お待たせしました、今回は1万字をオーバーしてしまいましたよ。
おかげで次回に響きそうですが、そんな事お構い無しで。
では、9話、どうぞ。
「な、何者だ!!」
ドラグギルディが声を上げる。
その目線の先、大きな木の半ば辺りの枝に少女の姿があった。
……って、なんか見覚えがあるような姿だな…思いっきり「誰だ邪魔するアホは」って叫んだけど。
「私の名は、世界を股にかける
「ツインテールじゃないじゃん!!」
「…はぁ…もっとマシな登場できなかったのかしら、あの子」
思いっきりそうツッコんでしまった。
何で仮面ツインテールって名乗ってるのに、ストレートヘアなのか。
いくらなんでも矛盾しすぎてるよ。
愛香も呆れてるみたいだ。
「仮面ツインテール…!?」
で、何でいっつもこいつらはオーバーなリアクションをするんだろう。
みんな歴戦の強者のはずなのに、そこだけは崩さないんだな、もったいない。
木の枝に立つ不審者、というよりトゥアールは何か特撮物で出てきそうなフルフェイスのメットを被っている。
ただし、服装は露出度の高い服に白衣という、いつも通りのスタイルだった。
…ああ、気が抜けてブレイザーブレイド消えちゃったよ…もう。
「貴様…突然現れた割には微塵も
「加勢…?そんなもの必要ありませんよ。私はテイルレッドに全ての真実を伝える為にここへ馳せ参じました」
「「真実…?」」
「ああ…あの事ね」
真実ってなんだ、何か愛香は分かったような顔してるけど…。
何気にドラグギルディとハモってたし、もう滅茶苦茶だ。
「ドラグギルディの言う通り、彼らの侵略の最中、私はテイルギアを開発し、自ら装着して戦っていました。テイルギアの原型…いわゆる、
「意図的に流出だって!?」
さすがにそこまでは考えられなかったよ、俺。
「おそらく幹部クラスのエレメリアン…とブルーしか知らないでしょうが……あの日、レッドが初めて戦った日に究極のツインテールを探していたのは…
「!」
なんだと…?
俺はトゥアールの発言に驚きを隠せなかった。
「あの日、貴方が私と出会う事が無かったとしても、いずれ貴方はアルティメギルの手によって、テイルレッドに代わる戦士になっていたはずです」
つまり、こいつらは最強のツインテール属性を奪う為の物ではなく、更に多くのツインテール属性の
「!!なるほど、貴様、我らと死闘を繰り広げた、最強のツインテールを持つ
「それは…託したからです」
「何!?」
仮面ツインテールは俺の方に顔を向け、微笑んだ。
仮面の下からでも、それははっきりと分かった。
「ドラグギルディ。私はあの頃、途中ではっきりと分かっていたんです。何故、いつもいつもこんなに敵が弱いのか。何故、死活問題の
いや、頭の良いトゥアールの事だから、きっと俺のように不安になるほどではなく、確信も持てていただろう。
だったら……。
「だから…きっと止める術はあったんです。どういう手でもいいから、私がツインテールへの興味を失わせる行動をすればよかった」
悲痛な思いを口にするトゥア…仮面ツインテール。
聞いているだけで胸が痛い、辛い。
「でも…そんな事私にはできなかった。世界中に広がったツインテールを消すことなんて、私に憧れてツインテールにしてくれた幼女達が髪型を戻していく光景なんて…私にはできなかったんです…」
涙声になる仮面ツインテール。
いや、空耳か?
幼女…って聞こえたような。
とりあえず、真面目に耳を傾けよう。
「私はその隙を突かれて、ドラグギルディに負けました。基地にこもって対策を練っている内に、世界からツインテール属性が消え、二度とツインテールを愛せない世界になってしまいました」
ドラグギルディはその話に深く聞き浸っていた。
…まあ、これ全部やった張本人だもんな、あたりまえか。
「様々な属性を奪われ、覇気を失った世界で唯一、私だけがツインテール属性と幼女属性を持っていました。私が道行く幼女のスカートをめくってパンツを見ても、誰にも注意されないような悲しい世界でした」
「おかしいぞ今言った行動は!?」
せっかくいい話だったのに、後半の所為で台無し。
いや、道を歩いてる幼女を見かけてスカートをめくるとか本物の変態じゃないか。
本当にこういう事しなけりゃ、すぐに理想の殿方なんて出会えそうだけどなぁ…。
隣にいる愛香もさっきから呆れた顔しかしてない。
「そして、復讐を決意した私はテイルギアと数々の戦闘データを元に、テクノロジーを分析しました。幼女のちっぱいを後ろからもみもみしても恥ずかしがられない悲しさを糧に、
「いや…何の目的でここに来たのさ…トゥアール…」
ツッコむ気力も湧かず、呆れながら俺は呟いた。
本当にこの子はツインテール属性を俺達に守ってほしくて地球に来たのか…?
