大丈夫だ、問題しかないから。 -Toward sky- <2nd Season>   作:白鷺 葵

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24.宇宙へ向かって

「スミルノフ少尉。今回の取材の件ではお世話になりました」

 

 

 「今回の取材はとても有意義なものでした」と、絹江は清々しい笑みを浮かべて一礼した。

 

 少し前のアンドレイだったら、きっと、絹江の動作1つ1つに見惚れていたであろう。しかし、今は、自分の中にある不信の芽吹きがそれを阻害していた。

 絹江に合相槌を打つ己の声のなんと平坦なことか。アンドレイは、冷めた様子で自分のことを――そうして、ジャーナリストたちのことを眺めている。

 

 シロエもマツカも、いい笑顔だ。どちらの表情も、「アロウズの密着取材は有意義なものであったと」語っている。その表情に疑いの余地はない。

 故に、不信が募るのだ。彼女たちが反政府組織(『スターダスト・トレイマー』)の工作員であれば、“アロウズの密着取材という潜入活動は有意義なものだから”である。

 しかも、3人から取材の完了を告げられたのも先日のことだ。当初の予定ではもう少し長い期間密着取材を続けるはずだったのに、急遽取材を切り上げたのだ。

 

 

(私がオートマトンの真実を知ったのと同じタイミングだなんて、これは何かある)

 

 

 アンドレイは訝しみながら――勿論、表情には出さないが――3人を見返した。

 もし彼女たちが反政府組織の工作員であるならば、アンドレイはずっと騙されていたことになる。

 

 沸々と湧き上がってきた感情を、何と言おう。怒りか、悲しみか、アンドレイには判別できそうになかった。

 

 

「絹江さん」

 

 

 アンドレイは絹江を呼び止めた。絹江は目を瞬かせ、アンドレイを見返す。榛色の瞳に、険しい顔をした軍人の顔が映っていた。

 

 

「貴女は――貴女たちは、本当に、“ただのジャーナリスト”なのですか?」

 

 

 責めるような口調のせいか、絹江たちは驚いたように身を竦ませる。その眼差しには動揺が浮かんでいた。

 アンドレイの疑念が正しいのか、間違っているのか、今の時点ではまったく判断できない。

 返答に窮したような3人の様子が引き金になった。アンドレイは声を張り上げ、ジャーナリストたちに詰め寄る。

 

 

「あのとき投入されたオートマトンは、“反アロウズの人間のみを襲う”仕組みです。実際、あそこでオートマトンによって殺された人間たちはみな、反政府組織『スターダスト・トレイマー』に所属していたテロリストばかりでした。しかも、オートマトンには起動時の不備など存在しなかった。つまり、正常に動いていたんです」

 

 

 そこまで言って、アンドレイは一端言葉を切った。腰の銃に手を伸ばしながら、絹江に問う。

 

 

「正常に動いていたオートマトンが、貴女方を襲った。――それが何を意味しているのか、教えていただけませんか」

 

 

 返答次第では、アンドレイのすることは変わってくる。自分は独立治安維持部隊に所属する軍人だ。

 世界の治安を乱す者は、ここで撃たねばなるまい。それが、軍人であるアンドレイの役目だった。

 

 絹江はシロエとマツカの方に視線を向けた。何か躊躇うような表情だ。シロエとマツカも絹江と同じ気持ちらしい。

 

 3人はしきりにアイコンタクトを繰り返している。3人の仲が良いことは知っていたし、つい先日までのアンドレイはシロエやマツカに対して妙な苛立ちを覚えていたこともあった。

 今も、ほんの少し苛立っている。アンドレイだけのけ者にされているような気がして腹立たしい。……実際、アンドレイはシロエやマツカにとって邪魔者なのだろうが。

 

 

「スミルノフ少尉」

 

 

 口を開いたのは、シロエだった。

 

 

「貴方は、4年前にユニオンおよびタクマラカン砂漠で起こったMDの暴走事件をご存知ですか?」

 

「ああ。戦闘中にMDが突然暴走し、ユニオンのパイロットたちに襲い掛かった事件だな。後に、『MDには、共有者(コーヴァレンター)を優先的に襲う』ような欠陥があったと聞く」

 

 

 シロエの話を聞いたアンドレイは、ふと思い至った。そういえば、アロウズが持て余しているライセンサーの男――ミスター・ブシドーも、元々はユニオン軍に所属していたと聞いたことがある。ユニオンでのMD暴走事件、タクマラカン砂漠でのMD暴走事件の現場にも居合わせていたらしい。閑話休題。

 

 

「今回の一件は、それと同じなんです」

 

「は?」

 

「この資料を見てくださ……うわぁ!」

 

 

