なんか、書きたい事書いてたら、1万字を突破してました…
もしかしたら、この小説、1話1話の字数が物凄く不安定になるかもしれませんね、これだと。
後、書き方を変えてみました。ちょっと間が空きすぎて、読みにくいかもと思ったので。
その影響で1話も結構変わってます。
では、気を取り直して2話です
「はい、貴方に大切な用がありまして」
「…大切な…用…?」
突然、謎の女性から大切な用があると言われた俺。
無視をされている愛香は眉間にしわを寄せて、怒っている。
「申し遅れました、私はトゥアールと申します」
「はぁ、トゥアールさん…ね」
名前からして、外国人のようだ。
それにしてはやたらと日本語が流暢だが、一体何処で学んだのだろう。
「ツインテール…お好きなんですか?」
「はい、大好きです」
投げかけられた質問にはっきり「YES」と答える。
アンケートの時と同じかそれ以上の条件反射だったような気が…
初対面の女性に対してこの反応と、やっぱダメだな、俺。
「…では、この腕輪をつけていただけますか?」
「いやそれはおかしい」
突然、トゥアールと名乗る女性は、白衣のポケットから腕輪を取りだし、手渡してきた。
しかも俺に対して、つけてくれと言ったのだから、唐突過ぎてツッコまないわけにはいかない。
すると、トゥアールが今度は着けていたアクセサリーを俺の手に握らせ、手の甲を指でなぞってきた。
その行為に思わず、顔が赤くなる。
「さ、もういいでしょう?つけてくださいよ」
「そーじ、返しなさい!」
完全にアウトオブ眼中だった愛香が腕輪を俺の手から奪い取り、押し返した。
「あんた本当になんなの!?そーじに突然絡んで、変な事して…!」
「いえ、決して不審者とかではありませんよ?」
「その行動自体が不審者なのよ!分かんないの!?」
初対面でも容赦無しが愛香スタイル。
うん、確かにトゥアールは不審者丸出しだから、警察に引き渡した方がいいかもしれない。
「えっと…あ、そうだ―――総二君、私よ、私」
「は?」
何故かいきなりフレンドリーな口調になる。
新種のオレオレ詐欺か何かか。
「私、そうトゥアールよ。トゥアール。ちょっと困った事になっちゃって、その腕輪つけてほしいのよ―――ね、お願い」
やたらと胸の谷間を強調させているが、そんなに強調されると逆に引く。
「…えっと…」
「対面してんのにオレオレ詐欺とかあんたバカじゃないの!?」
「ふぐぅ!」
愛香も俺と全く同じ事を考えていたらしく、トゥアールの頬に平手打ちを叩きこむ。
いや、ちょっと待て。
「愛香お前何やってんの!?いくら不審者とはいえ、初対面の人間に平手打ちとかおかしい!」
水影流柔術。
愛香のじいさんが教えていた武術を完璧に受け継いだ愛香は、普通の平手打ちでも頬骨に凶悪な痛みを与える位の力を持っている。
それを初対面の一般人にかますとは、常識外れだ。
「そーじ!騙されちゃだめよ!こいつどう考えても詐欺師よ詐欺師!ついて行ったら、変な不良に絡まれるのよ、きっと!」
「いや、後半なんか変だったぞ!?」
今の愛香の脳内はどうなっているんだろうと気になった。
頬を強烈に叩かれたトゥアールが
「お、おい。大丈夫か?愛香、加減知らない事があるからさ…」
バチンと凄い音が鳴ったのだから、なおさら痛いに決まってる。
「え、あれでも手加減したのに…」
愛香も一応心配している様子だった。
だけど、お前の感覚どうなってんだよ。
考えるだけで恐ろしいぞ。
「へ、平気です…」
「無理しなくてもいいぞ…?」
俺は心配しながら、トゥアールに向かって手を差し出す。
その直後、愛香がその手をがっちりと握って止めた。
「愛香どうし…あ」
「そーじ、油断しちゃダメよ」
トゥアールはこっそりと隠し持っていた腕輪を俺につけようとしていた。
…そこまでして俺につけたいのか。
とても気味が悪くなり、俺は彼女と距離を取る。
「お代なんていりません!せめて、せめてつけてさえくれればいいんです!!だからっ…だから、つけてください!ならば私がおつけしますから!」
意味深な言葉に、ふと脳裏をある物が過ぎていったが、声には出したくないのでスルーする。
「そーじ、信じちゃダメ。絶対何か裏があるのよ、こういうのには」
愛香が騙されないように注意を促してきた。
本当に頼れる―――!愛香さんカッコイイ、さすが俺の彼女だー!
