俺、ツインテールになります。lover   作:金細工師

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今回はいつもより字数が少ないので、短めな気がしますが、間話の感覚で読むと丁度いいかもしれません。

では7話、テイルレッドVSマスメディアです。

しかし、テイルブルーの扱いは本当におかしいと思うんですよね、あの世界はロリコンか、思考が幼稚な人しかいないのか。


7話~テイルレッド、魂の叫び~

「はあ…本当に朝からテンション下がるなぁ…」

「そう落ち込むな、愛香。俺がなんとかしてやるから」

朝から風評被害を受けて、可哀想な愛香を(なぐさ)める。

…テイルブルーの扱いを改悪した日本のマスメディアはこの俺が許さない。

……ん?そういえば。

「なあ、愛香。何か、ツインテールにしてる子、増えてないか?」

「え?た、確かに凄い増えてると思う……あたしもちょっと心配になってきたかも」

また悲しそうな顔になる愛香。

心配…とは何の心配だろう。

もしかして、ツインテールの子が増えたから、俺を取られてしまうのでは、という心配か?

「えっと、愛香。心配しなくても、俺は愛香のツインテールが一番好きだからな」

「!!…そーじ…」

愛香の顔がぱっと晴れ、ツインテールにも活力が戻った気がする。

俺は愛香のツインテールを()まんで、優しく触ると、愛香は更に幸せそうな顔をした。

うん、愛香はやっぱり可愛いな。

 

「そういえば、神堂会長も最近ツインテールにしたばっかりなのかな。中等部の時は全然気づかなかったけど」

「会長は高等部からの編入みたいよ。でも、半年足らずでもう学校の顔になったって、凄いわよね」

それは凄いな…さすが、あのツインテールを持っているだけの事はある。

「おはよう!よい朝ですわね!」

その時、突然弾んだ声をかけられ、驚いてしまう俺。

噂をすればなんとやら、神堂会長が満面の笑みで挨拶をしてくれた。

「おはようございます、会長。何か、今日機嫌良いっすね」

「ええ、テイルレッドに仲間がいる。それが分かって、とても嬉しいんですの」

「…そう、だよねっ…!ブルーは仲間…だよねっ!」

目を輝かせて、会長に擦り寄る愛香。

俺がブチギレるぐらいの扱いされてたもんな…分かってくれる人がいて、良かった…。

「本当によかったですわ。テイルレッドはもう、一人で戦い続けなくて…いいのですから」

「え…」

擦り寄っていた愛香の足がピタッと止まった。

「どんなに強く、大きな力を持っていても…一人ではいつか辛くなって、どうにもできなくなる事だってありますわ。でも、そんな時に仲間がいれば、互いに支えあっていけますもの。わたくしたちが、どれだけ頑張って応援しても、それは本当の意味で支える事にはならない……。だから、テイルレッドに仲間がいてくれて、本当に嬉しいのですわ」

