大丈夫だ、問題しかないから。 -Toward sky- <2nd Season>   作:白鷺 葵

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8.半信半疑あっちこっち

「だーかーらー! どうしてお前は無駄撃ちばかりするんだ!? もう少し考えて攻撃しろよ!」

 

「兄さんこそ! 俺は大丈夫だって言ってるのに、どうしていつも庇おうとするんだよ!?」

 

 

 隣の部隊に所属する初代と2代目ストラトス兄弟は、今日も喧嘩で忙しい。

 同部隊に所属するトリニティ3兄妹やフロスト兄弟とはえらい違いである。

 

 傍から見れば、ストラトス兄弟はミラーコントをしているように見えるだろう。さもありなん、2人は一卵性双生児(双子)である。彼らは両名とも射撃を得意とするパイロットだが、戦術の方向性は全く違っていた。

 兄の初代ストラトスが一撃必中の精密射撃を得意とするなら、弟の2代目ストラトスは手数で翻弄する早打ちやバラ撃ちを主体にした戦いを得意としている。指揮官のイデアがときたま乗せ換え企画で2人の乗る機体を入れ替えるのだが、お互いの機体の違いに戸惑う姿を見かけた。

 性格の違いも大きい。兄がハロとピンクの髪の少女が大好きで立派な兄貴分なら、弟は薄紫の髪の女性が大好きで煙草を嗜む色男だ。両名に共通しているのは、ブラザーコンプレックスをいい感じにこじらせているという点だろう。現在進行形で、だ。

 

 なんてことはない、単純なことだ。

 

 兄は弟が心配だから口出しするし、弟は兄に認めてほしいと思っているから反発する。

 弟は兄が心配だから口出しするし、兄は弟を守れるような存在であろうとするから無理をする。

 

 ストラトス兄弟のミラーコントを眺めていたクーゴは、互いを思いあうが故にすれ違う双子を見つめていた。

 グラハムと『彼女』の色恋沙汰から逃げてきた先でこんな光景を見ることになるとは。クーゴにとっては、複雑な光景である。

 そこへ近づいてくる足音。振り返れば、そこにいたのはフロスト兄弟だった。

 

 

「お互いにとってお互いが、大切な存在なのにね。こんなにも簡単なことなのに、どうして彼らは仲が悪いのかな? 兄さん」

 

「それがなかなか難しいところなんだろうよ、オルバ。あの2人は素直になれないだけなのさ」

 

 

 そう言いながら、彼らは生温かい眼差しでストラトス兄弟を見つめていた。フロスト兄弟はストラトス兄弟とは違い、素直に互いへの思いを表現している。

 

 

「……いいな」

 

 

 彼らの後ろ姿を見つめながら、クーゴはぽつりと呟いた。

 

 自分もストラトス兄弟のように、感情をぶつけられたらよかったのに。自分もフロスト兄弟のように、仲良くできたらよかったのに。

 もしかしたら、存在したかもしれない可能性へと思いを馳せる。どこにでもある家族の、どこにでもいるような『きょうだい』の姿を。

 無意味だと知っていながらも尚、想像せずにはいられない。考えれば考えるほど、心に陰りが出てきそうだ。

 

 

「俺もあんな風に、喧嘩したり、仲良くしてみたかったな」

 

 

 自分の傷に触れると知っていても、呟かずにはいられなかった。

 兄弟たちの背中がやけに遠い。元々別の部隊に所属しているというのもあるけれど。

 

 ここにいると、かえって気分が重くなってきそうだ。グラハムと刹那の色恋を見ている方が、よっぽど元気になれそうな気がする。

 

 2人が繰り広げるバイオレンスなやり取りを思い出し、ひどく恋しくなる。大人しく自分の部隊に戻った方がよさそうだ。別部隊の人々とシミュレーションや模擬戦をやってみたかったのだが、今はそんな気分になれなかった。

 踵を返して元来た道を戻る。仲間たちの行き来は活発で、どこかで誰かが何らかの問題を引き起こしていた。ニュータイプとイノベ□ドがババ抜きを通して腹の探り合いをしていたり、ガロードとヒイロが先の乗り換え企画の感想を述べ合っていたり、シャアが自分の機体をせびっていたりしている。

 自分たちの部隊がよく使う休憩室へ戻れば、相変わらずの光景が繰り広げられていた。グラハムが刹那にちょっかいをかけ、刹那がその手を振り払う。彼女の顔は真っ赤だ。それを見たグラハムは、ますます嬉しそうにする。奴は意外と悪趣味なのかもしれない、とクーゴは思った。

 

 グラハム曰く「これが我々の愛」らしい。あながち間違っていないところが怖い。

 周囲の面々も、中心となる2人に対して生温かい視線を向けていた。

 

 

「羨ましいですか?」

 

 

