不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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ウーラシール編の開幕。


闇術に関しては………どうしようか、考えておきます。


技量系の魔術師を目指したはずが超火力ブッパマンに成り掛けの主人公、軌道修正出来るかな。


不死の英雄伝 71

第七十一話 霊廟・裏庭

 

 

気がつくと、周りが木の根に囲まれたうろの中に倒れていた。

 

手の中には、割れたペンダントが何時の間にか握られている。

 

 

こんな物、何時の間に手に入れたんだ?

 

 

疑問に思いながらもペンダントをソウルにしまい、篝火に触れて転送を試みるが、王の器が反応しない。

 

 

どうやら、此処は空間から切り離されている、若しくは”何者か”が俺を返すまいと世界全体を歪めているのだろう。

 

 

亡者化が刻一刻と進行している為、悠長に寄り道している暇は無いと言うのに……。

 

まぁ良い、売られた喧嘩だ、キャラじゃ無いけど買ってやる。

 

 

どの道、それしか此処を出る方法は無いだろうからな。

 

 

目の前の霧の手前に見えるサインに触れる。

 

放浪騎士 ベルム

 

 

特大剣を担いだ俺と同じ鎧を着込んだ男が召喚される。

 

 

挨拶もソコソコに霧を越え、月明かりの大剣を抜く。

 

 

目の前にはツノと翼が生えたライオンのような生物が立っていた。

 

 

何かに怯えるように咆哮をあげる彼に、容赦なく光波を飛ばす。

 

何に怯えているのか知らないけれど、そんなことに一々構ってられる程時間は無いんだ。 悪いけど速攻で終わらせるよ。

 

 

しかし、着弾した光波は例のライオンに傷一つ付ける事は出来無かった。

 

 

一筋縄では行かない、か。

 

どうやら、彼の身体は魔力に対して強い耐性を持ってるみたいだ。

 

 

この大剣では分が悪いな。

 

ハルバードを構え、ライオンの攻撃に備える。

 

彼は咆哮を上げて、俺達に向かって突進する。

 

ベルムは特大剣を構え、呪術の火を使って身体を鉄のように硬め、その突進に向かってカウンター気味に特大剣を叩きつける。

 

 

流石に硬い体毛に覆われている身体を両断するまでに至らなかったが、その一撃でかなりの深手を負わせる事が出来た。

 

 

だが、一撃で仕留められ無かった為か、事態は急変する。

 

 

深手を負った彼の悲鳴は周囲に響き渡り、更に二体のライオンがこの場に追加される。

 

 

彼らの翼による風圧を受け、俺は吹き飛ばされてしまう。

 

 

だが、身体が鉄のようになっている彼は微動だにしない。だが、今回はそれが裏目に出てしまった。

 

 

三体のライオンの吐き出す雷が、全てベルムに着弾してしまい、彼の霊体が消滅する。

 

消える前に彼は特大剣を使い、手負いの一体を道連れにして行った。

 

 

彼のおかげで後二体となったが、それでも現状は厳しい。

 

 

片方のライオンが俺に突進し、残った一体が俺を風圧で金縛りにする。

 

 

突進してきたライオンに、ハルバードを突き出して火達磨にするつもりだったのだが…。

 

彼の体表に傷は付けど、炎が燃え上がる事は無かった。

 

 

こ、此奴、まさかあらゆる魔力に対しての耐性を持っているのか⁉︎

 

 

そう考えるならば、此奴に対して使用できる武器は大きく限定されてしまう。

 

 

突進の一撃をまともに受けたものの、新たに着替えた鎧のお陰で何とか軽傷で済んだ。

 

 

肋や膝などにヒビが入っているが、動きに問題は無い。 折れてしまったらエスト瓶で治せば良いか。

 

 

混沌の刃を抜き、正眼に構える。

 

 

魔力の篭らない純粋な刃、研ぎ澄まされたそれは鉄をも両断出来る。

 

 

彼らに有効なのは、現在この刀以外には無さそうだ。

 

先ほどから俺を襲っている風圧を斬り裂きながら、目の前のライオンに向かって行く。

 

 

風を斬るなど物理的にあり得ないとは思うが、クラーグのソウルによって生まれたこの刃は、文字通りあらゆる物を両断出来るようだ。

 

腕さえ有れば、若しかしたら次元すら両断出来るかも知れないな。

 

 

目の前の彼の吐く雷を斬り裂きながら吶喊する。

 

 

間合いを詰められたライオンは前足で薙ぎはらうように殴りかかってくるが、その腕をかい潜り、その腹の下に潜り込んで、一気に斬り裂く。

 

