とある提督の日記   作:Yuupon

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前に感想で一話で終わらせると書きましたが、思いの外大和さんが真面目過ぎたせいで長くなりました。
多分、横須賀提督と同じように四話使うかもしれません。
(一部だけ書くのが無理だったよ……)

まぁ説明にもなって良いかな、とも言えますが。

そして艦これイベント。
多分攻略不可能ですね。Eー2が突破出来るかどうか……。

そしてお気に入り2500突破ありがとうございます!
と思ったら2700突破していた。本当にありがとうございます

追記、2015年2月19日、テスト期間につき更新が遅れています


15 秘書艦・大和日誌

 

 

 戦艦大和は何を思うのか。九条に出会い、何を感じるのか。

 そして、九条を見てどう思うのか。

 これは、戦艦大和の見た世界である。

 

 

 

 ☆月α日

 

 

 日差し良好。絶好の海日和。

 燦々(さんさん)と照らす太陽の下、私達は自分達の拠点となる無人島へと辿り着きました。

 

「提督。お茶をどうぞ」

「あぁ、ありがとう」

 

 ここに辿り着けたのは何と言っても提督のお陰と言う他ないでしょう。

 途中で乗船中の船に魚雷を当てられたにも関わらず、それを提督が完璧な指示で修復させたお陰で無事に私達は此処に辿り着くことが出来たのですから。

 

「しっかし、安全だと思っていたが思いの外危険だったな」

「えぇ、そうですね」

 

 提督の愚痴のような言葉に私は同調しました。確かに、まさか解放済みの海域に敵艦が居たとは思ってもみませんでしたし。

 後から確認を取ったところ駆逐ハ級が数体居たそうです。

 しかしそれも提督がその場に居た妖精さんに命令し轟沈させたと妖精さんから聞きましたので、やはりこの方は有能であられると理解出来た分良かったかもしれません。

 

「んで、此処が拠点か。何つーか、無人島に鎮守府をポンと置いただけみたいだな」

 

 そう言って提督が指差す先には、あぁ。確かに鬱蒼と生い茂る森の中にポツンと小さな鎮守府がありました。

 見た感じでは殆ど整備もされていないようです。最前線だからか、かなり急ごしらえのようにも感じられました。

 

「まるで左遷みたいだなオイ。元帥さんにモノを強請ったのが悪かったのか?」

「……元帥、ですか?」

 

 提督がやれやれ、と言いたげにそう呟いた言葉に聞き逃せない単語があり、私は聞き返しました。

 すると一枚の書類をこちらに見せて、

 

「ここに書かれてる最新鋭の移動用の船やら何やら。それからその他諸々を貰ったんだよ。まぁ、ぶっちゃけて生き延びる為に必要だと思ったからな。最新鋭の船や戦闘機。それから潜水艦は完全に目的地指定すれば敵艦の攻撃を自動感知しながら動けるし、小回りきくし。何より速いし。戦いじゃ使えないけど、移動用とか物資運ぶ用には使えるからな」

 

 成る程、それで。と提督の言葉に納得し掛けてハッ、と気付きました。

 

「ちょ……ちょっと待って下さい提督。元帥に強請ったって」

「オイオイ、普通に考えてくれよ。俺はただの学生だぞ。そのごく一般的な学生である俺をこんな戦いに巻き込むんだからちったぁ融通してくれたって良いだろって考えだ。それに元帥だって快く譲ってくれたし問題はナッシングだよ」

 

 ……どうやら提督は中々に交渉上手なようです。普通じゃないくせに、ごく普通の学生を巻き込んだ。と皮肉を入れているあたり相手に交渉の軸を握らせないようにしているのがより黒く見えます。

 とは言え、ただのお人好しや指揮が出来るだけの提督では心配だったので一安心とも言うべきでしょうか。

 

「ついでによ、この島の名前まで決めろだと。何、何ですか。海軍は九条さんに何を求めてんですかねぇ」

「恐らく箔をつける為では?島に名前を付けるなんて中々ありませんし、それに最前線に送られるというのも有能である証ですから」

 

 そう言うと提督は溜息を吐きました。面倒なのか、それとも何か別の考えを持っているのか。

 ……私のような者では、目の前の天才が今、何を考えているかなど到底理解出来ないでしょうが。

 そして提督が空を見上げた時、丁度青空が一変して曇りへと天気が変わりました。

 それを眩しそうに見つめ、彼は口を開きました。

 ……どのような言葉が彼の口から飛び出すのか。少しばかり楽しみにしていた私は。いや、楽しみにしていたからこそ次の発言に思わずツッコミを入れてしまいました。

 