 不意に声を掛けられ、振り返る。我らが指揮官であるイデアが、悪戯っぽさそうに笑っていた。

 

 

「難しいな。割を食うのがいつも俺だと考えると」

 

「それを差し引いたら?」

 

「ちょっとだけ」

 

 

 クーゴは苦笑し、付け加える。

 

 

「でも、いいんだ。俺にだって、そういう相手がいることは知ってるから」

 

 

 自分にも心配したいと思う相手がいる。自分のことを心配してくれる相手がいる。思いの丈をぶつけ合える相手がいる。

 そう、心の底から言える相手がいる。だから大丈夫だ、とクーゴは笑った。指揮官はしばらく目を瞬かせた後、嬉しそうに頷く。

 彼女は「あ」と間抜けな声を出し、急な思い付きを口走るように言った。

 

 

「その相手の中に、私はいますか?」

 

「…………そんなの、訊くまでもないだろ」

 

 

 いい言葉が見つかりそうにないので、そうやってごまかした。

 

 もっとも、彼女はすべて察しているのだろうが。ばつが悪くなって目をそらせば、指揮官がくすくす笑う声が聞こえてきた。

 自分たちにはこれくらいがお似合いだろう。クーゴはグラハムたちのほうへ視線を戻す。刹那に足を踏まれたグラハムが、くぐもった悲鳴を上げていた。

 

 

 

<><><>

 

 

 

 サーシェスのア■ケーガンダムと、ロックオンのガンダムデュナメス-クレーエが、宇宙(そら)で激突する。

 

 戦争をばらまくサーシェスは、ここでもまた争いを引き起こそうとしていた。カイルスのメンバーたちもそうだが、奴に両親を殺されたロックオンが、敵であるサーシェスを野放しにするはずもない。

 カイルスの仲間たちが雑魚敵と戦いを繰り広げる中、サーシェスとの一騎打ちはロックオンに任された。ぶつかり合いは――あまり認めたくないことであるが――サーシェスの方がやや優勢であった。

 

 

「ははっ、どうしたァ!? 俺を倒して仇を取るんじゃなかったのかァ、にいちゃんよォ!」

 

「相変わらず、腹立たしい下種野郎だ……! 今度こそ地獄に返品してやるぜ!!」

 

 

 デュナメス-クレーエのスナイパーライフルが唸る。しかし、アルケ■ガンダムは難なくそれを躱すと、デュナメス-クレーエとの距離を一気に詰めた。

 射撃特化型のデュナメス-クレーエには、近接戦闘向けの武器はビームサーベル程度しかない。おまけに、剣はロックオンの獲物ではないのだ。

 ほぼすべての武器を獲物として対応しているサーシェスにしてみれば、ロックオンに白兵戦を仕掛けるということは最良の戦術であった。

 

 ビームサーベル同士がぶつかり合う。ロックオンの舌打ちとサーシェスの笑い声は、両機体の拮抗状態を表しているように思えた。競り負けたのは、ロックオン/デュナメス-クレーエ。弾き飛ばされたデュナメス-クレーエに、■ルケーガンダムがサーベルを振りかざす!

 それを視界にとらえた仲間たちが悲鳴を上げた。ミシェルやムゥが援護しようとするが、間に合わない。万事休すかと思った刹那、四方八方からレーザーが降り注いだ! 不意打ちを本能で察知したのか、サーシェス/アルケ■ガンダムが飛び退った。

 

 ビームの雨あられが小惑星の大地を抉る。もうもうと広がった煙が晴れて、デュナメス-クレーエを救い出した機体が降臨した。

 

 

「テメェの戦争は終わりだ、アリー・アル・サーシェス!」

 

 

 白と緑を基調とした機体。その面影は、どことなくデュナメス-クレーエと似ている。しかし、細部のデザインや武装にははっきりとした違いがあった。

 本来、ロックオンにはガンダムデュナメスの後継機が与えられるはずだったのだが、『悪の組織』によって『ミュウ』専用の改造を施された機体に搭乗することになったという。

 

 今、この場に降り立ったのは、『ミュウ』に目覚めなかったロックオンが搭乗する予定だったデュナメスの後継機だ。そうして、この場に響き渡った声は、ロックオンの声と瓜二つである。以前、ロックオンは双子の弟がいると漏らしていた。――そこから導かれる答えは。

 

 

「お前……まさか、ライルか!?」

 

 

 ロックオンの素っ頓狂な声が響いた。ライルはニヒルに微笑み返す。

 

 

「フ、久しぶりだな。兄さん」

 

 

 乱入者の存在に気づいた雑魚敵が、ライルを屠らんと迫る。しかし、奴らの剣は、ライルの機体に傷をつけることは叶わなかった。雑魚敵とライルの機体の間に割り込んだ機影によって、真っ二つにされたためである。

