみんな怒ってないの?」

「怒る?どうして君に怒らないといけないんだい?僕ら、マルフォイに拉致られた君を心配してたんだぜ」

 

 ロンが言うにはこうだった。何通もイリスに手紙を送ったが、一向に返事は来ず、ある日マルフォイ家で過ごすという手紙だけが届いた。それ以降もロンはめげずに手紙を送り続けたが、返事はない。嫌な予感がしてロンは父・アーサーに相談した。アーサーは機転を利かせて日本にいるイオに手紙を送ると、イオは『イリス宛の手紙はドラコからの以外届いていない』と言う。ロンたちが救出したハリーもドビーなる謎の屋敷しもべ妖精に妨害され、手紙を受け取る事ができなかったというし、ハリーとイリスの手紙騒動はマルフォイ家が絡んでいるに違いないと、根っからのマルフォイ家嫌いであるウィーズリー・ファミリーは推理したのだ。ハリーもハーマイオニーもイリスの事を心配していて、その推理に同調した。

 

「想像はつくよ。きっとあいつらの陰謀だろ」とロン。

「私、貴方の電話番号を聞いていればよかったわ。そうすれば先回りできたのに。とっても心配したのよ」とハーマイオニー。

「マルフォイ家のやつらに意地悪されなかったかい?」とハリー。

 

 イリスは、ロンの話を聞いて、心に暖かな炎が灯るのを感じた。――三人は信じてくれていたのだ。ハリーにドビーの事について聞かれたけれど、イリスは屋敷しもべ妖精自体は屋敷内でよく見かけるものの、彼らの名前は知らないので、よく分からないと答えるしかなかった。人の気持ちを操るコインの事や、手紙がルシウスの手によって妨害されていた事を話して聞かせると、三人は途端に険しい表情になった。

 

「呪いのコインを送ってくるなんて、どうかしてるぜ!そこまでして僕んちに連れてこさせたくなかったのかよ!」ロンは目を剥いた。

「逆に考えれば、そこまでしてマルフォイ家に連れてきたかったとも考えられるわ。でも何のために?」とハーマイオニー。

「何のためにって?決まってるよ。マルフォイがイリスのことを気に入ってるから、無理やり連れてこさせるようにしたんだ」とハリー。

「・・・違うんだよ、ハリー。ルシウスさんが・・・」

 

 イリスがドラコから聞いたルシウスの話をしようと声量を落とし、四人がさらに身を寄せ合った時、人込みを掻き分けて、一人の中年男性がこちらへ向かってきた。穏やかな雰囲気を持つその男性は細身で、くたびれた緑のローブを羽織っている。彼の頭頂部にわずかに残っている赤毛を見たイリスはピンと来た。きっとロンのお父さんだ。

 

「ロン!ここは酷いもんだ、早く出よう」

 

 ロンは男性を見ると、嬉しそうにイリスに教えてくれた。

 

「僕のパパだよ、イリス。パパ、イリスを見つけた!」

 

 男性は三人のそばにいるイリスを見ると、夕焼けを眺めているような――どこか懐かしむような目をしながら彼女に近づいて、人を安心させるような柔和な笑みを浮かべて見せた。

 

「初めまして、イリス。ロンの父のアーサー・ウィーズリーだ。君のお父さんとは良き友人であり、同僚だった。ロンから聞いたが、手紙の事で何か――トラブルがあったようだね。私でよければ相談に乗るよ」

 

 イリスが応えようとした時、何者かがするりと人込みを抜け、二人の間を分かつようにして、イリスに背を向けアーサーに正面を向けるような形で立った。――ルシウス・マルフォイだった。

 

「・・・これはこれは、アーサー・ウィーズリー」

 

 慇懃無礼な挨拶をしながら、ルシウスは漆黒の長いマントの隙間からイリスの手を強い力で掴み、彼女をその場から逃げ出さないように固定してしまった。イリスは慌てて周囲を見渡すが、いつの間にやら少し離れたところでドラコと三人は激しい言い争いを始めてしまっている。――どうやら、イリスに会う前にハリーがロックハートに厚待遇を受けたらしく、その事を主題として彼らはヒートアップしていた。イリスはルシウスのマント越しにアーサーを見る事しか出来なかった。