「……あぁ、空はあんなに青いのに。何で俺の心は曇っているんだろう」

「曇ってんのはアンタ(提督)の目だ!!」

 

 

 

 その後、提督はこの島の名前を神無島(かんなしじま)と、名付けました。

 同様に鎮守府名も神無鎮守府(かんなしちんしゅふ)に決定されたのですが……、

 

「この世界に神は居なかった!!」

 

 皆が部屋から退室した後、一人叫んでいた提督の姿が気になったのは内緒です。

 ……もしかしたら情緒不安定なのかもしれません。しっかり見ておかないと。

 

 

 

 

 

 ☆月β日。

 

 

 出撃が出来ない。その言葉を聞いたのは司令室での事でした。

 

「一言で言えば戦艦は無理だな。資料を見る限りでは駆逐艦でも一海域行けるかと言った所だ。と言うわけで暫く出撃はしない。方針としては駆逐艦で遠征をして、資材を溜める。後はこの鎮守府の正確な地図を作る事と住んでいる生物の把握と保全。それから防御機能を造る。良いな?」

 

 一息にそう言った提督の言葉は、まぁ非の打ち所がない言葉でした。

 と言うよりも資材を分かりやすくグラフにして、ゲームちっくに説明してくれたので駆逐艦達にも理解しやすいように説明してくれた時点でちゃんと考えているのだな、と思えましたね。

 

「それで、造る防御機能なのだが。コレだ」

 

 そう言って提督は大きなポスターのようなモノを開きました。

 そこに載っていたのは、海軍で主に使用される防御機能の数々です。

 

「とりあえず全部作るのは機能が被ったりするから、最低限のものを選別しておいた。とは言え個人的には予備も兼ねて全て造りたいし、その資源やら資材も足りないからそれの対策もしたいけどな」

 

 仕事が早い。素直にそう感じました。

 成る程、流石アレだけの功績を数日で打ち立てた方です。脱帽しか出来ませんね。

 

 そもそもアレだけのリストを全て見て、その中から必要なモノの選抜。

 その為に使える資材と、これから溜める為にどの程度残す必要があるのかと言った計算。

 そしてそれらがこの島の生態系にどのような悪影響を及ぼすかの想定と、その保全。

 更に私達の説明の為の情報整理。そして説明。

 私達の運用資材の計算に加え、練度から想定される遠征可能なエリアの選定。

 極め付けは、完璧な行動指針。

 

 これをたった1日で計算し、行動を宣言出来る提督が果たして何人居るかどうか。

 居たとして、実際に行動出来るのかどうか。

 

 しかし、彼が提示した道筋は。例え異常(イレギュラー)が起こったとしても対処出来るかのような完璧な計画。

 

 

 あぁ、成る程。と私は唐突に理解しました。

 

 ーーこれが、九条提督なのだと。

 

 これが、若いながらに元帥に認められた天才。

 

 ーーーー九条 日向(くじょう ひなた)という人間なのだと。

 

 

 

 

 ☆月γ日。

 

 

 

「提督、お飲み物はどうしますか?」

「カル○スで。少し濃いめでよろしく」

 

 今日も提督は私より朝早くから仕事をしていました。時刻にして朝の6時。昨日寝たのも私より遅かったので、一体いつ寝ているのが少し気になりました。

 

「……提督、お身体大丈夫でしょうか。無理はいけませんよ?」

「あぁ、まぁ慣れてるし。大丈夫大丈夫」

 

 カラカラと笑いながらそう言ってくれたのですが、目の下には薄い隈が出来ていたので寝不足に違いありません。

 やらなくてはならない事が多いのも分かりますがもう少し休憩を取るべきでしょう。

 

「提督、今は何を?」

「あぁ、今日から始める遠征の消費資材の予想だな。駆逐艦とはいえ、潜水艦じゃあるまいしそんなに資材を取れるとも思えないから。殆ど練度を上げるだけの事になりそうだし」

 

 カチカチ、とパソコンを弄りながら提督がそう言いました。ふむ、成る程。つまりどの程度資材を消費するかの予想。それからそれによってどの程度練度を上げられるかという計算ですか。

