俺、ツインテールになります。lover   作:金細工師

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蛮族成分が控えめ、相坂さんの声が合ってた、など理由は多々ありますが、アニメの愛香は相当可愛かったと思うんです。

原作の愛香も凄く可愛いんですけどね!

さて、6話。
前回の予告通り、青き怒濤が登場です。



6話~そーじのピンチは、あたしが救う~

「おはようございます、総二様」

「総ちゃんおはよう。夜は激しかったわね♪」

「…寝不足だよ…全く…って……ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!」

夜、愛香に色々と搾り取られ、連日寝不足の俺だが、テレビのニュースのせいで朝から絶叫する事になった。

何故かというと、俺の変身した姿、テイルレッドの特集が組まれているのだ。

『名前を教えていただけませんか!』

『え、えっとテイルレッドです…ってちょ、ちょっと押さないで…!』

『お、お姉様と呼ばせてください!』

『どうみても妹でしょうが!……ね、ねえ着せ替えっこしない?…はあはあ』

『いやだぁ~!!変な女の子ばっかり~!!』

女子校生にもみくちゃにされ、涙目になる幼女の映像が朝っぱらからお茶の間に流されるというカオス。

ちょっとテレビ局がどうかしてるんじゃないかと不安になってきたぞ、俺は。

『自分、あの幼女マジリスペクトっす』

今は、ドレッドヘアーにサングラスという風貌をした、スーツ姿の男がインタビューに答える映像が流されているが、こんな男昨日いなかったぞ。

女子校の関係者とか絶対嘘だろ。

『警視庁は今後もこの少女についての情報提供を……』

「日本警察何やってんだよ本当に……アルティメギルの事を調べるのが先だろ……」

世界征服の宣戦布告が出されてんのに、対応が酷い…

「変身すると、本当可愛いわね、(テイルレッド)ちゃん♪」

「うるせえええええええええええええ!!」

母さんがお茶を飲みながらそんな事を言う。

お陰で俺の反抗期が一歩近づいたみたいだけどな!

「総二様、テイルレッドたんのまとめブログやwiki、ファンサイトに考察ページ!ネット上でテイルレッドブームが巻き起こってますよ!」

ノートパソコンを片手にとことことトゥアールが駆け寄ってくる。

「まだ2回しか出撃してないのにどういう事だよ…!」

何をまとめたりする必要があるのか…

まあ、百歩譲ってファンクラブはアリかなと思うけどさ。

更に調べると、海外のページまでもが、テイルレッド一色。

翻訳ページも完成していて、「日本人は未来に生きてるな」とのコメントが。

…俺は過去に戻りたいですよ。

 

「……むー…」

「愛香、何で不機嫌なんだよ?」

登校中、頬を膨らませて、不機嫌そうな顔をしている愛香。

何か気に入らない事でもあったのか…?

「……そーじが女の子の姿で女子校生にベタベタされてたから」

「朝の奴、見てたのか」

だから怒ってたのか…

でも、嫉妬してる愛香も…可愛い。

「ごめんな、愛香。辛い思いさせて」

「…キス、1回」

「え?」

「今日の、いつでもいいから…キスして。それで許してあげる」

顔を赤くして、そう呟く愛香。

何かそのお願いがいちいち可愛いな、本当に。

「分かった。約束するよ」

結局、帰り道で愛香にキスをして、万事解決。

ただ、今日は俺が物足りなかったので、帰ったらすぐに襲おうと考えたのだが、無情にも(エレメリアン)が現れてしまった。

 

 

