大丈夫だ、問題しかないから。 -Toward sky- <2nd Season>   作:白鷺 葵

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6.始まりの“刻《とき》”

 果てなき宇宙(そら)を翔る。青い光が煌めき、闇を割いた。指定されたコースを旋回した後、はやぶさは母艦へと帰還した。

 今頃、格納庫は若者たちでにぎわっている頃だろう。ベルフトゥーロは小さく笑った後、端末に送られてきた図面に視線を落とした。

 

 図面に描かれている機体は、テオドアが手掛けている新型機――トリニティ兄妹の専用機となる3体のガンダムだ。前回の戦いで修理したとはいえ、旧型機のスローネシリーズではそろそろ限界なのだろう。今は搦め手で応戦しているが、真っ向勝負となると力負けしてしまうのだ。

 スローネシリーズを修理した際に搭載したESP-Psyonドライヴであるが、元々スローネたちはESP-Psyonドライヴを搭載することを前提にして設計された機体ではない。半ば無理矢理積んでいるようなものなので、そのツケが、機体性能やその他諸々に回りつつある。

 この図面に描かれた機体は、スローネシリーズの発展形だ。パイロットたちの希望や要望をできる限り具現化しつつ、当人の才能に合う武装を作り出すため試行錯誤を繰り返している。そのせいか、ここ最近、設計者のテオドアは第3次デスマーチに体を突っ込んでいた。

 

 同じ技術者として、テオドアの気持ちはよくわかる。ベルフトゥーロは図面を見つめながら、うんうんと頷いた。

 

 

「どの武装を追加するか、本当に悩むよねー。ビットやノルンもつけたいし、クロッシングも追加したいし、オーラコンバーターも載せたいし、ドリルもつけたいし、ドルイドシステムや月光蝶も搭載したい。ツインサテライトキャノンとかツインバスターライフルも欲しい。無限拳も欲しい。てか全部やりたい」

 

 

 思いつく武装を、思いつくままに口に出す。

 それを聞いた面々が、いっせいに顔を顰めた。

 

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

 

 ノーヴルが天を仰ぐ。

 

 

「お前は何を作るつもりなんだ……」

 

 

 エルガンは額に手を当ててため息をつく。

 

 

「……貴女らしいよ、マザー」

 

 

 リボンズが遠い目をした。

 

 己の発言が、採算を度外視した発言であることはわかっていた。でも、口に出しただけで顔を顰められるのは酷くないか。ベルフトゥーロは口を尖らせながら端末を見直す。

 ガンダムデュナメスをベースにして作り出された機体の調子もいい。パイロットであるロックオンも、己の持つ力――思念増幅師(タイプ・レッド)にも慣れてきた様子だった。

 思念増幅師(タイプ・レッド)は広範囲攻撃やマルチロック、索敵を得意にしている者が多いが、ロックオン個人は一撃必殺/一発必中の狙撃を得意にしていた。

 

 本人の得意分野と能力の特性が不一致を起こすという事態も、よくあることだ。

 そこら辺は慣れである。とにかく慣れしかない。ロックオンには辛いかもしれないが。

 

 

「そういえば、彼、搭載された武装に変なデジャウを感じてるらしいよ」

 

「貧乏くじ同盟の絆は伊達じゃない、か」

 

「デュナメス-クレーエに搭載された武装の元ネタは、“揺れる天秤”だったかな? 彼、天獄戦争を生き残った後も借金漬けだったらしいね」

 

「え、そうだったの? 知らなかったわ。……というか、天獄戦争の虚憶(きょおく)、聖なる喜びさんを撃破した後に関することがよくわからないんだけど」

 

 

 リボンズとベルフトゥーロが会話を始めたとき、視界の端にいたエルガンの表情が曇った。ベルフトゥーロはちらりと彼へ視線を向ける。彼は逃げるように視線を逸らし、目を閉じた。

 最近、エルガンは沈痛な面持ちでいることが多い。何かに怯えているように見えるし、憤っているようにも思うし、諦めているようにも思うし、戦おうとしているようにも見える。長年幼馴染をやっているが、こんなことは初めてだ。

 昔から、彼は何も言わない男だった。綿密に計画を立て、それを実行に移す際、人の心の動きまで予想して策謀を張り巡らせていた。計画の成就のためなら、味方すら嵌めるような男であった。

 

 彼の作戦で不利益を被ったことがある。逆に、大きな利益を得たこともある。それでも――恨めしいことはあるが、彼の判断は間違っていなかった。

 エルガン・ローディックは参謀役として優秀だった。気難しくて頑固で融通が利かなくて突拍子のないことを相談なしにやってのける男だが、決して悪人ではなかった。

 

 だから、ベルフトゥーロにとって、心を赦して愚痴――暴言に近い部類だと他人は言う――をこぼせる、気安い相手だった。

 