 シロエの説明を引き継ぐようにして、マツカがわたわたと鞄から資料を引っ張り出そうとして床にぶちまけた。

 いくら疑いを賭けていようと、困っている一般人(限りなく黒に近いグレーだが)を見捨てる程、アンドレイは人でなしではない。

 慌てて資料を拾い集めるマツカの手伝いをするため、彼の元に駆け寄った。マツカの感謝の言葉を聞きながら、アンドレイは資料を拾い集める。

 

 そうして、ふと、目を留めた。

 

 犠牲者全員の共通点は、『スターダスト・トレイマー』の人間である以外にもう1つあった。欄の脇に『共有者(コーヴァレンター)』もしくは『虚憶(きょおく)保持者』と小さく書かれている。しかも、書かれている場所的にも、文字の大きさ的にも分かりにくい。

 その文面を目で読んだとき、アンドレイの脳裏に嫌な考えが浮かんだ。もし、この記述が本当だったとしたら――オートマトンによって殺された人間の中には、反政府組織と何の繋がりもない、「能力を有していただけの一般人」がいた可能性が出てくるのだ。

 

 

「これは……」

 

 

 アンドレイの口元が戦慄いた。

 

 アロウズの上層部は、オートマトンは正常だったと発表している。オートマトンによって殺された者たちは全員テロリストだった、とも。

 おまけに、一般市民に対する発表も、この情報を得たマスコミの動きも、アロウズの発表が正しいのだと大々的に放送していた。

 

 

「スミルノフ少尉」

 

 

 アンドレイがその結論に辿り着いたのを察したのだろう。マツカが神妙な顔で頷いた。

 

 

「僕も、シロエさんも、絹江さんも、あの場で出会ったルイスさんも、共有者(コーヴァレンター)なんです」

 

 

 思い切り、頭を殴られたような衝撃に見舞われた。アンドレイは銃に伸ばしていた手を離し、強く握りしめる。ざり、と、手袋がこすれる音が響いた。

 なんてことだ。それじゃあ、アロウズは。自分が所属する組織は、一般市民を虐殺している可能性があるというのか。市民を守る軍人が、市民を惨殺した?

 アンドレイが誇りとしていたものが瓦解していく音が聞こえてきた。己の矜持を、他ならぬ己自身の手で踏みにじった可能性に、アンドレイは体を戦慄かせる。

 

 倒れないでいられたのは奇跡に等しい。

 愕然とするアンドレイの名前を、絹江が呼んだ。

 

 

「スミルノフ少尉のような人がいてくれることが、アロウズにとって唯一の救いです」

 

 

 絹江はアンドレイに微笑みかけると、哀しそうに俯いた。

 

 

「オートマトンの襲撃で亡くなった人たちの中には、私が懇意にしていた友人や情報提供者、取材先でお世話になった人……たくさんいたんです」

 

「絹江さん……」

 

「私たちは、亡くなった人たちのためにも、真実を解き明かしたい」

 

 

 絹江の瞳は揺らがなかった。乙女の気丈な眼差しに、アンドレイの胸の奥が締め付けられるように痛む。その佇まいは正しく、正義の女神――アストレア、あるいはユースティティアを彷彿とさせた。正義の在りかを追い求める探究者とも言えるだろう。

 そのために、彼女たちは行くのだ。絹江たちの求める真実は、ここでの取材では手に入らないと知ったから。アンドレイの心配事は完全に杞憂だったと言ってもいい。杞憂どころか、1人で空回りして暴走したとも言える。なんだか申し訳なくなってきた。

 自分の馬鹿さ加減に呆れてしまいそうになって、アンドレイは目を伏せた。すみません、と紡いだ声は、酷く弱々しい。絹江をテロリストの一味と疑った自分が恥ずかしかった。とんでもなく失礼なことだったため、言葉にできそうにないのだが。

 

 改めて、絹江たちはアンドレイに頭を下げた。

 アンドレイもまた、絹江たちに頭を下げ返す。

 

 

「またいつか、お会いできるといいですね」

 

「ええ、楽しみにしています」

 

 

 絹江の背中を見送って、アンドレイは大きく息を吐いた。そのタイミングで、アンドレイの端末に指示が入る。

 

 

(次の作戦か)

 

 

 気を引き締めてかからなくては。

 アンドレイは拳を握り締めて前を向く。

 

 空は晴天であった。これ以上ないくらい、澄み切った空であった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 カイルス所属のソレスタルビーイングが、宇宙でアロウズと対峙した――その情報が入ったのは、つい数時間前のことである。そうして、エクシアがアロウズの新型機と戦い中破したという報告も、そのパイロットがミスター・ブシドーと名乗るグラハムだという報告も、つい先程齎された情報だった。