「何でお前らは毎日毎日律儀に一体ずつ出てくるんだよ!!」

もう、三日連続だ。

こちらが監視されてるのでは、と疑いたくなってくる。

「ああ…やっとお逢いできましたね、テイルレッド……私はフォクスギルディ、リボンに魅せられし者です。以後お見知りおきを」

「覚える気なんてさらさらねーよ!」

フォクス、という名が表す通り、狐のような姿をしていて、シャープな体つきだ。

これまでのエレメリアンが筋骨隆々だったので、なんだか新鮮味を感じる。

「可憐で力強い、そして素敵なリボン。心がとろけますよ」

何か無駄にいい声だな、こいつ。

腹立ってきたぞ。

…まだ、ギャラリーもいないみたいだし、さっさと倒すか。

ブレイザーブレイドに力を込め、必殺の炎刃(グランドブレイザー)を放とうとする。

だが、フォクスギルディはそんな状況でも気味が悪いほど落ち着いていた。

「同胞達が倒されたその剣がリボンより生まれ出でし物だったとは。これは運命ですね」

フォクスギルディは何処からかリボンひもを取り出し、無駄に回転した後、宙に投げる。

そのリボンは俺の側を何回か旋回した後、フォクスギルディの手元に戻ってしまった。

……何がしたかったんだろう。

「ふ、ふぉぉっ!!これまでの力とは……!ぐふぅっ!」

謎のオーバーリアクションからの吐血。

膝を地につくフォクスギルディ。

もう、斬っていいかな、こいつ。

「け、結晶…せよ、我が愛!!」

すると、フォクスギルディの身体(からだ)から属性力(エレメーラ)が放たれ、リボンに注入される。

宙に浮かんでいたリボンが急に停止し、慌ただしく変形を始めた。

「…な…!?」

リボンの先が真っ二つに割れ、テイルギアのフォースリヴォンと同じ形を取る。

え、何このリボン、凄い。

更にこのリボンは変形を続け、マジックのように突然ツインテールが飛び出してきた。

「ええ!?」

ツインテールから頭、頭から体が飛び出し、体から手足も出揃って、立派な人の形が出来上がった……って、ちょっと待て。

「俺じゃねーか!これ!」

フォクスギルディはリボンで俺、テイルレッドの等身大フィギュアを作ってしまったのだ。

しかも、属性力(エレメーラ)が入ってるという事は……

「リボンは結ぶものです。ですから、ツインテールを引き立たせるには無二の存在。あなたのそのツインテール属性…僭越(せんえつ)ながらも、私の属性力で結ばせていただきました」

「俺の力をコピーしてるのか、そいつは…!?」

「いいえ、鏡に映した程度。リボンで作った、ただの人形です。それに、リザドギルディほど強い人形属性(ドール)を持たない私が動かす事などできませんよ」

そうか…リボン属性に、人形属性(ドール)を複合させて使っているのか、こいつは…!

「ですが、外見だけなら…この通りに」

気持ち悪いほど、優しく人形に触れるフォクスギルディ。

その人形が等身大の自分を模して作られている、そう考えると……

「ひ、ひいい…」

鳥肌が立ってきた、怖い怖い怖い。

だが、俺の思いが届くはずもなく、凶行は続く。

「はっ!!」

フォクスギルディは気合いを入れると、フィギュアの手を取り、踊り始めた。

あくまで化け物とフィギュアの(たわむ)れだが、ツインテールとダンスの親和性は恐ろしく高いと思う。

幻覚かな、舞踏会場が見えて……

「いやだああああああああああああああ」

あくまであれは人形なんだ、俺自身じゃない、と言い聞かせる。

だが、それを身体(からだ)が受け付けなかった。

「ふぅ……これ、走ってはいけませんよ、身体(からだ)()き終わっていないのですから、湯冷めしてしまいます」

ダンスを終え一息ついた後、フォクスギルディはダンスとは比べ物にならないほどの妄想をし始めた。

「俺に妄想で何してんだ、お前やめろおおおおおおおおおおおお!!!!」

間違いなく、その言葉から察すれば、妄想の中の俺は裸だ。

もう、精神的に辛い。

「あぁ、せっかくお風呂に入ったのに、アイスキャンディーでそんなにべたべたにしてしまうなんて、いけない子ですね」

「うがああああああああああああ!!」

全てが悪魔の(ささや)きに聞こえ、地面を転がりながら、(うな)される。

『総二様!そんな(まが)い物なんて、さっさと壊してしまえば良いんです!!』

通信で届く、トゥアールの声。

後ろで愛香がキモいって叫ぶ声もするけど、まさか俺の事じゃないよね?