普通なら、愛香と俺の立場逆にならないといけないんだけどな…うん、考えといて悲しい。
「な…ならっ…私、つけてくれたら…何でもしますっ!!」
「なっ!?何でも…だって!?」
脳裏に彼女の銀髪をツインテールにしたら、といういつもの妄想が浮かぶ。
これは…治らないかもしれない。
「はい、私に何をしてもらっても構いません。王道でもちょっと特殊な感じでも…むしろ特殊なのでしてほしいくらいですよ…!!…はぁはぁ…」
顔を赤くして、息を荒げながらこちらへ近寄って来るトゥアール。
「こ、怖っ!人種違うだけでこんな意思疎通って難しいのか…!?」
ふと思った事を口にする俺。
近づいてくる白い悪魔、というより変態が恐ろしくて仕方ない。
「そーじが考えてる事なんて、どうせあれでしょ。言っても無駄よ。そーじはツインテール馬鹿だから、何しても良いって言ったら、真っ先にツインテールの事を考えるから」
「ええっ!?思春期真っ只中の男の子なのに!?」
確かにツインテール馬鹿だけど、最近はツインテールの事ばかり考えているわけでもない。
愛香の事を考える時間が増えている。
まあ、何をしてもって良いって言われたらツインテールの事を考えるけどさ…
「またまた…じゃあこの辺をがばーっといっちゃってくださいよ、さあ、さあ!」
また大きな胸を強調してくる。
そろそろパターンが切れてきたのだろうか。
「離れなさいよ変態!また痛い事されたいの!?」
愛香が戦意むき出しになっている。
そろそろ本気でまずいかもしれない、このままだと。
「愛香落ち着け!!―――分かった、貰えばいいんだろ?」
とうとう俺は折れて、腕輪を受け取る事にした。
愛香を落ち着けないと、トゥアールの身体への影響が心配だ。
「はい!」
受け取ると言った途端にぱーっと笑顔になるトゥアール。
ちゃんとしてれば美少女なのに、どうしてこうなのか―――もったいない。
「そーじ、ダメよ!
「お前それスーパーの試食とかでも言えるのか!?」
愛香に対して、おかしなツッコミをする。
もう自分の考えている事すら、分からなくなってきた。
「この方が腕輪を付けないと世界が滅んでしまうんです!後、スーパーの試食は
「何でそこに食いつくのよ!!あんたの価値自体が
彼女達の会話も意味不明だ。
だけど、ちょっと気になる言葉があったような。
「っていうか…これをつけないと、この世界からツインテールが消えて無くなってしまいます!!」
「んなっ…!?」
今、トゥアールは何と言った?
この世界からツインテールが消えてなくなる…?