 夜明けの空を思わせるような淡いペールブルーの機体が、ライルの機体に寄り添うように降り立った。ペールブルーの機体は、『悪の組織』第1幹部関係者が搭乗する機体――「ガ」シリーズのものとデザインがよく似ている。

 ライルと一緒に乱入した人物の正体は、すぐにわかった。イデアが懐かしそうに、パイロットに声をかけたためである。『悪の組織』および『スターダスト・トレイマー』の構成員で通信士を担当しているアニューというらしい。

 

 誰に促されたわけでもなく。

 アニューはいい笑顔で自己紹介を始めた。

 

 

「初めまして、お義兄さま。私、アニュー・リターナーと言います。ライルとは結婚を前提にしたお付き合いをさせていただいてます」

 

 

 爆弾が落ちた。ロックオンがあんぐりと口を開ける。

 

 

「元々は『悪の組織』に所属していた事務員兼通信士ですが、現在はソレスタルビーイングへ出向しています。イデアと同じ『ミュウ』であり、ティエリアさんやリボンズさんと同じイノベイドです。起動してから、今年で9年と3カ月になります」

 

 

 更に核弾頭が落ちた。ロックオンのこめかみがひくついた。

 

 

「あっ、体の年齢は20代前半なので大丈夫ですよ! 夜のアレコレだってちゃんとできますし、実際もう既にやりつくしてますし! ライルったら、本当に激しいんですよ。しかも言葉責めが大好きで……」

 

 

 アニューが頬を染める。世界が焦土と化したのを目の当たりにしたかのような表情を浮かべ、ロックオンがパイロット席に背中を打ち付けた。

 彼の口元は戦慄いている。この場が戦場でなければ、激高してライルへと殴りかかっていきそうだ。辛うじて、ロックオンはそれを押さえつけている。

 

 修羅場一歩手前の双子のやり取りを見たサーシェスは、新しいおもちゃを見つけたかのようにはしゃいでいた。兄弟と弟の婚約者をまとめて始末することにしたらしい。

 戦闘態勢を整えた■ルケーガンダムを目にして、ライルとアニューの機体は臨戦態勢を整える。ロックオン/デュナメス-クレーエだけが茫然としていた。

 しかし、それも一瞬。すぐにロックオン/デュナメス-クレーエはスナイパーライフルを構えて戦闘態勢を取った。カメラアイがきらりと輝く。

 

 

「何故お前がここにいるのかとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳児に手を出したのかこのロリコン野郎とか、お前の性生活や性癖がそんなんだったのかとか……聞きたいことは沢山ある」

 

「あんたは今まで何してたんだとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳差の女の子に手を出すつもりでいるのかこのロリコン野郎とか、場合によっては警察への通報も辞さないとか……俺も、兄さんに言いたいことが沢山ある」

 

 

 ロックオンとライルがしかめっ面をした。

 しかし、ライルの切り替え早い。

 

 

「だが、詳細は後だ。まずはあの糞野郎を……!」

 

「ああ。そうさせてもらう」

 

 

 ライルの言葉に従い、ロックオンはサーシェスを睨みつける。

 

 

「ロックオン・ストラトス」

 

 

 ニール・ディランディとライル・ディランディ。

 双子の声が、綺麗に重なり合う。

 

 

「狙い撃つぜ!」

「乱れ撃つぜぇ!」

 

 

 ディランディ兄弟(2人のロックオン)による、奇跡の競演が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分派手にやられたんだな」

 

「ああ、まあな」

 

 

 白鯨内の医務室。包帯まみれのロックオンは、どこかやり遂げたような顔だった。

 

 クーゴとイデアがコロニー・プラウドへ向かっていたのと同時刻に、彼は弟の元へと飛んだらしい。そこで暴漢に襲われていた弟を助けて満身創痍になり、『悪の組織』が調達した偽の救急車と救急隊員に回収されてきたという。

 やっとリハビリが終わったと思っていたのに、また病室へと逆戻りとは。貧乏くじを引きまくっているようにしか思えない。クーゴの考えを察したのか、ロックオンは苦笑した。貧乏くじ、と、彼の口が動く。

 

 

「あいつだけは……弟だけは、守ってやりたくてさ」

 

 

 祈るように、ロックオンは天を仰ぐ。良くも悪くも、彼は長兄と言う言葉が良く似合う男だった。一番上のお兄ちゃん――それが、彼を奮い立たせ、突き動かす原動力なのだろう。

 クーゴは弟であるが、姉の蒼海はロックオンと行動原理が違いすぎた。ロックオンが弟への愛で動くなら、蒼海はクーゴへの憎しみで動いている。クーゴは大きく息を吐いた。

 ロックオンは良い兄貴分だと思う。模範的過ぎるくらい、優しい男だと思う。優しいがゆえに、彼は、すれ違いを繰り返すのであろう。クーゴには、そんな予感が離れない。

 