「そう、だな、そうだよ…」

『今こそ…テイルギアの装備…属性玉変換機構(エレメリーション)を使う時ですよ!』

属性玉変換機構(エレメリーション)…エレメリアンを倒すと現れる属性玉(エレメーラオーブ)の力を使えるようにする装備。

手に入れた属性玉(エレメーラオーブ)で、エレメリアンとの戦闘を優位に進める事ができる………かもしれない。

属性力(エレメーラ)で作られている人形なら、初戦で回収した人形属性(ドール)が有効なはずです!』

確かに、あの人形を破壊してしまえば、生き地獄から脱出できる。

しかも、あいつが言った通りなら、リザドギルディの持っていた人形属性(ドール)の方が人形への影響力は上だ。

「でも…は、破壊…」

依然、フォクスギルディは妄想を続けているため、無防備だった。

なんとか、今の内に人形属性(ドール)で人形を狙い、奴を無力化しないと。

「う、うっ……」

だが、俺の目には赤く美しいツインテールが焼き付いていた。

人形とはいえ、(テイルレッド)と全く同じツインテールを持っている。

破壊しないと、いけないのに。

「む、無理だ…!俺にツインテールを壊すなんて…できねえよおおおおおお!!!!」

ツインテールに何の罪があるというんだ。

(まが)い物だとしても、ツインテールはツインテール。

美しさに変わりはない。

「やっぱりあなたは本物ですね」

「な、何!?」

「ただの人形、でもこれをあなたは破壊できない。ツインテールを愛し、最強のツインテール属性を持つが故、あなたはツインテールを滅する事ができないのですよ!」

「く、くそぉっ!!」

『総二様!?』

拳で地面を殴りつける。

無力となった自分が憎い、情けない。

止められる者がいなくなった、死の妄想劇はまだまだ続く。

 

 

 

「どうしようトゥアール!?そーじが、そーじがぁっ!!」

「落ち着いてください愛香さん!……ついに切り札を使う時が来ました」

総二のピンチに思わずトゥアールの肩を(つか)んで、揺らす愛香。

それに対し、トゥアールは落ち着いて答えた。

「切り札………あっ…!」

それは、トゥアールが総二の家にやって来た日の夜。

トゥアールから話された衝撃の事実。

「愛香さん。変身の時です」

「…うん」

トゥアールがあの日、愛香に伝えたのは、愛香がテイルギアの適格者だという事だった。

「愛香さん。これを」

「ありがと、トゥアール。そーじのと、何か違う所とかある?」

「ほぼありません。あの時説明したように使ってください」

「分かった。じゃあ…行くね」

「はい。ご武運を」

青いテイルブレスを受け取り、愛香は地下基地の通路を走る。

先に戦場へ飛び出し、現在ピンチに(おちい)っている大好きな人(そーじ)を守りたい。

愛香はその愛を力に変える。

「待ってて、そーじ………テイル…オン…!」

愛香の身体を青い光が包む。

すると、愛香の肢体は輝き、スーツが形成される。

その光が消えた時、愛香は変身を完了した。

レッドの物より露出度は高いが、より動きやすく、攻撃的なデザインが愛香に似合っている。

出撃用の転送装置に入ると、戦闘が行われている現場近くのビルの屋上に一瞬でワープした。

だが、止まってはいられない、永久(とわ)の愛を誓った幼馴染(そーじ)がピンチなのだから。

愛香は力強く、コンクリートを()った。

「これで、あたしも変人の仲間入り……か。でも、あたしもあたしでそーじに変な事してたし、当然かな」

愛香はまだ考えたい事があったものの、無駄だと判断し、考えるのをやめた。

今は少しでも、一秒でも、早く総二の力になりたい。

「まったく…危なっかしいんだから…でも、あたしが側にいて守ってあげるからね、そーじ!」

愛香は戦場へ急いだ。

 