この話聞いてると、幼女目的で来たとしか聞こえないんだが。
…隣の愛香は頭抱えてうずくまってるよ、辛かろうに。
「そして…私はけじめとして、私自身のツインテール属性を
「俺のが…?じゃあ、これは…トゥアールのツインテール属性で作られた…物」
仮面ツインテールが何故ツインテールにしていないのか、ようやく分かった気がする。
仮面ツインテール――――――トゥアールは…俺にツインテール属性を託し、ツインテール属性を失った。
その代償で、トゥアールはツインテールにしたくても…できないのか。
自らツインテールを愛する資格を手放すなんて、苦しさ以外の何物でもない。
トゥアール…そんな大切な物を俺に託してもらって…ごめん。
でも、幼女趣味は治せ。
「後は装着できなくなった私のテイルギアをここにいるテイルブルーに託しました。これが全ての真実です」
「うん…トゥアールの分まであたしが頑張ら……ないと……ね……」
徐々に声が小さくなっていく言葉と共に、何故か
まだ貧乳を気にしてたのか……俺は一番好きって言ってるのに。
「執念か……先代テイルブルー…いや、今は仮面ツインテールと呼ぶべきか!貴様の力はやはり底知れぬようだ…ツインテールへのその深き愛を
まあ、確かにな。
あっという間に世界に属性を広めて、その属性を愛する人の心の強さを侮ったこいつらには、トゥアールの行動が想定外だったのだろう。
人の心から生まれたこいつらが、そんな事を忘れてしまっていたんだ。
「テイルレッドを幼女にしたのも、ツインテール属性だけが世界に拡散されないようにする為…よね」
「はい。ただ、そのほとんどは趣味ですけどね…えへへへへへへ」
直後、物凄い音を立てて、木が真っ二つに折れた。
仮面ツインテールは受け身も取れないまま、地面に身体を打ち、倒れてきた木に押しつぶされてしまう。
いやー、何も言えない光景だわ。
「あんた、そういう態度丸出しにしたら、理想の殿方なんて巡り会えないわよ?」
「にしても、これはやりすぎじゃないですか!?ああ、おっぱいに枝が刺さって痛いっ!」
なんだか愛香が楽しそうだ、さっきまで苦しそうだったから良かった。
とりあえず、トゥアールは後で助けとこう。
「よき仲間を持ったな―――――――――テイルレッド」
「――――――ああ、本当にこんな仲間を持てて幸せだ!」
茶番から、もう一度宿敵に目をやり、言葉を吐く。
何か心が熱く燃えている気がした。
…父と母から託された
「仮面ツインテールよ、そこまで弁を尽くさなくとも、こやつらの輝きは
再び、大剣を構えるドラグギルディ。
「だが、知っておいてほしい。いかなる輝きで照らそうとも、覆らぬ闇もあるのだとな!!」
モケモケェ――――――――――――!と地鳴りのような声が響く。
ドラグギルディの後ろに、いつの間にか異常な数の
こんな光景を目の当たりにすれば、あのお気楽な報道陣もまたこいつらへの見方を変えるだろうな……。
「例え一人が二人になったとて、これまでと何も変わらぬ!ツインテールが世界を支配する時間、それが短くなるだけなのだ!」
「二人?何言ってんだよ、俺達ツインテイルズは…二人だけじゃない…!」
大木に押し潰されていた仮面ツインテールを救出し、手を取る。
「総……げふん、レッド…」
「ツインテールってのは左右の束を支える頭が無けりゃ成立しない…」
トゥアールを真ん中に据えて、三人並ぶ。
そう――――――
「これが俺達……三人揃って、真のツインテイルズだ!!」
きっとこれが完成形。
これから戦士が増えなければの話だけど。
「