 普通に考えたらやってから表を作るべきだと思うのですが、先に予想を立てておく事で次に予想を立てる時に前回の予想からどの程度数値がズレていたから次はこの程度だろうと言った具合に正確な予想が出来るようにしたいのでしょう。

 

 ……なんだか提督が未来予測の人工知能のような気がして来ました。

 

「とりあえず大和、悪いけど朝食を作って貰えないかな?今手を離せないし。それに大和の料理美味いからね」

「分かりました。皆は何時頃に起こせばよろしいですか?」

「とりあえず7時過ぎで良いよ。多分金剛辺りがそろそろ起きてくるだろうし、今の時間帯に四人を起こすのは何だか可哀想だし」

「かしこまりました」

 

 ……にしても真面目な方ですね。私も人よりは真面目なタイプだと思っていたんですが、提督と比べるとどうしても自分が働いていないようにも思えます。

 まぁ、言っても仕方がありません。とりあえず提督の飲み物を入れてから朝食を作る事にしましょう。

 

 

 そして食堂で飲み物を入れ、それを持った私は司令室のドアを叩きました。

 

「どうぞ」

「あれ、大和さんデスか?goodmorning(グッドモーニング)デース!」

「おはようございます金剛さん、……それで貴女は何を?」

 

 どうぞ、の声が聞こえた私は司令室に入ったのですが、そこに居たのは提督に抱きついて頬ずりしている金剛さんと、少し嬉しそうな表情を浮かべつつも弱ったな、と呟く提督の姿でした。

 

「で、金剛さん。この俺に貴女は何をしているんです?」

「提督から提督成分を貰っているんデース!元気百倍になりますネー!」

 

 何と言えば良いのでしょうか。何となく目の前の光景に私は苛立ちを覚えました。

 ……にしても提督も提督です。抱き着かれてデレデレして。こんなのでは一人前の提督ではありません!

 

「えっと……とりあえず離れて頂けると嬉しいんですが?」

「NOデスね!まだまだ提督成分が足りセーン!」

 

 少し嫌そうに言っている割に表情が緩んでいるのはお見通しです。ムッ、何だか胸の辺りがムカムカします。

 この感情は何でしょうか。

 

「提督お飲み物を。そして金剛さん!もう少し節操を持ちなさい。それに提督も提督です!嫌そうに言っている割に表情が緩んでます!」

 

 思わずお説教のような事を言ってしまいました。うーん、どうしてでしょうね。

 まぁ、金剛さんに節操が足りないのは既に分かっていましたので正解だとは思いますが。

 

「oh、仕方がありまセーンね。分かりました」

 

 渋々、と言ったように金剛さんが提督から離れました。乗っかられて身体が痛かったのか提督が立ち上がり軽く伸びをした後に、私の手から飲み物を受け取ろうとして、

 

 それは起こりました。

 

「のわっ!?」

「きゃっ!?」

 

 突然、足元を滑らせた提督が私の方へと倒れこんできたのです。

 余りに突然の出来事にソレを回避する事が出来ず、私は提督と一緒に倒れこみました。と、同時に持っていたジュースがバシャッ、と私に掛かります。

 

「冷たッ……ひゃっ!?」

「いて……ってアレ、何だこれ。何か柔らかいけどズレたようなーーッ!」

 

 胸の辺りから感じる手のような感触。それが私の胸に入れていたPadをズラし、その中にある胸を弄って……、

 

「きゃぁあああああ!!」

「これ……まさか胸。いや、OTSUPAI(オッパイ)!?それにこれってまさかPadじゃ……」

 

 そこまで言った提督は顔を青ざめました。頬から冷や汗がポロポロと流れ始め、自分が触っているものを確認するかのようにゆっくりと指先を見つめます。

 

 しかし、私にとっての不幸はまだ終わりませんでした。

 バタンッ!という大きな音を立てて勢い良く四人の少女達が部屋に乱入してきたのです。

 

「提督!?今の悲鳴っ、て……」

「何があったの!?凄い音、が……」

「な……なのですっ……!?」

「ふむ、どうやら提督は欲求不満のようだな」

 

 暁、雷、電が私達の方を見つめて顔を真っ赤に染めました。響だけが冷静に呟きますが、それは勘違いです。

 

「て・い・と・くゥ〜?」

「待て!頼むから待って!これは事故だ!不幸な事故なんだ!」

 

 上から睨みつけるかのように金剛さんが呟きました。その声に危機感を感じたのか提督が弁明しましたが、どうやらそれは意味の無い事だったようです。

 

