とある提督の日記   作:Yuupon

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 タイトルは九条くんが響にあると断定した属性です。
 それ以外に意味はない。

 それから夏イベントが始まりましたね。
 そう言えば最近艦これに触れていなかった事を思い出しました。
(結構長い間やってないくせに書いてる俺は異端)
 まぁ時間が取れないのもあったりしますが……イカが面白いんですこれが。
 とりあえずイベントは電ちゃん連れて頑張ります。←ロリコンではない。


36 不思議系クール中二病ロリ 響の日記

 

 

 

 かつて不死鳥と呼ばれた少女は九条の存在をどう思うのか。

 戦時中、沈まなかった彼女はどのような希望を見出すのか。

 これは、不思議系クール中二病ロリ。

 暁型駆逐艦の二番艦、響の日記である。

 

 

 

 S月B日、雨だよ。

 

 まず、始めに書きたい事がある。

 日記、というものを書くのは初めてなので少し緊張するな。とりあえず書いていこう、

 九条司令官についてだ。

 

 正直、初めて会ったときは気の良さそうな青年にしか見えなかった。

 私達の会話にもニコニコ笑いながら付き合ってくれたし、前司令官であった横須賀司令官がいうような天才にはとても見えなかったからだ。

 

 それを踏まえてなんだけど、今の私が抱く九条司令官のイメージはコレだ。

 側にいるだけで安心する人。

 まるで父のように優しく、強い。それでいて私達と対等に話し、深海棲艦との会話すら物怖じしない。

 ましてや戦艦棲姫とは直接交戦したとも聞いた。人間とは思えない人だ。

 

 さて……私は今の九条司令官が司令官になる前。電と共に見知らぬ深海棲姫と談笑する九条司令官の姿を見たことがある。

 私達に睨みを利かせた彼女を軽々と制し、ニコニコとした笑顔を崩さないまま。

 まるで、深海棲艦が恐ろしくないように。普通の人間に対する反応を九条司令官はしていた。

 

 電は、素直に嬉しそうにしていた覚えがある。もしかすれば、深海棲艦を沈めなくても良い道があるのかもしれないと。

 だが、対照的に私は心底恐怖していた。

 過去を、思い出してしまうのだ。雷が、暁が、電が沈んでいく姿を。

 船だった頃の私を。

 

 恐らく、敵を無意識に米軍の軍艦と照らし合わせてしまっているのかもしれない。

 それでも、私は怖かった。

 一人ぼっちで、周りには誰も居なくなって。勝てないのが分かっているのに戦って。生き残って。

 

 『不死鳥』。そのように評されていたが、私には皮肉としか思えない。

 それか、枷だ。死なない船、としての枷。司令官が行っている行為は、敵との新たな道を作れるかもしれない行為だと理解しているが、怖い。

 それが失敗すれば?

 そうなれば全ては水の泡だ。幸いにも司令官の指揮は素晴らしく、未だ敗北はしていない。

 それでもいずれ敗北は訪れる。

 だから私は、怖い。敵を恐れず、生身で敵に向かっていける司令官が理解出来なくて、怖い。

 

 だから私は港湾棲姫が攻めてきたと聞いたとき、恐怖を感じた。死を覚悟した。

 それなのに、司令官は簡単に勝利した。

 神がかった妙手。無茶苦茶とも呼べる指示をこなしてしまう力量。

 圧倒的だった。

 

 驚くほどにアッサリと港湾棲姫は撃破された。

 ……おかしい、と私は思う。

 そもそも艦の数からして勝ち目はないのに。それなのに勝ててしまう。勿論指揮の力や私達の動きがよかったなどの理由はあることだけど、それでもあまりにも異質だった。

 恐らく、違和感を抱いているのは私だけなのだろう。

 逆に言えば、私以外の皆は司令官を信用しているのだ。彼の指揮は常に最適で、万が一の間違いもない。

 事実その通りだ。だが、偶々それが崩れるかもしれない。

 

 だから、私は。私だけは一瞬たりとも油断はしない。

 今度こそ、姉妹を守る為に。

 

 

 

 S月C日、気持ちの良い晴れだ。ハラショー

 

 