 

「ルシウス」アーサーは素っ気なく礼をした。どうやら子供同士だけでなく、父親同士の仲も宜しくないらしい。

 

「お役所は忙しいらしいですな?あれだけ何回も抜き打ち調査を・・・残業代は当然、払ってもらっているのでしょうね」

 

 ルシウスは、丁度近くにいた赤毛の女の子(ロンの妹っぽい、とイリスは推測した)が持つ大鍋におもむろに手を突っ込むと、豪華な装丁のロックハートの本の中から――『変身術入門』と銘打たれた、使い古しのすり切れた本を引っ張り出し、蔑むような笑みを浮かべた。

 

「どうもそうではないらしい。なんと、役所が満足に給料も支払わないのでは・・・わざわざ魔法使いの面汚しになる必要がないですねえ?」

 

 ルシウスはどうしてもイリスから関心を遠ざけたいようで、ハーマイオニーの両親まで巻き込み、アーサーの感情を逆撫でするような言葉を次々投げつけた。アーサーはその挑発にまんまと乗せられ、怒りで顔が深々と真っ赤になったが、イリスの事は忘れていなかった。

 

「マルフォイ、面汚しがどういう意味か、我々の間で意見が分かれるようだな。こんな純粋な女の子を騙して連れ込んで、一体どういうつもりだ。・・・君がネーレウスの友人だと?笑わせるね」

 

 今度はルシウスが赤くなる番だった。冷たく取り澄ました表情が怒りで歪み、青白い顔色に赤みが差す。

 

「・・・ほう、貴様がそれを言うか?ウィーズリー」

 

 イリスを掴んでいる手が感情が高ぶる余り震え、より力が増していく。イリスは痛みに思わず悲鳴を上げそうになった。ルシウスは憎しみを込めた目で、アーサーを睨み付けた。

 

「彼を――汚らわしい――マグルの世界へ引き摺りこんだ、血の裏切りが!」

 

 ――先に仕掛けたのはアーサーだった。ルシウスの胸元を掴み、横の本棚に力任せに背中を叩きつける(イリスは、直前にルシウスが被害を被らないよう後方へ押し遣ってくれたので、無傷だった)。本棚からバサバサと大量の本がなだれ落ちるのも構わず、今度はルシウスがアーサーに殴りかかる。人込みは途端に大きく割れ、やり合う二人の間を無数の本がフクロウの様に飛び交う。

 

「やっつけろ、パパ!」「お客様方、どうかお止めを!」「喧嘩すんなら外でやれ!」怒号や歓声もシャワーのように降り注ぐ中、イリスは恐怖と罪悪感で震え上がっていた。分別のある筈の大人たちが本気の喧嘩をするところなど、今まで見た事がなかったのだ。――しかも彼らが喧嘩する事になった原因は、他ならぬ自分と自分の父親のことだ。

 

 イリスが意を決して二人の間に入ろうとすると、大きな熊手のような手がイリスを止めた。

 

「ハグリッド!」

「お前さんじゃ、ちぃと力不足だ」

 

 ハグリッドはイリスに向けてにっこり笑って見せると、本の山を掻き分けながら――のしのしと二人の間に割って入り、それぞれの服の襟を片手で引っ掴んで、強引に引き離した。アーサーは唇を切り、ルシウスの目には『毒きのこ百科』でぶたれた痕があった。ルシウスは目を怒りでギラギラ輝かせながら、茫然と突っ立っていたイリスの手を再び掴み、アーサーを睨み付けた。

 

「この子は、もう二度と彼の二の舞にはしない。これ以上彼女に関わるな、アーサー・ウィーズリー」

 

 ドラコに目で合図をしてその場を立ち去ろうとするルシウスに、アーサーが静かに答えた。

 

「私も同じ気持ちだ、ルシウス。――いつか必ず、君の尻尾を掴んでやる」

 

 イリスはルシウスに手を引かれ、何度も後ろを振り返りながら去る他なかった。人込みの中で、ウィーズリー一家も、ハリーもハーマイオニーもみんな、心配そうな目でイリスを見ていた。

 

 