 ベルフトゥーロに呼び出されて『悪の組織』へ出戻りしていたイデアにとって、刹那の負傷は寝耳に水だったろう。クーゴにとって、グラハムがミスター・ブシドーと名乗ってアロウズの駒と化した挙句、刹那に重傷を負わせたという話が青天の霹靂なのと同じように。

 その情報が舞い込んできたのが“自分たちの専用機が完成し、1回目のテスト運用で上々の結果を叩きだせた”というタイミングだったのは、良かったのか悪かったのか微妙なところだ。本当はもう少し、テスト運用をしっかりこなしておきたかったのだが致し方がない。

 

 

「ほぼぶっつけ本番になりそうだが、致し方ないか」

 

「そうですね。心配事がこんなにあるんですから」

 

 

 端末を閉じてぼやいたクーゴに、イデアも神妙な顔つきで頷いた。

 

 休憩室の窓を見つめれば――格納庫を見下ろせば、つい先日ロールアウトされてテスト運用されたばかりのクーゴの新型機――はやぶさが、飛び立つ瞬間を今か今かと待ちわびていた。黒みを帯びた紺色の機体は静かに佇んでいる。

 その隣には、イデアのスターゲイザーをバージョンアップさせた新型機――スターゲイザー-アルマロスが佇んでいた。純白の天女という表現がよく似合う。武装面は強化されたのは当たり前だが、デザインが星型のものに統一されていた。

 

 

「カイルスの、他部隊の行方に関する情報はどうなってるんだ?」

 

「ナデシコはアロウズに制圧されて佐世保に抑留され、アークエンジェルはオーブで身をひそめてるらしいです」

 

 

 「スメラギさんから連絡が入りました」と言って、イデアは大きくため息をついた。半年前の戦いの後も、カイルスは各方面から執拗に攻撃を受けているようだ。

 同時に、クーゴが社会から死んだものとみなされてから半年経過したということでもある。半年の間に、世界は争いの泥沼へと突き進みつつあった。

 

 

「――カイルスは、今の世界を認めません」

 

 

 イデアは神妙な面持ちで呟いた。

 

 

「統一という名前の強引な支配を、見過ごすことなんてできませんから」

 

 

 紫苑の瞳は叫んでいる。世界に真の平和が訪れることを、心から望むと。きっと、カイルスに所属する他の面々も、同じ眼差しと理想を抱いているのだろう。

 立場が違えども、クーゴもイデアも平和を望んでいる。特にイデアたち――カイルスの面々は、己が世界から争いの権化と責められても、その理想を手放さない強さを持っていた。

 だから、カイルスは再び集おうとしているのだ。再び立ち上がろうとしているのだ。自分たちの大切なものを守るため、彼らが心から望んだ“真の平和”を勝ち取るために。

 

 強い決意を抱いたイデアだったが、彼女の決意を阻害するかのように間抜けな音がした。音の出どころは、イデアの腹部からである。

 途端にイデアは気まずそうに視線を逸らした。最近は、カイルスの動向やアロウズの暴走で頭と心を痛めていたのだ。その反動が出てもおかしくない。

 

 

「腹が減っては戦はできぬって言うしな。厨房で何か作ってくるよ」

 

 

 クーゴの申し出に、イデアはぱっと目を輝かせて頷いた。元気のいい返事である。自然とクーゴの口元が緩んだ。一端部屋を出て厨房へ足を踏み入れると、奥の方から物音がした。

 

 

「あ、クーゴさん」

 

 

 どうやら厨房には先客――宙継がいたらしい。彼の手には、色とりどりの白玉団子が盛り付けられた器の乗ったお膳が抱えられていた。水切り棚に置かれた調理器具からして、宙継が白玉団子を作った後に片付けたようだ。

 宙継は一端お膳を作業台の上に置いて、棚から爪楊枝を取り出した。白玉団子の1つに突き刺し、クーゴに差し出す。「自分で作ってみたんです」――そう言った彼の面持ちは、どこか緊張している様子だった。

 

 クーゴは白玉団子を受け取り、口に頬張った。つるりとした団子を噛むと、中からじわりと何かが溢れる。すぐに、口の中が甘さでいっぱいになった。

 これは、中にチョコレートが入っているのか。確認するように宙継へ視線を向ければ、彼は小さく頷いた。その眼差しは、クーゴからの評価を待っている。

 「美味しいよ」――そう言った途端、宙継は目を輝かせて微笑んだ。他の人にも配ってきますと言って駆け出そうとして――ふと、足を止めて振り返った。

 

 

「クーゴさんは、カイルスに合流するんですよね」

 

 

 口に出しているのは疑問なのだろうが、宙継の中では確定しているらしい。己の確信が正しいことを確かめるような問いかけに対し、クーゴは是と答えた。イデアからの報告を聞いた――グラハム/ミスター・ブシドーのことを聞いたときから、決めていたことである。