 それは、「世界で2番目に愛してほしい」事件が起きる以前も、起きた後も、何も変わらない。今も、昔も、これからも、その在り方を変えるつもりは毛頭なかった。

 ベルフトゥーロの答えが、表情を曇らせるほどショックだったのだろうか。いや、エルガン・ローディックに限って、傷心で元気をなくすなんて馬鹿な話はあり得ない。

 

 

「マザー? どうかしたのかい? エルガン代表が気になるの?」

 

 

 リボンズに指摘され、初めてベルフトゥーロは自分の状況――エルガンを目で追っていることに気づいた。はて、これは一体どういうことだろう。浮気なんてするつもりはない。ベルフトゥーロにとって、1番愛する人間はイオリアだけなのだ。一生、それは不変である。

 

 声を聞いていたエルガンが、酷く驚いたような顔でベルフトゥーロを見た。何度か瞬きをした後、普段通りの鉄仮面に戻る。

 何かを取り繕うかのような様子に、胸が酷くざわついたのは何故だろう。自分が今、決定的な何かを見落としたような気がしたのは何故だろう。

 あんまりにもエルガンを凝視したためか、彼は眉間に皺を寄せてこちらに歩み寄ってきた。

 

 

「お前が惚けるなんて珍しいな」

 

「私はいつでも絶好調ですよー。ってか、おかしいのはアンタの方でしょ? エルガン」

 

 

 百面相、と言いながら、ベルフトゥーロはエルガンの眉間のしわに触れた。それを無理矢理伸ばそうと引っ張る。余計に彼は困惑したような表情を浮かべた。

 何も言いたくないと言わんばかりに、奴の口は閉ざされている。こうなってしまえば、テコでも彼は口を開かない。ベルフトゥーロは大きくため気をついた。

 

 

「アンタは昔からそうだったわね。1人で何でもかんでも抱え込んじゃってさ」

 

「…………」

 

「責めてるわけじゃないのよ。だから、そんな風にどんよりとしたオーラを背負わないでくれる?」

 

「……すまない」

 

「いいのよ。必要になったら、言ってくれればいいから」

 

 

 アンタのことは分かってる、と、ベルフトゥーロは笑った。それを見たエルガンも、安心したように口元を緩ませる。壮年の男が浮かべるにしては、どこか幼い笑い方だった。

 背後で誰かが噴き出した。振り返れば、リボンズが笑いをこらえていた。「エルガン代表、わかりやすい」と、言葉の端々に草を生やしている。エルガンのこめかみがひくついた。

 ノーヴルは生温かい目つきでエルガンを見ていた。別方向には、松葉杖をついていたリチャードが目を丸くしている。ひまりが目を輝かせ、征十郎はきょとんと首を傾げていた。

 

 一鷹とアリス、悠凪とハルノらが顔を見合わせてひそひそ話を始める。聞き耳が間違っていなければ、「未亡人」という不穏な単語が聞こえてきたような気がしなくもない。

 スオルとグライフも、ノーヴルと同じように目を細めてエルガンを見守っていた。別任務から帰還したエイミーらも、昼のドラマを品定めするような目を向けてきている。

 

 エルガンが目に見えて狼狽し始めた。居たたまれなくなったのだろう。彼は即座に踵を返す。この場から逃げるようにして、彼の姿は掻き消えた。

 

 その様子を目の当たりにした面々は、がっかりしたように肩をすくめた。天を仰いだり、頭を抱える者もいた。程なくして、蜘蛛の子を散らすように面々は去っていく。

 得体のしれない空間に放り込まれたような心地になってリボンズを見れば、彼はひいひい言いながら大爆笑していた。今の状況に、笑える要素なんてあっただろうか?

 

 

「ね、マザーは、再婚とか考えてるのかい?」

 

 

 藪から棒に向けられたリボンズの発言に、ベルフトゥーロは目を真ん丸に見開いた。息子の言葉に頭を殴打されたような心地になる。

 

 

「そんな話とは無縁だけど」

 

「エルガン代表とマザーはお似合いだと思うけどね」

 

「……リボンズ」

 

 

 ジト目で息子を睨めば、彼は苦笑しながら言葉を続ける。

 

 

「あの人は、全部わかってるよ。わかってて、それでもマザーのことが好きなんだよ。……イオリアが後を託す相手にあの人を選んだのも、それを知っていたからだと思う。それを信頼していたからだと思うんだ」

 

「――“世界で2番目に愛されたい”?」

 

「そう、それ」

 

 

 だとしても、ベルフトゥーロが選ぶのはただ1人だ。今も、昔も、これからも、イオリア・シュヘンベルクを愛し続ける。この愛と共に、生き続ける。

 ベルフトゥーロの決意を知っているからか、リボンズは少し寂しそうに微笑んだ。どうして、そんな哀しそうな顔をするのだろう。ベルフトゥーロにはわからない。

 不意に、懐かしい気配を感じた。愛する人のものだ。反射的に振り返れば、イオリアの幻が『視えた』。彼も、どこか哀しそうにベルフトゥーロを見つめている。

 