一体何の冗談だ。
愛香のツインテールまで無くなったら、俺はどう生きていけばいいのか。
ずしりと重い、強烈な言葉に、思わず俺は彼女に近づいてしまった。
「どういう事だよ、説明しろッ!!」
「えい」
「あ」
完全に隙を突かれ、腕輪を手首につけられてしまった。
振り解こうとしても、その大きな胸が押し付けられ、しっかりロックされている。
そのせいで、振り解けない。
「…これで…あいつらが攻めてきても、大丈夫です」
安堵の表情を浮かべるトゥアール。
ただ、胸を押しつけたまま、潤んだ蒼い瞳で俺を見上げてきたので、理性がヤバい。
いや、負けるな観束総二、俺が一番愛してるのは愛香だろ、何を勘違いしているんだ。
「早く外して捨てちゃいなさいよ!!」
すると愛香が俺の首を掴んで、トゥアールから無理やり引き剥がした。
少し痛いけれど、なんとか助かったから良しとしよう。
サンキュー愛香。
「う、ううっ……外れないわ…これ…!」
「い、いだだだだっ!!愛香無理に引っ張るなよっ!!」
どうにか外そうと頑張ってくれている愛香には悪いが、物凄く痛い。
特に愛香の場合はトゥアールと違って、クッションが無い分、痛みが強くなっている。
クッションが何なのかは―――察してほしい。
それでも、それでも…クッションが無かったとしても、愛香のが一番好きなんだが。
「っていうか、これ本当におかしいぞ…何で継ぎ目が無いんだよ…」
恐らくこの腕輪は金属製なので、継ぎ目ぐらいはあると思っていたが、それらしき物が全く無い。
一体トゥアールはどうやってこの腕輪をつけたんだろうか。
仕方がないので、つけた本人に外してもらおう。
そう思ってトゥアールに話しかけようとした時だった。
「悪いけど、やっぱり外してく…えっ!?」
俺と愛香は謎の閃光に包まれる。
そして、俺達の体は徐々に薄くなっていく。
やがて完全に姿を消した。
「驚かせてすみません。しかし、見てもらった方が早いと判断しましたので」
「え、なんだこれ!?」
閃光が収まると、目の前には煙が立ち上がっていた。
「いつの間に俺達外に…っていうか、何でここにいるんだ!?」
俺達がいるのは『マクシーム宙果』という、地元最大のコンベンションセンターだ。
イベント、ライブ、学校の行事等、沢山の事に使用されている。
だが、俺の家からは自動車を走らせても、ここへは20分以上かかるのだけれど―――。
何故ここまで来れたのか。
「予定より早い…迎え撃つつもりだったんですけど…」
困惑している俺達をよそに、トゥアールは冷静だった。
だが、その言葉を聞く限り、予想外の展開になっているようだ。
「もっと早く行動するべきでしたか…」
トゥアールは手に持った謎の棒を見つつ、落ち込む。
あの棒に何かさっきの光のような力があるのか…?
「あんたさ、一体何をしたの!?」
「いや、総二様だけしか飛ばす必要無かったんですけど…偶然範囲内にいたので…」
また危なっかしい雰囲気になりそうだったが、轟音がそれを防いだ。
「!?何だ!?」
すると、目の前に恐ろしい光景が広がっていた。
駐車場に停車してある自動車がどんどん宙に舞い上がっているのだ。
そして地面に叩きつけられて、炎上。
異様な光景を目の当たりにした俺達はその光景を信じる事が出来なかった。
「嘘だろ…こんなの…」
「総二様、あまり離れないでください。認識攪乱の効果が切れて、見つかってしまいますよ」
「にんしきかくらん?なんだそりゃ」
「私の傍にいれば、効果が切れる事はありません。それよりもあれを見てください」
認識攪乱という難しい用語に頭を捻りながらも、トゥアールの指差す方向を見る。
そこには、とんでもない物がいた。
「んなっ!?」
「な、何よあれ!?」
二足歩行をした竜のような怪物が立っていた。
身長はだいたい2m前後だろうか、かなり大きい。
最初はてっきりヒーローショーの敵役か何かなのだろうと思っていたんだが…
改めて見ると、生命を感じる。
「者ども、集まれい!!」
「何だ!?」
薙ぎ払うかの如く、邪魔な自動車を吹き飛ばす怪物。
そして、何故かはっきりとした日本語で集合の合図を言う。
声も出せず、呆然と見つめる俺と愛香とは逆に、自信満々といった感じで、怪物は更に叫んだ。
世界を終焉にもたらす、一言を。