「そ…うよぉ…三人揃って…ぇ…真の…ツインテイルズ…あーあ…仕方ない、か…」
隣にいる仮面ツインテールが本能を隠せていないし、愛香はテンション落ちまくってる感じだし、すげーグダグダになってるじゃん…。
俺の決め台詞が台無しだ。
『この場にいる
安全な場所まで退避した仮面ツインテールから通信が入る。
九百八十七って…これまでの戦いとは完全に桁数が違うな。
「愛香、俺がドラグギルディを倒す。だから、残りの雑魚共は任せていいか?」
「え?それだと多分、あたしの方が楽になっちゃうけど…いい?」
「いや、そうでもないぞ…この数は」
約千体の
それに、増援が現れる可能性だって無くは無い。
こいつらを一匹たりとも残さず、逃がさず倒さないといけないのだから、俺より大変かもしれない。
「俺、お前を信じてるから。…頼むぜ、愛香」
「こっちの台詞よ。……絶対、無事に帰ってきてね、そーじ」
「ああ、分かってる。約束は守るよ」
お互いの拳を突き合わせたのを合図に、テイルブルーは
ドラグギルディも無防備になっている背中を狙うような真似はせず、腕組みをしたまま素通りさせた。
「…ほう、テイルブルーはあの
俺は速攻を仕掛け、ドラグギルディの射程圏内に入る。
明らかに大人と子供…いや、赤ん坊レベルの体格差。見上げる形になってはいるものの、俺とドラグギルディの視線は一歩も引かずに交錯していた。
「…お前らが
「別にどちらが上の存在とは言わん。ただ、食い食われる連鎖の中で、話し合いなど所詮無理に等しいだろう。我らエレメリアンはお主達の
「…そうか」
エレメリアンの生き様を含めた重い言葉。
遠慮など必要ない、全力で来いという意思表示にも聞こえた。
けど、そんな事…とっくの昔に覚悟したんだけどな。
おちゃらけでも、命は命。
戦いが作業ゲーと化しそうになった時にこんな強敵と当たったのは、俺への
どんなに酷い悪でも、どんなに酷い変態でも、精神生命という、この世界にあってはいけない条理に反した存在でも。
命の重みはその手で受け止めろ、と。
「――――――いくぜ、ドラグギルディ!」
心に
燃え盛る炎が剣の形を再び作り上げ、ブレイザーブレイドが現れた。
「ふっ……」
何か不敵な笑みを浮かべながら、ドラグギルディも再び剣を構える。
そして、同時に地を強く蹴った。
「うらあああああああああああああああああああ!!!!!!」
「ぬああああああああああああああああああああ!!!!!!」
お互い全力で相手に向かって疾走する。
「でやあっ!!!!」
ドラグギルディの重い斬撃が放たれる。
俺はなんとかそれを気迫だけで受け止めた。
休みなく放たれるドラグギルディの斬撃を必死に捌いて、一瞬の隙を突いた。
「ぬうっ!」
渾身の突きを受け止められ、剣ごと吹き飛ばされたが、なんとか
「うむ。間違いなく先程より強さと美しさが増している……別人のようだな!!」
「当然だ!!気合いがちげーんだよ!!」
斬撃を打ちこんだ反動で身を
隙だらけだ!
「何!?」
完全に反応が遅れたドラグギルディの背中を斬りつける。
傷一つなかったその背中に、傷が付いた。
「ぐ…っ…我の…この背中に傷を付けるとは…!」
「幼女に背中をゴシゴシして欲しかったんだろ?望み通りにしてやったじゃねーかよ!」
「ほう。なるほど、それは一本取られたわ!!」
もう一度攻撃を再開するドラグギルディ。
「これがお主の真の力か…!」
テイルギアの原動力は心の力。
俺がツインテールを守りたいってだけじゃない、自らのツインテールを俺に託してくれたトゥアール、それに…無事に帰ってくると約束した愛香の為にも、俺は絶対に負けられないんだ!!
