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第六十六話 結晶洞窟
篝火で結晶の魔術を記憶した俺は、早速庭の攻略にかかる。
途中、宝箱に擬態した八頭身のミミックにおどり食いされてしまい、一度死んでしまったが、お陰で色々な物を手に入れた。
結晶の種火と魔力のファルシオン。
ファルシオンに関しては、曲剣である以上斬撃しか放てず、そしてその斬れ味は混沌の刃に劣るだろう。
だが、投擲武器として使うならば十分だ。
大剣の鞘の下に逆さに貼り付けるように設置する。
嵩張らず、抜きやすい、投げつけるには最適な位置だろう。
後は結晶の種火だが、これは誰が扱えるのか皆目見当もつかない。
その辺の疑問は置いて、この種火の効力を考える。
その名の通り、武器に結晶の力を宿す事が出来る種火。
その力は強力で、如何なる武器であろうと結晶化してしまえば一流の武器となる。
その証拠に、この道中の敵の持つ剣は壁や床を容易く抉り取っていた。
その特殊性故に、些細な傷すら修復出来ないと言う欠点が有るものの、その力は絶大だろう。
庭までの道を開き、梯子を降りて行く。
クリスタルゴーレムが散在するこの庭を越えた先に、不死の結晶が存在する結晶洞窟がある。
そこに足を向けようとしたその時だった。
一体のクリスタルゴーレムがこちらに向かってくる。
他の個体より一回り大きく、色も黄金の輝きを放っている。
その個体は、腕を伸ばし、結晶を纏わせながら俺に殴り掛かってきた。
盾を構えた上から弾き飛ばされる、指輪の力は凄まじく、吹き飛ばされた際の音と盾で防いだ音も消してくれていた。
それによって、周りのゴーレムが纏めて起動するなんて事は無かったが、正直どうしようか迷っている。
無視して突っ切っても構わないのだが、見た事がある玉ねぎの鎧が囚われているのを確認してしまった以上見ないふりと言うのも後味が悪い。
ハルバードを取り出そうとして、一旦思い留まる。
アレの中に人がいる以上、対象を燃やし尽くす力を持ったコレではマズイ、人質までも燃えてしまう。
かと言って、ソウルの槍を使うのもダメだ。
貫通効果を持ったこの槍なら、中にいる人質ごと、クリスタルゴーレムを貫いてしまう。
ソウルの塊では火力不足、一撃の威力の低いアレらではまともに傷を与える事は難しいだろう。
残る選択肢は大剣か、混沌の刃でも良いだろうが万一、人質までも斬ってしまいたくなったら本末転倒だ。
背中の大剣を引き抜き、エンチャントを施す。
結晶魔法の武器、刀身が深い青に染まり、結晶に包まれる。
結晶の力を纏った大剣で、向かってくるクリスタルゴーレムの胴を横一文字に斬りつける。
だが、やはり一刀両断とまでは行かず、多少の傷を負わせる程度に留まってしまう。
舌打ちをつく間も無く、クリスタルゴーレムは突然両腕を地面に叩きつけた。
その行為の意味は直ぐに分かった。
彼の腕を中心に広がる結晶、それは周囲のあらゆる物を飲み込んで行く。
勿論、それに巻き込まれた俺は全身を結晶で固められ、身動きが取れなくなった。
その隙を見逃すほど、クリスタルゴーレムは愚図ではなく、棒立ちの俺の上半身を全力で殴りつける。
碌な抵抗も出来ないままに、上半身と下半身を泣き別れにされ、絶命する。
篝火で再構成した身体を生身に戻しながら、どうやってあの人質を解放するかを考える。
結晶生物の弱点は突けない、ソウルの槍や混沌の刃も使えない。
となると、使用できる武器は次の通りか。
背中の大剣、腰の片手剣、棘の直剣、竜王の大斧、黒騎士の大剣。
黒騎士の大剣は両手持ちで辛うじて振り回せる物、竜王の大斧に至っては両手持ちですら持ち上げる事さえ出来ない。
梯子を登って、上から叩きつけるように斬りつけると言うのも難しい。
何せ人質が囚われて居るのは頂点だ、此れでは諸共斬ってしまう。
これは、斬り捨てるより破壊する方向で行った方が得策だな。
しかしだ、それに当たり一つ問題が有る。
俺は刃物や槍ならば持っては居るが、鈍器を一つも所有していないと言うことだ。
今から調達しに別のエリアに転移するのも阿呆らしい、そもそも、そんな事をしている間に世界がズレてしまい、あの金ゴーレムを取り逃がす可能性だってある。
やるなら一点突破の一撃。
それを叩き込み、そこを中心として結晶の身体に放射線状にひびを入れ破壊する。
その為には、杭のように打ち込むための剣を選ばないと行けないか。
どれも古城に向かう前にアンドレイによって可能な限り強化されている、その上結晶のエンチャントも使用できる。
ー……よし、コレにしようー
候補の中から杭となる一本を選んだ。
さあ、ゴーレムの下に向かおう。
お ま け 不死の英雄外伝 〜闇の落とし子〜
第7戦 3度目の騎士戦
あのペトルスとか言う男を餌にして、あの男を釣って見たが、こうも簡単に釣れちまうとはなァ。
パッチに聖女を襲わせたのもあるから慌ててやがる。
ちっとだけ拍子抜けだ。
挑発のつもりで魔剣をチラつかせてやったんだが、俺の事を親の仇でも見るような目で睨みつけてきやがった。
左右の色の違う瞳、オッドアイだったっけか?
