インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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オリジナルが加速する。
そして数馬の口調ってどんなだろう?

このオリジナル要素はある意味学園祭編の代わりともいえます。
そんなに長くないです。これにプラス2話か3話くらいを予定してます。
このストーリーが終われば完結篇に入る予定です。


第38話

 

 鈴を先頭にのんびりと目的地へ歩く。

 

 ペースがかなり遅いのは、のほほんさんがあっちへうろうろ、こっちへちょろちょろしているからだ。その都度鈴が捕まえに行っている。頑張れ鈴。応援だけはしてやる。

 

「そういえば虚先輩。急に暇になったって言ってましたけど、ご実家の方は大丈夫なんですか?事の発端の自分が聞くのもアレなんでしょうけど」

 

「いえ、かまいませんよ。更識の家がなくなったので、布仏の家は政府、正確には総理の直属となることに決まったそうです。あの人の暴走を防ぐことのできなかった私と本音は、今後家業に関わることを禁止されました。ですので詳しくは知らされていないんです。けれど、母から言われました。好きに生きなさいと」

 

 寂しさと嬉しさの混ざったような微笑みを虚先輩は見せた。

 たぶんだけど、布仏家は補佐一族としてじゃなくて、補佐機関のトップとして政府に付いて、次代以降は一切関わらないんじゃないだろうか。更識家という諜報一族と共に布仏家という補佐一族も滅ぶ道を選んだんじゃないか。

 虚先輩とのほほんさんは、簪と同じように一族に関わりのない個人とすることでその柵から解放されたんだろう。

 

「私は、これでよかったんだと思っています。篠ノ之博士が再び破壊したこの世界において、諜報なんて必要ないんですよ。きっと」

 

「なんか、すみません」

 

 どうにか出た言葉がこれだった。虚先輩が納得しているとはいえ、虚先輩たちの家を壊した原因は俺にもあるんだから、なにか言うべきなんだとは思う。けど、これ以外の言葉が見つからなかった。

 

「本当は、その言葉もいらないんですけれど、受け取っておきますね」

 

 そう言って向けられた笑顔は、さっきとは違って、慈愛に満ちた、蓮さんみたいな笑顔だった。

 

 

 

「へう~~~~~」

 

 会話が途切れたタイミングで聞こえてきた間の抜けた声に、視線を前方に向けると、のほほんさんが鈴に引きずられてた。

 のほほんさんの後頭部を肩に乗せ、腰のベルトを後ろ手に掴んで見事に引きずってる。器用なもんだ。

 のほほんさんはのほほんさんで、引きずられるのが楽しいのか、されるがままだ。

 

「もう、本音ったら。また迷惑をかけて」

 

 そういう虚先輩の顔は笑ってて、簪と目を合わせて頷く。虚先輩も楽しそうで何よりだ。

 

 

 

 

 

 家から歩くこと十数分。川が近くに見える貸ガレージに到着。どうやら俺たちが最後だったみたいで、弾と蘭。そして久しぶりに会う数馬がすでに待っていた。

 

「遅かったじゃないか。ってか人数増えてるしよ!紹介しやがれ!」

 

「ん?あぁ。こちらはのほほんさんのお姉さんで、布仏虚先輩だ。虚先輩、左から五反田弾、蘭の兄妹と、御手洗数馬です。地元の友人ってやつです」

 

「急に押しかけてしまってごめんなさい。布仏虚といいます」

 

「い、いや。気にしないでください!人数多い方が楽しいですから!」

 

 あ、これ弾のやつ惚れたな。

 

 同じく察したらしい鈴と蘭が、スッと距離を開けて二人を見守るポジションに移動する。

 

「だっらしない顔してるわねぇ。はたから見たら一発でわかるわよ」

 

「なんだかんだ言っても、女の人に免疫ないですから。アレ」

 

 いや、自分の兄をさしてアレっていうのはどうよ。

 

「お姉ちゃんも男の人に免疫ある方じゃないから、ちょうどいいんじゃないかな~」

 

「お?数馬との挨拶はすんだんだ?」

 

「お~。御手洗だからみっちーって呼ぼうとおもったんだけど、だめっていうからかずくんになったよ~」

 

 いや、納得できるあだ名だけど、どこぞで反逆でもしそうだな。

 

 後ろを見るとシャルや簪とも挨拶は済んだらしい。

 

「よし、鈴。あのプチいちゃらぶ空間を壊してこい」

 

「いやよ。なんであたしが」

 

「それじゃ、わたしがいってくるよ~」

 

 俺たちがとめる間もなく、のほほんさんが「ほっぷ~ すてっぷ~ じゃ~んぷ」の声と共に弾にダイブした。虚先輩がのほほんさんを引きはがしながら、弾にひたすら謝ってる。弾のやつ、のほほんさんのメロン直撃うけて緩みそうになる顔を、虚先輩の前だからって必死で取り繕ってるな。

 

「カオスだな」

 

「一夏。のほほんさんを止めなきゃダメじゃないか」

 

「いや、まてシャル。のほほんさん担当は鈴だ」

 

「あんたこそ待ちなさいよ!いつあたしが担当することになったのよ!」

 

「最近ずっと鈴が本音のこと見てくれてたから、助かってた」

 

「よーし。簪。あんたとは一度話し合わないといけないわね」

 

 あ、こっちもカオスになってきた。

 

「あー。もう、そこまで、そこまで。とっとと中に入ろう」

 

 カオス空間二つを半ば無視するように、ガレージのシャッターを上げた。

 

 

 

 

 そこには数か月ぶりに見る、羽根つきの自転車が、変わることなく鎮座していた。




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