俺、ツインテールになります。lover   作:金細工師

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俺ツイのオールナイト上映会に行ってきました、楽しかったです。
原作ファンの中では黒歴史と化しているアニメですが、正直俺はどっちも好きです。
終わった後にシープギルディにやられたかの如く、睡魔が襲ってきました。

でも、赤面しながら、地面で悶々とするブルーとイエローが見れたり、夢先生からサインを頂いたりしたので、大満足です。


では、本編どうぞ(唐突)



14話~メイドと彼氏の苦悩、時々項後~

「はぁ…」

神堂家に仕えるメイド、桜川尊は大きく溜息をついた。

目線の先には、彼女の護衛対象であり、尽くすべき主である神堂慧理那が、笑顔でレジに並んでいる。

土曜日の早朝からこのショッピングモールの玩具店のテナントには、整理券を持った客がごった返していた。

ゴールデンウィーク直前の週末という事もあり、需要が増えるこの時期を狙って、各メーカーが新商品を投入してくる。

パワーアップアイテムや新ロボットなどが発売され、子供にせがまれた親御さんやコアな特撮ファンによる熾烈な争奪戦が繰り広げられるのだ。

ちなみにこの全国チェーンのショッピングモールは独自の店舗購入特典を配布しており、慧理那がここを選んだのもそれを狙っていたからという単純な理由なのだが、それを尊が知る由もない。