 

 クーゴの肯定を聞いた宙継は、何かを思案するように目を閉じた。

 しかしそれも一瞬のことで、彼は目を開いてクーゴを見上げた。

 

 

「僕も、貴方のお手伝いがしたいです」

 

 

 僕も一緒に戦いたい、と、彼の眼差しは訴えている。半年前、人を殺すのが嫌だと叫んだ少年が、戦いを嫌う優しい少年が、そんなことを言ったのだ。

 宙継の手はかすかに震えていた。宙継の小さな体に、戦いと言うものは重すぎる。普通に考えればすぐにわかる話だ。本当は、怖くて堪らないはずだろう。

 

 

「宙継」

 

「半年前、貴方は僕を助けてくれました。その恩返しがしたいし、それ以上に、僕はクーゴさんの役に立ちたい」

 

 

 彼の声は、少しだけ震えていた。

 

 

「確かに、戦いは嫌いです。人を殺さなきゃいけないから」

 

 

 人が死んでいくから嫌なのだと、宙継は言う。人間であるのなら、それは当たり前のことだ。

 戦いが好きで、人の死を好む人間の方が異常なのだ。どこぞの戦争屋が脳裏によぎる。

 

 

「だけど、クーゴさんが……僕の大切な人たちが傷つく方が嫌です」

 

 

 宙継の声は、クーゴの胸を穿つ。

 

 

「お母さんや兄さんたちのすることを、黙って見過ごすことはできません。……だから、僕だって、できることをしたい。クーゴさんの力になりたいんです!」

 

 

 お願いします、と、宙継は言った。揺るぎのない――けれど、どこか悲痛な思いが伝わってくる。

 クーゴはふっと微笑み、少年の頭を撫でた。その気持ちだけでも、充分だった。

 彼の姿を見ているだけでも、心が温かくなる。子どもの成長は早いものだ。

 

 

「ありがとう。その気持ちだけ充分だ。とても心強いよ」

 

 

 願わくば。この優しい少年が、少年らしく笑っていられる世の中が来ればいい。

 それは、クーゴが思い描く真の平和、そのものであった。

 

 

 

*****

 

 

 

「――頼む、少年。彼女を救ってやってくれ」

 

 

 あの子はまだ間に合うから、と、ブシドーは言った。

 

 

「あの子はまだ還れる。……だから、私と同じ轍を踏ませないでやってくれ」

 

 

 そう言って、ブシドーが寂しそうに微笑んだ姿が『視えた』。彼はもう、『還れない』という方向で覚悟を固めてしまったらしい。

 お前だってまだ間に合う――クーゴはそう叫ぼうとしたが、ブシドーの表情がそれ以上のことを言わせてくれなかった。

 

 ブシドーの言葉に困惑したオーブのガンダムパイロット――シン・アスカは驚いていたようだが、すぐに行動に移った。

 彼の乗るガンダムは、知り合いであり、かけがえのない少女――ステラ・ルーシェが無理矢理搭乗させられたガンダムへと向かう。

 だが、シンのガンダムの前に、大量の砲撃が襲い掛かった。攻撃によって、ガンダムの手は空を切る。

 

 

「何者だ!?」

 

 

 突然の乱入者に、シンはその相手を睨みつける。現れたのは、アロウズのライセンサー――センチュリオと銘打たれたMS3機と、その配下であるMDたちの群れだった。

 

 

「何やってるんだよ、オッサン!」

 

「こいつらを皆殺しにするって任務、忘れたわけじゃないだろうな!?」

 

「そのためにも、デストロイガンダムを止められては困るんですよ」

 

 

 センチュリオのパイロットたちは口々にそう叫ぶと、陣形を展開して、カイルスとオーブの面々に襲い掛かった。砲撃の雨あられが各方面から降り注ぐ。

 あまりの火力に、シンの行く手は阻まれた。そのうちの何発かが、ステラが乗っている機体――デストロイガンダムに着弾する。ステラの悲鳴が響き渡った。

 

 

「ほらほらどうした!? このままだと、お前も、お前が大好きなシンって奴も死んじゃうんだぞ!!」

 

「!! や、やだ! 死ぬの嫌あ!! シンが死んじゃうのは、もっと嫌ああああっ!!」

 

 

 ステラは絶叫し、その悲鳴に呼応するかのようにデストロイガンダムが動いた。各砲門が火を噴き、周辺を一瞬で瓦礫に変えていく。その威力に戦慄したのは誰だったのか、もうわからない。

 敵も味方もMDも関係なく、デストロイガンダムはすべてを吹き飛ばしていく。幼子のような少女の純粋な想いが、破壊の力へと歪ませられ、無辜の人々に向かって放たれる。人の想いも、人の命も、奴らは蹂躙しているのだ。