 どうして、イオリアまでもが、そんな顔をするのだろう。頭をひねっても、ベルフトゥーロには分からない。

 いつの間にか、彼の幻は消えうせていた。哀しそうな顔をさせたままだったということが、心にちくりと痛みを残す。

 

 

「あの人は大義を1番にしてるけど、それ以上に、“貴女が生きて結末を見届ける”ことを優先しているんだよ。文字通り、“貴女を罠にはめて、自らが悪役になろうとも”」

 

 

 それだけは覚えておいてあげてね、と、リボンズは苦笑した。並大抵のことではできることじゃないから、と。

 

 用事があるから、と言い残して、リボンズは転移する。ヴェーダを駆使した情報収集と、最近連絡が滞りがちで約束をすっぽかしてばかりの“アニューの恋人”の動向を探るためだろう。またロックオンが重傷で医務室送りになる未来が見えたような気がした。

 件の人物は何度も転職を繰り返しているようだ。自分に合う職業を探すというのは結構だが、このままだと彼は完全に“アニューのヒモ”になってしまうのではなかろうか。息子(長男坊)が妹(末娘)を不安に思う気持ちはわからんでもない。

 

 アプロディアやコード・フェニックスおよびアメリアスも頑張ってくれているようだ。3人が集めてくれた情報を、端末越しに確認する。

 独立治安維持部隊の活動や行動、連邦政府の動き、そして――敵が抱え込んでいる最強の頭脳(コンピュータ)の存在。どれもこれも厄介な相手である。

 特に、コンピュータは強敵だ。スペックはヴェーダやアプロディアとほぼ互角だし、S.D体制の技術をくんだネットワーク回路と対人洗脳を得意としているタイプである。

 

 

(グランドマザー……)

 

 

 忌々しい存在の名前。尊敬する指導者(ソルジャー)だったグラン・パを殺した張本人であるコンピューターの姿が、頭から離れない。

 ベルフトゥーロが目にしたのは破壊された後だったけれど、怨敵を忘れたことは一度もなかった。

 

 ベルフトゥーロが世界で1番嫌いな相手である。因みに、2番手は、グランドマザーのネットワーク回路と人類の監視および『ミュウ』や反思想持ちたちの処分を担当していた端末――テラズ・ナンバーたちだ。奴らが形成したプログラムによって、多くの『ミュウ』が命を落とした。

 

 あれは、この世界にあってはならないものだ。人間が人間らしく生きることが赦される世界には、存在してはいけないものだ。

 イオリアの理想を壊す存在であるし、ベルフトゥーロの理想を阻む宿敵でもある。グランドマザーの系譜を継ぐモノは、ここで絶たねばなるまい。

 嘗てグラン・パが対峙した相手に、今度はベルフトゥーロたちが立ち向かう。……彼のように、ベルフトゥーロ1人で何とかできればよかったのだが。

 

 ……いや、違う。

 彼は、最高の戦友(とも)、キース・アニアンと共に、グランドマザーを倒したのだ。

 

 ベルフトゥーロにはイオリアがいた。彼はもうここにいないけれど、ベルフトゥーロの心の中で生き続けている。

 彼だけではない。エルガンやリボンズを筆頭とした仲間たちや、イデアのような後継者、クーゴのような希望の子も存在している。

 だから、大丈夫。ベルフトゥーロには、恐れるものなど何もない。

 

 

「……グラン・パ、見守っててね。私、頑張るから」

 

 

 静かに決意を固めて、ベルフトゥーロは宇宙(そら)を見上げる。

 満天の星の向う側に、青く輝く惑星(ほし)があった。

 

 ベルフトゥーロが決意を新たに固めたとき、そのタイミングを待っていたかのように端末が鳴り響く。連絡主はマリナ・イスマイール王女だ。おそらく、用事は技術支援に関する話し合いの日程についてだろう。

 

 果たして、ベルフトゥーロの予想は的中した。自分の予定を確認しながら、都合の言い日時を設定する。その旨を連絡すれば、相手方も納得してくれた様子だった。「では、そのときに」というメッセージが返ってきた。

 そうと決まれば、アザディスタンへ提供する技術を纏めておかなくては。端末を操作していたとき、アプロディアからメールが届いた。『アロウズの動向がきな臭くなってきたので注意してほしい』という内容だった。

 アロウズが『悪の組織』を快く思っていないことは把握していた。スターダスト・トレイマーのことは目の敵にしていることも察知している。幸運なことに、相手方には、2つの団体がイコールで結べるということは知られていない。

 

 

(エルガンも水面下でアロウズと派手にやり合っているみたいだし、アイツにも注意を入れておかなくちゃ)

 

 