「お嬢様、買い物なら私に任せていただければ…」

慧理那に向け、何度も言った言葉を、改めて口にする。

そして、慧理那もまた、いつものように返してきた。

「いいえ、尊。自分で買うからこそ、愛着が湧くんですよ」

メイドである自分が、主人の趣味にとやかく言うつもりは全くない。

むしろ、学校で生徒会長として、そして神堂家の跡取りとして肩肘張った生活を送っている慧理那が、一つでもなりふり構わず熱中できる物があるのは、嬉しく思うほどだ。

だが、アルティメギルがこの世に現れてから、慧理那はもう何度も身を狙われている。気軽に出歩くのは危険だ。

さすがにずっと屋敷へ閉じこもってくれと言うのは酷だが、こういったちょっとした用事―――買い物は自分達に任せてほしいというのが本心。

「お嬢様はツインテイルズに心酔してしまっているからな…」

無理もない。ヒーローに対して強い憧れを抱く慧理那の前に、本物のヒーローが現れたのだ。舞い上がりもするだろう。

危ない目に遭っても、ツインテイルズがきっと助けてくれる、そんな絶対的な信頼がある。

それは、護衛を請け負う自分にとって、とても複雑ではあるが、実際、テイルレッドはことごとく慧理那を救ってきた。

しかし、尊にはある懸念があった。

「まさか―――お嬢様はそうなるためにわざと危険を望まれているのでは…」

尊は片時も慧理那を目から離さないようにすると同時に、目端に映すように行き交う男達も観察していた。

チャラチャラしている大学生の集団、スーツ姿の根暗そうな男性、一際目立つ赤い服を着た猿顔の一般市民。

それから一応、玩具(おもちゃ)をせがむ子供達、玩具屋で焼肉をせがむ同年代も。

ライフスタイルが変化し、結婚適齢期という言葉が薄れて久しい昨今ではあるが、それでも一度は、誰もが結婚に焦る時期はあるものだ。

二八歳。桜川尊、最終決戦(クライマックス)の予感――――――。

他の誰よりも、一刻も早く結婚したいと願う彼女にとって、人間観察は婚活に等しい。隙さえあれば、未来の旦那探し。それが日常。

もっとも、職務は結婚願望を差し置いての最優先事項だ。耳に着けたレシーバーに受信を告げるノイズ音が走った一瞬で、彼女はプロの顔に戻る。

『メイド長!今すぐお嬢様をお連れして逃げてください!!』

部下であるメイドの叫び声が聞こえ、尊は瞬時に駆け出した。

何があったと聞き返すまでもない。

「お嬢様!」

「尊?どうしたのです?」

ちょうど会計を終え、レジを離れた慧理那をお姫様だっこの要領で抱え、脇目も振らずにフロアを駆ける。

あっという間に階段に辿り着いたが、それでもエスカレーターを駆け下りるのでは遅い。

ならば―――

「お嬢様、舌を噛まないように注意して下さい!」

子供並の体重とはいえ、人一人を抱えたまま、階段を飛び降りる。

三階なので踊り場を含めて四度。超人的な体術を披露しながら、一階に降り立つと息も乱さずに再び走りだす。

その健脚を存分に発揮し、尊は一直線に出口へと向かう。

丁度良く開いていた自動ドアへ身体を滑り込ませるようにして店から外に出て、駐車場に出た時、尊は一歩遅かったと歯噛みした。

「くそ…!先回りされたか!」

これまで何度も目にしてきた、黒ずくめの怪人達が立ちはだかり、甲高い奇声を上げる。

「モケー!!」

「モケケー!!」

「モケモケモッケー!!」

そして、その後ろから、直立した真っ赤な蟹のような怪物が現れた。

「ほほう、これはなかなかどうしてハイポテンシャルな幼女だ。これだけのツインテール属性を持つ以上、”あれ”もさぞや素晴らしかろうな!!」

「またか、化け物め!!」

ツインテール属性。

その理屈は分からないが、この怪物達が慧理那のツインテールを目的に襲ってきているのは、もはや明らかだった。

本来なら、髪型を変えさせるのが手っ取り早く、安全なのだが……神堂慧理那にはどうしてもそれができない理由がある。

とても、歯痒かった。

「我が名はクラブギルディ!!ツインテール属性と共に存在する麗しき属性力、項後属性(ネープ)を後世に伝える為に日々邁進する探求者!」

「ネープ…うなじ!?」

またこれか。化け物でありながら、何故いつも俗な事を口にするのか。

外で待機していた部下のメイド達が、尊の元へ一斉に駆け寄ってきた。

「慧理那お嬢様を早くお連れしろ!ここは私が食い止める!!」

尊は部下に慧理那を引き渡すと、怪物と向き合った。

「ほう、妙齢の女性、お主もまたツインテールを嗜むとはな!」

「妙齢…だと!?ふざけるな化け物め!!」

ウェーブのかかった髪を頭頂から背中に落とすように纏めたツインテールは尊の活発さを象徴するかのよう。

ただ、怪物が口にした通り、今年で二八歳になる尊には色々思う所もあるのだが、この髪型は神堂家に仕える誓いを立てたその日から今日まで、一度も変わっていない尊の誇りだ。