 

 

「絵本を読んで上げましょう……おやおや、甘えん坊さんですねぇ…よしよし」

その無駄な美声を使った、フォクスギルディの精神攻撃はついにクライマックスを迎える。

あれは偽物、と自分に何度言い聞かせても、奴の強い意志で支えられたツインテールは、とても(まが)いの域で済む物ではない。

また、人形相手に妄想の限りを尽くせる心の力が、奴はとてつもなかった。

目の前にいるのに、俺には物凄く遠くにいるように感じる。

「こんな…奴に、俺は負けるのか…!…?」

地に膝をつき、俺は立ち上がれずにいた。

 

その時、突如何かが降ってきたような轟音(ごうおん)が響いた。

「そこまでよ、変態」

「むむっ!?」

「えっ!?」

何故、自分が呼ばれたと思って振り向いてんだ、俺。

振り向いた目線の先には、蒼い光が見えた。

「え……嘘…だろ…?」

認識攪乱装置(イマジンチャフ)には様々な効果の違いがあるようで、テイルギアに搭載されているのは意識を改竄(かいざん)させる効果に特化した型だとか。

ステルスとしては使えないが、テイルギアの装着者と別の人間をイコールで結べなくする。

だが、正体を知る人間には効果が無いらしい。

つまり、(まわ)りは新しい戦士が現れたぞ、と驚いても、俺にとっては―――

「あ、あい………か………?」

抑え気味の声で呟く。

青いスーツを(まと)った戦士、それは、いつも(そば)にいてくれる最愛の人……愛香だった。

「何者です?」

「あたしは…」

「い、いたぞ!」

「!?」

しまった、戦い長引かせ過ぎてテレビ局のリポーターやらスタッフやらが来ちゃったよ…カメラも回ってるし。

それでも、愛香は気にせず、自分に言い聞かせるように名乗った。

「あたしは……テイルレッドと共に世界を守る、ツインテールの片房…テイルブルーよ!」

そう、強く名乗り挙げた。

戦士として、戦う事を受け入れる為の、通過儀礼というように。

顔の表情には迷いが一切なく、自信に満ち溢れていた。

「おおお……まさか、こんなに素晴らしい仲間がいらっしゃったとは……!命の危機に追い詰められているというのに、胸の高鳴りが抑えられませんよ!」

「しっかし、よくこんな気持ち悪いほどそっくりに作れたわね……この人形…でも!」

愛香は左腕の手甲に装着されたパーツから、薄緑色に光輝く石を取り出した。

属性玉変換機構(エレメリーション)!」

スライド展開すると、一際青く光る窪みが現れ、宙に浮いた属性玉(エレメーラオーブ)がそこにマウントされる。

そして、カバーが閉じた瞬間、愛香の全身が薄緑色の光を放った。

属性玉(エレメーラオーブ)――――――人形属性(ドール)!」

愛香がそう言うと、テイルギアの属性玉変換機構(エレメリーション)が発動した。

すると………

「それはリザドギルディの!」

「おとなしくしててね、人形ちゃん」

フォクスギルディの作り出した、俺の等身大フィギュアが人形属性(ドール)の力によって、存在感を失う。

気持ち悪いほどそっくりだった姿が、マネキンに顔写真を貼っただけというような別ベクトルの気持ち悪さを感じる姿になり、フォクスギルディの強大な妄想も、跡形もなく消し飛んだ。