 目の前のデストロイガンダムは加害者であるが、デストロイガンダムに乗せられているステラも立派な被害者だ。怖い、苦しい、哀しい――彼女の声がひっきりなしに響く。何とか助けてやりたいが、あのライセンサーたちとMDが邪魔である。

 

 ライセンサーの搭乗するセンチュリオが、シンのガンダムへ向けて攻撃を繰り出した。展開したブレードが、シンのガンダムの剣とぶつかり合う。火花がばちばちと散った。

 何度も何度も剣載を繰り返す。少女を助けに行きたいのに邪魔され、集中力を欠いたのだろう。怒りに任せて振るわれた剣は、いともたやすく弾かれた。

 

 何名かが彼を助けに行こうとしたが、間に合わない!

 

 

「あははっ! 墜ちちゃえ!!」

 

 

 ライセンサーのセンチュリオがブレードを振り上げたとき、斜め向うから“何か”が降ってきた。それは寸分の狂いもなく、センチュリオの手首を穿つ。次の瞬間、爆発音が響いた。

 日本の短刀をモチーフにしたようなダガー。それが振って来た場所へと視線を向ければ、白緑の機体が降り立ったところだった。外見ははやぶさと似ているが、はやぶさと比べると少々小柄でスマートなフォルムである。

 白緑の機体は他のセンチュリオに向き直った。間髪入れず、センチュリオの羽部分に短刀が突き刺さる。紫電が爆ぜ、センチュリオの動きが止まった。普段はナノマシンが機体の損傷を自動で修理するのだが、ナノマシンは動いていない。

 

 

「なんだよ!? 機体トラブル!?」

 

「あの機体は……!?」

 

 

 2機のセンチュリオが動揺する中、中央にいたセンチュリオのパイロットは、白緑の機体を操縦するパイロットが誰なのかを理解したのだろう。激しい敵意を向けた。

 

 一歩遅れて、クーゴも、パイロットが誰なのかを理解する。同じタイミングで、白緑の機体から通信が入った。

 10にも満たぬ、戦いを好まぬ優しい少年が――刃金宙継が、クーゴの顔を確認するや否や、嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 プトレマイオスがアロウズのMAに囲まれたという一報が響き渡る。敵指揮官はこちらの動きを読んでいたらしい。格納庫へ向かおうとしたクーゴはふと足を止めて、振り返った。

 戦いの予感を察した宙継の表情は、どこか暗い。彼は4年前、蒼海の命令に逆らい、人を殺すことを嫌がっていた。宙継は優しい心根の持ち主だ。戦闘に気が進まないのも頷ける。

 

 

「宙継。戦いたくないなら、無理しなくてもいい。今からでも間に合う」

 

 

 クーゴは宙継と同じ背丈になるように屈んで、少年の表情を覗き見た。姉によって調整されたためか、宙継の成長速度は常人よりも緩やかである。彼の外観は、未だ10歳に満たない子どものままだ。

 アロウズの要人が集うパーティ会場で相対峙した蒼海の息子たち――宙継の兄たちは、16歳程度の少年の風貌をしていた。おおかた、彼らの外見に関する部分を蒼海が調整したのだろう。10歳児が軍人になるのは無理があるためだ。

 宙継の小さな体に、戦いと言うものは重すぎる。普通に考えればすぐにわかる話だ。どうして、そんな簡単なことが分からなかったのだろう。クーゴは自分自身を殴り倒してやりたくなった。彼の意志を聞かないなんて、蒼海と同じではないか。

 

 クーゴはじっと宙継を見つめた。幼い少年は目を丸くした後、表情を曇らせる。

 だけど、それも一瞬のことだ。彼はすぐに、真っ直ぐクーゴを見つめる。

 

 

「嫌です」

 

 

 彼の声は、少しだけ震えていた。

 

 

「確かに、戦いは嫌いです。人を殺さなきゃいけないから」

 

 

 人が死んでいくから嫌なのだと、宙継は言う。人間であるのなら、それは当たり前のことだ。

 戦いが好きで、人の死を好む人間の方が異常なのだ。どこぞの戦争屋が脳裏によぎる。

 

 

「だけど、クーゴさんが……僕の大切な人たちが傷つく方が嫌です」

 

 

 宙継の声は、クーゴの胸を穿つ。

 

 

「お母さんや兄さんたちのすることを、黙って見過ごすことはできません。……だから、僕だって、できることをしたい。クーゴさんの力になりたいんです!」

 

 

 お願いします、と、宙継は言った。揺るぎのない――けれど、どこか悲痛な思いが伝わってくる。

 彼の想いを無碍にする気にはなれなかった。クーゴはふっと微笑み、少年の頭を撫でた。

 宙継は目を丸くしたけれど、クーゴの意図を察したのだろう。ぱっと表情を明るくした。

 