 ベルフトゥーロはエルガンに連絡しようとして、止まる。端末の電源が着られていた。じゃあ思念波で連絡を取ろうとしたが、完全にシャットアウトされている。

 まるで、すべてを完全に拒絶しているかのように、エルガンの動向がつかめない。彼の思念を掴めない。あまりの事態に、ベルフトゥーロは眉間に皺を寄せた。

 

 こういうときのエルガンは、良い意味でも悪い意味でも、何か恐ろしいことを計画している。しかも、連絡不能になるということは、「他者の行動――特にベルフトゥーロ――が計画成就/作戦成功の妨げになる」と感じ、単身で動こうとしているときのものだ。

 

 

「――っ」

 

 

 だから先程、エルガンは変な顔をしていたのだ。あのときの彼の表情は、何かに怯えているように見えたし、憤っているようにも思えたし、諦めているようにも思えたし、戦おうとしているようにも見えた。

 おそらく、彼は相当悩んでいたに違いない。相当葛藤したに違いない。行動を起こすのに、途方もない勇気と決断が必要だったのだ。最悪なことに、ベルフトゥーロはエルガンの背中を押してしまったらしい。

 自分の行動を悔いても、何もかもが遅かった。エルガン・ローディックは、もう既に行動を起こしているのだろう。やると決めたらとことんやり遂げる男だ。ベルフトゥーロは、そんなエルガンのことを信頼している。

 

 しかし、今は。

 その信頼が、かえって嫌な予感を湧き立たせる原因になってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日のシミュレーターは豪華である。

 自分たちを殺しにかかる勢いで、絢爛である。

 雁首揃えて自分たちを見据える機影を確認したクーゴが真っ先に思ったことだった。

 

 

「ハロ、サイコハロ、サイコロガンダム、マスターガンダム、デビルガンダム、金属生命体付リーブラ……」

 

「マークニヒトが2体、ヴァーダント、プリテンダー、飛影、零影、オウカオー、ナナジン……」

 

 

 戦慄くクーゴの言葉を引き継ぎ、ロックオンは口の端をひくつかせる。

 

 前者はジェネレーションシステム関連の虚憶(きょおく)で破壊神だの悪魔だの厄介な相手の代表格たち、後者はUX関係の虚憶(きょおく)で共闘した友軍たち(一部の機体は元敵対者だった)である。まるで悪夢のような布陣だ。どうしてこんなシミュレーターにしたのだろう。

 悪夢と言えば、『続.女の敵護衛任務 -お前が言うな篇-』――“シャアの護衛をしていたらアムロ、シン、カミーユが増援でシャア襲い掛かってきた。3人を撃退したら、フォウ、ファ、ルナマリア、ステラ、チェーンが追加で出現し、男たちに襲い掛かってきた。護衛対象に件の3人が瀕死状態で追加され、彼女たちと戦う”というシミュレーターも酷かった。

 

 勿論、追加出現した女性たち+ベルトーチカのヤジ付きである。本当に凄まじかった。

 このシミュレーターを攻略したのちに、『続々.女の敵護衛任務 -地獄篇-』が出現した。

 まだやってはいないが、もっと阿鼻叫喚の光景が広がっているのだろう。嫌な予感が拭えない。

 

 因みに、かなり以前にこのシミュレーターをクリアしたことのあるテオドアとその親友曰く、「女性が全員集合して男どもに攻撃を仕掛ける図は壮観である」という。地獄の名は伊達ではないらしい。

 

 

「……どうやら、俺たちはシミュレーターに嫌われているようだな」

 

 

 クーゴは乾いた笑いを零した。はやぶさも、クーゴの気持ちに同意するようにカメラアイの光が力なく瞬く。

 

 

「ふざけんのもいい加減にしろよ!? こんなモン、狙い撃つなんて無茶だっつの!」

 

 

 ロックオンは今にも泣き出してしまいそうな声色で叫んでいた。

 心なしか、ガンダムデュナメス-クレーエも、スナイパーライフルを投げ出してしまいそうだった。

 

 

「あらら。今日は奮発しましたねー」

 

 

 イデアは相変わらずのほほんとしているが、自分の実力だと即刻撃墜されてしまいかねないと自覚しているらしい。紫苑の瞳はそっと逸らされていた。

 つい先日にロールアウトしたばかりの新型専用機――スターゲイザーの後継機である白い機体――スターゲイザー-アルマロスも、どこか遠い場所を見つめている。

 大きな輪っかに星を思わせるような自律兵器――アーチャーを背負い、ビームサーベルの代わりに装備された腰のアームズに五芒星のブレードを展開していた。

 

 アルマロスは武装の向上だけでなく、武装のデザインが星を連想するものに変更されていた。前回のスターゲイザーは、引用した武装のデザインを流用していたという。

 魔術や妖術を無効化出来る護符の知識をもたらしたとされる天使の名を冠した機体は、その名の通り防御に優れる。防御だけでなく、高機動戦闘も得意としていた。

 

 対戦相手のラインナップに気圧されているうちに、戦闘開始の合図が響く。間髪入れず動き出したのは、敵チームの方だった。白い影/飛影が一気に迫る!!