「そ、そんなぁ!?」

「完全な作戦ミスじゃないの?人形使うぐらいなら、もっと強力な人形属性(ドール)持ってないと、何の意味も無いわよ」

ただこいつらが、回収した属性玉(エレメーラオーブ)の力を使えるという事を知らなかっただけだろ……

そう、心の中で愛香にツッコんだ。

ただ、さっきまでフォクスギルディが行っていた人形による精神攻撃は、俺に対して効果絶大だったのは確か。

穴があるとすれば、このようなイレギュラーの存在を想定していなかった事だろう。

「ほいっと」

すると、愛香は人形の鼻先に鉄拳をぶちこんだ。

勿論、その衝撃で人形はバラバラに砕け散ってしまった。

「ちょっとー!?何やってんだブルー!?」

自分の顔がひしゃげて、崩れ落ちる光景。

夫婦喧嘩にでもなったら、こうなるのかな、俺。

「ばばば、馬鹿(ばか)なぁ!?何の躊躇(ためら)いもなく破壊するなんて!貴女(あなた)の大事な仲間を模した物ですよ!?」

「それが何?あたしの大切な仲間なら、ここにいるじゃない。ね」

不敵に微笑む愛香。

ウインクまで飛ばしたよ。

…………可愛い…………じゃなくて!!

「仲間………か」

大切な、誰よりも大切な愛香を戦いに巻き込んだという意識で、完全に頭が真っ白になっていた。

だが、それは余計な気遣いだったみたいだ。

呪縛(じゅばく)から解放されたように、俺は立ち上がった。

「お、おのれ……なら、ツインテール属性を……テイルレッドより弱いようですが、それでも十分!」

「やらせないわよ!」

左右の鋭利なリボンを弾くと、愛香の両手を水流のような光が(まと)い、(やり)が現れた。

「おお…!」

美しい水のように、輝く三叉の槍(トライデント)―――<ウェイブランス>―――。

愛香の武器は(やり)か。

間違って金槌(ハンマー)とか(アックス)にならなくて良かったよ。

「たとえ、さ。あたしの方が戦いは新参でも…」

完全解放(ブレイクレリーズ)

円柱型に変化した水流が、フォクスギルディを締め上げる。

なるほど、水の戦士だから、オーラピラーも水になるのか。

「うぐううううううう…!!」

「ツインテールは…あたしの方が大先輩なんだから!…喰らいなさい、エグセキュートウェイブ!」

次元を穿(うが)つような強大な刺突。

投げられた(やり)がフォクスギルディの身体(からだ)を貫いた。

「ぐ、ぐあああっ…せめて、最期に夢を……!―――ああ、また服を着ていないなんて、風邪を……お、おお…リボンにそんな使い方が……ぐふふ、ははははははは!!!!」

最期までしっかりと妄想を補完させて、フォクスギルディは爆散した。

……そして、妄想の中で俺が服を着る事も最後まで無かった、多分。

 

「…これで、良いのよね。トゥアール」

青空に充足感に満ちたテイルブルーの笑顔が吸い込まれていった。

あくまで俺の考えだけど、ブルーはトゥアールの思いにしっかり応えてると思う。

役目を終えたランスは消え、大きく伸びをするブルー。

「よし、取材だ!テイルレッドた…ってあれ?もう一人いる!?」

戦闘が終わった途端に、報道陣が一気に押し寄せてきた。

すると、身構えた俺の前に立ち、ブルーは三本指でピースをしながら…

「今日からあたしも参戦するんで、よろしくね!これからは~二人(そろ)って、『ツインテイルズ』ってことで!」

明らかに作ったキャラで報道陣に答えた。

そしてすぐに俺を抱き上げ、空高く跳ぶ。

「おーい!!あれで良かったのかよ!!」

「別にいいじゃん、”絵”は提供できたでしょ?」

ブルーの属性玉変換機構(エレメリーション)が再び発動した。

属性玉(エレメーラオーブ)――――――髪紐属性(リボン)