 「頑張ります」と、宙継は元気に返事を返した。漆黒の瞳は真っ直ぐにこちらを見上げている。クーゴは思わず目を細め、頷く。

 

 さあ、格納庫へ――そう思って顔を上げたら、イデアが微笑ましそうにこちらを眺めていたところだった。彼女の眼差しはどこまでも優しい。

 クーゴはイデアに笑い返すと、宙継へ視線を戻した。宙継も真剣な面持ちで頷き、前を向く。――とうに、覚悟は決まっていた。

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』

 

 

 丁度そのタイミングで、どこか愛嬌のある機械音声が聞こえてきた。振り返れば、丸いものが勢いよく転がっていく。あれは、狙撃型のガンダムに搭載されるサポートロボット――確か、名前はハロだったか――だ。

 

 そういえば、プトレマイオスは海上へ向かって急浮上していた。そのため、現在、艦内中の至る所が急こう配の坂になっている。クーゴがそれに気づいたとき、イデアの手が青く発光した。途端にハロの動きが止まる。

 ハロは『タスカッタ、タスカッタ』と礼を述べて、耳をパタパタ動かす。今回の作戦では、サポート役のハロは留守番となっていた。こんなところに転がしておくあたり、ロックオン(ライル)はこのロボットをどう思っているのやら。

 ロックオン(ニール)だったら、この子が転がっていかないように注意したのだろうか。そんなことを考えていたら、波に浚われて流されたハロを回収しようと、パイロットスーツで海へ駆け込んだロックオン(ニール)の姿が『視えた』。

 

 とりあえず、この子をここに転がしておくのはまずいだろう。クーゴの意図をくみ取ってくれたのか、イデアは手をかざした。

 途端にハロの姿が掻き消える。ロックオン(ライル)の部屋に転移させたようだった。これで問題は片付いた。

 

 格納庫へ転移し、機体に乗り込む。ダブルオーも、はやぶさも、ちょうげんぼうも、緊急発進の準備は万全だ。

 スターゲイザー-アルマロスは、ケルディム、アリオス、セラヴィーと一緒にプトレマイオスに残り、加速炉としての役割を果たすという。

 

 

「――さて、うまくいけばいいな」

 

 

 クーゴはぼそりと呟いた。それと同時に、加速炉的な役割を果たす機体たちがトランザムを発動させる。その勢いを利用して、プトレマイオスは水中から空へ――そうして、宇宙へと飛び出した。

 海面から空へ飛び出したプトレマイオスは止まらない。真っ直ぐ、わき目もふらず、目的地へと突っ切っていく。アヘッドやジンクスたちには目もくれない。勿論、アロウズのMSたちは追いすがろうとしていた。

 

 勿論、その対策も立てていたらしい。発射されたミサイルが、しつこく追いすがるジンクスを叩き落とした。

 

 

『またかよぉ……ッ!!』

 

 

 ……今、どこかで聞いたことのある男の声が響いた気がする。情けない叫びは、4年前に何度も耳にしたことはあった。

 脳裏に浮かんだのは、不死身のコーラサワーが嘆きを叫ぶ横顔である。どうして今、そんなものが浮かんだのか。

 まさか、今、叩き落とされたジンクスに搭乗していたパイロットが彼だと? ――何とも言えぬ予感がしたが、首を振った。

 

 もしも、今、撃墜されたのがパトリックの機体だとしたら、彼は五体満足で帰還するだろう。4年前からずっと、彼はカティ・マネキン大佐に片思いをしている。それも、今まで遊びで付き合っていた女たちとの関係を完全清算し、彼女一筋になるレベルでだ。

 そうして、パトリックは最後まで、カティの元へ帰還(かえ)ってくるのだ。例え、バイストン・ウェルの黒騎士にボコボコにされても、人類を守るために僚友と一緒に自爆しても、神様を相手に戦う羽目になっても、五体満足で、愛する女の元へと。

 

 心配する必要は、どこにもなさそうだ。心配すべきは、ミスター・ブシドーやクーゴ自身のことであろう。

 

 

「今よ!」

 

 

 クーゴがそう判断したのと同じタイミングで、緊急発進の指示が入る。間髪入れず、ダブルオーがカタパルトから飛び出した。はやぶさとちょうげんぼうもそれに続く。

 

 大気圏を離脱したプトレマイオスは、わき目もふらず突き進む。プトレマイオスからやや離れた位置を、2機のMSは飛んでいた。ちょうげんぼうは、ダブルオーやはやぶさとは違うルートを飛んでいた。