 

 

「うおおおおおおおお!? 忍者早ぇ! こっちくんなぁぁぁぁ!!」

 

 

 顔を真っ青にしたミハエルの悲鳴が反響した。パイロットの恐怖を反映するかのように、こちらもロールアウトほやほやの新型機――ガンダムラグエル-フォルスが全速力で離脱を図ろうと奮闘していた。

 

 トリニティ兄妹の新型機シリーズは、「光の世界に復讐する者」という名の天使/新たな堕天使が生まれないようチェックする光の監視官の名を冠している。機体の開発者がフランス語のコードネームを名乗っていたことが影響しているようで、専用機の名前が微妙に違っていた。

 ラグエル-フォルスは、ピンポイントバリアを応用した白兵戦(特に、拳による殴り合い)を得意にしている。ミハエル本人はファングのような派手な武装を好んでいるようだが、能力の方向性が盛大にズレてしまっている様子だった。

 最近は、ファングにもピンポイントバリアやノルン等を応用した攻撃手段を搭載したという。今回はその追加新武装の披露式なのだが、湧いて出てきた敵がアレのため、お披露目よりも逃走を選んだのだろう。普通に考えて、彼の行動は間違いではない。

 

 

「怖くなんか……怖くなんか、ないんだから! こ、怖くなんかぁぁぁうわああああん!!」

 

「ネーナ、ミハエル! 最後まで泣くんじゃない!!」

 

 

 大泣きするネーナを叱咤しながら、ヨハンが涙目で敵に向き合う。

 兄としての矜持が、今のヨハンを奮い立たせているのだろう。

 

 大泣きするパイロットとは対照的に、ネーナの機体であるガンダムラグエル-フルーレは花を模したバトンやレーザービット兵器を展開し、攻撃の雨あられを振らせていた。但し、その攻撃はしっちゃかめっちゃかで、まともに狙いを定めていない。

 ヨハンの機体であるガンダムラグエル-フィオリテは、バスターモードに切り替えたツインライフルを構えた。月が出ていればツインサテライトキャノンを撃てたのだが、今回のシミュレーターの条件では、サテライトキャノンを撃つことはできなかった。

 2機の攻撃を軽々とさけて、忍者たちが迫って来る。アホみたいな速さだ。1対1の戦いでは光明なんて見えないし、チームプレイをするには自分たちの連携経験が浅すぎる。正直、逃走した方が確実に生き残れそうだ。逃走が赦されないのが悲しいことである。

 

 世の中には逃走不能に陥ることだってあるのだ。その訓練だと思えば、なんとか腹を括ることができそうだった。心境はアレだが。

 

 絶望に心が折れそうになりながらも、面々は敵と戦うことを選んだようだ。拙いながらも連携を取ろうと行動を開始する。対して、敵は連携し慣れているようで、迷うことなく攻撃を始めた。

 プリテンダーは縦横無尽に駆け巡りながらこちらを翻弄し、その隙をついてヴァーダントが太刀を振るう。オウカオーとナナジンは、入れ代わり立ち代わりでオーラを纏った太刀を振るった。これだけも大変だというのに、ハロ・ビットやハロ・バブル等が飛んでくるのだ。嘆きを叫びたくもなろう。

 

 

(最早涙しか出ないぞ)

 

 

 爆音が轟き、あっという間に味方機が沈黙していく。クーゴのはやぶさが撃墜されたのも、間もなくのことであった。

 

 

 

*

 

 

 

 

「おーおー、今日も派手にやられたのねー」

 

「今日のヤツも恐ろしい難易度ですから、気持ちはわかりますけど……」

 

 

 シミュレーターを終えてぐったりしていた自分たちに話しかけてきたのは、ベルフトゥーロとテオドアであった。2人とも、『悪の組織』の制服ではなく、前者はスーツ、後者は普通の服を身に纏っていた。

 

 

「あれ? 教官、どこか行くんですか?」

 

「ああ。ちょっと気になることがありまして。……もしかしたら、暫く別行動になるなるかもしれません」

 

 

 滅多に見れぬテオドアの私服姿に有頂天になりながらも、ネーナは己の疑問を口にした。

 テオドアは普段と変わらぬ笑みで応対したが、何か憂いを抱えているらしい。ほんの少しだけ、影があった。

 恋する乙女は、彼が纏う空気の変化に目ざとく気付いた。テオドアの憂いに心を痛め、ネーナの表情が曇る。

 

 それに気づいたテオドアは、心配はいらないとばかりに首を振る。

 

 

「友人から連絡があったんです。監視者の生き残りである僕に、何やら白羽の矢が立ったらしくて……その理由を知るためにも、ちょっと潜入と接触とその他諸々やってきます」

 