 心臓が跳ね上がる、という描写の意味が分かった。

 これほど驚愕したのは初めてだ。正直、攻撃する前に動きを止めた自分に賞賛を送りたい。

 とりあえず落ち着いたから、書こう。

 北方棲姫が居た。

 まごう事なき北方棲姫だった。敵の、それも姫級。かつて電と見た敵の姿は一瞬で私を臨戦体勢へ移行させそうになった。

 

 が、よく見るとおかしな部分があった。

 北方棲姫は、タコ焼き型の武器を扱う、と聞いていたのだが、その北方棲姫はポンポンのついた帽子をかぶっていたのだ。

 司令官に尋ねると、妖精さんの洗濯機に放り込んだらこうなった、という訳のわからない返答をされたよ。

 本当に意味が分からない。

 

 とりあえず、雷に過去の出来事を話す事で司令官への危険性を一応伝えておく事にした。

 特に北方棲姫だ。どう考えても危険過ぎる。

 雷も分かってくれたのか、『一応気をつけておくわ』という返事をもらった。

 

 

 

 S月D日、晴れだよ

 

 

 今日あった事を簡単にまとめてから本題に入ろう。

 とりあえず今日は一日中北方棲姫を監視した。司令官が壊した携帯を買い換えているとき。食事をしているとき。

 とにかく一日中だ。

 しかし、北方棲姫は何のアクションも起こさなかった。それどころか、司令官に頭を撫でられては気持ちよさそうにしている。まるで子供のように。

 

 子供といえば、雷も頭を撫でられては気持ちよさそうに目を細めていたが。

 

 とにかく、一日が終わった後。

 私達は意を決して司令官に北方棲姫について尋ねてみた。

 

「深海棲艦だからとか、人間だからとか。そんなモンは関係ないんだよ。俺はさ人種とか人外とか関係無く、ソイツが苦しんでいたら助けたいだけだ。綺麗事かもしれないけど、そうしたいって本気で思ってる」

 

 長い時間を使って語ってくれた。

 深海棲艦に対する思い。私達に対する思い。人間に対する思い。包み隠さずに教えてくれた。

 その上で、私はこんな質問をした。

 

「……司令官は怖くないの? 深海棲艦が」

 

 一瞬、司令官の目が驚愕の色を帯びた。だが、私の質問の意図を察したらしい。

 はっ、ーーーーと。

 そう問われた司令官は小さく笑って、

 

「そりゃあ、怖いよ。でもそれは深海棲艦に限った事じゃない。俺が立ち向かうって決めた相手は皆怖いさ。だってそうだろ? 俺は元々ただの学生だぜ? そんなの怖いに決まってる」

 

 言い切って、司令官は真剣な顔を向けた。

 そして大人な笑みを浮かべて、私達の頭を撫でる。

 

「それでも、逃げちゃ駄目だ。俺がそこでソイツを見捨てちまったら、ソイツを助けてくれるヤツが次いつ現れるか分からない。そして何より、俺が認められない。認めたくないから、俺は手を伸ばすんだ」

 

 二人にもいつか分かるよ、と言う司令官の手は温かくて大きかった。そして何より、どこにでもいるのような学生の言葉だった。

 雷はその一言で疑うのを止めたようだ。

 私は、何を考えているのだろう。

 

 とにかく、私の意見は変わらない。まだ一%だけ、司令官を疑う気持ちは残っていた。

 もし、この一%が無くなれば。

 その時こそ、私は本気で彼の駆逐艦として生きる。

 

 その覚悟を、した。

 

 

 

 S月E日、晴れだよ。

 

 

 今日は横須賀鎮守府との演習があった。

 電が大慌ての獅子奮迅だった。

 書いていて意味が分からないけど、実際にそうだったのだから仕方がない。

 にしても、愛宕さんは自重して欲しい。

 電と暁が顔を真っ赤にしていた。

 ……私もあそこまでのアピールは少し、恥ずかしいな。

 

 

 S月F日、晴れだよ

 

 

 慢心、だったのだろうか。

 一つ私は失念していた。

 

 敵は深海棲艦だけじゃない(、、、、、、、、、、、)

 