 あの後、イリスはルシウスに謝ったが、「君が謝る事は何もない」と微笑んで頭を撫でられただけだった。しかし、もやもやした気持ちと罪悪感はイリスの心中に残り、夕食の時間までイリスはドラコと一緒にベッドに寝転がり、大人しく読書をして過ごした。――アーサーもルシウスも、自分の父親と友人だったと言った。イリスは、ロックハート著『鬼婆とオツな休暇』を読みながら、考えを馳せた。アーサーは自分の父親をマグルの世界に引き込んだと――

 

 不意に控えめなノックがされ、クィディッチの最新の考察本を読んでいたドラコが生返事をした。

 

「ドラコお坊ちゃま、イリスお嬢様。夕食のお時間で御座います。食堂室へいらしてください」

 

 屋敷しもべ妖精らしき甲高い声がする。ドラコは「良い所だったのに」と不満そうに本を閉じ、イリスに食堂室へ行くよう促した。

 

 食堂室へ向かうと、ルシウスとナルシッサはもう席に着いていた。イリスは膝にナプキンを掛ける時、ルシウスの顔をチラッと見た。――もう喧嘩の痕は残っていないようだ。イリスは安心して、琥珀色に輝くスープに取り掛かった。食事は滞りなく進み、デザートがテーブルに並ぶ頃、ルシウスのそばに屋敷しもべ妖精が現れた。妖精は手紙を携えており、ルシウスは封を破って中身を見ると、険しい表情をしておもむろに立ち上がった。

 

「――少し急用ができた。帰りは遅くなる」

「そんな!クィディッチの話をするって約束したじゃないか」

「お父様はお忙しいのよ、ドラコ。我儘を言ってはいけません。二人とも、明日は舞台を観に行く予定なのだから、もう寝なさい」

 

 ドラコは不満げに口を尖らせたが、ナルシッサが取り成しているうちに、ルシウスは妖精を引き連れて部屋を出て行った。イリスは自室に戻った後、思った。――家主のルシウスの不在。これは、書斎から手紙を奪還する絶好のチャンスだと。

 

 夜十時。ドラコが寝静まっているのを扉の隙間から確認すると、イリスはひとり静かに部屋を抜け出した。小さな燭台を持って、イリスは暗い廊下を歩く。どうして自分がこんな無謀な行動ができるのか、イリスは考えて――わかった。まだ心の奥底で、『優しいルシウスを信じていたい』という想いが残っていたのだ。だから、自分の目で手紙が本当に書斎にあるかどうか見なければならない、という使命感が、イリスを突き動かしていた。――もし本当に手紙があったら――イリスはその先を考えないようにした。

 

 そしてイリスは書斎に到達した。『書斎にだけは絶対に入っちゃ駄目だ』ドラコの忠告が胸に突き刺さるが、イリスは首を横に振り、意を決してノブに手を掛けた。――そして気づいた。鍵が掛かっていたら入れないと。

 

「・・・」

 

 イリスはノブを握ったまま、途方に暮れて立ち尽くした。入る事を禁じられている位なのだから、施錠もされているに決まっている。その事をすっかり忘れていた。学生は魔法が使えないので、開錠の呪文も使用できない。――ダメ元でノブを引く。

 

 驚いた事に――鍵はなんと――開いていた。すうっと音もなく開いた扉に、イリスは思わず「えっ?」と声を上げそうになったが、慌てて抑える。出かける時に閉め忘れたのだろうか。いずれにしてもラッキーだ。改めて周囲に誰もいない事を確認してから、イリスはこっそりと入った。中は広々としていて、両隣の大きな本棚には無数の本が整頓されている。中央に大きな書斎机があり、暖炉には燃え残った火がトロトロとくすぶっていた。

 

 ぐずぐずしている時間はない。イリスはこわごわ書斎机に近づいて、引き出しを開けようとするが、全て鍵がかかっていて開ける事ができない。――何だか、自分はとんでもなく意味のない、リスキーな行動をしているような気がする。イリスは罪悪感に苛まれながら、うろうろと部屋中を彷徨い歩いて――ふと暖炉の方に目をやった。薪と一緒に――沢山の紙切れがくすぶっている。

 