「接触って、誰に?」

 

「本人無自覚な特殊事項があること以外は、とあるハイスクールに通う、ごく普通の学生です。確か、名前はレイヴ・レチタティーヴォくんですね」

 

 

 端末に映し出されたのは、深緑の髪に紫の瞳を持つ好青年だった。彼が、レイヴ・レチタティーヴォ。……気のせいか、髪型と顔立ちが、誰かによく似ているような気がする。

 以前、クーゴの服に吐瀉物をまき散らした青年だ。髪の色と目の色は、彼の方がレイヴより少し薄い色合いだった。……いや、名前を知らない彼よりも、もっと身近に似ている相手がいたはずだ。

 

 クーゴはイデアに視線を向けた。イデアは目を瞬かせ、こてんと首を傾げる。紫苑の瞳が瞬き、ペールグリーンの髪がさらりと揺れた。天竺葵の香りが鼻をくすぐる。クーゴが贈った練り香水を、彼女は愛用してくれているようだ。

 

 やはり、似ている。イデアは件の青年たち――レイヴや吐瀉物(以下略)の青年と、何らかの関係があるのだろうか? それを問う間もなく、「いってらっしゃい」とネーナがひらひら手を振った。テオドアの姿が掻き消える。

 恋する相手を見送った後、ネーナは椅子に座り込んでため息をついた。ヨハンとミハエルが顔を見合わせて唸る。妹の恋路も大切だが、恩師の邪魔もしたくない――これはこれで複雑な立場だった。

 

 

「前髪よーし、寝ぐせよーし、ファンデーションのノリよーし、アイシャドーの色合いよーし、チークの色合いよーし、口紅の色合いよーし! うん、今日も私は完璧っ!!」

 

 

 その脇で、ベルフトゥーロがポケットミラーと睨めっこを繰り広げていた。マリナ・イスマイールとの話し合いがあるため、その身支度を念入りに行っているようだ。くせ毛から化粧のノリ具合まで、綿密に確認している。

 彼女を見るたび、エルガンが天を仰いでいたことは昨日のことのように思いだせる。彼は数か月前から、『悪の組織』に戻っていない。連絡も入れていない様子だった。エルガンの行動力は、破界事変から始まり、天獄戦争までの虚憶(きょおく)で熟知しているが、心配である。

 エルガン・ローディックは、世界平和のそのまた向う側を見ているような男だった。彼の見つめる視線の先はどこまでも遠く、人類の明日を見つめていた。そのための犠牲は止むを得まいと考えていながらも、自分が認めた相手のことを大切に想っていた。

 

 

(あの人は、希望を繋げるためだったら、己が悪役になろうとも気にしなかったな)

 

 

 クーゴがそんなことを考えたのと、ベルフトゥーロが己の具合に満足したのは同じだった。車椅子をターンさせて転移しようとし――彼女はこちらに向き直った。

 

 

「近々、でかいことが起こりそうって話を聞いたの。……もしかしたら、キミたちの願いが前倒しになるかもしれない。準備だけは、しっかりね」

 

 

 これでもかってくらい、真面目な顔だった。鋭い眼差しは、『ミュウ』の指導者(ソルジャー)として一団を率いる者としての品格があった。反射的に、クーゴたちの背がまっすぐに伸びる。

 ベルフトゥーロは静かな面持ちでクーゴの方へ車椅子を進める。ちょっと、と、真面目な空気を崩さずに声をかけてきた。何事かと身を固めるクーゴを見た彼女は、鞄の中から『それ』を取り出した。

 

 仮面だった。

 

 いや、仮面と言うよりは、顔全体を覆うお面と言った方がいいような形のものだ。

 白くて丸いお面には、目の部分だけを見せるようにしてV字の穴が開いていた。

 

 視界は良好どころか最悪そうな仮面である。実用性には程遠い。

 

 2世紀ほど前のゲームのキャラクターに、同じような仮面をつけていた奴がいた。

 確かそのキャラクター、“世界一カッコいい一頭身”とか呼ばれていたような気がする。

 しかもこの仮面、OEの虚憶(きょおく)で、間近で見たことがあった。

 

 脱線した思考のまま顔を上げれば、ベルフトゥーロが期待に満ちた眼差しを向けてきた。

 

 

「身バレを避けるためには、やっぱり顔を覆う必要があると思うんだ」

 

「使いませんからねそんな仮面!!?」

 

 

 間髪入れず、手元にあった仮面を投げつけたクーゴは、何も悪くないはずである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷蔵庫を開ける。3時間前に入れた純白のレアチーズケーキは、綺麗に固まっていた。

 

 クーゴはそれを確認し、冷蔵庫からそれを取り出す。チーズとレモンの爽やかな香りが鼻をくすぐった。これだけでも充分美味しそうだが、もう少し盛り付けてみてもよさそうだ。