 ……尤も、クーゴも人のことを言えないのだが。

 

 善意が相手を追いつめる、と言うことはよくある話だ。知らぬ間に相手のコンプレックスを悪化させてしまう。クーゴとロックオンは、その点でシンパシーを感じているのだろう。といっても、これはクーゴの個人的な見解でしかない。

 ロックオンは背伸びをし、小さく呻いた。余程派手にボコボコにされたらしい。確か、全治数週間だった気がする。再生医療を駆使して、だ。自然治療に任せると倍の時間がかかるという。クーゴはふっと苦笑した。

 

 

「俺も基本、守る側だったからなぁ」

 

「お前さん、弟なんだろ? そりゃあまたどうしてだ?」

 

 

 ロックオンが不思議そうに首を傾げた。彼の認識では、弟や妹は無条件で守ってやらねばならぬ者らしい。

 

 

「ねえさんは、いつも俺と比較されてきた。俺だけが異常に贔屓され、あの人だけが異常に蔑まれてきたんだ。そんなねえさんを、俺は何とかしてやりたかった」

 

 

 その結果がどうだったかを、クーゴはよく知っている。ことごとく裏目に出た。差別と贔屓はますます強くなり、蒼海のコンプレックスは肥大したのだろう。追いつめられた蒼海の横顔を思い出して、どうしてか、哀しくなった。

 真正面から意見をぶつけることができたら、今の自分たちの関係は変わっていたかもしれない。IFを考えたところでどうにもならないことも、クーゴは痛いほど理解していた。だから、口に出すようなことはしない。

 

 姉が虐められるというパターンを聞いたのは初めてらしく、ロックオンは信じられないと言いたげに眉をひそめた。

 しかし、片方が蔑まれて傷つけられるという場面を目の当たりにしていたという点には共通項を感じ取ったらしい。

 ロックオンの口がかすかに動く。三文字。それは、弟の名前であった。成程、コンプレックスを刺激されていたのは弟なのか。

 

 

「俺、兄弟喧嘩したことないんだ」

 

「いがみ合ってるのにか? 話を聞く限り、罵り合いをしててもおかしくなさそうだが」

 

「姉の癇癪を一方的に聞くだけで、こっちは何も言わなかった。殴りかかるのも姉だったし、叫ぶのも姉だったし。俺はずっと姉の言い分を聞くだけだった。聞いた後にしたことがあるとするなら、謝り返すことくらいだったし」

 

「それは……確かに、喧嘩って言えないな」

 

 

 他人同士でもそれはちょっと異常じゃないのか、と、ロックオンは眉をひそめる。クーゴもそれに頷き返した。

 

 

「ロックオンは……少ないかもだけど、兄弟喧嘩したことあるんだろ。真正面から意見をぶつけあったこと、あるんだろ」

 

「まあな。大半が、俺の方が折れたり、宥めすかしたりしてたけど。……今思えば、それがまずかったのかもしれないな」

 

 

 ロックオンは懐かしむように目を伏せた。テロが起きる直前の頃から、彼の弟は家から逃げる/飛び出すような形で寮付のスクールへ転校したという。

 家から飛び出したロックオンの弟――ライルは、今もコンプレックス――『良き兄(ロックオン)』の幻想と戦い続けているのだろうか。

 逃げる/飛び出すことを選んだのはクーゴも同じであった。家というしがらみと籠から、「空で待つ」といった友人たちの元へ向かうために。

 

 不意に、背後の扉が開いた。振り返れば、ロックオンの妹――エイミーが見舞いに来たところであった。

 彼女の腕には、釣り鐘状の茎に桃色の花をたわわに咲かせた植物――ナスカの花で作ったブーケが抱えられている。

 

 

「ニール兄さんは過保護なのよ。私やライル兄さんだって、いつまでも、ニール兄さんに守られなきゃいけなかった子どもじゃないんだから」

 

 

 エイミーは呆れたように苦笑した。「いい加減、一人前だって認めてよ」と、彼女の目は告げている。ロックオンは肩をすくめ、視線を遠くへ向けた。

 

 

「見ないうちに、逞しくなったんだなぁ……」

 

「当然。もう20代半ばですから」

 

 

 エイミーは得意げに笑いながら、花瓶にナスカの花を活けた。

 

 エイミーは現在、スターダスト・トレイマーの作戦指揮および艦長として頑張っている真っ最中である。ロックオンにはまったく想像できなかった未来図のようだ。

 妹の成長っぷりに、兄はついていけないらしい。どうしてこうなったと言わんばかりに天を仰いだり、顔を両手で覆ったりすることがあった。気持ちは分からなくもない。

 「兄さんたちはため込んでばっかりで。そこばっかりは似てるからタチ悪いのよ」と、エイミーはばっさり言いきる。それを聞いたロックオンは目を泳がせた。

 