そんな誇りを馬鹿にされたのだから、怒りが込み上げるのも当然だった。

「貴様如きに品定めされる筋合いは無い!!」

ただ怪物に向かって怒りを露わにし、尊は戦闘態勢を取る。

「いつもお嬢様を危険な目に遭わせおって、もう我慢の限界だ!ツインテイルズに頼るまでも無い、ここで私が成敗してくれる!!」

怪人の身体に鋭い蹴りが叩きこまれる。

何度も襲われてきた主人を守る為、鍛え抜かれた両脚で猛攻を続ける尊の姿は、まさに一流のメイドだった。

一蹴り一蹴りに魂を込め、怪物に立ち向かう。

だが、クラブギルディはびくともしていない。

逆に尊の方が足を押さえ、蹲ってしまった。

「なんて硬さだ!身体中が金属なんじゃないのか、こいつ―――!」

蟹のような外見をした怪物は、背中の甲羅どころか、柔らかそうな胴体に攻撃を仕掛けても、全く効いている素振りを見せなかった。

「きゃあああああっ!!!!」

慧理那を庇っていたメイドから、戦闘員(アルティロイド)が慧理那を無理やり引き剥がした。

他のメイドに危害が加えられないようにと、慧理那が自ら離れたのも原因だった。

「お嬢様!!早くお逃げ下さい!!」

隙を突かれ、尊も戦闘員(アルティロイド)に取り押さえられてしまう。

「くっ、こいつらヒョロヒョロの癖になんて力だ!お嬢様っ!」

「大丈夫ですわ尊。きっとあの方達が助けてくださいますから!」

何の疑いも無く、信頼に満ちた慧理那の目。

やはりお嬢様はこの状況を―――と尊は思った。

「よし、後ろを向かせい!!」

戦闘員(アルティロイド)が慧理那の肩を掴んで、180度回転させる。

するとクラブギルディは腕組みをしながら、満足そうに頷いた。

「な、何をじろじろ見ているんですの!?」

あまりにもその視線が不気味だったのか、慧理那が強く問いかける。

「ん?うなじだ!ツインテールにするという事は必然的にうなじも見える!うなじの美の相乗効果でツインテールは更に輝きを増し、素晴らしい物になる!俺はこの黄金関係を仲間達、そしてお前達に分かってほしいのだ!!」

「あなたに教わる事など一つもありません!!」

血迷った発言をバッサリと斬り捨てる慧理那。

「たわけか!!男は背中で語り!女はうなじで語る!世界の理を知らぬとは見た目だけでなく、知能も幼いか!!」

「なっ、わたくしは―――!」

ここまで堂々としていた慧理那が、初めて動揺した表情を見せる。

「おのれ化け物!お嬢様への侮辱は許さん!!」

「年増のうなじなど興味は無い!家に帰ってほうれい線の対策に躍起になるがいいわ!!」

ピンポイントすぎる罵倒を受け、尊の怒りは更に膨れ上がった。

「年増年増とほざきやがって、私は二八だぞ!!ふざけるな怪物め、殺してやる!!!!」

主人を(おとし)められた時よりも、その怒りは大きかった。

「さて、お主のその強大なツインテール属性、頂くとしよう!」

クラブギルディがズシンと地面を揺らしながら、慧理那に一歩一歩近づく。

「お嬢様!危な―――!?」

戦闘員(アルティロイド)に首筋を叩かれ、尊は地面に沈んだ。

「み、尊!!―――私のせいで…!」

慧理那は買って貰ったばかりのヒーローの玩具(おもちゃ)を胸に抱きしめ、背後から迫ってくる恐怖を必死に耐えた。

 

ヒーローはいる。

彼女はそれを知っていた。

だから、強く、強く、心で祈った。

 

ヒーロー、見参。

 

属性玉(エレメーラオーブ)―――兎耳属性(ラビット)

「モ、モケェ!?」

慧理那の肩を掴んでいた戦闘員(アルティロイド)が吹き飛ばされた。

「!?」

慧理那は思わず瞠目する。

属性玉(エレメーラオーブ)兎耳属性(ラビット)によりもたらされた跳躍力を存分に生かし、青の戦士―――テイルブルーが戦闘員(アルティロイド)に連続蹴りを放つ。

そのスピードは見る者に対して、何人もいるかのように感じさせる超速であった。

そして―――

「ブルー、その人を頼むぞ!」

「オッケー、そっちもしっかりね!」

慧理那は声のした方に振り返る。

そこには、テレビの中から出てきたかのように、怪物の前に堂々と立ちふさがる小さな少女――――――テイルレッドの姿があった。

 

 

 

俺と愛香はエレメリアン出現の声を聞き、変身して駆けつけた。

「やっぱり来てくれましたのね―――信じていました」

いや、やっぱり狙いは神堂会長だったのな。

これで一体何度目だろう、四、五度目ぐらいか。神堂会長の協力なツインテール属性は完全に奴らの格好の的にされてしまっている。

それでも、この凛とした美しいツインテールを、会長に失ってほしくない。

その為になら、俺は何度でも貴女の元へ駆けつけますよ、会長。

 

さて、土曜日、休日だけど―――ツインテール部初めての活動と行きますか!