 イリスは近寄って、息をのんだ。――それは手紙だった。イリス宛の手紙だ。イリスは火かき棒を取ると、まだ生き残っている手紙を求めて漁り続けた。『イリスへ ロンより(その下に『もうこれで二ダース目だぜ』と走り書きしてある)』『イリスへ ハーマイオニーより』『イリスへ ハリーより』・・・灰を取り除けて封を開けてみると、それらはいずれも友人たちが自分の安否を気遣う内容だった。

 

 やっぱり、ドラコの言う通りルシウスが手紙を選別していたんだ。どうして大切な友人たちが送ってくれた自分宛の手紙が、勝手にルシウスに回収されて、暖炉で――ゴミみたいに――火種として燃やされないといけないんだ?ふつふつと込み上げる怒りは、イリスの心中の罪悪感を跡形もなく吹き飛ばした。なんでこんな仕打ちを受けなきゃならない?イリスは燃え残った手紙の束を、ぎゅうっと抱きしめた。

 

「何をしている、イリス?」

 

 突然冷たい声が飛んできて、イリスは驚いて振り返り、目を疑った。――出かけていた筈のルシウスが、戸口に立って、無表情で暖炉前にしゃがみ込むイリスを見下ろしている。

 

「書斎には入るなと、ドラコから、君によく言い聞かせていた筈だが?」

 

 イリスは果敢にも立ち上がり、臆する事無くルシウスを見据えた。灰だらけの手紙の束を見せる。

 

「これ、私宛の手紙です!全部、ドラコから聞きました。ルシウスさんが、私の友達からの手紙を妨害してるって!」

「ドラコからきちんと話を聞かなかったかね?・・・それらは全て君に相応しくない者たちからの手紙だ。そんなものは全てゴミだ、燃やして何が悪い?」

「ハリーやロンや、ハーマイオニーが、私に相応しくないって言うんですか!勝手に決めないで!三人は私の大切な友達です!」

 

 ルシウスはイリスの激昂を気にも留めず、扉を後ろ手で静かに閉めると、冷たくせせら笑った。

 

「友達!」ルシウスは吐き捨てるように言い放ち、イリスを真正面から見据えた。

 

「『穢れた血』の子供や、『血の裏切り』のウィーズリー家の子供を、君は友達だと言うのか!――他ならない純血主義を広めた、偉大なるサラザール・スリザリンの血を引く君が!」

 

 

 イリスはその言葉を理解するまでに、多くの時間を必要とした。――私が、スリザリンの血を引いている?そんなの、嘘に決まってる。

 

「そんなのウソだ!おばさんからそんなこと、一言も・・・」

「ああ、そうだろうとも。君の大好きな『役立たず(スクイブ)』は、肝心な事を何一つ君に喋らない。そうするよう、ダンブルドアに命じられたからだ。あれはダンブルドアの操り人形に過ぎない」

「おばさんのことをそんな風に言わないで!」

 

 躊躇なく『役立たず』と言い放ったルシウスに恐怖を覚え、イリスは叫んだ。身の危険を感じて火搔き棒を構えるイリスを、この状況を愉しむかのような笑みを浮かべて見やり、ルシウスは一歩、彼女に詰め寄った。

 

「なら君は、この事も勿論知らない筈だな?『名前を言ってはいけない例のあの人』・・・闇の帝王も、ゴーント家の一員だった。君の父方の祖母――メーティス・ゴーントは、闇の帝王と従姉妹関係にあり、かつて帝王から『従者(サーヴァント)』と呼ばれた程の、誰よりも忠実で有能な闇の魔女だった事も。

 ――イリス・ゴーント。君はこの世界でただ一人の、闇の帝王の血縁者であり――最もあの方に近しい存在だ。そんな君が、あの方を打倒した宿敵ハリー・ポッターを大切な友達だと?無知とは恐ろしいものだな、イリス」

 

 イリスの手から、手紙の束が零れ落ち、木の葉のようにカーペット上に散らばった。しかしイリスは、それを拾う事も忘れ、茫然とルシウスを見つめた。――頭が真っ白になって、何も考える事が出来ない。そんなのウソだ、だって、おばさんはそんなこと言ってなかったもの。言い返そうとするも、言葉は喉に貼り付いて、イリスの唇だけが空しく開閉するだけだった。――だって、おばさんは、私が魔女だったって事も、動物と喋れる力があるって事も、教えてくれなかった。無意識に後ずさるイリスは、やがて書斎机が背中に当たり、逃げ道を失った。

 

「さあ、そろそろ種明かしをしよう、イリス。――私は死喰い人(デスイーター)だ。この言葉の意味は、去年授業で習った筈だね?