「それならば…我も真の力を…命を懸けるまでよ!!」
ドラグギルディは大剣を地面に突き刺し、何やら力を溜め始めた。
「まさか…フォクスギルディみたいに妄想をするつもりか…!?」
「フォクスギルディか……。あやつの強大な空想力には我も一目置いていたな」
ドラグギルディの全身に渦巻いていた闘気が左右の側頭部に結集する。
「だが、所詮人形に頼るなど軟弱者よ。この自らの
「な、なんだと!?」
闘気がツインテールを形取り、ドラグギルディの頭部から風に
これが
「嘘だろ…ドラグギルディが――――――ツインテールに…!?」
「これこそが我の真の力にして最強の闘態……ツインテールの
男がツインテールにしているとか、そういう不快感は全くない。
羞恥心を捨てた程度の開き直りとは次元の違う、誇り高き姿。
ドラグギルディのどこから、そんな自信が湧き出ているんだ…!?
「そうだ。男子に許されしは、ツインテールを愛でる事だけではない。自らツインテールとなる事…それこそが、ツインテール属性を持つ者の本分よ!!」
俺はこの星で最高のツインテール属性を持つ者とまで言われた。
本来は女性に強く芽吹くはずのこの属性を。
そしてテイルギアを纏って、自らツインテールとなり、
しかし、俺はその事に誇りを持っていたのだろうか。
どこかで恥ずかしがっていなかったか。
同じように最高のツインテール属性を持っていても、俺と奴では覚悟が違っていたのだ。
不謹慎だが、敬意のあまり、敵ながら一礼も辞さないほどだった。
「ゆくぞ、テイルレッド!!」
ドラグギルディの攻撃は先程までとは段違いの力だった。
規格外の大剣から放たれる斬撃に、地面が捲れ上がっていく。
こちらもまた、炎刃を加速させて立ち向かう。
あまりの速さに、互いの
「まさか敵に感銘を受けるなんて思ってもなかった。もう一度ぐらい礼を言わなきゃな!!」
「何、礼を言うのはこちらの方だ。お主の輝きを見て、我は将の立場を捨てた!武勲無き、ただの一兵として!がむしゃらにツインテールを愛していたあの頃に戻れたわ!!」
時空を無視する超速の剣の応酬。
地面が熱によって溶け始めた。
「けどさ……そこまでツインテールを愛せるなら、ツインテールを奪われる悲しみだって分かるはずだ!!」
「恨み言など、とうの昔に受け慣れたわ!人々の心を食らう者として、当然だろう!!」
なら…今こそお前達が
「うおおおおおらああああああああ!!!!」
ドラグギルディを押し負かし、大木へ叩きつけた。
「なんと…これは驚いた。ここへ来て更に輝きが増すなど…お主のツインテールは底なしか!?」
終わりなき物の頂点として挙げられる宇宙ですら、まだ成長しているという矛盾。
心、それは宇宙。
形なき物だからこそ、どこまでも成長していける。
「そうさ……俺のツインテールは……無限だ!!」
大気さえも蒸発していく戦場の中で、二つのツインテールの攻防はまだ続く。
「はあ…そーじのツインテール馬鹿スイッチも入っちゃったし、あたしだけ浮いてるみたいよ…全く」
もう一人ぐらい常識人が欲しい。
それが今の愛香の願いだった。
普通にしていれば常識人の愛する夫(仮)はツインテール馬鹿全開でもう一人の馬鹿と戦っている。
「そーじ…無事に帰ってきてね。負けないでよ…!」
だが、敵はこれまでと比べ物にならないほど強い。
どう考えても負担が大きいのは総二の方だ。
こちらも目の前に広がる群衆を全て相手にしないといけないのだが。
その中で愛香は劣勢に立たされていた。
好きに暴れられるというのに、それができない。
「モケ――――――!!」
「ああ、もう邪魔っ!!本当に邪魔!そーじの姿が見れないでしょうがぁっ!!」
「モケェ!?」
かっこいい姿が見れないでしょうが、責任取りなさいとばかりに、愛香はウェイブランスを振り回した。
周りにいた
「もう、そーじの為ならあたしはどんな事だってやってやるわよ!!ほら、こっちきなさい!あんたらの力で相手したげるわ!!」
<
フォクスギルディから回収した
その力を発動させると、頭部のリボン型装甲が鋭く伸び、翼を形成する。