「ふははははははは!!!!この世界の生きとし生けるツインテールを…我が手中に収めるのだ!!!!」
「何言ってんだこいつううううううううううううううううううううう!!!?」
目立つほど大きな声で変態発言を発した怪物に思わず全力でツッコんでしまった俺。
あんな変態発言、クラスメイトの中心で愛を叫んだ、さすがの俺でもする事は出来ない。
「そーじ……ほら、あんたの仲間よ」
「いや違うぞ!?そもそも人間じゃねーし!!」
怪物の周りに、戦闘員らしき黒い生き物がわさわさと湧いてくる。
「モケェー!」
不思議な声を上げる戦闘員。
まあ、昔よく観てた戦隊物でも、こんな感じだったか。
だが、それよりも、そのうちの何体かが女の子を捕まえているのが、許せなかった。
「くそ…捕まってる女の子―――みんなツインテールじゃねえか…!!」
「あいつら、あんな罪の無い子達捕まえて何するつもりなの…!?」
滲み出る怒りを隠せない俺と愛香とは違って、トゥアールはただ冷静に状況を分析していた。
「それにしても…この世界はツインテールが少ないものだ……石器時代から文明が止まっているのでは無いだろうな!」
あの怪物は何を言っているのだろう。
日本語のはずなのに、意味がおかしいので理解できない。
「まあいいわ、そのような世界だからこそ、純度の高いツインテールを見つけた時の感動は計り知れないものよ…」
怒っているはずなのに、何故か嘆く怪物。
「者ども、隊長の御言葉を忘れるな!極上で究極のツインテール属性はこの辺りで感知された。何としてでも見つけ出すのだ!!…兎のぬいぐるみを持って泣きじゃくる幼女は、あくまでついでだが!」
「モケー…」
「何!?まだそんな事を考えていたんですかだって!?馬鹿を言うんじゃない!あくまで究極のツインテールを手に入れるのが私達の使命。だが、ぬいぐるみを持った幼女も最高ではないか!見つけた者には褒美をやろうぞ!」
聞いていて非常に痛々しい会話だった。
内容が色々と酷く、聞いていて悲しくなってくるほどに。
「大人には用は無い!幼女を集めるのだ!早く見つけ出せい!」
黒い戦闘員達は命令に従っててきぱきと動く。
そう考えると、あの怪物、統率力はやっぱりあるな。
「モケー」
「何、幼女がぬいぐるみを持っていないだと!?ならば持たせてやるのが男の甲斐性よ―――連れてまいれ!」
指示…と呼んでいいのか分からない言葉だが、多分指示なのだろう。
すると、小さな女の子が怪物の前に連れられてきた。
「たすけてぇ!!!!」
大きな声で泣きじゃくる女の子を見ていて我慢が出来なくなり、思わず飛び出した俺 だったが、腕を愛香に掴まれ、止まる。
だが、止められた事で異常事態に脳が追いついてきた。
「そーじ、落ち着いて!今飛び出したら、そーじが危ないわ!」
「で、でも!……しかし、ツインテールの女の子ばっかり攫って…何するつもりなんだ…」
怪物達は攫った女の子に対して、あやす為にかぬいぐるみをあげている。
なので、落ち着いてきた今は様子を窺う程度で良いのだが。
「なぁトゥアール、お前はこれを知ってて、俺達をここへ連れてきたん…」
言葉の途中で、目に入ってはいけない物が入ってしまった。
だが、その輝きは間違いなくその人の物だ。
「会…長!?」
「う、うそでしょ…会長じゃない…!」
後にも残る『愛香のツインテール部事件』を引き起こした元凶であるツインテール。
偉大な生徒会長、神堂慧理那が戦闘員に連れられてきたのだ。
体育館ではメイドさんがひっそり見守っていたが、今はいない。
大事に持つ買い物袋には、何故か特撮物の玩具が見え隠れしていた。
「離しなさい!!」
きりっとした強い口調で言い放つ会長。
怪物はそんな事も気にせず、ただただ、会長の体を見つめる。
「うむ……!!なかなかの幼子だ。しかもお嬢様だな、この子は!お嬢様ツインテールとは素晴らしい!!貴様が究極のツインテールか!!!」
「貴方、日本語が理解できますのね……!他の子達を解放しなさい!!」
「ああ、理解できるとも。だが、それはできぬ相談だ」
「何故ですか!貴方達は一体何が目的でこんな事を!」
「いずれ分かる!まずは物のついでよ……」
何故かやたらと馴れ馴れしい軽さで怪物は会長に大きなぬいぐるみを渡す。