 君の父――ネーレウス・ゴーントは、在学中から並々ならぬ闇の魔術の才能があった。彼は名実共に誰よりも強い死喰い人になれた、筈だった。私は彼に惚れ込み、日夜説得したよ。しかし、彼がこちら側へ着く事を決断するという時に――それを危険視したダンブルドアが――彼を忌々しい誓いで縛り、自らの『従者(サーヴァント)』とした!彼はダンブルドアの忠実な駒として、闇祓いとして生きるしかなく――挙句、変わってしまった。――よりによって、マグル製品不正使用取締局に就き、『マグル保護法』をあの虱集りのウィーズリーと共に制定し、幸せそうに笑うようになってしまった!――私は、彼の人生を奪ったダンブルドアが許せない!それを知っていながら、素知らぬ顔でマグルの世界に引き込んだウィーズリーの事も!」

 

 ルシウスは、込み上げる怒りの感情を爆発させ、力任せに壁を叩いた。衝突音は重々しく部屋に反響し、びりびりとイリスの背後の窓硝子が震えた。

 

「しかし君の両親は、闇の帝王に抗って死ぬ数日前に、危険を押してここへ最期の挨拶に来てくれた。どんなにお互いの立場が違っても、私たちは親友だったのだよ、イリス。

 私は、君を我が家の養子に迎えるよう説得したが、彼は断り、君は消えた。それから十年間、諦めきれずに君を探し続けて――やっと、ダイアゴン横丁で見つけた。もう今度は決して、君を彼のようにはさせない。――私の手で、君を立派な死喰い人に育て上げる。これはその第一歩だ」

 

 ルシウスは欲望に妖しく輝いた目でイリスを見据えながら、ローブのポケットから黒い革表紙の日記帳を取り出した。それは見るだけで――禍々しい気配が感じられた。

 

「この日記の持ち主も、きっと君との邂逅を望んでいる筈だ。――もう時間がない。ダンブルドアとウィーズリーの毒牙にかかる前に、私は君を守り、正しい道へ戻してやらなければならない。イリス、わかるね」

 

 ルシウスはそう言うと、竦み上がるイリスの手を掴み、捻り上げて火搔き棒を取り落させると、書斎机の上に組み伏せた。イリスは恐怖の感情が臨界点に達し、助けを求めて絶叫した。

 

 

 ルシウスが身動きの出来ないイリスに杖を向けようとしたその時、扉がノックもなく荒々しく開かれた。――ドラコだった。彼は、二人の尋常ではない様子を見てショックの余り、目を見開いてその場で立ち竦んだ。

 

「ドラコ、助けて!」

 

 イリスはガタガタと震えながら、必死で彼に助けを求めた。一方のルシウスは、イリスに杖を押し当てたまま、静かな怒りを孕んだ冷たい目でドラコを見据えた。

 

「――私はお前に何と言った?『ここには決して入るな』と言い聞かせた筈だが」

「ち、違うんだ、パパ。僕、イリスとチェスをしたくて・・・でも、イリスがいなかったら探してて・・・そしたら悲鳴が・・・」

 

 ドラコは勿論書斎に入ってはいけない事は承知していたが、イリスの悲鳴が聞こえて、無我夢中で扉を開けてしまったのだ、と必死に伝えようとした。――こんなに怒った父の顔は初めて見たので、内心ドラコは震え上がっていた。まさか自分の尊敬する父が、イリスの悲鳴の元凶だったなんて。やがてイリスを助けようと、迷いながらも一歩進んだドラコを睨み付け、ルシウスは恐ろしく冷淡な声音で言い放った。

 

「・・・出て行け」

「で、でもっ、イリスが」

「出て行けと言っているのが、わからないのかっ!!」

 