「トゥアール、後何体か分かる?」
『後八百三十一体です!……後、今の私は仮面ツインテールです!』
「先は長いなぁ…っ!!」
空から水流の刃を降り注がせる。
その姿はさながら爆撃機。
下にいた
「モケケッ!!」
「モケーッ!」
「モケェ!!」
倒しても倒しても、すぐに湧いてきて元通り。
総二が懸念していた、終わりなき戦い、それが具現化されているような気がする。
それでもテイルブルーは萎縮することなく、ただひたすらに
あの日、ツインテールにできなくなったトゥアールから託された大切なブレス。
先に戦場へ身を投じた、総二を守りたい。
それと同時に、この力を託してくれた親友の為にもと、愛香はテイルブルーに変身した。
トゥアール自身のツインテール属性を託された総二が背負う物も重いが、愛香の背負う物も重い。
「トゥアール…あんたの分まで、あたしが頑張るから!!」
『……はい…』
通信越しに、トゥアールの泣きそうな返事が聞こえた。
「…っ、よく聞きなさいよこの変態共!!」
優雅に美しく舞う姿は、まさに先代に引けを取らぬ輝き。
「気安く触ってるみたいだけど、結構苦労してんのよ、この髪!!」
風に
「この髪は…あんたらに触ってほしくない…!」
二代目
「ずっとずっと、この髪は…あたしの事を大好きでいてくれて…あたしも大好きなあいつの物なのよ!!!!!!」
これからもずっと一緒にいてくれる。
一緒にいてくれるから、あたしは強くなれる。
時々あんたは馬鹿全開になっちゃうけど、それでもあんたはあたしの誇り。
思いやりがあって、世界一かっこいい。
だから、あたしはあんたが大好き。
『残りはジャスト二〇〇です!愛香さん!』
「
そして、今までの美しき
「みんなまとめてっ……オーラピラ―――――――――!!」
激しい水流が
「エグゼキュートウェ―――――――――――――――ブ!!!!」
全身全霊を込めた
爆発と共に舞い上げられた
「はぁっ………」
変身が解かれ、地にへたりこむ愛香。
「そーじ、頑張ってね。だいす……き」
意識を失う直前、愛香は執念で言葉を紡いだ。
死闘を繰り広げる仲間、というよりも、一生を共に過ごす事を誓った夫に向けて。
ツインテールの形に地面が割れて、熱が吹き出す。
俺達は剣を交えている内に、ツインテールの地上絵を描いていた。
周囲の景観は全て熱に溶かされている。
「はぁ、はぁ、はぁ」
体力の限界を迎え、俺は膝をついてしまった。
それをドラグギルディが見逃すはずもない。
「惜しかったな。確かにあの少女よりも遥かに強大な力を持っていたのは確かだ。しかし、これまでの相手と力の差がありすぎただけに、実践経験が足り得なかったのだろう。積んできた戦いの差が明暗を分けたようだな!!」
「いや、まだだ……!」
攻撃は精彩を欠き、いとも容易く受け止められる。
「よくぞここまで健闘したものだ。我が生涯最強の敵……そして、我が最高の想い人よ!」
「くっ……!」
乱れ刃の刀身に巻き込まれたブレイザーブレイドが弾き飛ばされる。
そのまま放物線を描きながら、力無く地に突き刺さった。
「いざ、さらばだ――――――――――――っ!!」
名残惜しむ間さえない
ドラグギルディの大剣が、俺の脳天に降り下ろされる――――――
――――――それを、俺は待っていた。
「オーラピラー!!」
俺自身の体を包み込むように、オーラピラーを展開させた。
「む!!」
オーラピラーは本来、拘束用の補助技。
外部からの攻撃には
ドラグギルディの剣をなんとか弾いたが、その一撃で砕けてしまった。
体勢を立て直して、追い討ちをかけようするドラグギルディ。
―――――――――だが、しかし。
霧散する炎の中から現れた俺の右手には、しっかりとブレイザーブレイドが握られていた。
「なんと!?二刀!?」
「伊達にツインテールじゃねぇよ!ってな!」
動揺した隙を突き、肩に切り札の二刀目を叩き込む。
「ぐはっ!!」
「ブレイク…!」
よろめきながらも、再び体勢を立て直すドラグギルディ。
それでも、ここで決める―――!
