インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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とりあえず、書きだめはここまで。
さすがに1日で出来る書きだめ分はこんなもんです。


第04話

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 二時間目の休み時間。先ほどの授業での山田先生の姿が、すばらしかったと、近くの席の女子達と話していたところで、いきなり声をかけられた。

 

 ちなみに篠ノ之は、先刻の件もあってか、元からの気質からか、机に座って一人、だんまりを決め込んでいる。

 

 まぁいい。とにかく声をかけてきた相手に体ごと向きを変える。その相手は、金髪の素晴しい女子だった。ちょっときつめにも思える、つりあがったブルーの瞳でこちらを見下ろしていた。

 

 なんで俺に声をかけてくる“ヤカラ”は皆偉そうに見下ろすのかね。

 

 しかもこの女子、金髪を下品でない程度にロールにしていることもあり、“高貴さ”をまとっている。そのせいで、見下ろしている姿が“いかにも”だ。

 

 俺の嫌いなタイプど真ん中だよ。

 

「聴いてます?お返事は?」

 

「聴いてるが、どういう用件だ?」

 

 俺の返事が気に食わなかったのだろう。目の前の女子は一瞬だけ、眉間にしわをよせると、わざとらしさを隠さない口調で声を上げた。

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、相応の態度というのがあるんではなくて?」

 

 面倒な手合いが来たもんだ。

 

「オルコットさん。例えば貴方が海外旅行をした時に、不意に知らない男性から声をかけられて、『私に話しかけられてるんだ。光栄に思え』と言われたらどうする」

 

「なんですの?唐突に。そのような方がいたら一喝しますわ。あたりまえではないですか」

 

「その男が、その国の大統領だとしても?」

 

「なっ!そのような後付の条件、卑怯ですわ!!」

 

「世界各国のトップの顔なんて、今のご時世、テレビやネットで一度は誰でも目にしている。ISの代表候補生も似たようなものだ。むしろ、IS学園にいる人たちは皆、各国の代表に代表候補生の名前と顔を知っているさ。それこそ、どこぞの国のトップよりも確実だ。もちろん、あんたのことも知っているよ。セシリア・オルコット代表候補生。でもな。それでもなお言ってやるよ。どういう用件だって。さっきの俺の質問だけどな、俺は相手が大統領だと知っても言ってやるよ。どういう用件だってな。権力や地位を振りかざすようなやつは、人の上に立つ資格なんて無いと思ってるからな。尊敬のかけらも感じない。威風堂々とあることと、偉ぶるのは全然違うんだよ」

 

 自身の言葉を無視して、こちらが話を進めるからか、話の内容に腹を立てているのか、オルコットは顔を真っ赤にして震えている。

 

「まぁいいや。とにかく何の用だ?」

 

「っ。……くっ。ふん。まあいいですわ。男のあなたはISについてわからないこともあるでしょうから、どうしてもと言うのであれば、教えて差し上げてもよくってよ。あなたのような、出来のよろしくない方に施しをするのも、エリートの務めというものですから」

 

 はぁ。本当に面倒だなコイツ。

 

「結構だ。遠慮させてもらう」

 

「なっ?!このエリートのわたくしが直々に教えて差し上げると申していますのよ!」

 

「自己紹介のときに俺が言ったこと、もう忘れたのか?俺はココ、IS学園に興味ないんだよ。だから、出来なかったら出来ないでかまわん」

 

「なっ?!」

 

 オルコットが怒りで真っ赤になるのを、自分でもわかるくらい半眼になって眺める。自覚できるぐらいだから、周りの皆もわかってるだろう。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 オルコットが怒りに任せて言葉を吐き出そうとしたタイミングで始業のチャイムが鳴る。

 

「っ……!また後で来ますわ!逃げないことね!」

 

 捨て台詞を吐くオルコットから視線を外し、さっきまで一緒に話していたクラスメイトに『わり』と短く謝罪を入れて、授業の準備に移った。

 

「この時間は、実践で使用する各種装備の特性について説明をする」

 

 “織斑先生”が授業を行うようだ。山田先生は教室の前、窓側に椅子に座って聴く態勢だ。さっきの授業で言っていたように、“一緒に学ぶ”様だ。しっかりとノートをひざに広げている。

 

「ああ。その前に、再来週行われるクラス対抗戦に出る、代表者を決めないといけないな」

 

 織斑先生が思い出したように言うと、手にしていた教科書を教卓に置いた。

 本当にこの人は教師なのだろうか?最後のHRで決めるべきことだろう。そういったことは。

 

「クラス代表者とは言葉の通り、クラスの代表として動いてもらう者だ。ようはするにクラス長だな。対抗戦は、現時点での各クラスの実力を大まかに測るためのものだ。今の時点での差など、たいしたことは無いが、クラスの団結の一環と、クラスごとで競争による向上心を持たせるために行う。ちなみに一度決まると一年間変更は行われない。そのことを含めて決めろ」

 

 教室中が色めき立つ。クラスの面倒を押し付けられるのだ。肉体的にも、精神的にも。けどまぁ、ここで目立つことが出来れば将来の就職に有利だ。その上成績に加味されることもありうる。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

 

 はぁ。今、俺推薦したの誰だよ…。

 

「では、候補者は織斑一夏……。他にはいないか?自薦他薦問わないぞ。……いないのか?いないなら無投票当選だぞ」

 

 織斑先生の言葉に、反論しようと思ったところで、教室に甲高い声が響いた。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 机を叩くように立ち上がったのはオルコットだろう。振り返らなくてもわかる。

 

「そのような選出認められません!男がクラス代表だなんて屈辱を、このセシリア・オルコットに一年間味わえとおっしゃるんですか!?」

 

 色々ヒートアップしてるなぁ。

 

「わたくしはこの極東の僻地までIS技術の修練に来ているのであって、恥をさらすためや、屈辱を受けるために来ているのではありません。ただでさえ、文化的に遅れの著しい島国で暮らすという屈辱を味わっているというのに―」

「それくらいにしといた方が良いんじゃないか?」

 

さすがにそろそろ止めたほうが良いと思ったんだ。織斑先生は止める気が無いのか、腕を組んだままだんまりだし、山田先生はおろおろとしている。

 

「それ以上色々言うと、まずいんじゃないか?」

 

「あなたですかっ!いったいなにがまずいとおっしゃるんですの?わたくしは事実を述べているだけですわ」

 

「あぁ。うん。なんかカチンときた。とりあえず、俺がオルコットさんを推薦した上で、他薦されたことに関しては辞退するからさ。あとは好きにしなよ」

 

 けどさ。優しく語りかけるように呟いて、続きを言ってやる。

 

「クラスからの応援は期待するなよ」

 

 俺を含めてクラスのほとんどが白い目をオルコットに向けている。

 当たり前だろう。クラスの9割は日本人なのだから。

 

「というわけで、クラスの代表は決まりました。まさか、自らやりたいという生徒の意思を無視して、やる気の無いものと決選投票とか言い出さないですよね?織斑先生」

 

 何か言おうとしていた織斑先生を遮るように言い切る。これでこちらの意見を飲まないようなら、クラスの全員を敵に回すことになるのは理解しているだろう。

 

「いいだろう。クラス代表はオルコットだな」


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