 彼女のように、己の心をはっきりと言えたなら、ロックオンと彼の弟の関係もいい方向へ転がったかもしれない。“表向き”は死人扱いとなっているロックオンだ。やり方によっては、弟と再会して関係を築き直すチャンスもあろう。

 ロックオンとエイミーが談笑する邪魔にならぬよう、クーゴは立ち去ることにした。その旨を2人に伝えて挨拶した後、クーゴは病室を後にする。兄妹の和やかな会話がやけに響いていたような気がした。

 

 

(――俺も、あおちゃんと、そんな風に話をしてみたかったなぁ)

 

 

 叶わぬ望みを想う。

 あまりにもささやかすぎる、願いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AEU領、北アイルランドの空は曇天。重苦しい鉛色の空が広がっている。晴天時の青空を探すことはできなかった。

 以前起こったテロで犠牲になった者たちが眠る広場に、鎮魂の音が響いた。空同様、重苦しい鐘の音だ。

 

 慰霊塔の前で、茶髪の色男と中東出身と思しき男物の衣装を身に纏った女性が何かを話し込んでいた。

 

 男性の名前はライル・ディランディ。女性の名前はソラン・イブラヒム――いや、今は刹那・F・セイエイか。2人の間には物々しい空気が漂っている。

 ヒリングは双眼鏡を片手に、2人の様子を見守っていた。思念波の感度を上げて、2人の会話を聞き洩らすまいと神経を使う。

 

 

(あの子、見ないうちに綺麗になっちゃって……。あんなに小っちゃかったのにね)

 

 

 リボンズが刹那を見出したとき、ヒリングたちもそこに居合わせていた。その頃の少女と、眼前にいる刹那の姿を重ね合わせる。胸の奥から、じわじわと何かが込み上げてきた。

 親戚の子どもの成長を実感したような気分、とは、こういうことを言うのだろう。刹那を見出した本人だったら、その気持ちの高ぶりはどれ程のものだろうか。その喜びは計り知れない。

 ヒリングの隣にいたリヴァイヴは、あんパンと牛乳を片手にその光景を見守る。シャーロック・ホームズを彷彿とさせるコートと帽子を被ったリヴァイヴの姿は、意外と様になっているように見えた。

 

 中世の探偵が、現代日本における警察の張り込みアイテムを持っているという点には突っ込んではいけない。

 ヒリングは素知らぬ顔で、ジャムパンとフルーツ牛乳を口に運んだ。

 

 

「ニール・ディランディはガンダムマイスターだった」

 

 

 相変わらずの仏頂面で、刹那は淡々と話を続ける。彼女の言葉を聞いたライルの表情が困惑顔になった。

 

 

「彼は、ガンダムに乗っていた」

 

「なんだよ、その『乗っていた』って。……まるで、兄さんが死んだみたいな言い草だな」

 

 

 ライルの言葉に、刹那は真顔のまま頷いた。「兄さんが、死んだ?」――ライルは鸚鵡返しする。

 彼は苦笑した。刹那の言葉を信用していないようだ。本当のことを、ヒリングとリヴァイヴは知っている。

 

 ニール・ディランディは生きていた。4年前の戦いの後、『悪の組織』に身を寄せていた。思念増幅師(タイプ・レッド)として『目覚めた』ニールは、時たまテレポートを暴発させている。

 テレポートが暴発するのは、ライルに物理的な危機が迫っているときばかりだ。ヒリングたちがアニューの件でライルを粛せ――ちょっと“お話”しに行ったことが一番分かりやすい例えであろう。

 今から数日前――もとい、コロニー・プラウドでの反政府デモが発生した日も、ニールはライルの危機を感じ取って、能力を駆使して弟を助け出していた。代わりに、再生医療を駆使して全治数週間の重傷を負い、医務室送りとなっている。

 

 一応、ニールがライルの前に姿を現す度に、自分たちや同胞たちが認識や記憶の改竄を行っている。だから大丈夫なはずなのだ、本当は。

 

 しかし、ライルは鼻で笑った。

 刹那の言葉を、妄言だと切り捨てるかのように。

 はっきりと、ライルは言ったのだ。

 

 

「何言ってるんだ。兄さんはこの前、覆面を付けた暴漢に襲われていた俺を助けてくれたんだぞ?」

 

「なんだって!!?」

 

 

 刹那は思わず目を剥いた。ヒリングとリヴァイヴもだ。ライルは頷く。

 

 

「そのときに酷い怪我をしてな。俺が救急車を呼んだんだ。だから、兄さんが死んでるなんてあり得ないんだよ」

 

「そんな、バカなことが……!!」

 

 