「レリーズ!!」
「テイルレッドォォォォォォォォォ!!!!」
「グランドォォォ!ブレイザァァァァァァァァァ――――――――――――ッ!!!!」
炎の剣でドラグギルディの巨体を斬り裂いた。
「は、はは……美しい……まさに神の髪……神、型……」
多くの世界を渡った歴戦の猛者が全力を込めた双房と
勇ましく立っていたドラグギルディがついに力尽き、両膝を地についた。
「う、く……一本目は最初から
「いや、違うぞ。とっさの思いつきだ。それに―――――――――二人守るんだから、二本剣がいるのは当然だろ?」
フォースリヴォンの説明の時、トゥアールに『夢を叶える物ではない』と釘を刺された。
だけど、必要な夢はちゃんと汲み取ってくれたってことだ。
「ふっ、見事…!!見事だ!!テイルレッド!!」
「何だ?ツインテールがか?」
ドラグギルディから更に笑いが零れる。
「無論!わーっはっはっはっは!!!!」
「
「本当にお前は何処までもポジティブな奴だな…!」
俺は男だ、と
敵であって、いくつもの罪を重ねた悪党ではあるが、少し憎めない部分もあった。
というか、これまで戦ってきた奴ら全てに言えるかもしれないが……。
「
「お前がツインテールを愛する限り……そんなこともあるかもな」
「…さらばだ!」
別れを告げるように背を向けた瞬間、最後の一言と共にドラグギルディは爆散した。
「うっ…」
どっと込み上げてきた疲労感に耐えきれず、変身が解除された。
倒れこむ先には熱で溶けた地面と、未だに燃える炎。
頭でヤバいと思っても、体は止められなかった。
「総二様!」
「そーじ!」
俺の周囲を白い煙が包むと、熱が一瞬で引いていった。
これもトゥアールの発明……か?
「サンキュー、トゥアール」
仮面ツインテールが同じように変身を解除した愛香に肩を貸しながら歩いてきた。
右手には消火に使ったと思わしきスプレーが握られている。
「そーじ!!」
すると、愛香が俺に向けて走ってきた。
……大丈夫なのか、さっきまでトゥアールに肩を借りていたのに。
愛香はそのまま、俺に寄り添ってきた。
「あ、愛香…大丈夫か?」
「あたしの事は大丈夫だから…それより、あたしっ…そーじが心配でっ…」
顔の上に涙の粒が落とされる。
あれだけの数を相手にして、更に俺の心配まで……。
「愛香…ごめん、辛い思いさせて」
「ずっと、ずっと心配してたんだからねっ?」
更に涙声になる愛香。
もう、可愛い…!
俺に体力が残っていれば、ぎゅっと抱き締めていたのに。
「愛香…帰ったらさ、ぎゅっとしてやるから…もう泣くな」
「……約束だよ?」
「了解」
本当はぎゅっとする以上の事がしたいけども。
疲れてるからなぁ……。
「はー……回りの炎は消火できても、恋の炎は消せませんねぇ」
そんなイチャイチャを見ながら、仮面ツインテールが消火に明け暮れていた。
……ごめん、トゥアール。
大切な物を託されていながら、俺らイチャついてて。
おまけに消火も一人でやらせて。
でも、幼女趣味はどうにかしろ。
「愛香…ごめん、俺…限界だ」
「ぎゅっとするのは後でいいから、ゆっくり休んで」
「…ありがとな、愛香」
「うん、こっちこそ、ありがと、そーじ…大好きだよ」
愛香の言葉を聞いて、俺は意識を手放した。
ドラグギルディ戦、正直書くのが辛かったです。
イチャつかせられないし、なんか文章滅茶苦茶になったりして、もう…いろいろと大変でした。
さて、次回はやっと…1巻が終わります。
次回1巻のエピローグやって、その後KENZENな番外編を1話書いてから、2巻の内容へ…という予定です。
KENZENな番外編は何やるか未定です。
何やるかなー…w
では、また次回でお会いしましょう!