 このまま何も妨害がなければ――そう思ったとき、極太のレーザーがプトレマイオスに着弾した。その衝撃で、艦の角度がずれる。それでも今のプトレマイオスには、突き進む以外の選択肢など存在していない。

 

 光の方角を見れば、マスターフェニックス・フオヤンとセンチュリオたちが陣取っているところだった。前者は己の役目を果たしたと言わんばかりに微動だにしない。勢いよく飛び出してきたのは後者だった。

 センチュリオの群れはプトレマイオスではなく、ダブルオー目がけて殺到する。スメラギの作戦――待ち伏せされていることを承知の上で、ダブルオーを緊急発進させつつ敵の元へ突っ込む――を予期していたかのようだ。

 「プトレマイオスの別方角から飛来したダブルオーが、敵本丸に直接攻撃を仕掛ける」という部分も察していたらしい。もし、遊撃役がダブルオー単騎であったら、センチュリオの群れどもを捌き切れなかったであろう。

 

 だから、はやぶさとちょうげんぼうも、緊急出撃枠に入れられたのだ。

 

 

(怖い戦術指揮官だ)

 

 

 これ程の戦術眼を持っているのだ。4年前の武力介入が鮮やかで的確だったのは、スメラギ・李・ノリエガあってのことだろう。

 他にも色々と要素があったのかもしれないが、人間という点で言えば、彼女の戦術および戦局予想が優れているためだ。

 

 殺到するMDを引きつけるため、クーゴはサイオン波を展開した。案の定、『ミュウ』殲滅用のプログラムが発動し、大半の機体がクーゴへ群がってきた。しかし相手も馬鹿ではないようで、一部のMDには『ミュウ』殲滅用のプログラムを搭載しなかったらしい。

 一部のMDは、寸分狂わずダブルオーへ突っ込んだ。勿論、ダブルオー/刹那は慌てることなく、的確に敵を屠っていく。はやぶさもダブルオーに倣い、センチュリオの群れを次々に駆逐していった。今更、MD風情で足を止められるとは思わないでほしい。

 次の瞬間、ライセンサーのセンチュリオが1機、ダブルオーに躍りかかった。ブレード同士がぶつかり合い、派手に火花を散らす。奴らは梃子でもダブルオーを先に進ませたくない様子だ。クーゴ/はやぶさも援護へ駆けつけようとしたが、残りの2機が襲い掛かる。

 

 

「墜ちろよぉ!」

 

「道を開けろっ!」

 

 

 ダブルオーとセンチュリオが剣載を繰り広げる。はやぶさも、センチュリオたちと対峙した。

 

 奴らを退けて、早めにプトレマイオスと合流したい。アロウズの部隊が待ち伏せていた場合、トランザムの効果を失ったプトレマイオスは無防備になってしまうためだ。

 一応対策は練っているけれど、早いうちに合流した方がいいだろう。――そんなことを考えていたとき、上空から悲鳴が『聞こえた』。慌てる声がひっきりなしに響く。

 

 

『アロウズの戦艦です! 敵MSは6体!』

 

『トレミー、上層部に被弾!』

 

『トランザムが切れる直前だったのも幸いして、損傷は軽微ッス!』

 

 

 スメラギの予測通りの展開だ。だが、彼女の表情は晴れない。スメラギが予期する作戦時間およびタイミングに、ズレが起きているためだろう。そのズレが、予想の範囲内で収まってほしいという願いがちらついている。

 はやぶさに課せられた役目は、ダブルオーの露払いだ。2機のセンチュリオをいなし、はやぶさはダブルオーの邪魔をするセンチュリオに攻撃を仕掛ける。ライフルの一撃は、センチュリオの肩を掠めた。

 

 しかし、センチュリオはダブルオー以外に見向きもしなかった。4年前だったら、攻撃してきた相手に襲い掛かったはずなのに。

 4年という月日は、パイロットとして成熟する――あるいは己の役割を果たすという一念を強くするのに充分な期間だったらしい。

 蒼海の子どもたちは、精神的な未熟さが最大の欠点だった。そこを突けないとなると、どこを切り崩すべきだろうか。

 

 思案しようとしたが、2機のセンチュリオは猛攻を繰り出す。余計なことなど考えさせぬと言わんばかりの雨あられが降り注いだ。

 

 これは本格的にマズイかもしれない。

 クーゴの脳裏に、そんな予感が掠めたときだった。

 

 

「うわぁ!」

 

 

 パイロットの悲鳴が聞こえた。間髪入れず、爆発音。見れば、ダブルオーと戦っていたセンチュリオの腕が吹き飛んでいたところだった。

 センチュリオは攻撃主を探そうと遠距離兵装を展開し――今度は兵装が真っ二つに叩き切られた。紫電が爆ぜ、また悲鳴が響く。

 これで、ダブルオーを足止めする兵装はすべて失われた。入れ替わりに、はやぶさを足止めしていたセンチュリオたちがダブルオーへ迫る。

 