手に入れたばかりの髪紐属性(リボン)をあっさり使用する愛香。

テイルギアのリボンから更に鋭利なパーツが伸び、翼を形成した。

「すごい。これ空飛べるみたいだよ!」

愛香はカメラに向けた作り笑いとは別格の微笑みを浮かべる。

思わず俺は見とれてしまった。

愛香がいつもより光輝いて見えたからだ。

「どうしたの?そーじ、悲しそうな顔して」

「え。いや…その」

情けない、本当に情けない。

フォクスギルディの精神攻撃に全く抵抗できず、愛香が助けに来ていなかったら、俺はやられていた。

そもそも、愛香を守りたいという思いで戦場に身を投じたのに、その愛香に助けられるとは。

そんなふがいない俺に比べて、愛香はどうだ。

颯爽(さっそう)と現れて、フォクスギルディを撃破。

報道陣にも、負担や奇異の目が俺だけに向かないよう、キャラを作ってまで対応してくれた。

まさに雲泥の差だ。

「愛香……ごめん、俺が頼りないばっかりに…こんな事になっちゃって」

「別にいいわよ。あたし自身で決めて変身したんだから。…それに、あたしだって、あんな変態見てたら腹立ってくるわよ」

愛香の気遣いに、胸が熱くなる。

「そっか……俺、ツインテールと…愛香を守りたいって思いで戦い始めたのに……また、愛香に助けられちゃったな」

「そーじ……あたしね、そーじの事守りたくて変身したの。だから、これからはあたしがそーじの事守ってあげるから…代わりにあたしの事守ってね」

「お、おう。愛香を守れるように頑張るよ」

(ほの)かに顔を赤くした愛香の言葉。

それを聞いて、全身が熱くなる。

「あ、あのさ!愛香」

「なあに?」

「か、帰ったら、さ、時間…とかって、あるか?」

思わず緊張してしまう俺。

そのせいか、喋り方がおかしくなる。

「え、ある…けど?」

「今日は…愛香に助けられっぱなしだったから…愛香のしたい事、してあげたいな…って思って」

「えっ!?…そーじ……」

せめて、愛香にお返しをしなければ。

ただ、言い方が言い方なので、案の定、愛香は顔を赤くしてしまった。

「ええっと、あの、その…ご、ごめんそーじ、帰ってから、しっかり考えても、いい…かな?」

「わ、分かった」

急に言ったから、仕方ないか。

でも、俺は顔を赤くしながら、頑張って考える愛香の姿が(いと)おしくてたまらないけど。

 

 

結局、テイルブルーの初陣を終えた俺達は、基地に帰還する間、ずっとイチャイチャしていた。

 

 

 

 

「な、何なのよこれえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」

 