 どうしようかと思案していたとき、キッチンの扉が開いた。姿を現したのは、宙継である。彼の姿を見つけたクーゴが振り返って微笑めば、宙継も嬉しそうにはにかんだ。

 

 

「あれ? その手に持っているのは?」

 

「ミントです。ジョミーくんやキースくんとハーブを育てていて、ミントはぼくが育てたものです。ジョミーくんがエルダー、キースくんがアーティチョークを育ててるんですよ」

 

「へぇ……」

 

 

 宙継が、手の中に抱え込んだミントの山を差し出した。

 どれもみずみずしく育っており、ハッカ特有の香りが鼻をくすぐる。

 宙継が丹精込めて育てたのだろう。クーゴはゆるりと目を細めた。

 

 

「ペパーミント、スペアミント、アップルミント、ラベンダーミント……どれも、立派に育てられてるな」

 

「クーゴさんに褒められるの、嬉しいです」

 

 

 照れたように微笑む宙継は、本当に嬉しそうだった。年相応に笑う少年の姿に、クーゴはひっそりと安堵する。戦場で対峙した宙継は、いつも苦しそうにしていた。あどけない笑みを見ていると、込み上げてくるものがあった。

 あ、と、宙継が目を瞬かせた。彼の視線はチーズケーキに釘付けになっている。クーゴは微笑んで見せた後、宙継が持ってきたアップルミントを摘んで、チーズケーキの上に乗せた。包丁でチーズケーキを切り分け、皿に盛りつける。

 

 皿の端に、ラベンダーミントを添える。ペパーミント、スペアミント、アップルミントは食用だが、ラベンダーミントは食用に向かない。専ら、観賞用とポプリ用に使われる。食べないようにと注釈しておけば、栄える盛り付けになるだろう。

 

 「できた」とクーゴが言えば、宙継が嬉しそうにこちらを見返した。黒曜石のような瞳をきらきら輝かせている。

 自分が育てたハーブが料理に使われる――育て主として、これ程嬉しいことはないだろう。なんだか微笑ましい。

 ちょっと手伝ってくれないかと声をかければ、宙継はふたつ返事で了承した。お膳に皿を乗せていく。

 

 キッチンを出た2人は、ブリーフィングルームに足を踏み入れた。

 

 イデアとロックオンが書類と睨めっこをしながら何かを話し合っている。真剣な面持ちからして、戦術関係のことだろう。

 少し離れたところにある別の机では、高笑いしながら「いあいあくとぅるふ」等と呪文を唱えるネーナをヨハン、ミハエル、エイフマンらが羽交い絞めにして止めようとしていた。

 

 

(今日も元気だなぁ)

 

 

 クーゴは生温かい眼差しで、日常となった光景を見守る。暫し日常を堪能した後、クーゴはイデアのいるテーブルに歩み寄り、チーズケーキの皿を置いた。

 

 イデアとロックオンが顔を上げ、クーゴとチーズケーキを見比べた。途端に、イデアはぱっと表情を輝かせる。ラベンダーミントは食べられないことを伝えて皿を差し出せば、イデアは即座にフォークを手に取った。チーズケーキを口に運び、幸せそうに頬を緩ませる。

 「おいひいです」というイデアの声を引き金に、呪文を完成させる一歩手前だったネーナの動きが止まった。チーズケーキを視界にとらえた彼女は、目を爛々と輝かせる。彼女は甘いものが大好きだった。ネーナが止まったことを確認し、羽交い絞めにしていた3人が安堵の息を吐いた。

 面々は作業を止めて、チーズケーキに舌鼓を打つ。宙継にも食べるようにと促せば、彼も椅子に座って行儀よくケーキを食べ始めた。幸せそうに綻ぶ少年の姿を見ていると、やはり、心がじんわりと温かくなった。

 

 

「あんた、料理が趣味なのか?」

 

「多少嗜む程度かな。ユニオン時代は『厨房の番人』って呼ばれてた」

 

「嗜んでこれかよ……。軍人より料理人の方が向いてたんじゃないのか」

 

「だろう? わしも同じことを考えていたんじゃよ」

 

 

 ロックオンやエイフマンと談笑しつつ、クーゴもチーズケーキを口に運んだ。チーズのなめらかな口当たりと甘さ、レモンの爽やかな風味が絶妙だ。

 このブリーフィングルームには穏やかな時間が流れている。いつもと変わらない、薄氷の上に成り立つ『平和な時間』が繰り返される。

 

 『始まりの(とき)』までは、まだ遠い――そう思っていた。

 

 遠くの方から足音が聞こえる。ざわめく声が『聞こえてきた』。何事かと振り返ったとき、同じタイミングで、ブリーフィングルームの扉が開かれた。開けた人物は、コード・フェニックスと呼ばれる仮面の青年だ。