 あまりの展開に、刹那は愕然としていた。4年前に死んだと思っていた人間が生きていた訳だから、その驚きは当然のものだ。パニックになってもおかしくはない。

 衝撃的な話を理解しようとしている刹那の脇で、何か引っかかったようにライルが目を瞬かせた。顎に手を当て、必死に何かを思い出そうと唸る。

 

 

「……あれ? そういえば、あの救急車、病院の名前が書いてなかったような……?」

 

 

 それを皮切りに、ライルの記憶は鮮明に当時の出来事を思い浮かべたらしい。ライルの様子に、刹那は目を瞬かせた。

 

 

「……は?」

 

「しかも、俺が電話したら、『近くにいるので拾いに行きます。30秒くらいで到着しますから、安心してください』とか言ってた……――ッ!!!」

 

 

 ライルは完全に思い出したようだ。眼球が飛び出るのではという勢いで目を見開き、状況の不自然さに(おのの)く。サイオン波による認識改竄を、彼は振り払ったのである。

 認識改竄を振り払う原動力になったのは、兄を想う弟の心だ。もっと俗っぽく言い換えれば、完全なブラコン魂だった。人間の繋がりは、ときに凄まじい力を発揮する。

 顔を真っ青にしたライルと、話の内容から恐ろしい予感を覚えた刹那が顔を見合わせた。兄が/仲間が生きていて、何者かによって拉致されてしまった――戦慄するのは当然だ。

 

 どうしよう、どうしよう。兄さんが、兄さんが。

 

 つい先日、ヒリングやリボンズたちが叫んでいた言葉をよく似た内容を心の中で叫び散らしながら、ライルは頭を小刻みに振るわせた。

 刹那も真剣な面持ちで頷き返す。彼女は懐からデータを取り出した。カタロンのアジトも危険だという胸を告げて、彼の手にそれを握らせる。

 

 

「あの様子だと、思った以上にすんなり仲間に加わるんじゃない?」

 

「これで、奴はソレスタルビーイングと合流することになるか。確か、アニューもあっちにいるんだったね」

 

「もしかしたら、それを見越して、プラウドの方は救助に行かなかったのかも」

 

 

 双眼鏡を外し、ヒリングはリヴァイヴに話しかけた。リヴァイヴも、最後の1口になったあんパンと牛乳を流し込み、頷く。そうして、間髪入れず脳量子波とサイオン波を展開した。

 

 

『ブリング! デヴァイン! 救急車の病院名はちゃんと書いておけって言ったじゃん!』

 

『電話対応もだよ! 『近くにいるので拾いに行きます。30秒くらいで到着しますから、安心してください』はアウトだっての!! 待ち構えてたのがバレバレだろ!』

 

『すまん』

『すまん』

 

 

 2人の突っ込みに、違和感の戦犯であるブリングとデヴァインが申し訳なさそうに謝罪した。認識改竄は便利な力だけれど、完全に無敵ではない。

 何らかのきっかけがあれば、記憶や認識改竄が解除されてしまう。強い精神力を持つ人間や、サイオン波を有する『ミュウ』なら、打ち破ることができる。

 あるいは、関係する対象に強い思い入れがある場合だろう。ライルが己に施された記憶および認識改竄を打ち破ったのは、ニールを大切に想う心が強かったためだ。

 

 兄弟の絆を、ヒリングは考える。――自分たちも、そんな風に。

 

 ちょっとだけ羨ましさを感じながら、ヒリングは別の方へと回線を繋いだ。

 リボンズと一緒にヴェーダへ居残りしているリジェネにだ。

 

 

『で、僕らが『悪の組織』関係者であることをカモフラージュするための布石は? どんな感じになってるの?』

 

『ダミー会社設立までもうちょっとかな。アロウズが有するコンピューターからハッキングされてもばれない数値や実績が必要だから、結構難航してるけど……』

 

 

 リジェネは眼鏡のブリッジに手を当てて、深々とため息をついた。

 

 

『徹夜デスマーチが祟ってるのか、ちょっと言動と手段がアレなことに……』

 

『腹が立ったから、とりあえず嫌がらせに株価暴落させよう。アレハンドロからパクった財産もあることだし、仕込みは上々。……あんの糞野郎ども、どんな顔をするのかな? 想像するだけで楽しみだよ。……ふふ、フハハハハハ!』

 

 

 聞こえてきたリボンズの声に、ヒリングとリヴァイヴは頭を抱えた。長兄は相当疲れ切っているらしい。

 こういうときこそ、弟/妹である自分たちが何とかしなければならないのだ。

 2人は顔を見合わせて頷き、広場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙(そら)を臨む中庭に、見知った相手を見つけた。

 

 イデアは憂いに満ちた眼差しで端末を見つめている。今にも泣き出してしまいそうな横顔だ。

 思わず、クーゴは声をかけるのを躊躇った。中途半端に伸ばした手が、宙を彷徨う。

 