「……うん」

想像以上にグッとくる言葉。

言葉を失っている愛香に代わって、俺は(うなず)く。

「会長は本当、熱心にツインテイルズを応援しているんですね」

これだけ、ツインテイルズの事をちゃんと考えられる人は、あまりいないだろう。

会長は俺の言葉に対して、恥ずかしそうにしながら、(うつむ)いた。

「わたくし…実は…この年になっても、まだヒーローに憧れていますの。子供向けの特撮番組を見たり、それに関連する玩具(おもちゃ)を買ったり」

「そうなんですか…」

見た目相応と言ったら、絶対怒られそうだな…でも、なんか会長に親近感が湧くのが不思議。

「あの日も、恥ずかしながら、メイド達の目を盗んで足を運んだヒーローイベントで事件に巻き込まれてしまいましたの」

後になって知ったのだが、あの日マクシームでは特撮ヒーローやアニメヒロインのイベントがあったという。

あくまで、子供向けだが、会長ならあっさり溶け込んでもおかしくないな。

「だから、テイルレッドに助けられた時は…運命を感じましたの」

「う、運命…?」

「ふふ……ごめんなさい、どうしてこんな事を話してしまったんでしょう」

一瞬、震えがした。

会長は助けられた際、間近でテイルレッドを見て、かつ、会話までしている。

まさか正体が……いや、そんな事は。

疑念を捨て、しっかりと感謝を伝えよう。

純粋に、そして真剣に応援してくれる、最初のファン、神堂会長に。

「会長。テイルレッドは会長のように、テイルブルーに対してもちゃんと気を遣ってくれるファンがいる事を嬉しいと思ってる。きっと、心の支えになってるはずですよ」

「ふふ、そうですか、ありがとう。えっと、確かあなた達は…一年A組の観束総二君と津辺愛香さん。……あっ」

何かに気づいたように、会長は俺に顔を近づけた。

「会長?」

「うん。気のせい…ですわね。きっと……ふふ、それでは」

なんだか熱のある声音で(つぶや)き、会長は俺達から離れていった。

……今の意味深な発言は何だったんだ…やっぱりバレてるのかと思ったぞ。

「…会長、やっぱりいい人だなぁ…こんなまともに応援してくれる人いないよ…」

「だよな、ここまで純粋に応援してくれる人がいると、俺も嬉しい」

純粋に応援してくれるファンの存在、それが何よりも頼もしい。

俺は身が引き締まる思いで、愛香と校門へ向かったんだが……目の前には魔窟(まくつ)が広がっていた。

 

「あっ!今テイルレッドが俺に微笑(ほほえ)んでくれたぞ!」

「お前まだそんな次元の低い事をやってたのか……。俺はもうトランクスにテイルレッドを熱転写してやったぜ!!これならいつでも一緒にいられて、学業も(はかど)る!!」

「お前、テイルレッドのbot作っただろ!!俺の方が先に作ったのに!!」

「うるせえ!!俺の方がフォロワー多いんだよ!!それに、そもそもテイルレッドbotが既に全世界で三〇〇〇アカウントぐらいある時点で今更だろうが!」

「うん、じゃあ放課後、映画館でね。テイルレッドたん」((つな)がっていない携帯電話に一人で話しかけている)

 

いや、校門前で高校生が繰り広げる会話じゃないよ、これ……本当に。

「愛香」

「何?」

「…テイルブルーもこんな目で見られたら、俺怒るかも」

「そーじ…」

言えない、愛香とテイルブルーをエロい目で見ていいのは、俺だけで十分だなんて言えない。

愛香が凄く嬉しそうな目でこちらを見てるんですもの。

俺は今日も朝から疲れてしまうのだった……。

 

 

 

 

「テイルレッド!取材をお願いしまーす!!」

「…予定通り、来たな」

今日も今日とて、アルティメギルの刺客を愛香と共に倒した俺。

だが、今日重要視しているのはアルティメギルの事ではない。

テイルレッドとして、マスメディアからの被害を受けた、大切なパートナーの潔白を証明する。

予想通り、俺を報道陣が取り囲み、愛香は蚊帳の外。

「あ、あの。ちょっと話したい事があるんで、言っても良いですか?トップニュースでも一面でもじゃんじゃん使っていただいて結構ですから」

「へぇ~そんな事があるんですか、で、それは?」

息を整え、思い切り言い放つ。

「テレビのニュース、ネットの書き込み、その他諸々……。日本のマスメディア全体に対して…俺は怒ってる!!!!」

「す、凄い気迫ですけど、どうしてそこまで…」

そんなの、決まってる。

お前ら分からないのか。

「俺の、俺の…大事なパートナー……テイルブルーの扱いだ!!何だよ、あれは!!」

怒りに身を任せ、叫ぶ。

言葉にするだけで、怒りは更に激しい物へと変わった。

「昨日の戦いは…俺の方が足手纏いになって、批判されないといけないはずなんだ。なのに、そのピンチを救ったテイルブルーが悪者みたいな扱いにされて、俺はいつも通り可愛い可愛いって言われる………意味分かんねえよ!!!!」

「で、でもテイルブルーは急に現れたので、信用していいか、ちゃんと判断できなかった面も」

「どう見ても味方だろうが!!俺のピンチを救った後、俺を裏切るような行動してたか!?むしろ俺をフォローする行動しかしてないぞ!!」

「…れ、レッド…」

後ろで心配しながら見つめる愛香の姿。

心配するな、俺はお前の評価を正しい物に変えてやるから。

「日本の…いや、全世界のマスメディアに告ぐよ。これ以上テイルブルーをこんな扱いにしたら、俺が許さない。大切な、大切な俺のパートナーを侮辱するような(やから)は、絶対に許さないからな!!!!!!」

力強く、そう叫んだ。

報道陣は沈黙に包まれ、愛香の目には涙が浮かんでいた。

「…うっ…レッドっ…」

「ブルー、なんか言うか?」

「…うんっ…。あ、あの…昨日は…急に…現れたりして、すいませんでした…っ…こ、これからも…ツインテイルズの一員として、頑張っていきますので…応援…よろしく…お願い、しますっ…!」