 仮面越しでもわかるくらい、彼はひどく焦っている。フェニックスに続くような形で、半泣きのコード・アメリアスが部屋に飛び込んできた。気が動転しているせいで、彼らの言葉は要領を得られなかった。

 首を傾げるクーゴたちと何も伝えられない己に憤慨したようで、2人はテレビジョンを付けた。ニュース画面が映し出される。そこには、大きな見出しで『エルガン・ローディックが反政府組織スターダスト・トレイマーの内通者だった』と書かれていた。

 

 あまりのことに目を見開いていると、ニュース画面が切り替わる。アザディスタンが解体され、王女であるマリナがソレスタルビーイングの内通者として身柄を拘束されたというニュースであった。しかし、マリナに関するニュースはすぐに切り替わる。

 

 

『連邦政府は『悪の組織』を戦争幇助企業と認定し、独立治安維持部隊による鎮圧を行うことを決定しました。これにより、旧アザディスタンを訪れていた『悪の組織』代表取締であるベルフトゥーロ・ティアエラ・シェイド氏の身柄を拘束し……』

 

 

「なんてこった……!!」

 

 

 クーゴの口元が引きつった。他の面々もぎょっと目を剥く。誰も彼も、視線は映像に釘付けだ。

 出かける前に見たベルフトゥーロの表情が脳裏によぎる。酷く真面目な眼差しは、この未来を見据えていたとでもいうのだろうか。

 追い打ちと言わんばかりに、「『悪の組織』の技術者も、拘束の対象になる」と、ニュースキャスターが補足を入れた。

 

 

「こりゃあまずいぞ!」

 

「大変……! グラン・マが、グラン・マが……!! 機動エレベーターの整備に駆り出されてるみんなも危ない!!」

 

 

 ロックオンとイデアが顔を青くした。

 

 

「嘘でしょう!? あの人が……」

 

「あのときと同じ……ッ、完全に濡れ衣じゃねえか!」

 

「政府の奴ら、本気でこちらを潰しにかかるつもりか……!」

 

「…………」

 

 

 ネーナが口元を覆い、ヨハンとミハエルが憤る。

 エイフマンは険しい顔のまま、テレビ画面を睨みつけていた。

 

 宙継は不安そうに映像を見ていたが、はっとした様子で立ち上がった。彼はベルフトゥーロを慕う親友たち――ジョミーとキースのことが心配になったようだ。

 『ミュウ』の力を使い、宙継は親友たちの元へと転移したらしい。あちこちからざわめく思念が『聞こえて』くる。指導者と参謀がまとめて捕まったということが、大きな衝撃だった。

 不意に、端末が鳴り響いた。クーゴたちは端末を起動させ、送られてきたと思しきメッセージを確認する。その内容を読み終えたタイミングで、慌てふためくクルーたちの思念が止まった。

 

 差出人はベルフトゥーロとエルガン。2人は最初から『こうなる』ことを予期し、予め作戦プランを練っていたらしい。それに従うように、クルーの面々たちが動き始める。

 

 この場にいた面々は顔を見合わせて、頷いた。

 これが『始まりの(とき)』だと、正しく理解した。

 

 

 ――『還る』ための旅路は、ここから始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このときのクーゴ・ハガネはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミ、大丈夫かい!?」

 

「ぁ、ああ……」

 

 

「……あれ? キミは……」

 

「もしかして、刹那?」

 

「お前たちは……沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィか?」

 

「違うわ。私はルイス・クロスロード。沙慈のお嫁さんよ!」

「そうだね。僕は沙慈・クロスロード。ルイスのお婿さんだよ!」

 

「…………そ、そう、なの、……か……!?」

 

 

 

 

 とあるコロニーで、バカップルと元バカップルの片割れ(注:本人は無自覚)が邂逅することを。

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕のお父さんはカッコいいんですよ! ソルブレイヴズ隊に所属してるんです!」

 

「僕のお父さんだって凄いんですよ! 僕と同じく、監視者の仕事で世界を回っているんです!」

 

 

「息子がいい子過ぎて涙が止まらない」

 

「……そうか」

 

 

「……俺にも、息子がいるんだ。名前はブリュンといってな……」

 

 

 

 

 

 

 後に、父親/息子繋がりで友人ができることを。

 

 

 

 

 

 

 

「イオリア! ベル! エルガン! アラン! トォニイ! アルテラ! ――ああ、みんなもいるんだね!?」

 

「さあ、行こう」

 

「そして、還ろう」

 

「――青い星(テラ)へ」

 

 

 

 

 すべてを見届けた『はじまりの女』が、青い星(テラ)へ『還る』ことを。

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネの明日探しは、ここから始まった。




【参考および参照】
『COOKPAD』より、『レアチーズケーキ(麦芽糖さま)』
『ハーブの図鑑』より、『ミント』、『エルダー』、『アーティチョーク』
『ミントの種類』より、『ペパーミント』、『スペアミント』、『アップルミント』、『ラベンダーミント』

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