そいつは今、怒りと憎しみに染まっている。 来いよ、八つ裂きにしてやる。俺の味わった屈辱はこんなもんじゃねぇ、とっとと掛かって来やがれルーキー‼︎。
だが、奴は俺に踵を返し、先に向かって走り出しやがった。
OKOK、テメェはこの俺様から逃げ切れるなんて本気で思ってやがんだな? とことん舐め腐りやがってよ。
ショートボウを構え、奴の通過する地点に向け火矢を放つ。
流石に無視できなかったのか、足を止めたあの男に左手を向ける。
文字の読めなかった俺に、呪術書の内容を丸暗記するまで読み聞かせやがったんだ。 発動しなけりゃあの女殺してやる。
大火球、火球系の呪術の頂点で、呪術王ザラマンの二つ名だったか、 学の無い俺でも知ってる呪術だ。 つかあの女一体幾つなんだよ。
無事に発現した大火球を、あの騎士に向け投擲する。
着弾と同時に巻き起こる爆風は、騎士を橋の上から弾き飛ばす。
宙に投げ出された奴に、弓の3連射を放つ。
眉間、喉、胸を射抜いたが、浅かったのか剣を命綱代わりに橋の側面に突き刺し、奴は辛うじて耐えている。
相変わらず、ゴキブリみてぇにしぶてえな。
もう一発大火球をお見舞いしようかと思ったが、逃げられちまった。
まぁいい、奴の行く場所は決まっている。
崖から崖を飛び移り、先回りをする。
聖職者の死体が転がっている高台から、奴が霧に向かった所に魔剣による奇襲を仕掛ける。
十分音を殺したはずだが、どぉやら影で俺の奇襲に気が付いたのか、奴は後ろに下がり回避しやがった。
才能ねぇ癖に、それなりやれるじゃねぇかよ。
腕をしならせ魔剣を振るい奴を後退させて行く。
防戦一方とはいえだ俺様の連撃を受け続けられるなんてのは大したもんだがね。
肩で息をし始めた奴に左手を突き出し、大発火を発動する。
爆炎で奴を火達磨にするつもりだったが、奴は苦し紛れにナイフで俺の左手を射抜きやがった。
焼けるような痛み、動悸と吐き気、更には目眩、毒を塗ってやがったな⁉︎。
つくずく、騎士らしくねぇ奴だよ‼︎。
身体がふらついた隙に大剣で袈裟斬りにされるも、何とか致命傷は反らせた。
だが、かなりマズイ状況だ、毒も全身に回り出した。
魔剣を両手で握る、最早格下となんざ微塵も思わねぇ、此奴は強い。
奴は完全に防御を捨てた構えをしているが関係ねぇ、一撃で決める。
毒の症状を気力で無視し、一気に踏み込む。
奴が側に刺していたブロードソードを蹴り出して来るが、避ける体力は無い、そのまま突っ込む。
懐に入り、横薙ぎの一閃を放って、奴を両断しようとしたが、毒に侵された身体で振るった為か僅かに剣が鈍ったみたいだ。
そこを振り下ろしの一撃で逆に両断された。
消えて行く身体で、奴の顔を目に焼き付ける。
銀の長髪に整った顔、極め付けは左右の色の違う瞳。
ーそのツラァ、覚えたからなァ‼︎ー