「うむ。貴様には猫のぬいぐるみがよく似合う!その敵意をむき出しにした腕白さ、悪くない!!」
戦闘員共がどこからかピンクのソファーを持ってきた。
そして、そこにぬいぐるみを持った会長を座らせる。
「お前達、この光景はしかと目に焼き付けよ!ツインテールとぬいぐるみ、そしてソファーにもたれかかる姿!俺が長年の修行で編み出したこの黄金比率、なかなか見れぬぞ!」
「「「モケケー!!!」」」
謎の歓声を上げる怪物と戦闘員達。
聞いていて、
「とりあえずツインテールの子を狙ってるんだな…なら…俺はどうすればいいんだトゥアール。俺に何かできる力があるんだろ?」
「詳しい話は後で、まずは行動する事が先決です」
湧きあがる怒りを必死に抑える俺とは違い、冷静を貫くトゥアール。
この状況で落ち着いていられるのは凄いな。
「総二様、まず私の服を脱がせてください。っていうかこうやぶ」
「馬鹿かお前はあああああああああああ!!!?」
「…そーじ、声が!」
前言撤回、トゥアールはやっぱり馬鹿だった。
思わずまた叫んじまったじゃねーか、くそっ!
愛香を巻き込みたくないのに…!
「ん!?別のツインテールの気配…何処にいる!!」
(気配だって!?)
筋金入りのツインテール馬鹿の俺でもできない事を奴はできるのか。
そして、横にいるツインテールの恋人に目をやると、とても不安な顔をしていた。
「あたし―――どうなっちゃうの…?」
「愛香―――」
愛香が捕まったら、俺はもう生きていけない。
生きる気力も湧かないだろう。
これまで守られた分、精一杯守ってやりたいのが俺の本心だ。
「何処だ!!!!何処にいる!!!!」
物凄く近くにいるはずなのに、こちらに全く気がつかないのは何故なのだろう。
その時、ふと店で聞いた事が頭を過った。
にんしきかくらん…だったか、そんな事を言っていた気がする。
「ぐっ…慣れないシリアスで溜め込んだのに…!シチュエーションも脚本も…これじゃ面目丸つぶれですよ…!!」
何を考えていたのか、トゥアールがよく分からない事を話している。
そして、恨めしそうな目で愛香を睨みつけた。
「トゥアール!脱線しないでさっさと教えてくれ!!あの人達を助ける方法があるんだろ!?」
怒りと同時に焦りが出てしまい、思わずトゥアールの肩を掴む。
「あんっ…総二様、はげしっ…」
何故か艶のある声を上げられた。
さすがにこれは意味が分からない。
「い、今なら軌道修正ができます…!!さあ総二様そのまま私を壁に押し付けて服を!」
「脱線すんなって言っただろ!?」
「…あたしがツッコむ必要無いわね、これ」
俺は脱線するトゥアールに、さっさと説明してほしいので、強い口調で叫ぶ。
愛香が隣で嘆いているが、むしろツッコんだらトゥアールが死ぬと思うのは俺だけか。
「わかりましたよう…時間も確かに無いので、端折ります。では…!総二様!!その腕輪で変身してください!」
「は!?変身!?」
「さっきまでの行動どんだけ端折ったらそこに辿り着くの!?」
トゥアールは愛香の声に耳を傾ける様子が無い。
「実を言うと、その腕輪は戦闘用のスーツを形成する為のデバイスなんです。ですから、変身すればあの怪物とも戦えます!」
「それを早く言ってくれよ!!」
これで変身すれば、世界中のツインテールを、そして、愛香を守る事ができる。
一挙両得じゃないか。
「ちょっと待ってよ!なんでそーじがそんな危ない目に遭わないといけないの!?」
「すまん、愛香。俺は…ツインテールを守りたいんだ!―――それに、愛香の事だって…!」
「え!?―――そーじ…」
最後の方は声が小さくなったが、しっかりと愛香には聞こえていたみたいだ。
顔を赤くした愛香を見れば分かる。
「ツインテールへの愛が溢れている総二様だからこそ、この腕輪で変身できるんですよ。たとえ、正義感が無かったとしてもです」
「いや、普通に女の子を救おうと思ってるんだけど…」
「!?そーじ、あれ!!」
「え?」
愛香が突然叫んだ方向を見ると、何やらツインテールにした女の子達が謎の輪を通らされていた。
しかも、その輪を通ると、あろうことかツインテールが解けてしまっている。
たった今、神堂会長も通らされ、高貴で麗しいツインテールが消え去った。
まさか…これがさっき言ってた『ツインテールを我が手中に収める』の意味なのか…!