 

臓物をぶち撒け、大量の出血を強いられた彼は断末魔すら上げずに絶命する。

 

 

血糊を払い、最後の一体に目を向ける。

 

 

先ほどから思っていたのだが、彼らは何故か俺に怯えているみたいだ。

 

いや、どちらかと言うと俺の中にある”何か”に怯えている、と言ったところか。

 

 

一応、心当たりがある。

 

倒れていた際に握っていたペンダントを取り出してライオンにチラつかせてみた所、見事に反応し、俺に突進して来た。

 

 

真っ直ぐ向かってくる彼の身体を、頭部から正中線に沿って両断、慣性によって俺の左右を彼の身体が通り過ぎて行く。

 

 

ペンダントに怯えている、と言うよりそれにまつわる”何か”に怯えている、と言った感じだった。

 

 

ー招待状どころか、出迎えも無いー

 

ー酒も、料理も無いー

 

ーまったく、人を招待する常識が無いねー

 

ー無い無い尽くしなのは頂けない、キツイお灸を据えなきゃなー




お ま け 不死の英雄外伝 〜 闇の落とし子 〜

第12戦 シフ 2


目の前の狼はアルトリウスの大剣を引き抜き、俺に向かって走り出した。


ーおい、クソアマー

ー戦えねぇなら隅っこで縮こまってろー


反論されるかと思ったが、素直に頷き隅っこまで引いて行った。

相当参っていたみてぇだな、道中で引っ切り無しに俺に吐いていた毒も鳴りを潜めてるしよ。


あの女の事は此処までだ、今は目の前の事に集中しますかねぇ。


横薙ぎに払われた大剣を回避し、松脂をシミターに塗って炎を纏わせる。


生物相手には炎が有効、更に今回は純粋な狼が相手だ。


奴の体毛に刃を突き立て、身体を燃やす。


奴はその炎を嫌って、大剣の振り上げと共に後ろに飛び上がる。


呪術の火を温め大火球を発動する。

狙うは奴の着地点。

そこに向け、叩き付けるように大火球を投げ付け、前足を焼き付ける。


爆風に足を取られ、バランスを崩した隙に接近、鼻っ面に大発火を発動して怯ませる。


反射的に顔を逸らした瞬間、残った足を大火球で黒焦げにし、使い物にならなくさせる。


ーどうよ、効くだろ? ワンちゃんよォー

ー今夜のは特にイイ感じなんだ、最高だろうォこの炎は⁉︎ー

ー生きたまま焼き尽くされる気分てのァよー

ークッ、ハッハッハッハ‼︎ー

ーどんな気分だよ? なぁ教えてくれねぇか⁉︎ー

灰色の大狼は答えない、唯、苦しげに呻き声を上げるだけだった。

ーアッハハハハ、そうだな悪りぃ悪りぃー

ー狼どころか犬畜生じゃァ、人間様の言葉も喋れねぇ見てェだなぁ‼︎ー

せめてもの抵抗をしようとした彼の真下で炎の嵐を発動し、灰色の大狼を転倒させる。


ーauf wiedersehenー

トドメの一撃、顔に向けてゼロ距離で放たれる大発火を貰い、断末魔を上げながら灰色の大狼は絶命する。



アルトリウスの契約が二つ、俺の世界とあの女の世界は上手く重なってたみてぇだな。


ーほらよ、テメェの分だー

終始観客として眺めているだけだったビアトリスに指輪を投げ渡す。


ー……え?ー

ーどうして?ー


ー二つも要らねぇよんなもんー

ーそういや、テメェ何でもするって言ったなー


ー…………ぅんー

ーか、覚悟は出来てるー

ー女は度胸ー

ーどんとこい‼︎ー


ー……何言ってんだよー

ーあーっと、どうするかねぇー

この女に下手な事言ったらどうなるか分かったもんじゃねぇ、かと言って礼は要らねぇとか言ってもしつこく食い下がる可能性が有る。


無難、且つ後腐れの無い要求は………!。

閃いたぜ‼︎

ーアレだ、お前、料理を作って来いー


ー料理? 構わないけど……ー


ー決まりだな、次会ったら俺に食わせろよー

ーじゃあなー


まぁ、次に会うことなんざ無ぇだろうがな。

今回は特別に俺とあの女の世界が重なったからこうして生身で会えたんだ。

もし次があったとしても、きっとあの女じゃ生き残れねぇだろうから、どちらにせよこれまでだ。


まったく、なんで俺の周りの女は面倒な奴ばかりなんだろうな。

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