 

「ああ、クーゴさん」

 

 

 クーゴの気配を機敏に感じ取ったようで、イデアはこちらを振り向いた。貼り付けたような笑顔を浮かべる。それが、とても痛々しい。

 

 

「隣、座ってもいいか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 

 許可を得たので、クーゴはイデアの隣に腰かけた。幾何かの間、何とも言い難い沈黙が辺り一面を包む。

 何かいい話題を提供できたら、この空気を打破できるのではなかろうか。考えてみたが、何も浮かばなかった。

 

 

「『悪の組織』技術者が、アロウズの収容施設に囚われているのは知ってますね?」

 

「ああ」

 

「さっき、データが送られてきたんです。グラン・マが捕まっている施設の場所と、同じ施設につかまっている人々の一覧なのですが」

 

 

 イデアはそこまで言って、言葉を切った。

 

 何かを躊躇っている様子だった。クーゴに言うことではなく、それをイデアが口にしていい言葉なのかと悩んでいるように見える。

 最終的に、彼女は無言のまま端末を差し出した。それを覗き込む。データは、名前だけではなく、顔写真も一緒に表示されるようだった。

 ベルフトゥーロの他には、解体されたアザディスタンの元王女マリナも勾留されているようだ。画面をスクロールして、クーゴはふと手を止めた。

 

 ソレスタルビーイングのガンダムマイスター、という文章に目が留まる。顔写真に映し出された青年の姿には、どこかで見覚えがあった。虚憶(きょおく)で何度も遭遇/共闘した青年だった。名前は、アレルヤ・ハプティズム。

 嘗ての古巣に所属していた仲間のことを大切に想うイデアだ。『悪の組織』の技術者だけでなく、アレルヤという青年のことも助けたいのだろう。ただ、彼を助けるということは、必然的に古巣と接触しなくてはならないということだ。

 

 

「……私は、彼を、助けたい、です。でも、……みんなと会うことは、できない」

 

 

 絞り出すような声で、イデアは言葉を紡いだ。

 

 

「どの面下げて、会えばいいのか……わからないんです。化け物、って、言われるかもしれないって思うと……」

 

 

 ぽつぽつと零れる声を、クーゴは静かに聞いていた。震える声を、聴き続けた。取りこぼしてしまわぬよう、気を付けながら。

 

 

「私の母は、人間が同胞を嫌悪し殲滅する現場を目の当たりにしていました。人間によって、故郷を滅ぼされた現場を目の当たりにしていたんです。……その話を、その歴史を、私に語って聞かせてくれました」

 

「もしかして、ナスカの子どもたち、か?」

 

 

 クーゴの言葉に、イデアは小さく頷いた。

 

 ナスカの子どもたち――『Toward the Terra』で、『ミュウ』たち安住の地になるはずだった惑星、ナスカで生まれた9人の子どもたちだ。彼らはみな荒ぶる青(タイプ・ブルー)の能力を有しており、対人類戦ではその力をもってして青い星(テラ)への道を切り開いたという。

 9人の子どもたちは、自分の故郷が滅ぼされる現場を目の当たりにした。人類軍によって、家族や幼馴染を殺されるという凄惨な体験をした。人間への憎しみや怒りを抱えながらも、未来のために人類と共に生きることを選択したのだ。尊敬する相手から託されたとはいえ、共生を選ぶのに、どれ程の葛藤を必要としたのだろうか。

 

 

「この惑星(ほし)で生きる人類が、母の言っていた人類とは違うということは分かっています。刹那やソレスタルビーイングの面々も、母の言うような人類とは違うんだって、信じたいです」

 

 

 でも、と、イデアは弱々しく呟いて目を伏せる。膝の上で握り締められた拳が、小刻みに震えていた。『信じていた/信じられると思えた相手から、化け物と言われ恐れられた』――その痛みに、イデアは押しつぶされかけている。

 痛みから身を守ろうとするのは当然のことだ。逃れようとするのも、当たり前のことである。振り返ったら、恐怖が待っていると思っているためだ。逃げて、逃げて、イデアはどうにか平静を保っている状態なのだろう。

 彼女は頑張った。昔もだし、今だって頑張り続けている。ままならない己に嫌悪して、前を向けない己を赦せないでいる。イデアが今欲しているのは、一歩踏み出す力なのだ。その方向性が何であれ、新しい一歩を踏み出す勇気。

 

 あるいは――安心して踏み出せるような、心の拠り所。

 

 『悪の組織』が、それに値しないわけじゃない。イデアや彼女を取り巻く人々だって、重々理解している。

 途方に暮れたイデアは、身動きが取れないでいた。それを責めることなど、誰もできやしないのだ。

 

 

「逃げてもいいと思うよ」

 