「あ、い、つ、らぁぁぁ!!!!!!」
その光景を見て、これまでに無いくらいの怒りが湧いてきた。
ツインテールを奪われるなんて、されてたまるか。
「総二様、落ち着いてください。まだ助けられますから…!」
「教えてくれ、トゥアール…!俺はどうしたらツインテールを助けられる…あいつらをどうやったらスクラップにできるんだ…!!」
「大袈裟じゃない…?何処も怪我はしてないみたいよ」
「大袈裟だって!?」
思わず怒りを愛香に向けてしまう。
愛香の胸倉を掴み上げ、ゆさゆさと揺らして思いをぶつけた。
「愛香にとって…ツインテールはその程度の物だったのか!!取られても仕方ない物だったのかよ!?」
「そーじ落ち着いて、また気付かれちゃうから…」
「はっ―――ごめん、愛香」
珍しく愛香が弱々しい声で話してきたので、頭が少し冷えた。
でも―――やっぱりこれだけは伝えておこう。
愛香にだけ聞こえる声で、そっと話しかけた。
「愛香」
「な、何?」
「さっきも言ったけど、俺は…愛香の事だって守りたい。大好きなツインテール…いや、大好きな恋人を失いたくない…だから、危険だけど―――俺はあそこへ行く」
「そっか―――あんた自身にそう言われちゃ、もうあたしも止められないわ。絶対、無事に帰ってきてね。あたしの大好きなそーじ」
愛香はトゥアールが見ていないのを確認すると、俺の頬にそっとキスをしてきた。
思わず、顔が熱くなってしまう。
勝利の女神のキスを受け、俺は改めてトゥアールの方を向いた。
「トゥアールも怒鳴って悪かった。それで、どうすれば変身できるんだ?」
「心の中で念じるだけです。そうすれば、変身できます」
「意外と単純なんだな。でも、それなら…!」
右腕につけられた腕輪を胸の前にかざす。
そして、強く念じた。
変身したい、会長や捕らわれの身となった女の子達を助けたい、ツインテールを取り戻したい、そして…愛香を守りたい。
その為に、あいつらを倒す力が欲しい。
そう、強く念じる。
意外にも、あっさりそれは現実の物となった。
総二の変身が始まった直後、愛香は思わず目を塞いでしまった。
一際強い閃光が走り、辛うじて見える人型も変化する。
各部位にスーツが構成され、総二は変身を完了させた。
「す、すげー…マジで変身したのか―――って、顔剥き出し…!?」
「心配は御無用です。
「イマジン…?」
「正体がバレるような事はありませんので、安心して戦ってください!」
「そ、そうか!じゃあ、行ってくる!!」
総二は髪を
その直後、愛香はようやく目を開ける。
「ん…そーじ、変身できたんだ―――絶対、帰ってきてね…そーじ」
手を組み、強く祈る愛香。
ただ、一つだけ気になる事があった。
「ねぇ…トゥアール…さん、だっけ?」
「はい、何でしょう?」
「さっき、ここら辺にあたしたちとは別の女の子がいなかった…?」
「う、うおお、足取りが軽い…逆に軽すぎてっ、危ない!」
強化された脚力のせいで、幾度となく躓きそうになる。
使いこなすのには時間がかかりそうだ。
『意識を集中させてください総二様、そのスーツ…テイルギアは装着者の精神力で構成された武装です。なので、意志をしっかりすれば思い通りに動かせます!』
何も着けていないのに、耳元からトゥアールの声が聞こえる。
「意志…か!」
自分の足に対して意識を集中させた。
すると、先ほどまで躓きそうになってばかりだったのが、しっかりと大地を踏みしめ、走れている。
邪魔をする瓦礫を蹴り壊しながら駐車場を進んでいくと、アスファルトの上で気を失っている少女が見え始めた。
「今、助け出してやるからな…!」
罪もなく奪われた、君達の大切な―――