頭のリボンを叩き、ブレイザーブレイドを出現させる。

そして、その大きな剣をクラブギルディに向けた。

「予想通り現れたなテイルレッド!頼もしい相棒テイルブルー共々、お主達の強さと美しさは世界を超え知れ渡っておるぞ!」

「そうか、それは光栄だな。じゃあ、こう伝えておいて欲しいな。この世界には俺達ツインテイルズがいる、侵略はやめておいた方が良いってな!!」

「何を言う!タイガギルディ様の仇を討たずして、どう生き長らえようか!!」

「タイガギルディ…ってあのスク水スク水言ってた…あいつか?」

ドラグギルディの友達、とか言ってたような気がするけど…あの日、確か誓いのキスを邪魔されて、怒りのまま滅多打ちにしたんだっけか。

まあ、例え弱くても友達名乗っちゃいけないってわけじゃないしな。

―――それよりも、今は!!

「食らえっ!!」

ブレイザーブレイドを一気に振り下ろす。

クラブギルディを完全に断ち切った―――かに思えたが、そこにクラブギルディの姿は無かった。

「フッ、甘いな。それは残像だ」

「な、何っ!?」

背後から声が聞こえ、驚きながら振り返る。

いつの間に回り込んだんだこいつ…速過ぎるぞ!

「当然の事。俺は相手の後ろを取る事に関しては、隊長達をも上回ると思っている―――うなじを見る為なら、それぐらいの苦労、軽い物よ!!」

うなじを見る為だけに、この速さって。

「うむ、素晴らしい!!さすが、最強のツインテール属性―――!うなじもやはり絶品だったか!!」

ハサミをチョッキンチョッキンと鳴らし、歓喜に浸るクラブギルディ。

(はや)き事、変態(かぜ)の如し―――か!」

剣を持った相手とは何度も戦っているのに、それでも危険を感じるのは、ハサミというツインテールを脅かす存在がある事だろうか。

俺は慌てて剣を振り回すが、全く当たらない。さらりと交わされ、後ろに回り込まれる。

「ふん、残像だ」

「くっそ、当たれよ!」

「当たらん、それも残像だ」

「うなじを見るなよおおおおお!!俺のうなじを見ていいのはブルーだけだ!!!!」

「残像だ。ブルーの代わりにじっくり見て差し上げよう」

物凄く余計な事を叫んでしまい、後からブルーに何かされないか心配だ。

「楽しいっ、これ凄く楽しいよっ!」

そのブルー―――愛香はというと、兎耳属性(ラビット)属性力変換機構(エレメリーション)で、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、戦闘員(アルティロイド)を蹴散らしていた。

可愛く跳ねる愛香を見て、俺の心もぴょんぴょん―――させている暇は無い。

うなじ魔(クラブギルディ)をさっさと処分しなければ。

『総二様!確かにクラブギルディは後ろを取るスピードに関しては一級品ですが、それ以外は普通のエレメリアンと変わりありません!後ろを取るという習性を逆に利用しちゃってください!』

トゥアールから通信が入る。

そうか、こいつはうなじを見る為に相手の後ろを取る行動だけを洗練した一流の変態、ならば―――!

完全開放(ブレイクレリーズ)!!」

熱波を噴き上げるブレイザーブレイドを大きく振り上げ、クラブギルディ目がけて斬りつける。

「残念、残像だ」

だが、一斬目はあくまで囮。

続けざまに二斬目を放つ、すると予想通りクラブギルディは更に背後へ回ってきた。

―――一斬目を外したその場所に、炎の球体が浮かんでいる事も知らずに。

「かかった!オーラピラー!!」

「んなっ!?」

発動したオーラピラーが円柱型に変形し、クラブギルディを包囲する。

身動きの取れないまま、唸るクラブギルディ。

「う、う、うなじが見えぬうううううううう!!!!」

「グランドォォォ!!ブレイザ――――――ッ!!!!」

爆裂する炎刃、巻き上がる噴煙。

「もっとうなじが見たかったーっ!!!!」

欲望丸出しな言葉を残し、クラブギルディは爆散した。

 