「ならどうして大和さんの顔にアレが付いているんだ?完全にヤったとしか思えないのだが」

「……えっ?」

 

 起き上がろうとした私の顔を指差して響が言いました。それを確認するためかジッと、私の顔を見つめた提督が固まりました。

 終わった、と言わんばかりの絶望の表情。

 

「なぁ皆。これ、カル○スなんだけど。って言って納得する?」

「な……なのなのなのででで」

「い……電!しっかり気を保って!」

「えっと……一人前のレディーはこんな事を」

「しないね、と言いたいけど匂いで分かるよ。とはいえ、多分この三人はまともに状況把握出来ていないから信じてくれないと思うよ?」

 

 提督の言葉に唯一響だけがまともな返答を返しましたが、そんな言葉では意味がありません。

 そもそも、この中で最も怒っているのは私ですから。

 

「提督以外出ろ。今すぐにだ」

「な……なのなのなっ!!わ、分かったのです!」

「は……はい!分かりました!」

「べ、別に見たくなかったとかそういうわけじゃないんだからねっ!!」

「とりあえず死なない程度にお仕置きしておいたほうがいいと思うよ」

「……仕方ありまセーンね。一番怒っているのは大和さんですし、此処は譲ってあげるのデース」

 

 ニッコリとした笑顔でそう言うと、五人はそれぞれ言いつつも直ぐに指令室を後にしてくれました。残されたのは提督と私の2人だけ。

 

「……で、何時まで触ってんですか?エロ条提督。胸か?胸が良いんですかエロ条」

「えぇ……っと。結構なモノをお持ちで。じゃなくて!ご、ゴメン!!」

 

 慌てて胸から手を離し、提督は私の顔をまるで圧倒的弱者であるかのような。機嫌を窺うような表情でこう言いました。

 

「えっと……今回は事故という事で解決でよろしいです、か?」

「よろしいと思いますか、て・い・と・く?」

 

 今、私の表情は般若のような顔に違いありません。あくまで冷静ではありますが。いえ、冷静であるからこそ私の表情は怖いものになっていると予想出来ます。

 

 そして私は思ったままに提督へのお仕置きをしました。

 暫くの間断末魔のような悲鳴が鳴り響いたのは書くまでもありません。

 

「もうじばけありませんでした(申し訳ありませんでした)」

「大きい胸より小さい胸!リピートアフタミー!」

「大きい胸よりぢいさい胸!つか、さっき触った感覚だとCカップは確実、へぶッ!!?」

「良いから黙ってリピートしなさいッ!」

 

 服を整えた私は提督にリピートさせていました。女性が気にしている事を突っ込むなんて最低な野郎です。

 もう九条提督とは呼ばずにエロ条提督と呼んでやります。

 

「大和の胸は本物の胸!サンハイ!」

「や……大和の胸は本物ってまて、あれ完全にPadだろ、くわらばっ!!?」

 

 結構強めに殴り飛ばします。暴力ではありません。愛の鞭。もしくはお説教の延長です。だから何の問題もありません。

 

「貧乳はステータスだ!希少価値だ!!サンハイ!」

「ひ……貧乳はステータスだ!希少価値だ!つかお前は充分巨乳だと、そげぶっ!!?」

「何処までも私を怒らせたいようですね九条日向」

 

 自分でも驚くほど低い声が出ました。そして再び肉体言語もとい、お説教を打ちます。

 

「小さい胸こそ夢がある!」

「小さい胸こそ夢がある!!」

「誰が貧乳ですかエロ条提督!!」

「だからさっき巨乳って言っただろ、南無三ッ!!?」

 

 更に説教を続けるとエロ条提督の顔が青ざめるを通り越して真っ青に変わりました。どうやら死にかけているようです。

 理不尽だ……、という言葉が出てきましたが、どの口からその言葉が出てくるのやら。さっぱり分かりませんね。

 

 そして、事の顛末を皆に説明した私はエロ条提督を放置してその場を去りました。朝食?そんなの私が食べちゃいましたよ。

 ……全く、初犯である事と事故だった事からこの程度で許しましたが次は絶対に許しません。唯一の男性なのですからもっと節操を持って欲しいですね。

 

 にしても、彼の身体はどうなっているのでしょうか。午後には怪我一つ無くなり完全回復していたのを見ると、完全に人間ではないような…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そう言えば活動報告を上げてみました。
良かったら見て下さい

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