「ううむ…素晴らしい…このツインテールなら隊長殿もきっとお喜びになるだろう!…しかし、まだ上がいるかもしれない…ううん…」
怪物の近くまで来ると、声が聞こえた。
会長を
いや、そんな事はさせない。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「むっ!?」
叫びながら、猛スピードで怪物に突進する。
外れたものの、脚に意識を集中させると、ストッパーのような物が出て、無事に止まる事ができた。
しかし、トゥアールはどうしてこんな凄い物を作れたのだろうか。
不思議で仕方がない。
…いや、それよりも、まずはツインテールを救わなければ。
「おい、化け物!この人達のツインテールを返せ!」
「な…な…これはっ…」
「聞こえてんのか!?てめえが奪ったツインテールを返しやがれ!」
溜まりに溜まった怒りを全身全霊ぶつける。
ツインテールにするだけで、不幸な目に遭うなんて理不尽すぎる話だ。
『ツインテールを奪う』など、もっての外。
これがきっかけで、ツインテールをやめる人が増えて、ツインテールが減っていくのを、俺は見たくない。
だから、こいつらを…倒す!!
「ぐ、ぐううっ!!!ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「な、何だ!?」
突然、怪物が宙を舞った。
そして地面のアスファルトに顔面をぶつける。
一体、何が起きたのか。
「ぐ、ぐううう…あまりに強大な幼気に吹き飛ばされてしまったか…しかし、何と見事なツインテールだ!!」
「…はぁ!?」
「隊長殿の予感は的中していたのか…!先程の娘でも足元に及ばぬ、究極のツインテールは…お前だな!!」
「究極のツインテールって…」
何かがおかしい。
怪物の言葉には違和感しかなく、
「…あれ…?」
そういえば、さっきからやたらと視界が低いような。
手が小さく見えたような。
全身から、冷や汗が出てくる。
とりあえず、近くにあった自動車のフロントガラスに恐る恐る、姿を映してみた。
すると…そこには…
「え―――!?」
可愛らしい女の子の姿が映っていた。
しかも、真っ赤な髪をツインテールにしている、とても可愛い子だ。
「お、おお…」
膝下まで伸びた綺麗なツインテール。
くりっとした愛らしい瞳。
ツインテールに合わせてゆらゆらと揺れるリボン状のパーツ。
赤と白を基調とした、不思議な防護服に身を包み、その上には武装が施されていた。
そして、下半身は頑丈そうな腰当が左右に着いているものの、股間部は水着や下着のように太股が露出している。
まさかと思い、胸と股間を触ってみると、胸こそ平坦だが、あるはずの物が無い。
愛香にお世話になった事もある、例の物が消え去っていた。
「え、え…?」
ようやく気付いた事で、浮き彫りになる高い声。
このガラスに映った美少女は―――間違いなく、変身した俺だ。
「お、女になってるじゃねーか――――――!!!!」
もう、叫ぶしか無かった。
家の共同PCで書いているせいで、PCが使える時間が限られ、かつ、夜の作業なので眠気にも襲われる…
何処かミスって無いか心配です。
まあ、直せばいいんですけども…
次回ようやく初陣…長かったなぁ…
おまけコーナー
「一話一人」登場人物紹介~
観束総二
系統 熱血ツインテール馬鹿
その他属性傾向 恋愛
秘密 愛香へのプロポーズの仕方を日夜考え続けている。
趣味 ツインテールの空想 愛香での妄想
特技 今の所無し
好きなもの 愛香 ツインテール
弱点 ツインテールが好きすぎて、たまに暴走する(その矛先は愛香)。
原作との大きな違いは愛香と付き合っている事。
総二は愛香を守る事ができるのか、はたまた……