愛香の絶叫が朝から俺の家に響き渡った。

トゥアールがどうしてこうなった、という感じの表情を浮かべている。

ニュースやネットなどの各種メディアが報じたのは、涙目になってへたり込むテイルレッドの姿。

とうとう、各国首脳からも「あの少女への支援ならば惜しまない」という声が届き、事はさらに大きくなった。

しかも、本来取り上げられないといけないはずのテイルブルーに至っては…

『ほほう、つまり、この青の少女はまだ味方かどうか分からないという事ですか?』

『ええ、今の段階で味方と判断するのは早すぎるでしょう。笑っているのに、暴力的な目をしているのですから』

この有様だ、あんだけ活躍したのにちゃんと見てないのか。

意味が分からない。

『く、くそおっ!』

そして画面が切り替わると、今度は地べたを殴りつけるテイルレッドの映像が映し出される。

確かにテイルレッドのツインテールは素晴らしい。

だが、テイルブルーだって勝るとも劣らないツインテールを持っているはず。

何故ここまで扱いが変わってしまうんだろう。

『しかし、今回もテイルレッドは可愛かったですねぇ、ふひひ』

このおっさん凄い肩書き載せてるのに、反応が変態そのものだ。

試しにチャンネルを変えても、テイルレッドの事ばかり。

「もう嫌…なんでよ……あんなに頑張ったのに、何でこんな扱いされないといけないの…?ネットで4時まで探したのに…」

俺と夜中の2時か3時ぐらいまで一緒にいたのに、あの後ネットサーフィンって、愛香……。

「ネットがダメでも、さすがにテレビなら…って思って見たら……!」

両者一致、という結果だったな…うん。

「テレビも相当酷かったみたいだけど、ネットはもっと酷いのか?」

「そうよ!テイルブルーを絶賛する書き込みをしただけで、『自演乙』ってレスされるし…」

「お、おう……」

「『本人降臨』って(はや)し立てられるし……」

「ま、まあ事実だしな…」

「最終的には動画サイトであたしのIDがNG推奨されるし……あんなに頑張っても誰も認めてくれない…」

一、二時間でどんな激闘を繰り広げたんだ、愛香。

「ちなみに、これがテイルブルーへのコメントの例です」

ノートパソコンを持って、トゥアールが補足にやってきた。

「えーっと……」

・胸が真っ平らなのに、胸元強調するスーツって…マゾなの!? 返信 2

・一瞬、色っぽいと思った。違った 返信 3

・貧乳なのにセクシー衣装で顔面テイルブルーwwwwwwwww 返信 2

……なんだこれ。

スクロールしても、なかなか一番下へ辿(たど)り着けないほどの量が書き込まれていた。

「一応…返信も見てみるか…」

先ほど見たコメントの返信欄を開くと…

 

>胸が平らなのに~

・マゾというより、サドだろ。

・あの美脚に踏まれたい。

 

>一瞬~

・エロいじゃねーかよ!尻とか。

・あの衣装着てる時点でエロい事確定。

・昨晩はお世話になりました。

 

>貧乳なのに~

・貧乳でエロい衣装着ても似合う人は似合う。

・草生える事が理解できない。

 

……あれ?

愛香、ファンがいるじゃないか。

危ない人達ばかりだけどさ。

…特に、昨晩はお世話になったって…何をしたんだよ。

テイルブルーで―――愛香で―――お世話になっていいのは、俺一人で十分だ。

「トゥアール…助けて、あんたの科学力なら…書いた奴の特定ぐらい…」

「頑張ればできますけど……相当難しいです」

トゥアールの力でも特定は困難らしい。

……やっぱり、愛香が見ていて可哀想だ。

誰がこんな事をしたのか。

心の奥深くに溜まっていた怒りが湧きだした。

「!?そーじ!?」

「総二様!?」

「全部……これを作り上げたマスメディアの仕業か…!!」

バン、と机を両手で叩いて立ち上がり、怒りを(あら)わにする。

「こうなりゃ……俺がやるしかない…!!」

 

俺は決心した。

テイルブルーの評価を正当な物に変える為、日本のマスメディアに喧嘩を売る事を。




次回、テイルレッドVSマスメディア 確定
…といっても、少しですが。

愛香LOVEの影響で、かなり変態思考になってしまった総二くんですが、日々独占欲も強い物に。
いいんですよ、そのままらーぶらーぶしてて。

あ、後、意味深な表現が多いのは僕のせいです、僕がそういう表現大好きだからです。
イチャイチャさせるにもいいしね!

さて、次回は…↑と会長の絡みがやれればなぁ…と思います。
オリジナルのテイルレッドVSマスメディアは…うん、頑張って考えますよ。
字数次第で、もしかしたら…あの御方が出てくるかも…


おまけコーナー
「一話一人」~登場人物紹介~(といいつつ、偶数話でしかやってない)


トゥアール
系統 理系残念美少女
その他属性傾向 白衣 ロリ 巨乳 痴女(隠れてきた)
秘密 理想の殿方を日々捜索している事
趣味 発明 映画鑑賞 幼女鑑賞 殿方捜索
特技 『怪しい』発明
好きなもの B級映画 幼女 理想の殿方(まだ見つかってない)
弱点 素は純情で心優しい性格、その為、泣きやすい事。

【追記】
R-18の番外編、俺、ツインテールになります。lover+の連載を開始しました。
こちらもよろしくお願いいたします。

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