 司令官が数日前に話していた。敵は深海棲艦だけではないという言葉を、私は本気で受け取っていなかった。

 だから気付けなかった。

 

 気付いた時には遅かった。殴り倒され、艤装を奪われ。

 何が不死鳥なのだろう。

 武器をもがれた私達は見た目通りの力しか出せない。

 雷を守ることも、ようやく話す事が可能になったほっぽと連携をとることもできない。

 詰んでいた。という表現が正しいのかもしれない。

 咄嗟に一撃目だけは雷を庇えたが、それだけだ。辛うじて意識があっただけで、何も出来なかった。

 

 そして雷も倒されてもう駄目だ、と思った時だった。

 カツッ、と靴音が聞こえた。

 コツコツと響く音で、私は誰かが来た事に気付いた。

 

(……駄目、危ないの、に)

 

 その時の私は混乱していた。だからこそ、運悪くこのような場面に出くわしてしまった一般人を近寄らせない為、離れるよう声を出そうとした。

 のに、

 

「離れろよ、テメェ」

 

 その声には聞き覚えがあった。

 毎日のように聞く、声だ。

 

「今すぐ離れろ、このクソ野郎」

 

 ザリッ、と地面を踏みしめる音が聞こえた。

 顔を上げて、私は気付いた。

 

「テメェ、何に手ェ出したのか分かってんのか?」

 

 司令官がいた。憤怒に顔を染めた司令官が。

 拳を握り、私達を襲った相手を睨む司令官が。

 そして司令官は私達へ顔を向ける。

 

「悪い、待たせた。今からコイツをぶっ飛ばすからーーーーそこで見て待ってろ」

 

 結果的に司令官はその白い男を倒した。

 しかし殴った時に怪我を負い、何度か相手の一撃を受けていた。私達を守る為に怪我を負わせてしまったのだ。

 

 仮にも私達は艦娘である。それなのに司令官に守られてしまった。それも、心のどこかで疑ってしまっている司令官に、だ。

 ……心がモヤモヤする。

 私達の為に戦ってくれた姿を見て、気付いてしまったんだ。

 

 司令官の思いは本物(、、、、、、、、、)だと。

 

 一%の可能性なんて、元々無かったんだと。

 だからこそ私の気持ちは複雑だ。

 

 

 

 S月H日、晴れだよ

 

 

 雷の提案で、今度こそ司令官を守る為に身辺警護をする事になった。

 で、気付いたら司令官の布団の中に潜り込んでいた。雷に乗せられてしまった感が否めない。もしかすると私は人に騙されやすいのかもしれないが、それはともかく。

 それとなくだけど怒られてしまった。

 雷とほっぽは堂々としていたけど。

 

 やっぱり……恥ずかしいな。

 

 

 

 S月I日、晴れだよ

 

 

 金剛さんが合流した。デートだなんだと騒いでいたが、往来で抱き合うのはやめて欲しい。

 ……うん、最近多いけど、恥ずかしいな。

 でも周りから子供三人ってという声が聞こえたのはどうかと思うよ。実際には抱きついた金剛さんの姿が一昨日の私達と重なってしまった事で変な気持ちになっていた。

 助かった、そんな思いで抱きついた一昨日の私達の姿と少しだけ重なって見えたのは気のせいだ。

 だけど、私はどうも不可解な、味わった事のない気持ちを感じていた。

 

 きっと周りから見たら変な様子だった事だろう。

 グルグルと心が安定しなかったのを覚えている。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 さて。それから私達は東京ネズミーランドへ行った。

 気晴らしもかねてらしい。お化け屋敷に入る時になって、やけにみんなが入りたがる意味がわからなかった。

 ……認めよう、私はお化けが怖い。

 暁よりはマシだけど。暁よりは。

 

 ……泣いてなかっただろうか。一日中楽しかったけど、翻弄されっぱなしの一日だった。

 明日もここで遊ぶらしい。電と暁も居れば、良かったんだけどね。




 
『一言』
 響ちゃんのなんとも言えない気持ちの描写に手間取りました。
 ちなみにお化けが怖い設定はオリジナルです。暁を出したい(ツンデレロリが書きたい)

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