 だが、彼らの武装も同じ末路を辿った。ブレードも、遠距離兵装も、バターを切るかの如く真っ二つにされる。また紫電が爆ぜ、癇癪のような叫び声が響いた。ダブルオーは驚いたかのように動きを止めたが、すぐにプトレマイオスの元へと飛んだ。

 

 

「なんだよ、なんなんだよぉ!? どうしてナノマシンが動かないんだ!?」

 

「くっ。ここは撤退するしかないな」

 

「畜生、覚えてやがれ!」

 

 

 三者三様の捨て台詞を残して、センチュリオたちは空の彼方へ消えていく。クーゴは思わず刹那/ダブルオーの姿を探した。青基調の機体はあっという間にプトレマイオスの元へたどり着くと、敵軍の旗本艦へと襲い掛かる。ビームダガーは指令室を見事に穿った。

 爆発と断末魔の叫び声は、敵指揮官の死を意味する。光景を『視て』、声を『聞いて』、クーゴはそれを理解した。ジンクスのパイロットたちが慌てふためく声も『聞こえた』。指揮官を失った兵士は、慌てた様子で撤退していった。

 

 プトレマイオスから安堵の感情が漂う。だが、はやぶさのカメラアイは敵を捕らえた。微動だにしなかったマスターフェニックス・フオヤンが、再びバスターソードを構えている。照準はプトレマイオスの下部だ。

 

 

「――させるかぁ!」

 

 

 はやぶさは方向転換し、ガーベラストレートを構えて突っ込んだ。長さを150mのフルサイズに変更し、思い切り振りかぶる。

 バスターソードの砲が開き、赤白い炎が燃え盛る。それが撃ち放たれる前に、間に合え――! クーゴは操縦桿を動かした。

 その刀身がマスターフェニックス・フオヤンに叩きこまれる寸前に、奴の腕に何かが突き刺さる。日本の短刀をモチーフにしたようなダガー。

 

 マスターフェニックス・フオヤンは怯んだように身じろぎする。もう片方のバスターソードでガーベラストレートを受け止めた際、砲身が大きくずれた。

 

 赤白い炎は容赦なく放たれたが、それはプトレマイオスの下部を掠るようにして闇に飲まれた。いや、掠っていたら僥倖だったろう。

 プトレマイオスの下部には一切傷がない。青い光が、砲撃の炎を弾いたためである。イデアやクロスロード夫妻たちのサイオン波だった。

 

 

「く……」

 

 

 作戦が失敗したのか、マスターフェニックス・フオヤンが撤退していく。追撃する必要性はない。それを察したはやぶさは、ちょうげんぼうを探してみた。

 白緑の機体はすぐに見つかった。ちょうげんぼうの構えた短刀は、センチュリオやマスターフェニックス・フオヤンを穿ったものだ。どうやら、あれは宙継の機体の武装らしい。

 クーゴと宙継の機体は並んで宇宙へ向かう。程なくして、プトレマイオスとダブルオーの姿が見えてきた。クルーたちの安堵も『伝わって』くる。しかしそれは中断された。

 

 

「スメラギさん。敵MSから、有視回線通信によるメッセージが届きました」

 

 

 敵側からの通信ということで、今度は動揺がプトレマイオスを支配する。スメラギは、フェルトにメッセージを読み上げるよう頼んだ。

 

 

「『ソレスタルビーイングの、リーサ・クジョウの戦術に敬意を表する。独立治安維持部隊大佐、カティ・マネキン』」

 

 

 カティ・マネキン。リーサ・クジョウ。

 

 前者は、パトリック・コーラサワーが思いを寄せる相手だ。彼女がアロウズにいるということは、先程聞こえたパトリックの断末魔は幻聴ではなかったということだ。彼は、アロウズへ向かったカティを守るために降り立ったのであろう。

 後者は、ビリー・カタギリが思いを寄せて止まぬ高嶺の花だ。しかし、どうしてそんなメッセージが、リーサ・クジョウ名義で、スメラギ・李・ノリエガに贈られたのか。――彼女の本名が、リーサ・クジョウだからとしか言いようがない。

 

 それを肯定するかのように、スメラギが苦悶の表情を浮かべたのが『視えた』。

 周囲に困惑が広がっていく。一難去っても、憂いは断ち切れてくれないらしい。

 

 

(こんなときに、そんな厄介な繋がりなんて知りたくなかった……)

 

 

 クーゴは深々と息を吐いた。

 因縁と憂いの先に、帰還の夢は叶うのか。

 今はまだ、わかりそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネ、只今、明日を探して迷走中。


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