 『泣いてる』と言い掛けたドラコは、ルシウスの部屋全体を震わせるような声量の叱責に、跳び上がった。それは間近でそれを聞いたイリスも同じ事だった。ドラコにとって、父は絶対的存在だった。――そしてドラコは、父に逆らってイリスを助けるよりも――父の命令を聞く方を選んでしまった。彼はイリスを引き攣った表情で見つめながら――力なく一歩、一歩引いていった。ドラコが扉の敷居を跨ぐか跨がないかのうちに、ルシウスが杖を向けると、バタン!と扉を壊さん勢いで、ドラコの鼻先で扉が閉められ、鍵が掛けられた。

 

 そして再び、部屋の中はイリスとルシウスだけが残された。――想い人は助けてくれなかった。イリスが絶望に泣き崩れ、抵抗する力を無くしたのを確認すると、ルシウスは彼女に向け『服従の呪文』を唱えた。

 

「インペリオ、服従せよ」

 

 しかし、ルシウスから放たれた呪文の光線は、イリスに触れる直前で――虹色の火花と共に跳ね返された。――イリスの体を包み込むように、しゃぼん玉のように淡い虹色に輝く光の膜が覆っている。訝しむイリスは、やがて胸の辺りに確かな温もりを感じて、その源を手繰り寄せた。それは、イオにもらったお守りだった。

 

「お、おばさんっ・・・」

 

 イリスがお守りを握り締めると、呼応するようにそれは光を増し、ぶるぶると震えた。ルシウスはイリスの拘束を解き、真剣な表情で何度か杖を振るって魔法を掛けようとしたが、その度に光線は跳ね返されてしまう。彼は忌々しく舌打ちした。

 

「――あのゴミクズめ。小賢しい真似を。イリス、それを外せ」

「いやです!お願い、ここから出して!」

 

 外すわけがないと、イリスは首を振った。――外したら最後だ。イリスは扉の近くまで後退すると、涙ながらにルシウスに懇願するが――彼はそれには答えず、大きなため息を零しただけだった。やがて彼は不意に指を鳴らして、屋敷しもべ妖精を呼び出し、何かを耳打ちした。妖精は姿を消し――何故か、イリスのペットのフクロウであるサクラを鳥籠に入れて、再び現れた。ルシウスは妖精から鳥籠を受け取ると、異変を感じて暴れるサクラを無理やり掴み出す。イリスは訳もなくゾッとして、慌ててルシウスに近づこうとした。

 

「いやっ!サクラに何をするの?!」

 

 ルシウスは無言で、杖を振るい彼自身に守りの結界を張った。それはイリスのお守りの結界と拮抗し、二人の間に見えない壁を作り上げる。結果、イリスはルシウスとサクラに近づく事が出来なかった。その様子を確認すると、ルシウスはイリスに向け、酷薄な笑みを浮かべた。

 

≪イリスちゃん!早く逃げて!私のことはいいから!≫

 

 本能で只ならぬ状況を悟ったサクラは、必死で羽根をばたつかせ、ルシウスの手に噛み付こうとしている。ルシウスは不快そうに顔を歪ませ――サクラを一度強く机上に叩きつけ、ぐったりとさせてからイリスに尋ねた。

 

「君は動物の言葉がわかるのだったな?――クルーシオ、苦しめ!」

 

 その瞬間、ぐったりしていたサクラが全身を引き攣らせて、部屋中に響き渡るような苦痛の悲鳴を上げた。羽根の一本一本が逆立っているのを見て、イリスは気も狂わんばかりに泣き叫んだ。

 

「やめて!!お願い!!サクラにひどいことしないで!!」

「――なら、するべき事はわかっているな、イリス?もたもたしていると、君の大事なペットがショック死するぞ」

≪それを・・・外しちゃだめ、イリスちゃん・・・≫

 

 ゼイゼイと弱々しく呼吸を繰り返しながら、イリスに忠告するサクラは――二度目の磔の呪文を受けて、嘴から吐瀉物を零れさせながら、身を捩った。――イリスはもう耐えられなかった。『外すな』というおばとの約束を破り、サクラを助けるためにお守りを外してしまった。イリスを覆っていた虹色の結界は、泡のように弾けて消え去った。