 

 

「ツインテールで相乗される美…うなじ…か、なるほどな」

ツインテールを引き立たせるという姿勢、まだまだツインテールにも学ぶべき事がたくさんあるな。

ちょっと今夜にでも、愛香にお願いしてみようか。

属性玉(エレメーラオーブ)項後属性(ネープ)を回収して、ブレイザーブレイドをリボンへ戻す。

そして、戦いの一部始終を見守っていた会長の元へ駆け寄った。

「そちらのメイドさんは大丈夫ですか?」

「はい、気を失っているだけですから、大丈夫ですわ」

「そうですか、なら安心ですね」

ここへ来る前にメイドさんが殴られたと通信で聞いたので、焦ってしまったが、こうして見る限り外傷は見当たらない。

あいつらは決して人間に危害を加えるつもりは無い。面と向かって抵抗されたとしても、気絶させる程度。

精神の力を(かて)とするこいつらの美学…とでも言うのだろうか、信用に近い何かだ。

こいつらの場合、絶対に、とは言い切れないが。

けど、危険だからという理由で、神堂会長に対して、ツインテールをやめて下さいなどと言いたくない。

神堂会長に危険を自覚させる事になってしまうからだ。

ツインテールは危険な物、そう思われてしまったら俺は悲しい。

でも、このような事が続いてしまえば、世界中の人々はともかく、何度もエレメリアンに襲われている会長は思ってしまうかもしれない。

苦悩する俺に対して、会長は微笑みかけてくれた。

「また、助けられてしまいましたわね」

その輝く笑顔とツインテールのお陰で、俺の弱気は吹き飛んだ。

「何度もこんな目に遭って、怖い思いをしていると思います。でも、絶対に絶望だけはしないで下さい。貴女の事は俺……いや、私が必ず守りますから!」

「いいえ、怖くなんてありませんわ。貴女が来る、そう信じていましたもの」

「貴女がツインテールを愛する限り、私はいつだって、貴女を助けに来ます」

「ツインテールへの…愛」

助ける度、毎度毎度言っている決め台詞なので、そろそろ会長にも覚えてもらったと思うが、これを言う度に会長の表情が曇る。

初めての時からそうだったか。

いや、そうではないと信じたい。

会長は以前、俺にヒーローに憧れていると打ち明けてくれた程だ。

決め台詞はヒーローに取っても非常に重要な物。

まだ、語呂が悪いのか?もう少し別の物を考えるべきなのか……うーん。

けど、ツインテールの戦士である以上、ツインテールだけは譲れない、ならば愛の部分か。どう変えよう…?

「レッド、そろそろ」

「え、ああ。すまん、待たせてて」

「大丈夫よ、じゃ行きましょ」

「あ、あの」

しかし、会長のツインテールも綺麗な物だ。

「あ、あの!」

「え?どうしました―――って、あぁっ!?」

決め台詞を考えながら、会長のツインテールを摘まんでいた。

これは色々な意味で―――まずい。

属性玉(エレメーラオーブ)―――髪紐属性(リボン)…」

「え、あ、ブルー!?ちょ、何で勝手に一人で飛んで、ま、待ってくれー!!ご、ごめん会長(・・)、それじゃ!!」

慌てたまま、俺はその場を後にした。

 

「ブルー!!ごめん、ごめんって!!気を落とさないでくれって!!俺が悪かったから!!」

「……」

「ブルー…」

無言のまま、目に涙を貯め込んでいるブルーが下に降りてきた。

そして、俺を抱きかかえると、再び空へ戻る。

「そーじ―――あたしのツインテール、飽きた―――?」

「な、いきなり何を!?」

「会長のツインテール、無意識に触ってるのに…最近、あたしのツインテール、触ってくれないから…あたし、凄く寂しくて…っ、うっ」

「愛香…」

愛香は俺が会長のツインテールを無意識に触った事で、最近触られていない自分のツインテールは飽きられたと思ってるのか。

愛香のツインテール…確かに最近触ってないような。

また、愛香に悲しい思いをさせてしまうなんて、俺は―――!