 

 馬鹿正直に向かい合うことだけが、正義ではない。状況を打破するための、絶対的な正解ではない。三十六計逃げるに如かずとも言うではないか。

 絶対的な困難(しょうがい)から距離を取り、冷静に確認してみてこそ、初めて分かることもあるだろう。

 1人で向かい合うことより、複数の人間と一緒に問題を見直すことも解決の糸口になるかもしれない。クーゴは、嘗ての日々を思い浮かべた。

 

 

『何を考えているのかは知らないが、そんなに悲観することはないぞ。私はいつだってキミの親友だからな』

 

『そうだよ。キミが何になってしまっても、僕たちは最後まで親友だよ』

 

 

 そう言って、笑ってくれた親友たちがいた。

 

 

『副隊長、大丈夫ですよ。我々もサポートしますから』

 

『役として不足かもしれませんが、お手伝いさせてください』

 

 

 そう言って、頷いてくれた仲間たちがいた。

 

 身動きができずにいて、身を守ることに必死だから。

 イデアは、後ろから響く声に気づいていない。

 

 

「でも、そうする前に、もう1度だけでいいから、振り返ってみてもいいんじゃないかな? ――キミを呼ぶ、ソレスタルビーイング(かれら)の声に」

 

「…………」

 

「逃げるのは、それからでもいいと思う」

 

 

 イデアは怖々とした表情でクーゴを見上げてきた。滲むのは、言葉にできない恐怖と不安。

 まるで、迷子になった子どもみたいだ。どこにも行く当てがなくて、途方に暮れるしかない。

 クーゴはイデアの手に己の手を重ねる。――嘗て、己の命を救い上げてくれた手だ。

 

 今度は、自分の番。

 

 

「……そういえばさ、ベルフトゥーロ氏が捕らわれてる施設の場所ってどこだっけ」

 

「ええと、ここですけど」

 

 

 藪から棒に問いかけられたイデアは、目をぱちくりさせながら端末を指示した。その場所を確認し、クーゴは自分の端末を起動させた。

 配属されている人間たちのリストを確認する。大義名分になりそうなものは何もない。ならば、でっちあげるまでだ。クーゴはわざとらしく声を上げる。

 

 

「ハワードたちの部隊、今度はここに転属するらしいんだ。あのとき、言葉を交わすことはできなかったけど、今回はチャンスがあるかもしれない」

 

 

 イデアがじっとクーゴを見上げた。彼女の眉が顰められる。クーゴの真意を探ろうとしているかのようだ。

 伊達に250歳以上300歳未満、クーゴの言葉の真偽を見抜くなんて簡単なことだろう。なんだか居心地が悪くなってきた。

 澄み切った水面のような双瞼が、自分の姿を映す。居たたまれなさを感じて、クーゴは思わず目を逸らした。

 

 幾何かの沈黙の後で、イデアが小さく噴き出した。

 

 ふふ、と、彼女は笑いをこぼす。突然笑い出したイデアだが、クーゴは別に何かしたわけではない。

 何事かとイデアを見れば、彼女は目元に薄らと何かを浮かべながら、花が綻ぶように微笑んだ。

 

 

「クーゴさんは、やさしい人ですね」

 

 

 天竺葵の柔らかな香りが鼻をくすぐる。イデアの周囲が、きらきら輝いているように見えるのは何故だろう。

 

 

「貴方のそういうところ、好きです」

 

「ありがとう」

 

 

 褒められるというのは、悪い気はしない。ただ、少々照れくささを覚える。クーゴは柄にもなくはにかみながら、髪を掻いた。

 イデアはほわほわした笑みを浮かべている。先程まで影を落としていた表情はもうない。これで一安心だ。

 

 

「そこのご両人。話がまとまったみたいで何より」

 

 

 茶化すような声が聞こえて振り返れば、エイミーが悪い笑みを浮かべていた。ロックオンとの語り合いは終わったらしい。

 

 中庭の外からざわめく思念が聞こえる。エイミーが艦長を務めるホワイトベースのクルーたちだ。確か、ベルフトゥーロがいる施設に勾留されている『悪の組織』技術者たちの救出任務を行う班だった。

 ベルフトゥーロは、ちょっとした用事を片付け次第の合流となるらしい。彼女が大人しく救出されるような人間ではないとは、4年間の付き合いで、クーゴは嫌と言う程身につまされている。エイミーも察している様子だった。

 近隣まで向かうということなのだから、同行するんだろう? と、エイミーの目は問いかける。イデアとクーゴは間髪入れず頷き返した。作戦開始時間までは、まだ時間がある。作戦に向けた準備をしなくては。

 

 クーゴとイデアは、準備をするために立ち上がる。

 吹き抜けた天窓の向う側に、満天の星空が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネ、只今、明日を探して迷走中。


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