 

「外しました!外したから、お願い!お願い・・・!」

 

 ルシウスは自身の守りの結界を解除すると、イリスの手からお守りを無造作に掴み上げ、暖炉の中へ放り込んだ。さらに杖を向け、勾玉を粉々に破壊した。そしてイリスの頭を撫で、優しく語り掛けた。

 

「良い子だ、イリス。今度、私に対してこんな下らない抵抗を見せたら――ペットだけでは済まない。君の大好きなおば君を、君の目の前で嬲り殺す。金輪際、私に逆うな」

 

 イリスは恐れおののいて、しゃくり上げながら何度も頷いた。齢12歳の子供の許容量を優に超えた『恐怖』を刻み込まれた結果、イリスはもう正常な思考が出来なくなってしまっていた。涙でぼやける視界の端で、痙攣するサクラを妖精が介抱しながら鳥籠に入れ、姿を消すのが見えた。ルシウスは改めてイリスの手を取り、そばに引き寄せると、杖を彼女に向けた。

 

 ――おばさん、約束を破って、ごめんなさい―― イリスは呪文を掛けられる直前、イオに懺悔した。

 

「インペリオ、服従せよ」

 

 その瞬間、イリスの心身を圧倒的な多幸感が包み込んだ。――なんて最高の気分なんだろう!今までの恐怖の記憶等、銀河系の彼方へ消し飛んでしまった。こんな良い気持ちにさせてくれたルシウスが、悪者の訳がない。優しくイリスを抱きしめ、頭を撫でてくれるルシウスは、今の彼女にとっては神様のようにも思えた。

 

「イリス、私のいう事を聞いてくれるね?」

「はい」

 

 イリスは素直に頷いて、ルシウスに寄りかかった。見上げる彼女の瞳は、輝きが失われ、明らかに正気の状態ではない。ルシウスは机上から黒い革表紙の日記帳を取り、イリスに見せた。

 

「これは、とても大切なものだ。君にあげよう。大事に使いなさい。――だが、決してこの日記の事を他言してはならない。君はこれを私から受け取ったのではなく、『今日ダイアゴン横丁でたまたま落ちていたのを拾った』のだ。いいね?」

「はい」

「良い子だ。では、眠りなさい」

 

 イリスは途端に目を閉じ、深い眠りに落ちた。ルシウスはイリスの瞼に口付けを落とした後、彼が考えたシナリオ通りに進むように、イリスの記憶の一部を忘却させ、改竄した。

 

 

 ドラコは、扉の前でガタガタと震えたまま、動く事が出来ずにいた。――その時、ノブがひとりでに動き、扉が静かに開いた。

 

「ドラコ、もう入って来ても良い」

 

 穏やかな父の声がして、ドラコは恐る恐る中へ入った。部屋の中央には魔法で出された一人掛けのソファがあり、そこにはイリスが眠っていた。――見慣れぬ黒い革表紙の日記帳を、両手に抱いている。賢いドラコは、その日記帳が何かという事も、イリスがあの後どんな目に遭ったのかも、父に聞く事はできなかった。ただ、ドラコの心中に『イリスを見捨て、助ける事ができなかった』という強烈な罪悪感が渦巻くだけだった。複雑な表情でイリスを見つめるドラコに、ルシウスは、愛する息子を守るために、こう言った。

 

「お前に一つ忠告をしておこう。今後ホグワーツでどんな事件が起きても、お前は一切関与してはならない。――わかったね」

 

 ルシウスは微笑むと、ドラコの肩に手を置いた。その言葉を聞いて、ドラコは何となく状況を察してしまった。事件を起こすのは、きっとイリス本人なのだと。そしてそれを自分は止める事が出来なかったのだと。 

 

「・・・わかりました、父上」

 

 この状況を打開するには、ドラコは余りにも聞き分けの良い子で、臆病過ぎた。結局彼は、また父の言葉に従い、力なく頷くしかなかったのだ。




全国のジニーファンの方へ

秘密の日記をイリスが持つ事になってしまって、すみませんでした!
話の設定上、どうしてもこれだけは外せなかったのです。
ジニーちゃんの見せ場はちゃんと作りますので、ご安心ください!!

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