「愛香、っ…!」

「!!そーじっ…っ、そーじぃ!!」

慰めたい一心で、ツインテールにそっと口づけをする。

伝わる熱に、愛香の涙腺が崩壊した。

「愛香、ごめん。でも、これだけは言っときたい」

「っ、そーじ―――?」

「俺が一番好きなツインテールは愛香のだから、心配しないでくれ」

「うんっ」

愛香は涙を流しながらも、どうにか笑顔を作って頷いてくれた。

その顔を見て、今度こそは絶対に愛香を悲しませる事はしない。

俺は心の中でそう誓った。

「そーじ、あの、ここにも…欲しいな」

「お、おう。分かった」

ツインテールを愛でていると、愛香が唇を指で触りながらおねだりをしてきた。

その仕草に思わずドキッとする。

「その、今いいタイミングだし、誓いのキス…しない?」

「え!?あ、うん」

誓いのキスをしようと提案され、更に(たかぶ)る俺。

ええい、心をしっかり保つんだ俺。こんな事で恥ずかしがってちゃ結婚式どうなるんだ!

人前で思い切り口づけをしないといけないんだぞ!

「愛香、じゃあ…するぞ」

「うん。きて、そーじ」

愛香の言葉に、(よこしま)な考えが頭に降臨された。

それを何とか振り払って、俺は愛香の元に唇を運ぶ。

夫婦、そして一生を共に過ごすツインテールと誓う為に、意地でもくっつけてやる。

よし、今度はいける――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総二様、愛香さんお疲れさまでしたー…って、あれ?」

――――――と思ったのに。

「あああああああああトゥアール!!!!何故そのタイミングで!!」

「え、あ、ま、まさか、いい感じの空気になってましたか!?」

「今、誓いのキスをしようと―――」

「そ、そんなぁ!?」

狙ったかのようなタイミングでトゥアールが通信してきた。

思わず嘆きの声を漏らす俺。

「ごめんなさいごめんなさい私の注意不足で」

「い、いや、トゥアールは別に悪くないよ。俺達がカップルとしてまだまだ未熟だっただけで」

「いえ、モニターを見ていなかった私が」

いつの間にか、謎の謝罪合戦に変貌している気がしたが、トゥアールが止まらない。

このままだと収拾もつかないな。

「トゥアール、落ち着いて。誰にだってミスはあるわよ」

「愛香さん…」

愛香がフォローしてくれたお陰でトゥアールも落ち着いたようだ。

―――しかし、いつになったらできるんだろう、誓いのキス。

まさか、ずっとできないんじゃ、結婚式でも邪魔されるんじゃ。

愛香の腕の中でそんな悪い考えを頭に浮かべ、俺はまた一人苦悩していた。

 




タイガギルディは犠牲になったのだ―――尺の都合という犠牲にな。

2章からはちょろちょろとネタをぶっこんでますが、最初はネタを出すつもりは全くありませんでした。
これは最初に書いてたバカテスの小説がネタだらけになって失敗したという理由からだったり。

過去の失敗から学んだ事を生かそうと思ってますが、それでもネタがあった方が良いかなと、やりすぎない程度に。

さて、本編の方ですが、愛香の嫉妬は可愛く書いたつもりです。
EX2巻で相当なヤンデレ属性持ちと判明した愛香ですが、ここではできる限り可愛く書きたいですね。
可愛い愛香が見れれば、みんなしあわせ。

さて、次回は…あれ?また嫉妬から始まるのか、これ。

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