涙を流しながら、報道陣に向かって話す愛香。

これで納得してくれるか…な。

「…テイルブルー、可愛いじゃん」

「普通に可愛いな、テイルブルーも」

すると、報道陣がざわざわし始める。

何か別の方向に事が進んでいるような。

「ぐすっ…じゃ、じゃあ…今日はこれでっ…」

「え、ちょっ、ブルー!?」

恥ずかしくなったのか、愛香は髪紐属性(リボン)を発動させ、俺をすぐに抱えると、空へ跳んだ。

そして、そのまま逃げ帰るように現場を後にした。

「ごめん…そーじ…あんなに、怒ってもらって…っ」

「いいんだよ、テイルブルーの扱いの悪さ、どうしても許せなかったからさ」

俺の頬に愛香が涙の粒を落とす。

愛香自身、精神的に追い詰められてたのかな、可哀想に。

…少しでも、(なぐさ)めてやるのが夫の役目…だな。

「よしよし……辛かったな、愛香」

「そーじ……大好きっ」

ツインテールを撫でてやると、愛香が笑顔で好きと言ってくれた。

「俺もだよ。愛香」

「そーじ………っ」

「……ん」

変身した状態のまま、俺は愛香と唇を重ねる。

大切な人を救えた、その達成感に満たされながら。

 

 

 

「…よし」

翌朝のニュース、その内容は…

「テイルレッドの発言を受け、全世界でテイルブルーの人気が急上昇しています」

やはり、予想通りだ。

これで愛香も救われ…

「しかし、テイルブルーはいいですね。このたまらなくセクシーな衣装といい、いい具合に引き締まったお尻といい…」

「は?」

やっぱり、変態がいたか……。

朝の報道番組で発言して大丈夫なのか、それ。

つか、あんた、昨日テイルブルーは暴力的な目してるって言ってたおっさんじゃねーかよ!

評価変わりすぎだよ!

「総二様~、テイルブルーの人気がうなぎ登りです。ファンクラブの人数も爆発的に増えてますし、テイルレッドたんと同じようにまとめブログやwikiまで」

そうか、ファンクラブの人数が……それは嬉しい事だ。

作って良かったよ。

「……うん」

「愛香?」

「そーじ、本当にありがとね。評価が良くなって、もう苦しまなくていいんだって思うと、あたし…嬉しい」

「そっか。愛香、また、苦しいって思った時は、遠慮なく言ってくれ。俺はどんな時も愛香の味方だから」

そうしないと、俺の面目が保てない。

愛香に助けられてばっかりだし。

「うん。頼りにしてるね……あなた」

「あ、あなたっ………」

不意にあなた呼ばわりが来て、赤面してしまう。

本当に、慣れないなぁ…。

「おしどり夫婦……(うらや)ましいです」

トゥアールが羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しを向けてくる。

……まだ、罪悪感が消えないな、俺。

「すっかり、夫婦ね。総ちゃんと愛香ちゃん。お熱いこと」

「ふぇっ!?そ、そう…ですかね…お義母(かあ)さん…」

「あ、愛香!?呼び方が変だぞ!?」

まだ結婚もしてないのに、その呼び方は早すぎる。

「……あ、そういえば、全然関係無いですけど、私、陽月学園に転入する事になりました」

「マジで!?」

「はい、まだ先の事ですけど、転入が決まってます」

なんだなんだ、どうして今日も朝がこんなに忙しいんだ。

しかし、トゥアールが転入か。

ここで、また新しい恋ができるといいな。

……いや、待て……会長が危ない。

「!?やだ、こんな時間。そーじ、そろそろ学校行かないと、遅刻しちゃう!」

「えっ!?もうそんな時間なのか!?」

「うふふ、行ってらっしゃい。総ちゃん、愛香ちゃん」

「行ってらっしゃいませ~」

慌ただしい日常が今日も始まる。

 

 

 

「テイルレッドたんの方が可愛いに決まってんだろ!!」

「お前昨日テイルブルーちゃんの泣き顔見なかったのかよ!あれは殺人モノだぞ!!」

「テイルブルーちゃんのお尻に踏まれたい…」

「俺はあの美脚で踏んでもらいたいぜ!!」

そして、今日も校門前は魔窟でした。

 

 

 




レッドとブルーの姿でイチャつかせるのもいいですね、やっぱり。

あ、後、書き終わって思いましたけど、VSマスメディアとか言ってる割には、ネットに何もしてないような。
まあ、テレビのニュースがネットに拡散されれば、問題無いよね!

さて、次回からは1章の最終局面に入っていきます。
ようやく、あの御方の出番です。

では、また次回で。

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